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「脊髄空洞症」とは?余命・症状・原因も併せて解説!【医師監修】

 更新日:2023/08/21
「脊髄空洞症」とは?余命・症状・原因も併せて解説!【医師監修】

脊椎空洞症は、脊椎が竹輪状に空洞化する難病です。

重症化すると車椅子を必要とすることもあるため、症状に気づいた時点でできる限り早めに治療を受けることが大切です。

では、この病気の具体的な自覚症状とはどのようなものなのでしょうか。また、発症に気づいた場合は何科を受診すべきなのでしょうか。

本記事では脊椎空洞症の症状・原因・診療科などについて解説します。あわせて治療方法や日常生活での注意点にも触れています。

ぜひ最後までご覧ください。

中路 幸之助

監修医師
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)

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1991年兵庫医科大学卒業。医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター所属。米国内科学会上席会員 日本内科学会総合内科専門医。日本消化器内視鏡学会学術評議員・指導医・専門医。日本消化器病学会本部評議員・指導医・専門医。

脊椎空洞症の症状と原因

スポーツウェアの女性

脊椎空洞症はどのような病気ですか?

  • 脊椎空洞症は国の指定難病の1つで、脊椎の中に空洞ができる病気です。
  • 通常、脳や脊髄は「脳脊髄液」という液体の中に浮かぶことで外部の衝撃などから守られています。
  • この脳脊髄液が脊髄に溜まると、水たまりのような空洞が形成されて発症に至ります。ほぼすべての年代でみられる病気ですが、中でも30代の方の発症率が高めです。

どのような症状が出るのか教えてください。

  • 空洞が大きくなると、脊髄が内側から圧迫されてさまざまな症状が生じます。主な症状は次の通りです。
  • 手の感覚異常(痛み・しびれ・麻痺・鈍化)
  • 手の温痛覚障害(痛み・熱を感じない)
  • 腕の脱力感
  • 手足のつっぱり感
  • 筋肉が痩せる
  • 多くの場合、症状には左右差があります。初期には、症状は片側の腕にのみあらわれることがほとんどです。
  • 放置すると症状はもう1方の腕・下半身の順番に広がっていき、最終的に車椅子が必要になることもあります。
  • 実際の症状のあらわれ方・進行スピードは、脊髄内の空洞の大きさ・位置などによって個人差があります。

患者さんはどれ位いるのでしょうか?

  • 正確な患者数は把握できていないというのが実情です。1990年代前半の全国疫学アンケート調査では、この病気の患者数は約2000名でした。
  • 2008~2009年の全国疫学調査では、患者数は2500名と推定されています。
  • しかしこの調査で分かっているのは、調査期間中に脊髄空洞症で病院を受診していた方の人数です。
  • つまり発症者でも調査期間中に病院を受診していない方は含まれていません。よって実際の患者数はさらに多いと推測されています。

原因はわかっているのですか?

  • この病気はさまざまな原因で発症し、なかには原因が特定できないケースもあります。代表的な要因は次の通りです。
  • 脊髄・周辺組織の異常(炎症・梗塞・外傷)
  • 腫瘍
  • 血管障害
  • キアリ奇形
  • なかでも代表的とされているのがキアリ奇形です。
  • キアリ奇形は先天性の形態異常で、生まれつき小脳・脳幹の一部が脊柱管内に垂れ下がった状態を指します。
  • 小脳が脊柱管内に陥入すると体内での脳脊髄液の流れが妨げられるため、リスクが高まると考えられています。

脊椎空洞症の余命は?

  • 具体的な余命は個人差があり、一概にはいえません。多くの場合、進行スピードはゆるやかで、下半身麻痺に至るまでに20年以上かかるケースもみられます。
  • また、この病気は発症後、症状が改善したり進行が停止したりする場合もあります。
  • 一方で治療せずに放置すると、脊髄の空洞が大きくなり、伴って症状も重篤化しやすくなるため注意が必要です。
  • 予後を長く保つためには、発症が疑われた時点で病院を受診することが大切です。

脊椎空洞症の検査と治療方法

診察する男性医師

どのようなタイミングで受診すれば良いか教えてください。

  • この病気は、治療が早いほど質の高い予後が期待できます。もし気になる症状がある場合は、できる限り早めに病院を受診してください。
  • たとえば次のような症状がある方は、念のため検査を受けるとよいでしょう。
  • 手足のしびれ・麻痺
  • 手足の脱力感
  • 温度を感じない
  • 痛みを感じない

何科を受診すれば良いですか?

  • 対応している診療科は次の通りです。
  • 脳神経内科
  • 脳神経外科
  • 整形外科
  • 小児科(小児の場合)
  • どの診療科を受診すべきか迷ったときは、まず最寄りの内科やかかりつけ医に相談するのも1つの方法です。
  • 必要があれば、適当な診療科に誘導してもらえる可能性があります。避けたいのは、受診を我慢してしまうことです。
  • この病気は放置すると麻痺が下半身に及び、日常生活に支障をきたす場合もあります。重症化リスクを避けるためにも、気になる症状は放置しないでください。

どのような検査をするのか教えてください。

  • 代表的な検査方法はMRIです。MRIは磁気を利用して体内の様子を画像化する方法です。
  • MRIを利用することで、脊椎中の空洞の有無を確認できます。ペースメーカーなどの体内金属がある方はMRIは利用できません。
  • その場合は、CTや水溶性溶剤などを使って検査することもあります。
  • ちなみに、この病気はたまたま受けた健康診断・人間ドッグなどで発見されることもあります。

治療方法・手術内容を知りたいです。

  • 治療方法は、大きく分けて「薬物療法・理学療法」と「外科手術」の2種類があります。
  • 薬物療法・理学療法は、症状の軽減を目指す対症療法として用いられることがほとんどです。
  • たとえば手足のしびれ・痛みがある場合は、鎮痛剤などの薬剤を利用します。脱力感などによって手足が不自由な場合は、歩行訓練などのリハビリが有効です。
  • 対して外科手術では、病気の改善(緩解)が期待されます。代表的な手術方法は次の2つです。
  • 後頭蓋窩減圧術
  • 空洞ーくも膜下腔短絡術
  • 後頭蓋窩減圧術は、頭蓋から脊柱管の範囲を切り開いて押し広げる方法です。
  • 頭蓋から脊柱管にかけての空間が広がることで、脳脊髄液の流れがよくなるため、脊髄の中に溜まりにくくなります。
  • 特にキアリ奇形の方に有効な治療法で、多くの場合、術後3ヶ月内に空洞の縮小化が期待できます。
  • 一方、空洞ーくも膜下腔短絡術は脊髄の空洞内に細いチューブを挿入する術式です。
  • より具体的にいうと、挿入したチューブから脳脊髄液を他所に流出させることで、空洞の縮小化を図る方法です。
  • 後頭蓋窩減圧・空洞ーくも膜下腔短絡術は、適切な時期に実施すれば質の高い予後を期待できます。
  • 一方で、すでに症状が進行している方は、手術を実施してもあまり効果を期待できないこともあります。
  • できる限り高い効果を得るためにも、手術治療は早い時期に行うことが大切です。

脊椎空洞症の注意点と予防方法

話を聞く医者

日常生活における注意点はありますか?

  • この病気では麻痺・脱力感などがあらわれやすくなります。簡単にいえば身体が自由に動かしづらくなるため、日常生活のさまざまな場面で問題が起こりやすくなります。
  • 代表的なのは歩行障害・嚥下障害などです。歩きづらい場合は、杖や歩行器などを取り入れて転倒を防ぎましょう。
  • 食べ物・飲み物の飲み下しに問題がある場合は、食べやすい食事を工夫するなどして、誤嚥を防いでください。
  • もう1点注意したいのは、温痛覚障害です。温痛覚障害とは、痛み・熱に対する感覚が鈍くなる状態を指します。
  • たとえば熱湯に触れても「熱い」と感じにくいため、重大な火傷を負うおそれがあります。
  • 温痛覚障害が洗われている方は、無意識のケガ・火傷をしないよう、くれぐれも注意してください。
  • また、この病気を発症すると、ささいな動作で電気が走ったような痛みを感じることがあります。
  • 代表的な動作はくしゃみ・咳などです。もし特定の動作で痛みを感じる場合は、その動作をできる限り控えるようにしましょう。

予防方法を教えてください。

  • この病気を100%予防する方法はありません。たとえば脊椎空洞症の原因の1つはキアリ奇形ですが、こちらは先天性の形態異常であるため防ぎようがありません。
  • 一方で、この病気は交通事故・転倒などによる外傷や、なんらかの病気が原因となることもあります。
  • 確実な予防方法はありませんが、日頃から病気・ケガに注意して生活することが、間接的な予防につながるでしょう。

最後に、読者へメッセージをお願いします。

  • 比較的進行がゆるやかな病気であるため、初期には発症に気づかないおそれもあります。
  • 稀に自然に進行がストップすることもありますが、ほとんどの場合は、症状を放置すると確実に重症化していきます。
  • 最終的には日常生活に支障をきたすこともあるため、できる限り早めに治療を受けることが大切です。
  • もし少しでも気になる症状がある場合は、最寄りの脳神経外科・内科や整形外科で検査を受けましょう。

編集部まとめ

腰痛の女性
脊椎空洞症は国が指定する難病の1つです。早期に治療すれば改善が期待できるため、症状に気づいた時点で早めに病院を受診することが大切です。

質の高い予後を実現するためにも、気になる症状は放置しないようにしましょう。

この記事の監修医師