「血行障害」を発症する原因はご存知ですか?医師が監修!
更新日:2023/03/27
血液の流れが滞り血管が狭くなるなどの障害を「血行障害」と呼びます。血行障害は、実は動脈硬化と切っても切り離せない関係にあるのです。
では血行障害になるとどんな症状が起きるのでしょうか?治療方法はあるのでしょうか?
ここでは、血行障害の起こる部位・症状・原因について解説します。また、血行障害の治療方法や予防方法についてもご紹介します。
監修医師:
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)
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1991年兵庫医科大学卒業。医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター所属。米国内科学会上席会員 日本内科学会総合内科専門医。日本消化器内視鏡学会学術評議員・指導医・専門医。日本消化器病学会本部評議員・指導医・専門医。
目次 -INDEX-
血行障害が起こる部位や症状
血行障害はどのような病気ですか?
血行障害は様々な部位の血行が滞る障害の1つです。血行不良と混同されがちですが、正確には違うものです。血行不良は血液自体がドロドロになり流れにくくなるのに対し、血行障害は血管の一部が狭くなったり閉塞することにより起こる障害とされています。
初期症状の段階では手足の痺れや疼痛が一般的です。進行すると血流がなくなってしまった部分の壊死や潰瘍の出現がみられます。血行障害の中でもっとも症例が多いのが足をはじめとした下肢部分です。
代表的なものとして「下肢閉塞性動脈硬化症(ASO)」「エコノミークラス症候群」が知られています。ASOは「末梢動脈疾患(PAD)」とも呼ばれており、血行障害でも特に足に関する症状を多く引き起こす疾患です。
初期症状の段階では手足の痺れや疼痛が一般的です。進行すると血流がなくなってしまった部分の壊死や潰瘍の出現がみられます。血行障害の中でもっとも症例が多いのが足をはじめとした下肢部分です。
代表的なものとして「下肢閉塞性動脈硬化症(ASO)」「エコノミークラス症候群」が知られています。ASOは「末梢動脈疾患(PAD)」とも呼ばれており、血行障害でも特に足に関する症状を多く引き起こす疾患です。
足以外で血行障害が起こる部位はありますか?
足以外にも血行障害は起こります。ほとんどが手足などの四肢ですが、血管がある部位であればどこであっても血行障害が起こりうるため、四肢だけに限らず全身に発症の可能性があるということです。
ただし、血行障害によって起こる症状の多くは指や手足などの末端部分に起こります。末端部分は血液が行き届きにくく、血流が滞りやすい部分です。そこに行き着くまでの動脈になんらかの血行障害が起こると、末端部分まで血流がさらに行き届きにくくなり、神経が変性して疼痛などの症状が末端に出てしまうのです。
ただし、血行障害によって起こる症状の多くは指や手足などの末端部分に起こります。末端部分は血液が行き届きにくく、血流が滞りやすい部分です。そこに行き着くまでの動脈になんらかの血行障害が起こると、末端部分まで血流がさらに行き届きにくくなり、神経が変性して疼痛などの症状が末端に出てしまうのです。
手や指にも症状が出ると聞きますが…
上腕から手にかけての血管に血行障害が起きると、手指にも症状が出ます。手指に症状が出たとき、多くの場合は軽度のしびれを伴います。重症化して血流が途絶えると壊死して切断せざるをえなくなる状態にまで進行してしまうため、放置してはいけません。
また、血流が途絶えると周囲の神経も死んでしまいます。死んだ神経は元に戻らないため、たとえ血流を改善させたとしても痺れや筋縮といった症状は残ってしまいます。
また、血流が途絶えると周囲の神経も死んでしまいます。死んだ神経は元に戻らないため、たとえ血流を改善させたとしても痺れや筋縮といった症状は残ってしまいます。
血行障害が起こる原因と検査方法
血行障害の原因はなんでしょうか?
原因は主に動脈硬化や外傷による血管の圧迫です。動脈硬化は血管の過剰な収縮や血栓ができやすくなる血栓形成傾向によって引き起こされます。これによって血管が硬くなり、本来あったはずの弾力性が失われ血液が詰まりにくくなる=血行障害が生じてしまいます。
動脈硬化にも種類があり、脳梗塞などの原因になるのが「粥状動脈硬化」です。粥状動脈硬化は動脈内膜に悪玉コレステロールなどが沈着してしまい、血液の通り道が細くなり詰まりやすくなる血行障害です。粥状動脈硬化は太い動脈で起こりやすいのに対し、細い動脈が硬化することは「細動脈硬化」と呼ばれています。
細い動脈は血管壁がもろいため、硬化が進行すると血管が破裂する可能性が高いです。一方、血行障害の原因として考えられるものとして血管の圧迫があります。骨折などの外傷によって血管が圧迫されて発症する障害です。外傷性の場合は血管の圧迫度合いによって緊急性が高くなり、処置が遅れると後遺症が残る可能性が高くなってしまいます。
動脈硬化にも種類があり、脳梗塞などの原因になるのが「粥状動脈硬化」です。粥状動脈硬化は動脈内膜に悪玉コレステロールなどが沈着してしまい、血液の通り道が細くなり詰まりやすくなる血行障害です。粥状動脈硬化は太い動脈で起こりやすいのに対し、細い動脈が硬化することは「細動脈硬化」と呼ばれています。
細い動脈は血管壁がもろいため、硬化が進行すると血管が破裂する可能性が高いです。一方、血行障害の原因として考えられるものとして血管の圧迫があります。骨折などの外傷によって血管が圧迫されて発症する障害です。外傷性の場合は血管の圧迫度合いによって緊急性が高くなり、処置が遅れると後遺症が残る可能性が高くなってしまいます。
ストレスも関係しますか?
ストレスが遠因となることもあります。ストレスを感じて自律神経が乱れると、血液の循環がうまくいかなくなることがあります。慢性化すると血管を収縮させるホルモンが大量に分泌され、血管が狭くなってしまうのです。これによって起こるのが末端冷え性や肌トラブルです。
血管や循環器系の疾患は疑うべきでしょうか?
血管や循環器系の疾患を疑うべきです。たとえ血行障害が生じているのが一部の血管だとしても、他の部位にも虚血性疾患を発症している可能性が高いです。何らかの理由で動脈硬化が起こっているのであれば、他の血管でも同様の現象が起こる可能性が非常に高くなります。身体のどこかで血行障害が生じているのであれば、血管や循環器系の疾患も疑い、全身を精査することが必要です。
検査方法や検査の際に気をつけることについて教えてください。
血行障害の疑いがある場合、まずは足首と上腕の血圧を測定します。この検査は国際的に「Ankle Brachial Pressure Index(足首/上腕血圧比)」=ABIと呼ばれている検査です。2部位を同時に測定すると、通常であれば血圧に差が出ません。
しかし下肢に血行障害が出ている場合には下肢の血圧が、上腕に血行障害が出ている場合には上腕の血圧がそれぞれ下がります。この差を計測することによって重症度がわかります。極端に血圧が低い場合、ほぼ血管が閉塞してしまっている閉塞性血行障害の可能性が高いです。
また、血流測定・CT・MR・動脈造影検査・エコー検査など様々な視点から検査を行います。全身検査が必要になるため、検査の数は非常に多いです。しかし、狭心症や脳血管障害など思わぬ病変が見つかることもあるため、検査はしっかりと受けるようにしてください。
しかし下肢に血行障害が出ている場合には下肢の血圧が、上腕に血行障害が出ている場合には上腕の血圧がそれぞれ下がります。この差を計測することによって重症度がわかります。極端に血圧が低い場合、ほぼ血管が閉塞してしまっている閉塞性血行障害の可能性が高いです。
また、血流測定・CT・MR・動脈造影検査・エコー検査など様々な視点から検査を行います。全身検査が必要になるため、検査の数は非常に多いです。しかし、狭心症や脳血管障害など思わぬ病変が見つかることもあるため、検査はしっかりと受けるようにしてください。
血行障害の治療法と予防方法
血行障害の治療方法にはどのようなものがありますか?
血栓など明確な原因がある場合にはそれを取り除く手術を行います。主な手術は血管を広げるステント術や風船で血管を広げる血管形成術です。また、血管のバイパス手術を行う場合もあります。
狭窄もしくは閉塞が起きている血管の上流から下流に血液を流す手法です。動脈が狭まっているなどの症状がある場合は、血管を広げる薬剤で治療を試みます。血液がドロドロになってしまっている場合は、サラサラにして流れやすくする薬剤の服用が必要です。
もし交感神経が原因の場合は、交感神経の緊張を下げる治療を試みるため、原因によって治療方法が違います。
狭窄もしくは閉塞が起きている血管の上流から下流に血液を流す手法です。動脈が狭まっているなどの症状がある場合は、血管を広げる薬剤で治療を試みます。血液がドロドロになってしまっている場合は、サラサラにして流れやすくする薬剤の服用が必要です。
もし交感神経が原因の場合は、交感神経の緊張を下げる治療を試みるため、原因によって治療方法が違います。
生活習慣で気をつけることについて教えてください。
生活習慣病の予防としてよくいわれている「運動・食生活・禁煙・規則正しい生活」は、血行障害の予防にも当てはまります。できるだけ運動をして身体を動かす習慣をつけることや、食生活の改善も必要です。
また、タバコは血管の収縮作用があります。動脈硬化のリスクファクターとなりやすいため、禁煙もしくは本数を減らすことも予防に繋がります。
また、タバコは血管の収縮作用があります。動脈硬化のリスクファクターとなりやすいため、禁煙もしくは本数を減らすことも予防に繋がります。
食生活の注意点はありますか?
粥状動脈硬化の原因として最も多いのが悪玉コレステロールの蓄積です。健康診断でも悪玉コレステロール(LDL)の数値を気にする方は多いのではないでしょうか。LDLは動物性脂肪や高コレステロール食品に多く含まれています。
そのため、血行障害の予防にはこれらの食品を摂りすぎないことと、コレステロール値を下げるために食物繊維やEPA/DHAを多く含む食品を摂ることを心がけましょう。
そのため、血行障害の予防にはこれらの食品を摂りすぎないことと、コレステロール値を下げるために食物繊維やEPA/DHAを多く含む食品を摂ることを心がけましょう。
最後に、読者へメッセージをお願いします。
血行障害は生活習慣病である動脈硬化と切っても切り離せない関係にあります。外傷などでも発症することがありますが、原因の多くは動脈硬化です。そのため、予防には生活習慣の改善が欠かせません。もし生活習慣病が気になる方は、食生活の改善や運動習慣をつけるよう心がけてください。
編集部まとめ
血行障害は下肢に起こるものが多いです。しかし、血管が狭くなったり血行が悪くなる疾患のため、症状が起こる部位は下肢だけとは限りません。
原因として最も多いのが動脈硬化です。動脈硬化は生活習慣によっても引き起こされるため、日頃から食生活に気をつけるなどの対策をしていると血行障害の予防にもなります。
発症した場合、原因を取り除く治療を行わなければいずれ心血管障害に進行する可能性が非常に高いです。
血行障害の症状としては、歩いているとふくらはぎなどが痛くなるが休憩すると痛みがなくなる間欠性跛行という歩行に関する症状もあります。
こういった症状や手足の冷感や安静時の疼痛がある場合は、医師の診察を早めに受けるようにしましょう。
参考文献