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「菌状息肉症」の自覚症状はご存知ですか?医師が監修!

 更新日:2023/03/27
「菌状息肉症」の自覚症状はご存知ですか?医師が監修!

菌状息肉症(きんじょうそくにくしょう)はリンパ球の一種が癌化することで発生する病気です。

初期では腹や太もも、背中などに赤や茶色の発疹が現れますが、かゆみなどの自覚症状はほとんどありません。

病気が進行すると内臓などにまで癌が広がっていくおそれがあります。

日本人においては非常にまれな病気で、発症しても数年~数十年を掛けてゆっくりと進行します。

癌というと完治が難しいイメージですが、早期に適切な治療をすれば症状が安定したり、治癒したりすることもある病気です。

今回はこの病気について、原因や診察・特定・治療方法・日常生活で気を付けることがあるのかどうかなどを紹介していきます。

竹内 想

監修医師
竹内 想(名古屋大学医学部附属病院)

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名古屋大学医学部附属病院にて勤務。国立大学医学部を卒業後、市中病院にて内科・救急・在宅診療など含めた診療経験を積む。専門領域は専門は皮膚・美容皮膚、一般内科・形成外科・美容外科にも知見。

菌状息肉症とは

アトピーの子供

菌状息肉症はどのような症状を引き起こすのですか?

菌状息肉症は悪性リンパ腫の一種で、皮膚のリンパ球が癌化するものです。人の血液やリンパ管には、リンパ球という白血球の一部が巡っています。単一のリンパ球が腫瘍性に増殖したものをリンパ腫と呼び、そのほとんどが悪性リンパ腫種と診断されています。
菌状息肉症は皮膚T細胞というリンパ球が、何らかの原因によって皮膚付近で活性化・増殖し、リンパ腫となってしまうことで発生する病気です。この病気の進行は3段階に分けられており、それぞれの症状は以下の通りです。

  • 紅斑期:淡い赤色や褐色の発疹が腹・太もも・背中などに見られますが、かゆみや痛みはほとんど感じられません。
  • 局面期:紅斑期で現れた発疹がふくらみ、色も鮮やかな赤色に変化します。
  • 腫瘍期:1㎝異常の腫瘤や潰瘍のような癌が増殖していく状態です。この状態で発心が全身の80%以上に広がると、紅皮症とも呼ばれます。これ以上進行が進むと、内臓に癌が広がっていき、複合的な化学治療が必要となってきます。

ただこの病気の進行は非常にゆっくりで、多くの患者さんは紅斑期で安定し、中には治癒するケースもあります。進行する場合でも、普通数年〜十数年単位でゆっくりと進む場合が多いです。なお菌状息肉症と似たような症状を持つ病気で、セザリー症候群という病気があります。こちらは全身に赤い発疹が現れるのが特徴ですが、病気の分類や治療方針としては菌状息肉症と変わりありません。

悪性リンパ腫の一種なのですね。

リンパ球は細かく分類すると100以上のタイプがあり、それぞれのリンパ球が癌化する悪性リンパ腫が引き起こす症状も多岐に渡ります。菌状息肉症はTリンパ球が癌化して発生するものです。
この病気の症状は発熱や進行は比較的ゆっくりしたものですが、ほかの悪性リンパ腫は進行が急激に進んだり、リンパ節が腫れて発熱するなど急激な症状を現すものもあります。

発症する原因を教えてください。

日本人では毎年150人ほどが発症していますが、原因はよくわかっていません。成人・高齢者に多い病気ですが、まれに子どもでも発症します。患者さんの男女比は2:1で、男性に多い病気といえます。

自覚症状はありますか?

紅斑期では赤や褐色の発疹が現れますが、痛みやかゆみを感じる人は少ないです。またこの状態では皮膚科の専門医でも診断が難しく、なかなか発見できません。腫瘍期まで進行すると発疹から出血したり、潰瘍状になったりします。内臓にまで進行してしまうと、発熱・体重減少・倦怠感などの自覚症状が現れます。

菌状息肉症の診断と治療

検査結果

何科を受診すれば良いですか?

まずは皮膚科を受診してください。先述の通り、この病気は初期の状態での発見が難しく、早期発見には専門家の問診や視診が非常に重要です。
皮膚科では独自のテクニックをもってこの病気を診断できます。そして皮膚科にて患部の検査を行い、もし腫瘍などが見付かった場合は放射線科など別の部門と協力しながら治療を進めていくことになります。

診断ではどのような検査が行われるのでしょうか?

この病気が疑われた場合、まずは患部を切り取って顕微鏡で調べます。これによって菌状息肉症と診断されたら、病気の進行度を調べるために画像検査や骨髄検査を行うこともあります。この病気は根本治療ではなく症状に対する治療を行いますので、患部の範囲と進行ステージが確定することで、治療方針が決まるのです。

治療方法を教えてください。

治療方法は病気の進行度合いによって異なります。紅斑期までの、病変が皮膚のみに留まっている場合はステロイドなどを用いた外用療法や、紫外線療法を採用する場合が多いです。それ以上症状が進むと、放射線療法・インターフェロンの点滴・局所注射・化学療法など病変に応じた様々な治療方法がとられます。
新しい治療方法としては、ピンポイントでリンパ腫細胞を攻撃する分子標的薬や、リンパ腫細胞に対する免疫力を利用した治療法が現在でも開発中です。近年では菌状息肉症に対してボリノスタットという薬が保険診療で使用可能となっています。

菌状息肉症はどのような経過を辿るのですか?

皮膚のリンパ球から発生する病気で、まずは皮膚の異常が現れます。その後は数年~数十年を掛けて非常にゆっくりと進行しますが、患者さんの中には病気が進行せずに安定したり、治癒したりするケースもあります。
症状が軽い場合は、治療を行わず様子見を選択することもあるくらいです。この病気が早期発見できた場合、90%の患者さんは強い治療をしなくても症状が安定するか、治癒するといわれています。ただ病気が内臓などにまで進行した場合は強い治療が必要で、再発にも気を付ける必要があるでしょう。

完治する病気ですか?

菌状息肉症は原因がよくわかっておらず、根本的な治療もありません。ですが非常にゆっくりと進行する病気で、治療途中で進行が止まって安定したり、治癒したりする患者さんが多い病気でもあります。大切なのは早期発見・早期治療ですので、皮膚に疑わしい発心が見られた時は、早めの受診をおすすめします。

日常生活の注意点

医師とハート

日常生活の注意点を教えてください。

この病気が発症したからといって、すぐ日常生活で気を付けることは特にありません。ただし定期的に病院に掛かり、病気が進行していないかや、治療が効果をあげているかを確認する必要があるでしょう。ただし腫瘍期以降で強い癌治療を行った方は、病気の再発に気を付ける必要があります。
そして癌の強い薬物療法中は免疫力が落ち、健常者には害のない弱いウイルスやカビに感染するおそれがあります。日常生活でも手洗いうがいをしっかりとして、感染の原因となるケガをしないよう心がけるなど細菌に感染しない生活を送るよう心がけましょう。

人にうつる病気でしょうか?

菌状息肉症が人にうつることはありません。皮膚に現れる発疹は見た目にも影響し、思わず感染を気にしてしまいがちですが、身近な人がこの病気に掛かったとしても接触で感染することはありません。適切なサポートをしてあげてください。

最後に、読者へメッセージがあればお願いします。

菌状息肉症は比較的まれな癌ですが、初期の症状だけではなかなか診断がつきにくいという一面もあります。早期発見できれば病気の進行を抑えられる病気です。
日頃から身体の変化に気を付け、プロの皮膚専門家に診てもらうと安心でしょう。この病気は発症してからは、数十年と付き合い続けなければいけない病気でもあります。多くの患者さんが初期段階で安定・治癒していることを念頭に、焦らず根気よく治療と定期診察を続けていきましょう。

編集部まとめ

かきむしる少年
菌状息肉症はまず皮膚に発疹が現れる病気で、早期発見と治療をすれば、多くの患者さんで症状が安定しています。

一方病変が内臓にまで及ぶと化学治療など強い治療が必要となり、再発も心配しなければならない病気です。

またこの病気は肌に発疹が現れますが、接触によって人にうつることはありません。

病気の原因ははっきりとわかっていませんが、初期ならステロイド剤など外用薬を用いるなどの軽い治療で治療を行います。

病気の発見には専門医の診察と検査が欠かせません。肌に異常が見つかったら、早めに皮膚科に掛かることを心がけましょう。

この記事の監修医師