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【医師監修】背筋や首の違和感には要注意!「脊柱靱帯骨化症」とは?

 更新日:2023/03/27
背筋や首の違和感には要注意!「脊柱靱帯骨化症」を医師が徹底解説!

脊椎をつなぐ靭帯が肥厚し硬くなることにより脊髄が圧迫される「脊柱靭帯骨化症」とは、一体どのような病気なのでしょうか。

今回は、その気になる症状・治療方法・治療期間・注意点などを詳しく解説します。

脊柱靭帯骨化症は、脳から連続した中枢神経の一部である脊髄が圧迫されることにより様々な神経症状が現れる病気です。

障害される靭帯の種類や位置によって症状の出方が異なります。その中でも代表的なのが後縦靭帯骨化症と黄色靭帯骨化症の2つです。

この2つは難病に指定されている病気で、症状が急激に悪化する可能性もあります。症状の特徴や注意点を確認し、必要に応じて医療機関を受診するようにしましょう。

甲斐沼 孟

監修医師
甲斐沼 孟(上場企業産業医)

プロフィールをもっと見る
大阪市立大学(現・大阪公立大学)医学部医学科卒業。大阪急性期・総合医療センター外科後期臨床研修医、大阪労災病院心臓血管外科後期臨床研修医、国立病院機構大阪医療センター心臓血管外科医員、大阪大学医学部附属病院心臓血管外科非常勤医師、大手前病院救急科医長。上場企業産業医。日本外科学会専門医、日本病院総合診療医学会認定医など。著書は「都市部二次救急1病院における高齢者救急医療の現状と今後の展望」「高齢化社会における大阪市中心部の二次救急1病院での救急医療の現状」「播種性血管内凝固症候群を合併した急性壊死性胆嚢炎に対してrTM投与および腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行し良好な経過を得た一例」など。

脊柱靱帯骨化症とは?

肩が痛い男性

脊柱靱帯骨化症とはどのような病気ですか?

脊柱靭帯骨化症とは、脊椎をつなぐ靭帯が肥厚し骨化する病気の総称です。脊椎とはいわゆる背骨のことで、この背骨はいくつかの靭帯によってつながっています。脊柱を連結する靭帯が厚みを増し硬くなることで周りにある組織を圧迫し、痛みやしびれといった様々な症状が現れるのが脊柱靭帯骨化症です。
痛みが出現する部位は骨化した靭帯の種類や部位によって異なりますが、特に多いのが後縦靭帯骨化症黄色靭帯骨化症の2つです。後縦靭帯と黄色靭帯は、どちらも脊柱管と呼ばれる椎骨でできた管の中に存在しています。脊柱管の中には脳から延長した中枢神経である脊髄が存在しているため、後縦靱帯と黄色靭帯が骨化することにより脊髄神経に関連した症状が現れるのが特徴です。
後縦靭帯骨化症と黄色靭帯骨化症は、どちらも国が定めた難病に指定されています。後縦靭帯骨化症(OPLL: ossification of posterior longitudinal ligaments)は、脊髄の前方にある薄いテープ状の後縦靭帯が骨化し脊髄を圧迫し、神経症状を引き起こすのが特徴です。
好発する部位は頚椎です。頚椎で骨化が起こった場合、首周辺の痛みから始まり徐々に痛みやしびれの範囲が広がっていきます。手足のしびれ・痛み・動かしにくさなどが特徴的な症状です。重症化した場合には、歩行困難・排尿障害・排便障害が引き起こされることもあります。
また、胸椎や腰椎で骨化が起きた場合に症状が現れるのは体幹や下肢です。下肢の痛み・しびれ・動かしにくさ・歩行障害がみられ、症状が進行すれば排尿障害や排便障害へと進行していきます。黄色靭帯骨化症(OYL: ossification of yellow ligaments)は、脊髄の後方にある膜状の黄色靭帯が硬く肥厚することで神経を圧迫する病気です。頚椎や腰椎で骨化が起こることは珍しく、多くは胸椎部分で骨化が起こります。主な症状は足のしびれや歩行障害です。頻尿や尿漏れといった排尿障害や排便障害が引き起こされることもあります。

脊柱靱帯骨化症でみられる症状を教えて下さい。

脊髄が圧迫されることにより、手足の痛みやしびれ・運動障害・排尿障害・排便障害などの神経症状がみられます。脊柱靭帯骨化症は障害される部位によって症状の出方が異なり、緩やかに少しずつ進行していくのが特徴です。例えば、頚椎では主に首や肩甲骨周辺から手足まで症状が広がります。胸椎や腰椎の場合には体幹や下肢に症状が現れます。

脊柱靱帯骨化症は何が原因で発症してしまうのでしょう?

ひとつの原因で発症するわけではなく、様々な要因が複雑に組み合わさって生じる疾患です。関連が示唆されているものとしては、遺伝的素因・性ホルモン異常・代謝異常・加齢・肥満・糖尿病・局所負荷などがあります。
遺伝子的素因としては、欧米に比べて、日本・台湾・中国・韓国などの東アジアでの発症が多く報告されています。また、家族歴との関連も特徴的です。必ず遺伝するわけではないものの遺伝子が発症に大きく関わっていることは明らかとなっています。

発症しやすい人の特徴などあれば教えて下さい。

脊柱靭帯骨化症は50代以降の中高年に発症しやすいといわれています。中には30~40代で発症するケースも珍しくはありません。また、後縦靭帯骨化症は頚椎の場合には2:1の割合で男性に多く、胸椎の場合には1:3の割合で女性に多く発症します。黄色靭帯骨化症では男女の差はみられません。
既往歴に関しては、糖尿病・肥満・女性ホルモン異常・カルシウム代謝異常などの患者さんでの発症が多く報告されています。遺伝的な素因も発症に関連しているため、家族が発症している場合には罹患する可能性が高くなります。また、一部に骨化がみられた場合、他の部位にも骨化巣が併発していることが多いので注意が必要です。

脊柱靱帯骨化症の受診目安と診断

指

脊柱靱帯骨化症はどのような症状がみられたら受診したら良いのでしょう?

圧迫された部位が頚椎の場合には、首や肩甲骨周辺の痛みから始まります。次第に手足にまで痛みやしびれが広がっていきます。胸椎や腰椎の場合に現れるのは下肢の症状です。足のしびれ・足に力が入らない・足が動かしにくい・歩きにくいなどの症状が特徴です。
痛みやしびれなどの異常を感じたら早めに受診するようにしましょう。脊柱靭帯骨化症は基本的には緩やかに症状が進行する病気ですが、何らかの衝撃により急激に悪化することもあります。

何科を受診したら良いですか?

脊柱靭帯骨化症を疑う症状がみられた場合には整形外科を受診しましょう。すでにしびれや感覚の異常がみられる場合や家族に脊柱靭帯硬化症を患っている人がいる場合には、より専門的な脊髄外科への受診もおすすめです。

脊柱靱帯骨化症はどのように診断するのか知りたいです。

まず初めに行うのは症状の聞き取りや神経症状の確認です。その後、レントゲン・CT・MRIで病巣の詳しい状態を確認していきます。これらの画像検査により、その後の治療方針を検討します。

検査内容が知りたいです。

まず第一に行うのはレントゲン検査です。レントゲン検査により靭帯の骨化部分を確認することができます。さらに、骨化した部分の広がり方などの詳しい状態を調べるために行うのがCT検査です。それに加えて、神経がどの程度圧迫されているかをMRI検査で把握していきます。検査により広範囲に複数の骨化巣が見つかることもあります。

脊柱靱帯骨化症の治療方法と注意点

肩が痛い女性

脊柱靱帯骨化症の治療方法はどのようなものがありますか?

軽度の場合には、神経の圧迫が進まないように固定するための装具を装着し、安静をはかるのが一般的です。また、患部に負担がかからないような生活動作の指導も行います。場合によっては、転倒の危険があるような激しいスポーツ・バイク・自転車などの使用を制限することが必要です。
痛みが強い場合には痛み止めのお薬で対応します。保存療法での効果は1か月以内に現れることがほとんどです。安静を保っても症状が改善しない場合や神経症状が強い場合には手術を検討することになるでしょう。
手術では骨化した靭帯を切除し、脊髄の圧迫を取り除きます。その後は脊椎を器具で固定することもあります。術式は骨化した部位や進行度によって様々です。しかし、どの手術も硬膜損傷や神経損傷といった危険なリスクが伴うことがある難しい手術となります。

脊柱靱帯骨化症は治療で完治しますか?

患部の安静を保って一時的に症状が改善しても、何らかの衝撃により神経症状が進んでしまうことがあります。長い時間をかけて少しずつ症状が進行していく場合もあれば、転倒などが引き金となり突然重症化してしまうこともあるのです。また、重症度が高い場合には手術をしても完全な回復が見込めない可能性もあります。

脊柱靱帯骨化症の治療期間や注意点などあれば教えて下さい。

脊柱靭帯骨化症の治療期間は、保存療法のみの場合には1か月、手術療法の場合には3か月以上を要します。また、一度症状が治まっても神経症状が進行すれば繰り返し治療を行っていく必要があります。
脊柱靭帯骨化症は、些細な刺激でも神経の圧迫が進み症状が急速に悪化してしまうことがある病気です。場合によっては手足に麻痺が残る可能性もありますので、転倒・振動・衝撃などには特に注意が必要です。

最後に、読者へメッセージをお願いします。

脊柱靭帯骨化症は脊髄症状が特徴の病気です。初期においては神経症状が現れないことが多く、病院を受診するかどうか迷ってしまうときもあるでしょう。
初期症状としては背筋の痛みや違和感として現れることもあります。それだけで病気を判断することは難しいですが、他の病気が隠れている可能性もあります。そのため、背筋や首の違和感を感じた時には放置せずに受診することが重要です。

編集部まとめ

女性
手足に痛み・しびれ・感覚障害といった神経症状が現れる脊柱靭帯骨化症についてご紹介しました。

脊柱靭帯骨化症の中でも、後縦靭帯骨化症と黄色靭帯骨化症の2つは難病にも指定されている病気です。

軽度の場合には保存療法が一般的で、強い神経症状がみられれば難易度の高い手術が必要となります。

また、重症化した場合には症状が回復しにくくなる可能性があります。手足の感覚に違和感を感じることがあれば、できるだけ早めに専門機関へ受診することが大切です。

この記事の監修医師