「ギランバレー症候群」の症状・原因はご存知ですか?
ギランバレー症候群とは、風邪・胃腸炎などのウイルス感染をきっかけに起こる病気です。進行性の病気なので、重症化すると命に危険が及ぶこともあります。
ギランバレー症候群は、体を動かす神経・感覚を伝える神経が障害される病気で、手足の力の入りにくさ・しびれなどの症状から見つかるケースが多い病気です。
そんな誰にでも起こりうる、ギランバレー症候群の症状・原因について解説します。ギランバレー症候群の診断方法・治療方法・気をつけることも紹介しています。
監修医師:
五藤 良将(医師)
目次 -INDEX-
ギランバレー症候群の症状と原因
ギランバレー症候群はどのような病気ですか?
- ギランバレー症候群は、自己免疫性の末梢神経障害です。体を動かす運動神経・感覚を伝える感覚神経に障害が起こり、手足の力の入りにくさ・しびれがみられます。
- ギランバレー症候群の原因は、約70%が風邪・胃腸炎などのウイルス感染です。また、自己免疫性の病気であり、ウイルスを攻撃する免疫機能が誤って自分の体を攻撃してしまうこともあります。
- ギランバレー症候群は国内での発症率が1.15人(人口10万人あたり)と稀な病気で、成人男性に多いと報告されています。
症状について教えてください。
- ギランバレー症候群の主な症状は以下の通りです。
- 手足のしびれ
- 筋力低下・脱力感
- ギランバレー症候群は、手足のしびれ・左右対称の筋力低下がみられます。いわゆる手足が麻痺している状態です。
- 子どもの場合は、手足のしびれを痛みとして訴えることもあるので注意してください。
- ギランバレー症候群は、これらの手足のしびれ・左右対称の筋力低下から症状が進行する病気です。
- 「腕が上がりにくい」「階段を登るのがしんどい」「椅子から立ち上がりにくい」など、日に日に生活を送るのが難しくなります。
- 手足の症状だけでなく脳から伝わる末梢神経が障害されると、顔の筋肉が動かしにくくなったり、物が二重に見えたり、飲み込みにくさを感じるようになります。
- ギランバレー症候群の症状は、4~6週かけてピークに達し、その後はゆっくり回復するのが一般的な経過です。
重症化するとどんな合併症が起こりますか?
- ギランバレー症候群は重症化すると、呼吸筋が麻痺し、呼吸困難になることもあります。
- 呼吸困難から人工呼吸器が必要となり、集中治療室で治療を受ける場合もあります。
- 他にも「体に力が入らず身動きが取れない」「飲み込みにくさから食事が取れない」などの症状が続くと、二次的に栄養障害・脱水を招き、命に関わることがあるので注意が必要です。
原因は何ですか?
- ギランバレー症候群の原因は、上気道感染・カンピロバクター感染などのウイルス感染症を契機に発症することがほとんどです。
- 数日~4週間前に風邪を引いた、もしくは胃腸炎になった方は注意が必要です。特に子どもの場合は、上気道感染を契機に発症することが多いと報告されています。
- ギランバレー症候群の原因のうち、約70%が感染症による発症ですが、ワクチン接種・手術などが原因となっている報告もあります。
後遺症はあるのでしょうか?
- ほとんどの方が後遺症を残さずに、元の状態まで回復しています。
- しかし、人工呼吸器で治療を受けるほど重症化した患者さんを含む約2割の患者さんに後遺症が残っています。
ギランバレー症候群の診断と治療
ギランバレー症候群の診断はどのように行いますか?
- まずは問診・診察を行います。問診・診察からギランバレー症候群が疑わしい場合は、血液検査・髄液検査・神経伝導検査などの検査を行い総合的に診断します。
- 中には、大きな病院でないと受けられない検査もあるので、入院して詳しく検査するのが一般的です。
- 【問診・診察】
- 「1ヶ月前から数日前までに体調を崩していないか」「いつ頃からどんな症状が現れたか」などを問診します。これまでの生活と比べて、少しでも変わったことがあればしっかり伝えましょう。
- 【血液検査】
- 血液検査を行う理由は、ギランバレー症候群にみられる抗ガングリオシド抗体の有無を調べるためです。ギランバレー症候群のうち60%で、抗ガングリオシド抗体が検出されます。
- 抗ガングリオシド抗体は、ギランバレー症候群の原因となるウイルスにくっついている糖鎖という物質に対する抗体のことです。この抗ガングリオシド抗体が、自己免疫性の末梢神経を障害していると報告されています。
- 【脳脊髄液検査】
- 脳脊髄液検査は、ベッド上で横向きに寝て、局所麻酔下で行います。腰椎から穿刺して、脳脊髄液を採取します。
- 脳脊髄液検査の目的は、脳脊髄液に含まれる蛋白と細胞数を検査するためです。蛋白細胞乖離といって、蛋白は増加して細胞数は変わらないことが、ギランバレー症候群の診断に繋がります。
- 【神経伝導検査】
- 神経伝導検査は、皮膚の上から刺激を加えて末梢神経の伝わり方を記録する検査です。ギランバレー症候群では、末梢神経の伝導速度が低下します。神経の伝わり方を調べるために、筋電図検査を行う場合もあります。
治療法を教えてください。
- ギランバレー症候群の治療は、免疫グロブリン大量療法もしくは血漿交換療法を行います。
- 基本的には、身体への負担が少ない免疫グロブリン大量療法が第一選択です。免疫グロブリン大量療法は、1日に1回、5日間連続で点滴します。
- それでも症状が改善しない場合は、2回目の免疫グロブリン大量療法をすることも選択肢の一つです。また、入院加療中の患者さんが、機能回復・社会復帰できるようにリハビリも行います。
必ず入院が必要な疾患と聞きましたが…
- ギランバレー症候群は入院が必要です。
- 理由はいくつかありますが、ギランバレー症候群は進行性で、重篤な症状が出現した時に手遅れにならないようにするためです。
- また、ギランバレー症候群の主な治療である免疫グロブリン大量療法は、5日間連続で点滴投与されます。
- 点滴後に起こる副作用の管理・治療の効果判定をする必要もあり入院加療となります。
ギランバレー症候群で気をつけること
ギランバレー症候群は完治する病気ですか?
- ギランバレー症候群は、筋力低下などの症状が出現してから4~6週でピークに達し、ゆっくりと回復に向かいます。
- 完治することがほとんどですが、約2割の患者さんに後遺症が残っています。
再発の可能性はありますか?
- ギランバレー症候群が再発することは稀です。
- しかし、完全に回復した後に筋力低下などの症状が急に出現する場合もあります。
予防法があれば知りたいです。
- ギランバレー症候群は、上気道感染などのウイルス感染を契機に発症することがほとんどです。
- 風邪を引かない・胃腸炎にならないために、日頃から手洗い・うがいなどの感染対策を徹底しましょう。
- ギランバレー症候群の治療が遅れると、様々な合併症を引き起こし、命に関わる場合があるので、症状があれば早めに医療機関を受診してください。
最後に、読者へメッセージをお願いします。
- 今回の記事を読んで、ギランバレー症候群かも?と心配に思った方は、まずはお近くの脳神経内科を受診しましょう。
- ギランバレー症候群以外にも、末梢神経障害を引き起こす病気や筋力低下が起こる病気がいくつかあります。症状をみて必要があれば、大きな病院へ繋いでもらえます。
- また、ギランバレー症候群を予防するためにも、日頃から手洗い・うがいなどの感染対策を徹底しましょう。
編集部まとめ
ギランバレー症候群は、自己免疫性の末梢神経障害です。風邪・胃腸炎などのウイルス感染をきっかけに、手足のしびれ・筋力低下で発症し、進行性の経過をたどります。
ギランバレー症候群は、誰にでも起こりうる病気で、重症化すると命に関わります。ギランバレー症候群を予防するため、手洗い・うがいなどの感染対策を徹底しましょう。
入院して治療を受ければ、4~6週以降に回復し、元の生活に戻れる病気です。今回の記事を読んで、ギランバレー症候群に当てはまる症状がある方は、お近くの脳神経内科の受診をおすすめします。
参考文献