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「溶血性貧血」とは?症状・原因・診断基準についても解説!医師が監修!

 更新日:2023/08/17
「溶血性貧血」とは?症状・原因・診断基準についても解説!医師が監修!

血液は酸素や栄養素を運搬し循環させる、生きていくうえで欠かせない存在です。そんな血液が欠乏している状態のことを貧血といいます。

しかし、貧血といっても原因や特徴によって複数の種類に分類されることをご存じでしょうか?

今回はその中の1つである溶血性貧血についてご紹介します。

溶血性貧血の特徴や症状・予防方法についても解説していくので、貧血にお悩みの人も健康な体づくりを心がけている人もぜひ参考にしてみてください。

甲斐沼 孟

監修医師
甲斐沼 孟(上場企業産業医)

プロフィールをもっと見る
大阪市立大学(現・大阪公立大学)医学部医学科卒業。大阪急性期・総合医療センター外科後期臨床研修医、大阪労災病院心臓血管外科後期臨床研修医、国立病院機構大阪医療センター心臓血管外科医員、大阪大学医学部附属病院心臓血管外科非常勤医師、大手前病院救急科医長。上場企業産業医。日本外科学会専門医、日本病院総合診療医学会認定医など。著書は「都市部二次救急1病院における高齢者救急医療の現状と今後の展望」「高齢化社会における大阪市中心部の二次救急1病院での救急医療の現状」「播種性血管内凝固症候群を合併した急性壊死性胆嚢炎に対してrTM投与および腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行し良好な経過を得た一例」など。

溶血性貧血の特徴

病院の白衣のお医者さん

溶血性貧血とはどのような病気ですか?

  • 冒頭で貧血を「血液が欠乏している状態」としましたが、厳密にいうと貧血とは「血液中の赤血球が欠乏している状態」をいいます。
  • 一口に貧血といっても多くの種類があり、主に以下の6つに分類されます。
  • 鉄欠乏性貧血
  • 再起不良性貧血
  • 悪性貧血
  • 溶血性貧血
  • 腎性貧血
  • がんなどの病気に付随する二次性貧血
  • 他の貧血は栄養素の不足や病気などが原因で赤血球が減ることで発症しますが、溶血性貧血は赤血球が壊れることで減ってしまう病気です。
  • 溶血性貧血には先天性と後天性があり、先天性に多いのが遺伝性球状赤血球症、後天性に多いのが自己免疫性溶血性貧血です。
  • 特に自己免疫性溶血性貧血は溶血性貧血の代表格ともされています。自己免疫性溶血性貧血は自己抗体によって赤血球が破壊されることで起こります。
  • 自己免疫性溶血性貧血は原因が不明であるため難病にも指定されているほどの病気です。自己免疫性溶血性貧血には3つの種類があります。
  • 温式
  • 寒冷凝集素症
  • 発作性寒冷ヘモグロビン尿症
  • 上記3つはそれぞれ現れる症状が異なります。
  • 温式は発熱や心不全などを起こし、寒冷凝集素症は感覚異常などの循環障害の症状、発作性寒冷ヘモグロビン尿症は悪寒や発熱がみられます。

発症した場合にみられる症状を教えてください。

  • 溶血性貧血の症状は貧血による動悸や息切れ、黄疸などが挙げられます。黄疸はビリルビン値が上昇することで起こります。
  • ではなぜ溶血性貧血になるとビリルビン値は上がってしまうのかを解説していきます。
  • ビリルビンは通常肝臓によって処理されるのですが、赤血球が破壊されることでこの処理が追いつかないほどの量にビリルビンが増加してしまうのです。
  • それによってビリルビン値が上昇してしまい、黄疸が発生します。
  • 黄疸は重篤な状態を示すものであるため、普段より白目や肌が黄色みを帯びていると感じたらすぐに医療機関を受診しましょう。

原因は何ですか?

  • 溶血性貧血の原因として赤血球が破壊されてしまうことが挙げられるのですが、なぜ赤血球が破壊されてしまうのかというと、体内で赤血球に対する自己抗体をつくってしまうためです。
  • この自己抗体をつくってしまう原因については未だ明らかにされていませんが、溶血性貧血は自己免疫学的な機序によって発症することが多いとされています。

どのような人がなりやすい病気ですか?

  • 先ほどお話ししたように溶血性貧血の原因として自己免疫疾患やがんなどの病気による赤血球破壊が知られているため、これらの病気にかかっている人に発生しやすい病気であるといえます。
  • ただ、自己免疫性溶血性貧血に関して、詳細な原因は不明とされているため発症する人の特徴も明確にされていないのが現状です。
  • 「自分がなってもおかしくない病気」と考えて、自身の体調管理をしっかりと行いましょう。

溶血性貧血の診断基準と治療方法

パソコンの前で手振りで話す医者

溶血性貧血の診断基準を教えてください。

  • 溶血性貧血の診断基準には以下のようなものがあります。
  • 貧血と黄疸がみられる
  • へモグロビン濃度及び血清ハプトグロビン値の低下
  • 血清間接ビリルビン値上昇
  • 網赤血球、尿中・便中ウロビリン体、骨髄赤芽球増加
  • これらの診断基準をもとに溶血性貧血の診断が行われます。これらの診断は主に血液検査によって行われます。
  • つまり、血液検査で発見できる病気であるということです。貧血が慢性化しているという人は速やかに医療機関を受診しましょう。

どのような検査を行いますか?

  • 溶血性貧血の診断では前述したように主に血液検査が用いられます。血液検査によって前述したヘモグロビン濃度などを測定し、その数値から溶血性貧血かどうかの診断を行うのです。
  • 血液検査での結果と症状をもとに診断および治療方法が決定されます。
  • つまり溶血性貧血において血液検査はとても重要な検査であるということです。

治療方法を教えてください。

  • 溶血性貧血の治療方法として有効とされているのがステロイド治療です。
  • ステロイド治療に使用される副腎皮質ステロイドホルモンには自己免疫異常や炎症反応を抑制する効果があるため、赤血球に対して働いている自己免疫の異常作動を抑制することが期待できます。
  • そのほか、貧血がひどい場合には輸血を行うこともあり、基本的に治療方法はその溶血性貧血の状態に応じて決定されます。

溶血性貧血の予後と予防方法

並んで立つ医療従事者

溶血性貧血を放置するリスクを教えてください。

  • 赤血球は酸素の運搬などの重要な役割を担っているため、不足した状態を放置してしまうと低酸素状態などの重篤な症状を起こす可能性があります。
  • 思考力の低下なども生じてくるため、日常生活にも悪影響を及ぼしかねません。
  • 黄疸などが出てくると重篤な状態のサインですので貧血症状がみられた時点で速やかに医療機関を受診しましょう。

完治する病気ですか?

  • 溶血性貧血の治療にはステロイド治療が行われます。このステロイド治療は約80%の人に効果があるとされ、その中でも20%の人が治療の完了にいたるといわれています。
  • 状態に応じてステロイドの量を調節し、完治を目指すのです。
  • そのほか、がんなどの病気によって発症した溶血性貧血の場合には、まず病気の治療を優先し、病気が治ることで溶血性貧血の改善もみられるというケースもあります。

溶血性貧血の予防方法はありますか?

  • 溶血性貧血は赤血球を破壊する自己抗体の発生機序が分かっていないため、具体的な予防方法も明らかにされていません
  • しかし、悪化を防ぐ方法はあります。ストレスや感染症によって悪化しやすい病気です。極力ストレスはためず、感染症対策に努めましょう。
  • また、病気が原因となる場合も少なくないため、定期的な血液検査などの健康診断を受けるなどして自身の体の健康状態を把握しておくこともおすすめです。

日常生活で気をつけることはありますか?

  • 先ほどお話ししたように溶血性貧血は予防方法が明らかになっていない病気ですので、罹患してからのことでいいますと、以下のポイントがあります。
  • ストレスをためない
  • 感染症に気をつける
  • 自己管理を徹底する
  • ストレスや感染症は溶血性貧血の悪化に深く関係してきます。適度なストレス発散法をみつけ、外出時や人の多い場所での感染対策などを徹底しましょう。
  • また、早期発見につながるように定期的な健康診断もおすすめです。

最後に、読者へメッセージがあればお願いします。

  • 貧血は低血圧な人や女性に多いイメージがあり、症状が出ても病院などの医療機関で診察をしてもらおうと考える人があまり多くない印象です。
  • しかし、放置しておくとどんどん赤血球が破壊されていき、黄疸や低酸素状態などの重篤な症状を発生させる場合も珍しくありません。
  • 客観的に判断できる症状としては黄疸が挙げられますが、黄疸は重篤な状態を示していることもあり、周りが気付く頃には進行した状態に陥っている可能性があります。
  • 自己免疫性溶血性貧血ともなると原因が分かっていないため、いつ症状が出てもおかしくない恐ろしい病気です。
  • 体調に少しでも不調を感じたら「まさか」ではなく、「もしかしたら」という認識を持ち、自身で気づける状態のうちに医療機関を受診し、完治を目指しましょう。

編集部まとめ

新緑の中にいる笑顔の日本人女性
貧血自体は珍しい症状ではなく、体質や生活習慣などによって発生することも多いため軽視されやすい病気です。

しかし、「休めば治る」と放置しておくと日常生活のストレスなどで悪化していく場合も少なくありません。

早期発見できればステロイド治療による完治も望める病気であるため、動悸や息切れを感じたら医療機関の受診をおすすめします。

自身の不調を放置せずに、健康な体づくりを目指しましょう。

この記事の監修医師