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「粘液嚢胞(ねんえきのうほう)」とは?放置するリスク・原因・治療法も解説!

 更新日:2023/08/21
「粘液嚢胞(ねんえきのうほう)」とは?放置するリスク・原因・治療法も解説!

口の中に何度も水ぶくれができたり、口内炎がなかなか治らなかったりと悩んでいる方もいるのではないでしょうか。それは「粘液嚢胞」の可能性が高いです。

つぶれることで自然と小さくなっていきますが再発しやすく、なかなか治りません。子どもに多い症例ですが、大人でも発症します。

では一体、何が原因でできるのでしょうか。症状の種類とあわせて、原因・治療方法・予防方法を解説します。

竹内 想

監修医師
竹内 想(名古屋大学医学部附属病院)

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名古屋大学医学部附属病院にて勤務。国立大学医学部を卒業後、市中病院にて内科・救急・在宅診療など含めた診療経験を積む。専門領域は専門は皮膚・美容皮膚、一般内科・形成外科・美容外科にも知見。

粘液嚢胞とは?

頬抑える女性

粘液嚢胞とはどんな病気なのか教えてください。

  • できものといえば「腫瘍」を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。「嚢胞」も「腫瘍」と同じできものです。
  • 腫瘍は身体の中の組織の一部が異様に増えてできたもので、すき間がないくらい組織が詰まったものになります。嚢胞は粘膜の下部分に生じた空洞を意味し、液体が溜まっています。
  • 粘液嚢胞の「粘液」は唾液のことです。つまり、粘液嚢胞とは嚢胞に唾液が溜まってできたできもののことを指します。
  • 口の中にはさまざまなできものができやすいのですが、その中でもとくにできやすいとされています。できる場所は下唇が多いです。しかし舌の先端部分・頬の粘膜部分にできることもあります。舌の先の部分にできたものは、「ブランディン・ヌーン嚢胞」と呼ばれます。

粘液嚢胞を発症した場合、どんな症状がみられますか?

  • 粘液嚢胞を発症すると下唇などにできものができます。大きさは5㎜くらいですが、1㎝を超える場合もあります。
  • 色は発生する場所によって異なり、比較的表面に近い場所にできた場合は透明感のある薄紫色です。できた場所が深いと粘膜の色に近いピンク色になります。
  • 硬さは粘膜と同じような柔らかさです。痛みはありません。ある程度の大きさまで膨らむと潰れ、中から粘り気のある液体が出てきます。その後、傷が塞がると再び内部に唾液が溜まりまたできます。
  • 再発が繰り返されると徐々に表面は硬くなり、白っぽくなることもあるようです。

原因を教えてください。

  • 原因として考えられるのは、何らかの理由で口の中にある唾液腺が詰まってしまうことです。唾液腺が詰まる理由として、粘膜が傷つけられることがあげられます。
  • 唾液腺は大唾液腺と小唾液腺の2種類に分けることができます。小唾液腺は口の中に無数にあり、大唾液腺と比べると導管が細く排出口が狭いです。そのため、粘膜が傷つけられると詰まってしまうのです。粘膜が傷つけられる理由はさまざまですが、主に次のような原因が考えられます。
  • 口内炎
  • 粘膜を噛んだ
  • 歯の先端があたる
  • 矯正器具・入れ歯があたる
  • これらによって粘膜が傷つき、できものができてしまうのです。粘膜の傷が治るときに唾液を出す管が詰まり、粘液嚢胞になるといわれています。
  • 導管や排出口が詰まっていても唾液を作る機能は停止しません。そのため、行き場を失った唾液が小唾液腺の中に溜まり膨らむのです。下唇を噛む癖がある方は、下唇を噛むことにより粘膜が傷つく可能性があるため注意しましょう。

粘液嚢胞が出来やすいのはどんな人ですか?

  • 粘液嚢胞ができる方の年代をみると、10代~30代に多いようです。特に子どもに多く、50歳以上の高齢になると症状が出る方は少なくなります。他にも次のような方は注意が必要です。
  • 矯正器具・義歯を使用している
  • 下唇を噛む癖がある
  • 硬い食べ物が好き
  • 原因のところでも触れましたが、矯正器具・義歯や硬い食べ物は粘膜を傷つけやすいです。そのため、発症のきっかけとなってしまうことがあります。

粘液嚢胞の診断方法や治療方法

医療器具

粘液嚢胞の診断と検査内容を教えてください。

  • 粘液嚢胞かどうかは手で触って診断します。下唇をさわり、こぶがないかどうかを調べます。腫れが数日で大きくなったのかどうか、経過はどんな感じかも尋ねます。
  • 色はどうか
  • 薄くなった皮膚から血管は見えていないか
  • これらからも診断することが可能です。

粘液嚢胞の治療方法を教えてください。

  • 治療方法は主に経過観察か摘出手術です。小さなお子さんの場合は自然と治ることもあるため、3か月くらい様子見をします。3か月経っても改善しない場合、摘出するために手術をすることもあります。
  • 薬を服用したり塗ったりして治す治療方法はありません。基本的にしばらく様子をみるか摘出するための手術を受けることになります。

手術する場合もあると聞いたのですが…。

  • 治療方法の所でもお話ししましたが、完全に治すためには手術をするのが一般的です。破れるとなくなりますが、ほとんどの場合またできものができます。そのため、手術で摘出をするのです。できものができた部分に局所麻酔をし、切り取って摘出します。
  • 小唾液腺が残っていると再発する恐れがあるので、一緒に摘出します。唾液腺は小さく数も多いので、切除しても問題はありません。
  • その後、縫合して終わりです。時間にすると15分前後です。術後に傷口から出血することはありますが、痛みはあまりありません。
  • 術後はしばらくの間、傷口が腫れます。腫れが引くまでには数日かかります。縫合に使った糸を取るのは術後1週間程度で行うことが多いです。
  • この他にも、次のような手術方法があります。
  • レーザー照射
  • 凍結外科療法
  • レーザー照射は歯周病や口内炎の治療、虫歯の予防などに使われています。局所麻酔をした後、レーザーを使って摘出をするのが特徴です。ほとんど痛みがなく、出血も抑えることができます。麻酔が切れた後の痛みも少なく、傷の治りが早いというメリットがあります。
  • 凍結外科療法は超低温状態を利用して異常組織を破壊する治療法です。しかし凍結外科療法ができる病院は日本ではあまり多くありません。

粘液嚢胞の予防方法と放置するリスク

口元を抑える人

粘液嚢胞を予防するにはどうしたら良いのでしょうか?

  • 下唇を噛む癖がある方や歯並びが悪い方は、嚢胞を摘出してもまたできる可能性がありますので注意しましょう。
  • 硬い歯ブラシは使わない
  • 硬い物を食べるときは注意する
  • これら2つのことに気を付けることでも予防することができます。

放置するリスクや市販の薬を使って様子をみる危険性を教えてください。

  • 粘液嚢胞は良性疾患なので、悪性腫瘍などに変化する心配はありません。しかし自然治癒することがなく再発の可能性があります。日常生活に支障をきたすようなら、歯科医院などで摘出するための手術を受けましょう。
  • 口内炎はビタミン剤を服用したり、塗り薬を塗ったりすることで治すことができます。しかし口内炎と似ていますが、原因が異なるため粘液嚢胞には効果がありません。小唾液腺の排泄管が詰まることで発症するため、ビタミン剤を服用したり塗り薬を塗ったりしても治らないのです。

最後に、読者へメッセージがあればお願いします。

  • 口内炎と似ていますが、粘液嚢胞は再発を繰り返すという特徴があります。薬を使っても改善しない、何度も繰り返すなどの場合は粘液嚢胞の可能性が高いと考えていいでしょう。
  • 基本的には治す方法として摘出するしかありません。しかし急を要するものではないので、日常生活に支障がないのなら放置しても問題はありません。

編集部まとめ

微笑む女性
口の中に何度もできものができると、何かしらの病気ではないかと不安になることもあります。しかし粘液嚢胞はそこまで深刻になる必要はありません。

ただ自然治癒はしないので、日常生活に不便を感じる方や気になる方はお近くの歯科医院に相談してみましょう。

摘出するための手術は外科手術になるため、口腔外科のある歯科医院がおすすめです。粘膜が傷つくことが一番の原因なので、粘膜を傷つけないように普段から気を付けることも大事です。

この記事の監修医師