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「伝染性単核球症」とは?症状・原因・治療法についても解説!【医師監修】

 更新日:2023/07/13
「伝染性単核球症」とは?症状・原因・治療法についても解説!【医師監修】

「伝染性単核球症」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。一般的には「キス病」と呼ばれているため、そちらの言葉なら聞いたことがある方もいるかもしれません。

日本では乳幼児期に感染することが多く、一度感染すると抗体ができます。思春期までの間に感染する方が多いため、20代までに多くの方が抗体を持ちます。

乳幼児期に感染した場合はほとんど症状は出ません。症状が出ても軽度で済む場合がほとんどです。

しかし青年期以降に感染すると発熱、リンパ節腫脹などの症状が出ます。そのため心配になり、病院へ行かれる方も多いです。

今回は「伝染性単核球症」とはどんな病気なのかとあわせて、放置する危険性と治療方法を解説します。

甲斐沼 孟

監修医師
甲斐沼 孟(上場企業産業医)

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大阪市立大学(現・大阪公立大学)医学部医学科卒業。大阪急性期・総合医療センター外科後期臨床研修医、大阪労災病院心臓血管外科後期臨床研修医、国立病院機構大阪医療センター心臓血管外科医員、大阪大学医学部附属病院心臓血管外科非常勤医師、大手前病院救急科医長。上場企業産業医。日本外科学会専門医、日本病院総合診療医学会認定医など。著書は「都市部二次救急1病院における高齢者救急医療の現状と今後の展望」「高齢化社会における大阪市中心部の二次救急1病院での救急医療の現状」「播種性血管内凝固症候群を合併した急性壊死性胆嚢炎に対してrTM投与および腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行し良好な経過を得た一例」など。

伝染性単核球症とは

発熱した女性

伝染性単核球症とはどんな病気ですか

  • 伝染性単核球症はウイルスが原因で起こる感染症の1つです。EBウイルスが原因とされることが多いです。
  • EBウイルスはヘルペスウイルスの一種で、リンパ球に感染することで発症します。日本では3歳頃までに60~70%の方が感染し、大人になるまでの間に感染する方が多いです。
  • 青年期以降に初感染した場合、伝染性単核球症と呼ばれる病気になります。

伝染性単核球症は何が原因で感染するのでしょうか?

  • 伝染性単核球症が「キス病」といわれる由縁でもあるのですが、原因とされるEBウイルスは唾液の中にあります。
  • 唾液を介して感染するのでキスで感染することが多く、「キス病」と呼ばれるようになりました。キス以外の主な感染経路は次の通りです。
  • 回し飲み
  • 箸・スプーンの使い回し
  • 食べ物の口移し
  • 飛沫感染
  • この他にも輸血を介して感染した例も報告されています。

そうなのですね。感染した場合の症状を教えてください。

  • 症状は発症した年代によって異なります。乳幼児期は無症状の場合が多いです。
  • 症状が出ても軽く、微熱・扁桃腺の腫れなどで済みます。しかし学童期以降に発症した場合は重症化しやすく、次のような症状が出ることが多いです。
  • 高熱
  • 全身のけん怠感・疲労感
  • 喉の腫れ・痛み
  • 全身のリンパ節の腫れ
  • 発疹
  • 発熱・喉の痛みなどの症状は1~2週間で落ち着きますが、身体の怠さは数週間~数ヶ月にわたって長期化することもあります。

感染しやすい人の特徴などがあれば知りたいのですが…

  • 原因となるEBウイルスにはほとんどの方が感染します。とくに伝染性単核球症を発症するのは10代~20代が多いです。
  • その理由は、キス・性交渉など他者との濃厚な接触が増えるようになるためと考えられています。
  • 他にも食生活習慣の変化や伝染性単核球症に関する知識がなくなったこと・関心の低下などもあるでしょう。
  • 食生活の変化により、乳幼児期にEBウイルスに感染したことがある方が少なくなっています。
  • そのため、抗体を持つ方が少なく青年期以降に発症する方が増えてきているともいわれています。

伝染性単核球症の診断・検査方法

注射器を持つ手

伝染性単核球症を疑う場合、何科を受診したら良いのでしょうか?

  • 熱・のどの痛みなど風邪・インフルエンザと似た症状があらわれます。風邪・インフルエンザの場合、熱・のどの痛みは1週間以内におさまりますが、1週間以上続く場合は伝染性単核球症かもしれません。
  • 伝染性単核球症は内科で診てもらえます。
  • 症状が疑わしいと思ったり不安に感じたりした場合は、近くの内科(特に血液内科)がある病院で相談してみてください。子どもの場合はまず、小児科で相談しましょう。

伝染性単核球症を放置する危険性と受診目安を教えてください。

  • 伝染性単核球症にかかると肝臓・脾臓が腫大しやすくなります。悪化すると破裂することもあります。
  • 他にも、重症化するとさまざまな合併症を併発する場合もあるので注意が必要です。主に次のような合併症があります。
  • 気道閉塞
  • 肺炎
  • リンパ腫
  • 貪食症候群
  • 心筋炎
  • 熱・喉の痛みが1週間以上続く場合は、医療機関を受診することをおすすめします。

伝染性単核球症はどのように診断するのですか?

  • 原因ウイルスや炎症の程度、肝臓に障害がないかで診断します。乳幼児の場合は症状が軽いため、扁桃炎と間違って診断されることが多いです。
  • そのため、知らずのうちに感染している場合もあります。
  • 一度感染すると抗体ができるので、原因となるEBウイルス・サイトメガロウイルスなどの抗体を持っているかどうかで診断することも可能です。
  • しかし検査の結果が分かるまでに数日~10日程度の日数がかかる場合もあります。

検査方法が知りたいです。

  • 診断の結果、疑いがあると判断したら血液検査を行います。白血球の数が増えて異形リンパ球が現れるという特徴があるからです。
  • 白血球の数が増えて異形リンパ球が現れるという特徴があるからです。血液検査で白血球を調べることで診断することができます。
  • 肝臓・脾臓がダメージを受けている場合もあるため、さらに肝臓機能などに関する数値を調べるための血液検査や腹部超音波検査を実施する場合があります。

伝染性単核球症の予防方法や治療方法

薬と水

伝染性単核球症はどんな治療をしますか?

  • 伝染性単核球症を治すための治療法はありません。そのため、基本的には安静にして回復を待ちます。
  • 発熱・のどの痛みなどの症状を和らげるために、アセトアミノフェンなどの解熱鎮痛剤が処方されることもあります。
  • 。風邪などの場合は抗生物質が処方されることもありますが、EBウイルスなどのウイルスには抗生物質が効きません。4~6週間程度で自然と治っていきますが、場合によっては入院となることもあります。
  • 例えば、「のどが痛くて水分が取れない」などの場合は入院になることもあるでしょう。その場合は点滴を使って対処します。

伝染性単核球症の治療後に注意することがあれば教えてください。

  • 先ほども触れましたが、肝臓・脾臓が腫脹することがあります。そのため、肝臓・脾臓に衝撃を与えると肝臓・脾臓が破裂することも考えられます。
  • 病気が治るまでの間は激しい運動・スポーツは避けましょう。お腹・左胸・左わき腹に痛みを感じるときは医療機関を受診してください。
  • 発熱・のどの痛みの緩和のためにアセトアミノフェンが処方されますが、飲み過ぎにも注意しましょう。
  • 肝臓に副作用がでる可能性があるためです。高熱が続いたりすると苦しく、少しでも楽になりたいと飲み過ぎてしまう方もいます。
  • しかしかえって悪化させることに繋がる危険性もあります。医師から服用回数・飲む量などの指示が出ますので、しっかりと医師の指示を守ってください。

防方法が知りたいです。

  • まずは原因となるウイルスをもらわないようにすることが大事です。原因の所でもお伝えしたように、ウイルスは唾液に含まれています。
  • キスによって感染することが多いので、感染者とはキスなどの濃厚接触をしないようにしましょう。箸・スプーンなどの食器を一緒に使うことも避けてください。
  • 普段から口腔ケア・手洗い・消毒などの衛生管理を徹底することでも感染を防ぐことができます。これらは他の感染症にも有効です。
  • 抵抗力・免疫力が低下することで感染しやすくなるので、栄養バランスのとれた食事をとることや十分な睡眠をとることもおすすめします。

最後に、読者へメッセージをお願いします。

  • 感染症と聞くと不安になる方も多いでしょう。感染症にはさまざまな症例があり、最悪の場合は死に至る病気もあります。
  • しかし伝染性単核球症はそこまで怖い病気ではありません。ほとんどの方は自然に完治し、重症化する例はごくまれです。
  • 感染力は弱く、無症状のままウイルスは排出されていくこともあります。症状が落ち着くまでは安静を求められますが、熱・のどの痛みなどがおさまれば普段通りの生活を再開して大丈夫です。

編集部まとめ

白衣と聴診器

伝染性単核球症は乳幼児期にかかる病気でしたが、昨今は若年層での感染が増えているそうです。

一度感染すると抗体ができるため、感染したことがある方は心配ありません。しかし感染したことがない方は、注意が必要です。

肝臓・脾臓が腫大して破裂する、合併症を併発するなど怖い一面もありますが、ほとんどの方が自然に治ります。日頃から衛生管理や食生活などに気を付けて、感染しないように気を付けましょう。

放置すると悪化する可能性があるので、怪しいなと思ったらお近くの医療機関を受診してください。本文でもお伝えしましたが、内科で診てもらえます。

お子さんの場合は小児科で相談しましょう。

この記事の監修医師