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「化膿性汗腺炎」の症状・粉瘤との違い・発症しやすい人の特徴はご存知ですか?

 更新日:2023/03/27
「化膿性汗腺炎」の症状・粉瘤との違い・発症しやすい人の特徴はご存知ですか?

わきやおしりなどのデリケートな部分に繰り返し炎症が起こる「化膿性汗腺炎」について、気になる方も多いのではないでしょうか。

「わきの下やおしりに繰り返しぶつぶつができる」「皮膚が硬くなって膿を含んでいる」という症状がある人は、化膿性汗腺炎かもしれません。

この病気は、一定期間の間に、良くなったり悪くなったりをくり返すのが特徴です。重症化すると、できもの同士が繋がり膿のトンネルを形成することもあります。

今回は、皮下に硬いしこりができる粉瘤との違いや発症しやすい人の特徴・治療・予防方法について詳しく解説していきます。

化膿性汗腺炎と似た皮膚疾患もありますので、思い当たる症状があれば早めに受診すると安心です。

竹内 想

監修医師
竹内 想(名古屋大学医学部附属病院)

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名古屋大学医学部附属病院にて勤務。国立大学医学部を卒業後、市中病院にて内科・救急・在宅診療など含めた診療経験を積む。専門領域は専門は皮膚・美容皮膚、一般内科・形成外科・美容外科にも知見。

化膿性汗腺炎はどのような病気?

臀部を触る女性

化膿性汗腺炎はどのような病気でしょうか?

化膿性汗腺炎は、わき・太腿の付け根・おしりなどに繰り返し赤いできものが発生する慢性的な皮膚疾患です。アポクリン汗腺と呼ばれる汗を出す器官や毛包と呼ばれる皮膚の内部で、毛根を包んでいる組織に炎症が起こることが原因といわれています。
肥満や喫煙などの環境因子と遺伝因子が大きく関係しているというデータがあります。しかし、炎症がなぜ引き起こされるかについての詳しい原因はまだ明らかになっていません。
女性については、月経前に悪化しやすいというデータが報告されています。逆に妊娠中・授乳中・閉経後は症状が改善することが多いのです。これらのことから、ホルモンが関係している可能性も指摘されています。
また非常に稀なケースですが、長期的に皮膚が炎症を繰り返すことにより有棘細胞癌を引き起こすことがあります。症状があれば、放置せずに早めに治療を開始することが大切です。

化膿性汗腺炎は難病ですか?

化膿性汗腺炎は難病に指定されているわけではありません。しかし、何度も症状が繰り返す難治性疾患ではあるため、治療期間が長期に及ぶこともあります。
薬による治療に加え、生活習慣の改善などを心がけながら付き合っていくことが必要です。

症状を教えてください。

わき・乳輪・太腿の付け根・おしり・外陰部などに赤いぶつぶつが複数でき、ゆっくりと炎症を繰り返します。できものの部分が硬いしこりのようになる「結節」や内部に膿が溜まる「膿瘍」が形成されるのが特徴です。一度炎症が治まった部分は瘢痕化し、皮膚が硬くなります。
重症化するとできもの同士が蜘蛛の巣のように繋がりトンネルを形成し、「瘻孔」となります。膿や血液が外に流れ出ている状態では、悪臭を伴うのも特徴のひとつです。

粉瘤との違いを教えてください。

粉瘤とは、皮膚の内側にできた袋の中に角質や皮脂などが溜まってできた良性の腫瘍のことです。化膿性汗腺炎とは異なり、顔や背中など、身体の様々な部分にできます。基本的には炎症を起こして赤く腫れることはなく、皮膚の内部でしこりがだんだんと大きくなっていくのが特徴です。
また、粉瘤には中央に開口部があることが多く、強く押すと黄色い物質が出てくることがあります。ただし、これは膿ではなく、袋の中に溜まった老廃物なので、膿のように悪臭を伴うことはありません。

発症しやすい人の特徴はありますか?

20代~30代男性に多く発症します。日本での男女比は、2~3:1です。家族歴が関係しているというデータもあります。
また、化膿性汗腺炎を悪化させる原因として肥満喫煙が挙げられます。日本では発症患者の15~16%は肥満であると報告されており、メタボリック症候群の人では発症時期が早いのが特徴です。
さらに、日本の化膿性汗腺炎患者の約30%は喫煙者です。特に、紙タバコは重症度に関連することが明らかになっています。

化膿性汗腺炎の治療と手術

パソコンの前で話す医師

化膿性汗腺炎はどのように診断されますか?

一般的には、問診と視診により判断が可能です。ただし、症状がよく似た皮膚疾患や感染症もあるため鑑別が必要となります。患部を確認しただけでは判断が付きにくい場合、皮膚の一部を採取して顕微鏡で病変部分を確認します。
以下の3つは、化膿性汗腺炎の重症度の評価によく用いられる方法です。

  • PGA (Physician’s global assessment for HS: PGA)
    炎症性の結節・非炎症性の結節・膿瘍・瘻孔の数で評価します。
  • Hurley病期分類
    患部の状態により、Ⅰ(軽症)・Ⅱ(中等症)・Ⅲ(重症)の3段階で評価します。膿を含んだできものが独立して存在する場合にはⅠ(軽症)です。
    一度炎症が落ち着いたのちに皮膚が硬くなり、内部に膿のトンネルが形成された場合にはⅡ(中等症)となります。さらに、一度炎症が治まって瘢痕化した内部が膿を含んでトンネルのようになる瘻孔が複数つながり、炎症や膿が出ている状態の場合にはⅢ(重症)という評価です。
  • IHS4 (International hidradenitis suppurativa 4)
    結節・膿瘍・瘻孔・瘻管の数により評価します。3点以下の場合は軽症、4~10点の場合は中等症、11点以上で重症となります。

治療方法を教えてください。

症状が軽い場合には、抗菌作用のある塗り薬飲み薬での治療が一般的です。中等症~重症の場合には、炎症を抑えるための皮下注射を行います。
また、生理不順や高アンドロゲン血症などホルモン異常のある女性は抗アンドロゲン薬を処方します。肥満や喫煙など、化膿性汗腺炎を悪化させるリスクが高い患者に対しては減量や禁煙の指導も必要です。
重症の場合には、「アダリムマブ」という薬を用いることもあります。1~2週間ごとに継続投与を行うことで結節や膿瘍の数を減らす効果を期待できる薬です。こちらの薬は保険適用となります。
症状を悪化させないために、薬物治療と合わせて生活改善を心がけていきましょう。

手術が必要な場合もあるのでしょうか?

重症化した場合には手術が必要です。それぞれの膿瘍を切開したり病変部分の上を筒状のメスでくり抜いたりして膿を外に排出させる方法があります。こちらの処置は身体への負担も少ないですが再発することも多い方法です。
その他には、炎症をくり返す範囲や重症度に応じて、部分切開または広範囲での切除が行われます。切除した部分に健康な皮膚を移植する「植皮」が行われることもあります。また、外科的な手術よりも負担が少ないレーザー療法が用いられるケースもあります。

化膿性汗腺炎の予後と予防

健康な生活

化膿性汗腺炎は完治しますか?

適切な治療を行うことにより、症状を改善させることが可能です。しかし、一度症状が改善しても炎症が再燃し、良くなったり悪くなったりを繰り返すことも多い病気です。
また、化膿性汗腺炎と正確に診断されるまでに時間がかかってしまうケースもあります。適切な治療の開始が遅れてしまうことにより症状の悪化に繋がることもありますので注意が必要です。
デリケートな部分に症状が出ることから受診をためらってしまう人も多いですが、できる限り早めに受診することをおすすめします。

自然治癒することもあるのでしょうか?

化膿性皮膚炎が自然治癒する可能性が無いとは言い切れません。しかし、一度症状が改善しても半年の間に2回以上炎症をくり返すことが化膿性汗腺炎の特徴的な所見です。
自然治癒するかもしれないと思って放置していると重症化してしまう可能性もあります。また、発症から完治するまでに5年以上もかかったケースも報告されています。
気になる症状があれば早めに皮膚科へ相談するようにしましょう。

予防する方法を教えてください。

化膿性汗腺炎の発症原因は明らかになってはいないものの、肥満や喫煙との関連が認められています。肥満傾向の人は減量を行うことも発症の予防に繋がります。喫煙の頻度が高い人は禁煙するようにしましょう。
また、化膿性汗腺炎は、わきやおしりなどの衣服で擦れやすい部分に起こりやすいのも特徴的です。摩擦による刺激が関係していることも考えられるため、締め付けの少ない衣服を着用すると良いでしょう。長時間座りっぱなしのオフィスワーカーやドライバーの人は適度に休憩を挟むのがおすすめです。
再発の予防としては、減量や禁煙などの他に抗菌・抗炎症作用をもつジアミノジフェニルスルホン(DDS)という薬を継続的に飲み続ける方法もあります。

最後に、読者へメッセージをお願いします。

化膿性汗腺炎は、炎症が肛門周囲や外陰部などデリケートな部分に及ぶことも多い病気です。そのため、性生活の障害やうつを併発する人も多く報告されています。
なかなか受診に踏み切れない人も多いかもしれませんが、軽症の場合には塗り薬と飲み薬で治療が可能です。症状で悩んでいる人はひとりで抱え込まずに、まずは相談してみてください。

編集部まとめ

パソコンで調べ物をする女性
今回は、わきやおしりに赤いぶつぶつができ、時には膿を伴うこともある化膿性汗腺炎について解説しました。

症状が出やすい場所がデリケートな部位であるため、なかなか人に相談しにくい病気でもあります。

しかし、重症化すると炎症部分の痛みや臭いにより日常生活に支障が出てしまうこともあるので注意が必要です。

皮膚のできものは、化膿性汗腺炎以外の皮膚疾患である可能性もあります。気になる症状があれば、できるだけ早めに受診するように心がけましょう。

この記事の監修医師