「ブレインフォグ」を発症すると現れる症状・原因はご存知ですか?医師が監修!
新型コロナウイルス関連のニュースなどで注目を浴びるようになった症状に「ブレインフォグ」というものがあります。
新型コロナウイルスに感染し、発症後に現れる後遺症の1つとして紹介されるのですが、実は新型コロナウイルスの後遺症の症状だけがブレインフォグというわけではありません。
数ある病気の症状の中にブレインフォグと呼ばれるものがあるのです。思わぬ形で脚光を浴びることになったブレインフォグについて、どのような病気の症状として現れるのか調べていきましょう。
監修医師:
郷 正憲(徳島赤十字病院)
目次 -INDEX-
ブレインフォグとは?
ブレインフォグはどのような病気でしょうか?
なおブレインフォグという言葉は患者さんの主観的な状態を示す用語であり、病体生理学的には確立したものではありません。またブレインフォグは病名でもないため、診断結果では別の病名となります。
発症する原因を教えてください。
その他の原因として考えられるのは、脳疲労といった心因性のものが多くなります。情報社会で暮らすうちに氾濫した情報の処理に対応できなくなってしまうのが脳疲労といわれるものです。
ただしブレインフォグに該当する症状とは幅広く存在するので、不規則な生活・生理・更年期なども原因として含まれる場合もあるでしょう。
ストレスも原因になるのでしょうか?
脳疲労は感覚的にだるくて何事も面倒になってしまうような状態になることが特徴です。具体的には寝ても疲れが取れない・肩こりがひどい・やる気が出ないなどといった症状が現れるでしょう。
また不安や恐怖に敏感になる・集中が続かない・感情が抑えられないという症状も脳疲労の代表的なものです。これらは日常によくある症状ですが、ブレインフォグの原因になる可能性があるでしょう。こうした日常的な症状と合わせ、生活上でのストレスはブレインフォグの原因となることが知られてきています。
どのような症状がみられますか?
- 思考力の低下によって頭がぼーっとする
- 睡眠の質の低下による眠気が続く感覚
- 目の前のことに集中できない
- 様々な考えが混乱する
- 頻繁な物忘れをする認知障害
- 言いたいことが口から出てこなくなり、言葉に詰まる
こうした症状のうち長期にわたって頭がぼーっとするような場合、方向感覚を失ってしまうことも報告されています。
ブレインフォグを引き起こす病気
新型コロナウイルスの後遺症で発症する場合もあると聞きましたが…。
新型コロナウイルスの後遺症の1つとして認識されるようになったのは、長引く後遺症がインフルエンザなどと違う症状だったのも理由となったのでしょう。
なお新型コロナウイルスの後遺症として、ブレインフォグは神経障害の1つとして分類されています。
ブレインフォグを引き起こす病気を教えてください。
- 慢性疲労症候群
- 不眠症や過眠症などの睡眠障害
- 月経前症候群(PMS)・月経前不快気分障害(PMDD)
- 注意欠陥多動性障害(ADHD)
- 自閉症スペクトラム・アスペルガー症候群(ASD)
- 適応障害
- 不安障害
- うつ病
- 双極性障害
- アルコールや薬物などの物質関連障害
これらはブレインフォグを引き起こすとされる病気の代表的なものですが、この他にも同様の症状がみられる病気もあります。
ブレインフォグは精神疾患と関係があるのでしょうか?
また頭がぼーっとする・眠気が続く感覚・目の前のことに集中できないといったブレインフォグの症状は多くの精神疾患でも見受けられる症状です。脳や精神に負担がかかることがブレインフォグの原因となることが多いのも、精神疾患の発症と共通しています。
ブレインフォグは何科を受診すれば良いでしょうか?
ただブレインフォグを自身で判断することは難しいと思われますので、まずはかかりつけの医師に相談してみてください。なおブレインフォグ専門外来の病院もあります。可能であるならブレインフォグ専門外来で受診されると適切な治療を受けることができるでしょう。
ブレインフォグの治療と注意点
治療方法を教えてください。
新型コロナウイルスの後遺症として注目された上にネットなどでの情報により、ブレインフォグに対して免疫療法を希望される場合もあります。
しかし保険適応の点・治療効果が未評価いう点・副作用による症状の悪化の可能性などの点から、医療サイドでは慎重な対応をされることになるでしょう。
ブレインフォグが治るまでの期間を教えてください。
どんな人にも症状が出てしまう可能性のある新型コロばウイルスの後遺症によるブレインフォグを例にすると、新型コロナウイルスの発症後90〜180日で36.55%の患者さんが何らかの症状が残っているという結果も出ています。
新型コロナウイルスの後遺症は、ワクチンの接種や治療法など医療の点・感染者の年齢や個人差の点など様々な因子が関連して、ブレインフォグが治るまでの期間に大きく差異が認められます。
日常生活での注意点はありますか?
しかし症状を持つ本人が注意しようとしても思うようにいかないことも多いでしょう。今まで普通にできたことができなくなることが多いので、より注意しようとしても、集中できない・頭がはっきりしないという状況であるため難しいかもしれません。
そういった場合は周りの人の助けが必要になるでしょう。ブレインフォグの症状に歯がゆい思いや悔しさを感じるかもしれませんが、時間をかけてリハビリテーションしていく必要もあります。それによって生じるストレスがないように周りの人たちが協力することも必要でしょう。
最後に、読者へメッセージをお願いします。
もしも自分が新型コロナウイルスに感染し、ブレインフォグの症状が出て周りの人からの助けが必要になったとしても、それに対して気に病むことはあまりしないようにしたいものです。
ブレインフォグが治った後で自分が人の助けになることがあるかもしれません。その時に自分の体験や経験が役立つ時が来るでしょう。
編集部まとめ
新型コロナウイルスの感染により、その後遺症として注目されることになったブレインフォグという症状は、その原因も症状も多岐にわたっています。
それだけに詳しいことがまだ不明な点もあり、今後の解明が待たれる症状といえるでしょう。特に新型コロナウイルスの感染による後遺症が現れる現状ではその解明が早くできることを望みたいところです。
ブレインフォグの症状を持つ人にとっては睡眠の質の向上など生活の改善などにも注意しなければなりませんが、ストレスなどを軽減し症状の緩和と早い治癒を願っています。