「亜鉛不足による爪」の症状・原因はご存知ですか?医師が監修!
爪に横線が入ったり、白い部分ができたりといった爪の異変が起きることがあります。
ご自身の爪にもこれらの症状が表れて、不思議に思ったことがある方も多いのではないでしょうか。
実は爪の症状には亜鉛が大きく関係しており、亜鉛不足になると爪に横線が入ったり白い部分ができたりします。
軽度な症状にも感じますが、亜鉛不足が重症化すると危険なケースもあるため注意が必要です。
そこで本記事では、亜鉛不足による爪の症状・原因・放置した場合にどうなるのかについて詳しく解説します。
監修医師:
竹内 想(名古屋大学医学部附属病院)
目次 -INDEX-
亜鉛不足による爪の症状・原因
亜鉛不足による爪の症状にはどのようなものがありますか?
- 爪がかけやすくもろい
- 爪に横線が入る
- 爪が縦に割れる
- 爪の周囲が炎症を起こす
- 爪に白い部分ができる
爪は亜鉛と密接に関係しています。爪のタンパク質を作るときに必要な栄養素です。そのため、十分に亜鉛が摂れていないと爪の成長や強度に大きく影響します。
爪がかけやすくもろい理由は、亜鉛が足りておらず、小さな衝撃でも簡単に割れやすくなってしまっているためです。爪に横線が入る症状もよくみられる症状です。この線はボー線と呼ばれるもので、亜鉛不足による影響が全身に及んでいる可能性が高いことを表します。
しかし、ボー線が現れたからといって必ずしも亜鉛不足と断定できるわけではありません。鉄欠乏やレイノー病といった一部の病気でも現れる可能性があります。
また、爪が縦に割れる症状も現れることがあります。これは爪甲縦裂症といい、亜鉛不足だけでなく除光液・爪の乾癬(かんせん)・扁平苔癬(へんぺいたいせん)なども代表的な原因です。爪の周囲が炎症を起こすこともあります。通常、爪には甘皮があり、爪を保護する役割や細菌などの異物の侵入を防いでいます。
しかし、亜鉛が不足すると甘皮が正常に作られません。そのため、爪の周囲に炎症が起きてしまいます。さらに、爪に白い部分ができる症状がみられることもあります。これは爪甲白斑と呼ばれるもので、ほとんどの場合マニキュアなどの刺激や水虫の感染などによって起こる症状です。しかし、稀に亜鉛・鉄・ビタミンなどの不足によっても発症します。
亜鉛不足による爪の症状の原因を教えてください。
- 偏った食事
- アルコールの摂りすぎ
- 過度なダイエット
亜鉛を多く含む食材は、魚介類などです。そのため、魚介類を食べる頻度が少ない方は亜鉛不足になりがちです。また、食材の中には亜鉛の吸収を阻害するものもあります。例えば、食物繊維・シュウ酸・ポリリン酸などの食品添加物が代表的です。
亜鉛の摂取不足だけでなく、これらの亜鉛の吸収を阻害するものが含まれる食事をしている方は、亜鉛不足を招き爪に症状が現れます。また、アルコールも大きな原因のひとつです。アルコールの分解に関わる酵素は、亜鉛を材料としています。
つまり、アルコールの摂取量が多くなると使用量も増えるため、尿として出てしまうため体内に不足しています。過度なダイエットも、不足を招く大きな原因です。摂取される頻度が低下するため、爪に症状が現れてしまいます。
亜鉛不足のサインを教えてください。
- 味覚が感じにくい
- 風邪をひきやすい
- 傷が治りにくい
- 疲れやすい
- 髪の毛が抜ける
この栄養素が不足すると、味が分からなくなる・食べてもいないのに変な味を感じるといった症状が現れるでしょう。これは、味を感じる味蕾(みらい)という器官が関係しています。
通常、味蕾は細胞の生まれ変わりが活発に行われています。しかし、亜鉛不足が起こると新陳代謝が悪くなり、細胞の生まれ変わりが上手く行われず味を感じにくくなるのです。
風邪をひきやすくなる症状も代表的なサインに挙げられます。これは、亜鉛が免疫機能を保つ役割をしているためです。この栄養素が不足すると、免疫力の低下を起こして、風邪などにかかりやすくなります。また、傷が治りにくい症状もサインのひとつです。
亜鉛は新陳代謝をサポートする役割があるため、不足すると新陳代謝低下につながり、傷が治りにくくなります。疲れやすいといったサインも表れます。この栄養素が不足することで消化液の分泌が減るためです。消化液が減ると消化器官の働きが鈍くなり、食欲がなくなることでエネルギー不足を起こすため、疲れやすくなってしまいます。
また、髪の毛が抜けるサインは、亜鉛不足による頭皮の炎症が関係します。髪の毛にはこの栄養素が不可欠です。髪の毛には体内の亜鉛の約8%が存在しているため、不足すると頭皮環境を悪化させ、抜け毛を引き起こします。
亜鉛不足による爪の症状の対処法を教えてください。
また、症状の度合いによっては内服薬を処方される場合もあります。また、爪の症状の原因は、先述したように亜鉛不足だけではありません。乾燥などによって悪化する可能性があるため、保湿クリームやオイルなどを塗布して爪の乾燥を防ぐことも大切です。
亜鉛不足による爪の症状の放置
亜鉛不足による爪の症状を放置するとどうなりますか?
爪周辺の炎症・ボー線・爪甲白斑などの症状も改善する可能性は低く見た目にも悪い状態が続いてしまうでしょう。爪が割れたままであれば、服に引っかかりほつれたり爪を傷つけたりなどのリスクも考えられます。
また、爪甲縦裂症は放置するとかなりの痛みを伴い、亜鉛不足ではなく腫瘍によって発症している可能性もあります。万が一、亜鉛不足と思い込み発見が遅れた場合、適切な治療が送れる可能性があるため注意が必要です。
危険な状態を教えてください。
通常では早く治る病気や傷も治りにくくなっているため、感染症などを引き起こす可能性もあるでしょう。また、乳幼児の亜鉛不足が危険な状態となると、重度のおむつかぶれなどを引き起こす可能性があります。
寝たきりの高齢者であれば、褥瘡(じょくそう)ができるケースもあり大変危険です。
危険な場合、病院に行くべきですか?
危険な状態を放置すると、さらに症状の悪化を招く可能性があります。亜鉛を補充すれば症状緩和の可能性はありますが、それぞれの症状を治療しなければなりません。
また、新たな感染症などを防ぐためにも、病院での受診や処方箋をもらう必要があるでしょう。
亜鉛不足による爪の予防の基礎知識
亜鉛不足による爪の症状は予防できますか?
また、あらかじめ爪を保護しておくことでも、爪の割れ予防を行えます。ベースコートやトップコートなどを使用して爪の補強を行うことで割れるのを未然に防げます。
亜鉛不足による爪の日常でできる予防法を教えてください。
先述したように、インスタント食品などの食品添加物などには亜鉛の吸収を阻害するものが含まれます。そのため、摂取量を減らすことでこの栄養素が正常に吸収されるようになります。また、食物繊維の摂りすぎにも注意して食事バランスを改善しましょう。
食物繊維も体に必要な栄養素です。しかし、摂りすぎると吸収を低下させます。また、妊娠中の方や授乳中の方の場合は、亜鉛の需要が増えている状態です。不足しがちになるため、食事だけでは補えないと感じた場合にはサプリメントも服用しましょう。
さらに、過度な運動を避けることも有効な予防法です。適度な運動は大切ですが、激しい運動をする方は不足状態となる傾向があります。
最後に、読者へメッセージをお願いします。
また、爪の症状と併せて不足した際のサインも押さえておきましょう。少しでも違和感を感じた場合には、亜鉛不足を起こしている可能性があります。重症化を防ぐためには早期発見と早期治療が大切です。
爪の諸症状や不足が疑われる症状に気づいた場合には、すぐに専門の医療機関を受診しましょう。
編集部まとめ
亜鉛不足による爪の症状はさまざまです。しかし、原因はほとんどが偏った食事や過度なダイエットなどにあり、防ぐことは不可能ではありません。
そのため、しっかりと症状や予防法を把握することが大切です。爪だけに限らず、この栄養素の不足で引き起こす可能性がある症状にも注意しましょう。
また、少しでも不足状態による症状ではないかと疑問を感じた場合には、重症化を防ぐためにも専門の医療機関を受診して治療を進めましょう。