「化膿性脊椎炎」の症状・原因・発症しやすい年齢層はご存知ですか?医師が監修!
化膿性脊椎炎について、あまり聞き馴染みのない病気だと思います。整形外科領域では代表的な感染症の1つです。
化膿性脊椎炎は背骨にあたる脊椎に細菌が感染して、炎症を引き起こす病気です。痛みや発熱などさまざまな症状が出現します。
最悪の場合、重篤な後遺症や死亡する可能性があるため注意が必要な病気です。
しかし早期から適切な対応をすることで、治療できる病気でもあります。
本記事では症状・原因・治療・後遺症・リハビリについて解説します。化膿性脊椎炎に対する正しい知識を身につけ対峙していきましょう。
監修医師:
甲斐沼 孟(上場企業産業医)
目次 -INDEX-
化膿性脊椎炎の症状と原因
化膿性脊椎炎はどのような病気でしょうか?
症状を教えてください。
- 発熱
- 背中の痛み
- 脊椎(背骨)の変形
- 感覚障害
- 運動麻痺
感染症により炎症が起こり、身体が細菌と戦うため熱が出ます。しかし中には、慢性的に経過が進行して熱が出ない方もいます。そのような場合は診断がつきにくいため注意が必要です。感染した部位により痛みの位置が変わり、腰や胸などさまざまです。
炎症が脊椎にある椎体や椎間板に波及し骨が破壊されてしまうと、脊椎の変形・感覚障害・運動麻痺が起きてしまいます。また発症の初期には痛みにより動けなくなることも多くみられます。
発症する原因を教えてください。
て別の部位に移動し、新たな感染症を引き起こすことです。感染源は尿路感染症・腎盂腎炎・胆のう炎・皮膚や軟部組織の感染など、さまざまな感染症の病気が挙げられます。原因になる細菌は緑膿菌や黄色ブドウ球菌などさまざまです。
また化膿性脊椎炎の危険因子として尿道カテーテル・血管のカテーテル・糖尿病・透析があります。カテーテルなどを長期間入れていることによる感染や針を刺す際に細菌が侵入する可能性があるため危険因子として挙げられます。
そのため免疫力が低下しており、感染しやすい方は注意が必要です。感染が全身へ拡大してしまい、敗血症になり多臓器不全になる危険性もあります。また例としては少ないですが、腰の手術後や検査による直接感染も原因となります。
化膿性脊椎炎になりやすい年齢を教えてください。
高齢になるとカテーテルを留置する機会が多くなることや、免疫力が低下して感染症を引き起こす確率が高くなることが、化膿性脊椎炎発症の原因です。
化膿性脊椎炎の治療
どのような検査で診断されるのでしょうか?
- 血液検査
- レントゲン
- CT
- MRI
血液検査では炎症の値をチェックして細菌の感染状況を確認します。レントゲンでは、化膿性脊椎炎の初期段階では感染の状態を確認することができません。炎症が進行すると骨の破壊などがみられるようになります。しかし高齢者の場合は、骨粗鬆症や圧迫骨折との違いに注意が必要です。
CTは骨の破壊による変形などを確認します。発症から2週間程度で骨の破壊がみられるケースが多いです。MRIは化膿性脊椎炎の診断で最も有効な診断方法です。しかしMRIでも感染初期に関しては感染兆候が画像に写らないことがあります。
化膿性脊椎炎は感染初期では、なかなか確定診断がつきにくい病気です。診断まで時間がかかることもあります。慢性的に経過している場合は熱が出ないことや、腰痛の症状しかなく受診しても原因がわからないことが、診断に時間を要する原因です。
治療方法を教えてください。
- 点滴治療
- 手術
- 安静
- リハビリ
点滴治療では抗生剤の点滴を行います。ここで大切なのは、炎症が起こっている細菌の種類を特定することです。種類を特定することで細菌に合わせた抗生剤点滴が行えます。
細菌を特定するために血液培養などを実施します。治療には原因となる細菌を明らかにすることが必要です。手術は抗生剤点滴が効かない方・神経症状が進行している方・骨が破壊されて背骨が不安定になった方などが適応になります。
化膿性脊椎炎は基本的に点滴治療で保存的に治療を進めることが治療方針となります。大切なことは違和感に気づいたら早期に受診することです。安静・リハビリについては後から詳細にお話します。
化膿性脊椎炎の治療期間を教えてください。
長期間の抗生剤点滴が必要になります。また注意点として耐性菌といった抗生剤点滴が効かない細菌が原因の場合は治療が長くなる傾向があります。
化膿性脊椎炎に安静が必要な理由を教えてください。
しかし安静が保てない状態が続くと、骨を新しく作る作用に比べ骨を壊す作用が強く働いてしまいます。このような状態が続くと、更なる症状の悪化や治療期間が長くなる恐れがあります。
そのため安静を保つことが必要です。また安静に伴い、身体にコルセットを装着することもあります。コルセットを使用することで身体を固定し、脊椎への負担を減らすことができます。
化膿性脊椎炎の予後
後遺症はありますか?
- 運動麻痺
- 感覚障害
- 脊椎の変形
化膿性脊椎炎の後遺症は炎症が進行して神経を圧迫することにより運動麻痺・感覚障害を引き起こすことがあります。運動麻痺では「足が動かない」「力が入らない」感覚障害では「足に痺れがある」「足が地面についている感じがわからない」など日常生活に支障をきたす原因になります。
日常生活に支障をきたさないためにも、早期に診断を受けて治療を開始することが大切です。また骨の破壊が進行すると脊椎(背骨)が変形する危険性があります。
このような運動麻痺・感覚障害・脊椎の変形が起きると手術が選択されるケースが多いです。
再発するのでしょうか?
また感染が主な原因になるため、免疫力が低下している方などは再度感染して血行性感染により再発する危険性もあるでしょう。
リハビリについて教えてください。
ベッド上からリハビリを進め、廃用症候群の予防が中心です。痛みが落ち着き、炎症の値が下がって抗生剤の効果がみられ始めたら少しずつベッドから起き上がります。
離床といって座る・立つ・歩く訓練を段階的に進めていきます。また離床を進める際に身体を固定して負担を減らすためにコルセットを着用するケースも多いです。
コルセットは身体を固定することで脊椎への負担を減らす反面、身体の筋力を使用しない状況が続きます。長期間着用していると身体の筋力が低下する危険性があります。着用期間については医師の指示に従いましょう。
また抗生剤点滴によって炎症が終息してきた段階で、自宅退院に向けて日常生活で必要な動作の訓練を行います。日常生活の動作訓練は入浴動作や階段など必要に応じて訓練を進めます。早期からのリハビリは二次的な廃用症候群などを予防するためにも重要です。
化膿性脊椎炎を予防する方法を教えてください。
ジョギングやウォーキングなど適度な運動やバランスの良い食事、十分な睡眠時間の確保など免疫力を高める工夫をしましょう。また感染を未然に防ぐためには外出後の手洗いやうがいなど基本的な感染対策も重要になります。
最後に、読者へメッセージをお願いします。
しかし感染初期では診断が遅れることや、難渋するケースがあります。腰の痛みや熱が続いているなど疑わしい症状がある場合は、医療機関を早期に受診して医師の診断を仰ぎましょう。早期診断が化膿性脊椎炎の適切な治療に繋がります。
編集部まとめ
化膿性脊椎炎は感染が原因で起こる病気です。痛み・発熱・神経症状などのさまざまな症状を引き起こし治療が遅れた場合は後遺症が残る危険性もあります。
血液検査・レントゲン・CT・MRIなどで診断しますが、感染初期はなかなか診断がつかないこともあります。
早期診断・早期治療が完治するための鍵です。疑わしい症状がある場合は、早期に医療機関を受診しましょう。適切な治療を受けることで完治できる可能性は高くなります。
感染しないために免疫力を高め、感染しにくい身体を作ることが大切です。「自分の身体は自分で守る」を合言葉に免疫力を高める工夫や感染予防に取り組みましょう。
参考文献