「仙腸関節痛」になると現れる症状・原因はご存知ですか?医師が監修!
厚生労働省が実施した国民生活基礎調査(2019年)有訴者率(病気やけが等で自覚症状を持つ者の割合)によると、腰痛は男性では第1位、女性では肩こりに次ぐ第2位でした。
しかし、一言で腰痛といっても様々で、部位・疾患によって治療法・リハビリ内容も変わってきます。
仙腸関節痛というのは聞きなれない病名かもしれませんが腰痛の一種であり、あなたが今抱えている痛みは、もしかするとそれに分類されるかもしれません。
こちらでは仙腸関節痛の症状・原因・検査・治療・リハビリの内容についてもご紹介致しますので、ご自身の症状と照らし合わせてご覧ください。
監修医師:
郷 正憲(徳島赤十字病院)
目次 -INDEX-
仙腸関節痛の原因と症状
仙腸関節痛はどのような病気でしょうか?
その仙腸関節に様々な原因で負荷がかかって運動制限などの障害が起こり、痛みが出てくることを仙腸関節痛といいます。陽痛における仙腸関節障害(疼痛・炎症含む)の割合は15~30%を占めているという報告もあり、私たちにとって身近な病気です。
どのような症状がありますか?
- 仰向けで寝ることができない
- 痛みのある方を下にして寝ることができない
- 長い時間椅子に座れない(正座では楽なことが多い)
- 痛みのある方の臀部を浮かせて座ってしまう
- 動き始め・歩き始めが痛く、徐々に楽になる
痛みの部位としては、仙腸関節を中心とした腰部・臀部・鼠径部(足の付け根)・下腿(膝から足首まで)・足部など幅広く、また痛みだけではなく下肢に痺れが出現することもあります。そしてこの病気の特徴は、症状が片側に出現するということです。
これらの症状は、腰椎の疾患(腰部脊柱管狭窄症・腰椎椎間板ヘルニアなど)や坐骨神経痛と似ているため、注意が必要になります。両者の大きな違いを挙げるとすると、腰椎疾患では立位や歩行で痛みが増強して座位になると軽減するのに対し、仙腸関節痛は立位や歩行の始めは痛みを伴いますが徐々に落ち着き、逆に座位で痛みが増すということです。
発症する原因を教えてください。
どのような人がなりやすいのでしょうか?
妊娠・出産後を経験した女性に多い腰痛だといわれてきましたが、実は老若男女に起こりえる病気であることがお分かりいただけると思います。
仙腸関節痛の受診と治療
仙腸関節痛を疑う場合は何科を受診すれば良いでしょうか?
しかし、画像検査での発見が難しいため、見逃されやすく注意が必要です。仙腸関節部を含む臀部の痛みに関して、患者さんは腰痛として訴えることがありますが、医師は腰痛の認識がない場合もあるためしっかりと経過と症状を伝えることが大切になります。
仙腸関節痛はどのような検査で診断されるのでしょうか?
そして、仙腸関節痛の診断で時に重要とされているのが、患者さん自身の症状と触診です。検査・診断には以下の方法が用いられます。
- ワンフィンガーテスト:患者さん自身の人差し指で痛みの部位を指し示してもらう方法。日常生活の中で、どのような姿勢でどこが痛むのか示してもらう。
- 仙腸関節への疼痛誘発テスト:医師の手によって仙腸関節や骨盤の前方部分(鼠径部)を圧迫する方法。圧迫することで捻じれが増強し、痛みが増すため診断の補助となる。
- 仙腸関節ブロック:最終的に仙腸関節からくる痛みが疑われれば、仙腸関節ブロック(局所麻酔を使った痛み止め注射)を行い、効果のある場合は仙腸関節痛と診断される。
治療方法について教えてください。
- 安静:負荷のかかる動作を控えて安静にしてもらうことで痛みの沈静化を図る。(これは長期間の安静が良いということではなく一定期間である)
- 鎮痛剤の使用:疼痛の程度・状況により選択される。
- 骨盤ゴムベルト:骨盤周囲を抑えることで、仙腸関節痛を一時的に抑える効果がある。仕事復帰等の再発予防にも使われる。
これらの治療で改善がみられない場合には、以下の方法が選択されることもあります。
- 仙腸関節ブロック:仙腸関節に局所麻酔を注射し、痛みの軽減を図る。
- AKA(関節運動学的アプローチ)博田法:素手で関節の動きを改善する方法。これは行っている医療機関が少ないことや、技術者によって治療効果に差が生じるという問題点がある。
- 仙腸関節固定術:長期の保存療法でも効果がなく、日常生活に支障をきたしてしまう場合に選択される手術。
完治するまでの期間を教えてください。
1~2回の治療で完治する方もいれば、年単位で長期の治療が必要な方もいます。治療と同時に、日常生活の中で、引き金となっている動作をどれくらい避けることができるかで完治までの期間も大きく変わります。仙腸関節に負担がかかり続けて痛みを慢性化させてしまわないことが重要です。
仙腸関節痛のリハビリ
仙腸関節痛のリハビリについて教えてください。
- 腰から臀部を伸ばす:仰向けで片膝を抱え、ゆっくりと自分の胸に近づける。反対側の足の膝は床に押し付ける。さらに、抱えた片膝を反対へひねることで臀部の筋肉を伸ばす。
- 太もも(前面)を伸ばす:横向きで踵を臀部につけるようにゆっくりと膝を曲げる。腰を反らないように注意する。
- 太もも(後面)を伸ばす:立った状態で片足を膝の高さほどの段差や椅子に乗せてて膝を曲げ、乗せていない側の太もも後面を伸ばす。股関節のストレッチにもなる。
他にも足首の曲げ伸ばし(底背屈運動)・膝の屈伸運動・壁を使ったスクワット・つま先立ち・骨盤周囲や腰背部を中心とした筋力強化訓練等、患者さんの状態に応じて医師・理学療法士等でそのメニューを決めます。
仙腸関節痛と診断された場合にやってはいけないことはありますか?
また、自己流のストレッチ等ではなく、必ず医師や理学療法士等の専門家の指導の下で運動療法を行うようにしてください。
最後に、読者へメッセージをお願いします。
編集部まとめ
仙腸関節痛について詳しくまとめました。仙腸関節痛を引き起こしてしまう原因をしっかり知っておくことで、発症を防ぐことも十分にできます。
日常生活における動作の1つ1つをもう一度見直して、痛みの原因を取り除いていきましょう。
また症状が出た場合は、どこにでもある腰痛だと放置せずに早めに受診し、早期診断・適切な治療を受けて慢性化・難治化しないようにしましょう。