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「ウェルナー 症候群」とは?症状・原因・治療方法も解説!

 更新日:2023/06/30
「ウェルナー 症候群」とは?症状・原因・治療方法も解説!

ウェルナー症候群は、実年齢に見合わない老化現象がみられる早老症の1つです。

難病に指定されている病気ですが、稀な病気でもあるためどんな病気なのか知らない方も少なくないでしょう。

この病気は早期発見が重要となる病気です。そのためにも、どんな病気か理解しておくことが大切です。

症状・診断基準・治療方法・早期発見のポイントなど、ウェルナー症候群について詳しく解説いたします。

竹内 想

監修医師
竹内 想(名古屋大学医学部附属病院)

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名古屋大学医学部附属病院にて勤務。国立大学医学部を卒業後、市中病院にて内科・救急・在宅診療など含めた診療経験を積む。専門領域は専門は皮膚・美容皮膚、一般内科・形成外科・美容外科にも知見。

ウェルナー症候群の症状と原因

記念撮影する高齢者

ウェルナー症候群とはどんな病気でしょうか?

  • ウェルナー症候群は、指定難病にも指定されている稀な病気です。オットー・ウェルナーというドイツの医師によって初めて報告されました。
  • 思春期を過ぎた頃から急速に老化が進んでいくようにみえるため、早く老いる病気である早老症の1つといわれています。
  • 具体的には、思春期を過ぎた20歳頃から白髪脱毛白内障手足の筋肉が痩せるなどの加齢に伴う変化が見られ、実年齢より著しく老けてみえるようになります。
  • この病気は見た目の変化がみられるだけではなく、糖尿病・脂質異常症などの体内の異常も多いです。そのため、かつては40代で悪性腫瘍(がん)・心筋梗塞などにより亡くなる方が多い傾向にありました。現在は、医学の進歩とともに50~60代の患者さんも増えています。
  • ただし、難治性皮膚潰瘍に伴う下肢切断悪性腫瘍糖尿病などのために、死に至ることはなくとも重篤な後遺症に苦しんでいる患者さんは少なくありません。

どのような人が発症しますか?

  • ウェルナー症候群の原因は、WRN遺伝子の異常によるものと考えられています。
  • WRN遺伝子は、DNAが傷ついたときに修復したり正常な状態を保持したりと、重要な働きを担っている遺伝子です。この遺伝子に異常が生じると正常な状態を保てなくなり、DNAに傷が入りやすくなります。
  • しかし、遺伝子の異常がなぜ早い老化現象につながるのかはまだはっきりと解明されていません。ウェルナー症候群の患者さんは、日本国内には約2,000~3,000人いると報告されています。
  • 世界中の患者さんのなかでも約60%が日本人であり、日本人に多い早老症です。以前は発症の原因として、血縁が濃くなる近親婚が影響しているのではとも考えられていました。
  • しかし、近年は近親婚に関係のない方でも発病しているため、因果関係は解明されていません。
  • また、患者さんの傾向として身長が低い方に多い病気ですが、食生活や運動などの生活習慣は関係ないと考えられています。
  • 現在は遺伝子の異常によって発症する可能性があることしか解明されていない病気です。

症状を教えてください。

  • ウェルナー症候群の主な症状は、20歳頃から早い老化現象がみられることです。
  • 白髪・脱毛などの毛髪の変化
  • 両目の白内障
  • 声がかん高くかすれる
  • 手足の筋肉が痩せる
  • 傷が治りにくくなる(難治性皮膚潰瘍)
  • 皮膚の萎縮や角化
  • アキレス腱・皮下の石灰化
  • このような老化現象に似ている症状が、まだ若い年齢にも関わらずあらわれるようになります。
  • 発症すると、糖尿病・脂質異常症になる場合が多く、更年期も早い年齢から起こりやすいです。
  • 以前は悪性腫瘍・心筋梗塞などが原因で40代で亡くなる方が多い傾向にありましたが、近年は60代まで元気に過ごしている方もいます。

他の早老症とどう違うのでしょうか?

  • 早老症には、およそ10の病気があります。どの早老症も、実年齢より早く老化現象がみられることは共通しています。
  • ウェルナー症候群をはじめとする早老症は、遺伝子の異常が原因で起こる病気です。症状も比較的共通しており、大きな違いは原因となる遺伝子が異なる点です。
  • ウェルナー症候群:WRN遺伝子
  • ハッチンソン・ギルフォード・プロジェリア症候群:ラミンA遺伝子
  • コケイン症候群:CSA遺伝子
  • ブルーム症候群:BLMヘリカーゼ
  • 早老症の中でも日本人に多くみられる病気がウェルナー症候群です。他の早老症に関しては日本人の報告例が非常に少なく、日本での実態は明らかになっていません。

ウェルナー症候群の診断と治療

話を聞く医者

ウェルナー症候群の診断基準を教えてください。

  • 診断基準は、10歳から40歳代の方で毛髪の変化・白内障などのウェルナー症候群の主要徴候の全てもしくは3つ以上の主要徴候に加え遺伝子変異を認めることで確定とされます。
  • また、毛髪の変化・白内障などの老化現象に加えて皮膚の萎縮や硬化・声の異常・脂質代謝異常などの徴候が2つ以上みられる場合は、ウェルナー症候群の疑いとなります。

治療方法はありますか?

  • 根本的な治療方法はまだ確立されていません。残念ながら白髪や脱毛・皮膚の変化といった外見上の老化症状にも根本的な治療・予防方法はまだみつかっていない状況です。
  • そのため、治療は発症によって生じた病気に対する対症療法が中心です。
  • 白内障・悪性腫瘍・糖尿病・脂質異常症などは一般の患者さんと同様に手術・投薬による治療を行います。

合併症の治療がメインとなるのですね。

  • 根本的な治療薬・治療方法がみつかっていないため、治療は合併症への対症療法がメインとなります。
  • ウェルナー症候群によって起きる合併症の多くは、生命の危機・重篤な後遺症につながる恐れがあります。
  • そのため、合併症による重篤な後遺症を防ぐためにも、早期発見早期治療が重要です。
  • また、ウェルナー症候群の方は傷が治りにくく、少しのかすり傷でも日常生活に大きな支障をきたす恐れがあります。
  • 擦り傷・靴擦れなどを起こさないように注意するとともに、傷ができた場合は洗浄・消毒・保護・保湿を早期に行うことが大切です。

ウェルナー症候群の注意点

血圧

ウェルナー症候群は遺伝する病気ですか?

  • 人間の細胞の中には2つのWRN遺伝子が存在しますが、1つだけが異常の場合は発症はしません。
  • ウェルナー症候群の発症の原因は、2つあるWRN遺伝子の両方で異常をきたすことにあるということがわかっています。
  • 両親が保因者である場合には、子どもが両親それぞれから1つずつ異常な遺伝子を受け取る可能性があり、その結果遺伝子2つともに異常が認められると発症する可能性が高いです。そのため、発症に遺伝は関係ないとはいいきれません。
  • しかし、子どもが発症する確率は約25%、患者さんの子ども・さらにその子どもがウェルナー症候群を発症する確率は約400人に1人以下です。
  • 遺伝する病気ではありますが、遺伝による発症確率は高くありません。

早期発見のポイントはありますか?

  • よくみられる症状は20歳頃の白髪・脱毛などの毛髪の変化です。
  • このような老化に伴う毛髪の変化が、通常よりも早い年齢で見られる場合は一度医師の診察を受けましょう。
  • また、毛髪の変化以外にも、実年齢より老けてみえる症状が著しくあらわれたり白内障の症状がみられたりする場合にも、ウェルナー症候群を疑い診察を受けることが大切です。
  • 早期発見ができることで、合併症が起きる前に予防ができます。

日常生活で気をつけることを教えてください。

  • ウェルナー症候群の方が健康に長生きするためには、合併症や傷を予防していくことが大切です。そのためにも、小さな傷をつくらないように心がけましょう。
  • もし傷ができた場合は、靴擦れなどの小さな傷でも油断せずに早めに対処することが大切です。なかでも、アキレス腱・かかと・足・肘などは潰瘍になりやすい部位です。
  • これらの部位は、なるべく保護し異常がないか日々観察しましょう。また、悪性腫瘍・糖尿病・脂質異常症・動脈硬化などの発症のチェックや管理を定期的に行い、合併症の進行を防ぐことも大切です。
  • ウェルナー症候群だとわかったら、定期的な診察は怠らないようにしましょう。

最後に、読者へメッセージをお願いします

  • ウェルナー症候群は、非常に稀な病気で多くの方がなるわけではありません。しかし、早老症の中では日本人に多くみられる病気であり、絶対にならないともいいきれません。
  • ウェルナー症候群は、かつては長生きできない病気といわれていました。しかし、現代では合併症の進行を抑え元気に長生きすることも可能です。
  • ただ、そのためには早期発見早期治療が必要となります。
  • 年齢に見合わない老化現象がみられる場合は、まずは医師に相談しましょう。

編集部まとめ

高齢者女性

難病にも指定されているウェルナー症候群は、日本人に多い早老症といわれています。

合併症によって死に至る可能性もある病気ですし、見た目がどんどん老けてしまう病気は誰だって避けたいものです。

しかし、原因は遺伝子の異常であり、生活習慣によって発症の対策・予防ができるわけではありません。

だからこそ、少しでもおかしいなと思ったら早めに診察を受け、病気に気付くことが重要です。

万が一自分や周囲の方に疑いがみられる際に適切に対応できるよう、ウェルナー症候群をはじめとする難病に対する理解を深めていきましょう。

この記事の監修医師