粉瘤の日帰り手術、治療跡がより目立たなくなるのは「へそ抜き法(くり抜き法)」という結論
コブの一種とも言える「粉瘤(ふんりゅう)」。かつては切開して中身を出し、その後に縫合する流れでした。しかし、今では「へそ抜き法(くり抜き法)」という術式が選べるようになりました。そこで、粉瘤治療の最前線について、「目黒駅前アキクリニック」の秋山先生に解説をお願いしてみました。
監修医師:
秋山 俊洋(目黒駅前アキクリニック 院長)
旭川医科大学医学部医学科卒業。順天堂大学医学部大学院医学研究科修了。順天堂大学関連の医療機関を中心に、皮膚科診療の経験を積む。2016年、東京都品川区に「目黒駅前アキクリニック」を開院。自分自身がニキビやアトピー性皮膚炎で悩んでいた思いを診療に反映させている。医学博士。日本皮膚科学会専門医。日本美容皮膚科学会、日本抗加齢美容医療学会、日本抗加齢医学会、日本医学脱毛学会の各会員。
粉瘤の治療法について
編集部
顔や背中などに「赤いできもの」があって気になります。
秋山先生
もしかしたら「粉瘤」という症状かもしれませんね。できもののなかでも、粉瘤は比較的顕著に生じる症状です。その構造は、皮膚の“外側”の組織がへこんだ袋状になっています。そして、袋の中にたまった老廃物などに菌が感染したり、疲労が原因で異物反応を起こしたりすると、赤く腫れてきます。また、ニキビだと思っていたら、その中の1つが粉瘤だったというケースもよくあります。
編集部
皮膚の内部ではなく、外側にたまっているのですね?
秋山先生
粉瘤であれば、じつは外側です。老廃物などによって炎症を起こし、独特の臭いのある膿(うみ)がたまっている場合もあります。見た目の大きさは、ニキビによく似た小さなものから、10cm近くある大きなしこりや腫れまで様々です。
編集部
皮膚の外側だとしたら、自分でつぶして老廃物や膿を出せそうですが?
秋山先生
ご自身でつぶすと再発するだけでなく、感染が悪化したり、痕が残ったり、黒ずんだりしてしまうことがあります。袋が残っている以上、いずれ同じことの繰り返しになってしまいますよね。他方、小さいからといって放置していると、腫れを繰り返して、だんだん大きなしこりになるケースもあります。やはり、腫れやしこりが小さなうちに外科手術をするのがおすすめです。小さなうちに対処するほど、痕も目立ちにくくなります。
編集部
手術して、袋ごと取り去るわけですか?
秋山先生
はい。痛みの少ない簡単な手術なので、日帰りが可能となっています。ただし、一般的な切開術で進めると、袋の直径よりも大きな傷跡を残しかねません。患部がお顔の場合、切開術で進めるべきかどうか慎重に判断するべきでしょう。
編集部
切開以外にも、手術方法があるのでしょうか?
秋山先生
あります。「へそ抜き法(くり抜き法)」といって、直径1.5~8mmほどの器具により、小さな穴から中に入っている老廃物と老廃物をため込む原因になっていた袋を取り出す方法です。その後ですが、縫合してしまうと再び細菌を皮膚の中に閉じ込めてしまう可能性があるので、自然治癒を待ちます。局所麻酔をするので、手術中の痛みはほとんどありません。
「へそ抜き法(くり抜き法)」とは
編集部
切開術の方が適した症例があったら教えてください。
秋山先生
大きく飛び出た粉瘤に「へそ抜き法(くり抜き法)」を用いると、かきだした後の皮膚がたるむので、切開術の適応となります。また、繰り返し炎症を起こして、周囲の組織と癒着してしまった場合も、切開術が好ましいですね。
編集部
例外を除けば、基本は「へそ抜き法(くり抜き法)」で進めるということですか?
秋山先生
当院では、炎症を起こしたケースも含めて、ほぼすべての症例をへそ抜き法でおこない、良好な治療成績に結びつけています。とくに頭皮にできた粉瘤の場合、髪の毛をそらなくていい「へそ抜き法(くり抜き法)」の方が、予後の見た目はいいですね。
編集部
双方の治療方法で、極端な費用差はありますか?
秋山先生
まず、双方とも保険の適用が可能な治療方法です。ですから、費用差はないと考えていただいて結構です。また、費用は治療方法ではなく、粉瘤の部位や大きさで決まります。
手術の流れについて
編集部
念のため、日帰り手術の流れについても教えてください。
秋山先生
まずは、粉瘤なのかほかの病気なのかを診断します。当院の場合、粉瘤であれば予約なしでも当日の手術が可能です。問診や診察の時間を入れても、合計1時間くらいで終わります。当日手術希望の方がたくさんいらっしゃる場合は待ち時間が生じるので、合計2~3時間となることもあります。手術そのものの時間は、局所麻酔を入れても5~15分程度です。もちろん、別の日に手術を予約していただいても構いません。
編集部
手術後の注意点はありますか?
秋山先生
手術した箇所にガーゼやテープを貼りますので、そこだけは濡らさないようにしてください。シャワーなら、手術の翌日から可能です。ただし、別途お渡しした絆創膏で、再診までの1~2週間ほど手術痕を保護してください。なお、頭にできた粉瘤は例外です。手術後はガーゼなど貼らずに、止血が確認できたらそのままご帰宅いただけますし、洗髪も翌朝から可能です。
編集部
1~2週間後の再診が必要とのことでしたが、予後のチェックをするのですか?
秋山先生
傷のチェックと消毒をします。切開術で縫った場合には抜糸をします。また、念のため、取り出した組織を病理検査に提出しています。皮膚がんなどの可能性がないとも限らないからです。ですから、確定診断が付くのは、再診時となります。
編集部
手術跡が目立たなくなるまで、どのくらい期間をみておくべきでしょう?
秋山先生
赤みや傷痕は日を追うほどに馴染んで目立たなくなりますが、個人差や感じ方の違いはありますよね。心配であれば、実際の症例写真を見ていただきます。ニキビ跡でも消えるまで半年くらいかかることがあるので、手術後でもそのくらいかかると思っておいてください。
編集部まとめ
切開術には「縫合」というプロセスが伴います。他方、「へそ抜き法(くり抜き法)」では、元からある小さな穴から、その中身を取り出す方法とのこと。そこに、侵襲度の違いが現れるとのことでした。また、保険で認められた手術とはいえ手作業ですから、担当医師の経験や技量で左右されることも覚えておきましょう。
医院情報
所在地 | 〒141-0021 東京都品川区上大崎2-27-3 目黒駅前山田ビル5・6階 |
アクセス | JR「目黒駅」 徒歩1分 |
診療科目 | 皮膚科、小児皮膚科、美容皮膚科、形成外科 |