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「知的障害」の特徴・症状・接し方はご存知ですか?医師が監修!

 更新日:2023/03/27
「知的障害」の特徴・症状・接し方はご存知ですか?医師が監修!

知的障害とは、おおむね18歳までの時期に現れる障害のことです。細かい思考や問題解決能力が不得手であるなどの症状がみられます。

細かい文章の読解や会話の理解ができない際に、知的障害ではないかと不安を感じる方は多いのではないでしょうか。

そこで本記事では、知的障害の特徴を解説します。具体的な症状や原因・診断方法なども解説するので、症状に当てはまるかなどの確認に役立ててください。

甲斐沼 孟

監修医師
甲斐沼 孟(上場企業産業医)

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大阪市立大学(現・大阪公立大学)医学部医学科卒業。大阪急性期・総合医療センター外科後期臨床研修医、大阪労災病院心臓血管外科後期臨床研修医、国立病院機構大阪医療センター心臓血管外科医員、大阪大学医学部附属病院心臓血管外科非常勤医師、大手前病院救急科医長。上場企業産業医。日本外科学会専門医、日本病院総合診療医学会認定医など。著書は「都市部二次救急1病院における高齢者救急医療の現状と今後の展望」「高齢化社会における大阪市中心部の二次救急1病院での救急医療の現状」「播種性血管内凝固症候群を合併した急性壊死性胆嚢炎に対してrTM投与および腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行し良好な経過を得た一例」など。

知的障害の特徴と症状

記録を取る医療従事者

知的障害の特徴を教えてください。

知的障害とは、知的機能が発達する時期(おおむね18歳まで)に現れる障害のことです。
障害の度合いや特徴のあらわれ方は、個人差があります。しかし、症状には共通点があります。それは、日常生活に支障が出ることであり、何らかの特別な支援を要する状態であるということです。
知的障害は、中枢神経系の機能に影響を与える様々な疾患によって引き起こされます。そのため、疾患群ともいえる点が特徴です。
病気をしている人の国民に対しての割合は一般人口の約1%といわれています。

どのような症状がありますか?

知的障害には、一般的に下記のような行動や症状がみられます。

  • 学習技能を身につけることが困難
  • コミュニケーションが困難
  • 行動のコントロールが困難
  • 身の回りのことに時間がかかる

知的障害の場合、相応な読み書きや計算などの学習技能を身につけることが困難です。学齢期の子供や成人の方にみられる症状となります。
コミュニケーションが困難であるケースもあります。相手に伝えること・相手の言葉が理解できないことも代表的な症状の1つです。
これは、覚えている言葉が少なく、思ったこと・考えたことを上手く伝えられないため起こる症状です。伝えたいことがあるにも関わらず、言葉を知らなかったり、会話中に話している内容を忘れてしまったりするために混乱してしまうケースがあります。
また、難しい言葉が使われているわけではなくても、相手に早口・同時にいくつものことを言われるなどしても混乱を招く可能性があります。そのため、コミュニケーションが困難となるのです。
その他にも、行動のコントロールが困難といった症状もみられます。これは、年齢相応の気持ち・行動のコントロールなどが難しく、衝動的な行動をとってしまうために起こる症状です。
食事や身支度などの身の回りのことに時間がかかることも主な症状です。複雑な行動が伴う場合は、同年代の人と比べると時間がかかるケースがあります。
ただし、これらの各症状は知的障害だけのものではないため、他の病気の可能性もあり注意が必要です。

知的障害には軽度から重度まで段階があると聞きました。

知的障害は、知的機能や適応機能に基づいて判断されるため、重症度によって分類されます。段階は次の通りです。

  • 軽度
  • 中等度
  • 重度
  • 最重度

具体的な段階の判断は、概念的領域・社会的領域・実用的領域の3つの領域から判断されます。概念的領域とは読み書きや数学・論理的な思考・問題の解決力などのことです。
社会的領域とはコミュニケーションや自己制御のことであり、実用的領域とは金銭・行動の管理のことをさします。

障害の程度によりさまざまな特性があるのですね。

軽度の場合、年相応の能力に成長するまで支援を要する場合があります。抽象的な思考が困難なケースがあるため、中学年以降の勉強についていくことが難しい場合もあるでしょう。
社会的領域においては、会話・言語能力が未発達である場合があります。そのため、コミュニケーションのパターン化、気持ち・行動のコントロールが苦手となっているケースがあります。
実用的領域においては、日常生活上の複雑な課題・行動に支援が必要となるかもしれません。しかし、必ずしも支援が必要なわけではなく、自分で解決できる場合もあります。
中等度の場合、幼少期から言葉の遅れがみられ、就学後は学習についていくことが困難なシーンが見られる可能性が高いです。
成人後も小学生程度の精神年齢にとどまるケースが多いとされています。軽度に比べて、早期段階から周囲に知的障害と気づかれる可能性が高いでしょう。
重度の場合、初期の発達時期から運動・言語の面で遅れが目立ちます。専門家による支援や特別支援教育などを必要とし、成人後も3歳~6歳相当にとどまることが多いです。
最重度の場合、言語・運動面において非常に大きい遅れがみられます。生活の多くのシーンで支援を要し、身体障害・発作などを伴うケースもあります。

併発しやすい疾患を教えてください。

知的障害に併発しやすい疾患は次のようなものが代表的です。

  • 発達障害
  • 精神疾患
  • 重度障害
  • 認知症
  • 成人病

自閉症やアスペルガー症候群などの発達障害は、知的障害に併発しやすいといわれています。自閉症と診断されている児童の30%が知的障害といわれているほどです。
他にも抑うつ・不安障害などの精神疾患を併発する可能性もあります。重複障害とは、複数の障害を併せ持つことです。
先天的な知的障害の場合、てんかん・脳性まひ・心疾患などの障害を合併している可能性があります。
また、知的障害を患う方は高齢になると認知症にかかるリスクが高く、知的障害を持たない方よりも発症が早い傾向が見受けられます。
さらに、知的障害がある場合、食事などの制限を自発的に行うことが難しいケースがあるため、偏食により成人病を発症するリスクもあります。

知的障害の原因と診断

考え事をする女性

知的障害はどのように診断されますか?

知的障害の診断は、知能指数(IQ)を測定する知能検査と日常生活能力の兼ね合いを考慮して診断されます。
幼児期であれば、言葉数が少ないことや理解を示す言葉が少ないなどの、知能の遅れから知的障害が疑われます。
ある程度大きくなってから知的障害を診断するには知能検査を用いての評価です。平均から2標準偏差より低いことが1つの判断基準となります。
これとともに日常生活能力の兼ね合いを考慮して診断します。

知的障害の原因を教えてください。

知的障害の原因は、次の3つの区分です。

  • 突発的・生理的要因
  • 先天的要因
  • 後天的要因

突発的・生理的要因は、特に原因はありません。妊娠・出産は通常通りの手順で生まれてきますが、その際に偶然知能指数が低い状態で生まれているケースとなります。
知的障害の段階としては、軽度から中程度であり、知的障害の原因のほとんどが突発的・生理的要因です。
先天的要因は出生前に生じる要因です。感染症・染色体異常・周産期の事故・出生後の病気や高熱などが原因となります。
後天的要因は、出生後に生じる要因です。感染症・外傷性の脳挫傷・脳炎などがこれにあたります。一部の原因は、予防接種などで感染のリスクを減らすことが可能です。

知的障害は遺伝しますか?

知的障害の原因は複数のものが考えられるため、遺伝する可能性は0ではありません。しかし、現段階の研究結果では、 突発的な染色体異常 などが主な病気の原因と判断されることが多いです。
とはいえ、親が知的障害を持っているからといって必ずしも遺伝するわけではありません。仮に遺伝したとしても、子供に症状が発現するとは限りません。

知的障害との向き合い方

打ち合わせ

知的障害がある人とどのように接すればいいですか?

知的障害がある人との接し方としては、次のポイントを押さえて接しましょう。

  • 本人の願いや思いを優先する
  • わかりやすく伝える
  • 予防的な対応を行う

知的障害がある人と接する際には、知的障害の程度や年齢に関わらず、まずは本人の願いや思いを優先するようにしましょう。
本人の思いが優先されることが、何よりも本人の幸福に繋がっていきます。また、わかりやすく伝えることが重要です。具体的な伝達・端的な言葉・ゆっくりとした口調を心がけて伝えましょう。
予防的対応を取ることも必要です。問題が生じてから考えるのではなく、ルールや対処法をあらかじめ伝えておくなど、予防的な対応を行いましょう。
成功体験が増えるほど、その経験をもとに物事の理解が早まるケースがあります。

大人になってから知的障害と判明する場合もあるのでしょうか。

軽度の場合は、大人になってから判明する場合があります。症状が重い状態であれば、小さいころから言語・コミュニケーションの端々で発覚するケースが多いです。
しかし、軽度の場合、あからさまに感じられないケースがあります。そのため、医師の診断がない限り発覚しないケースがあるのです。その結果、大人になるまで判明しないことも多々あります。
では、どのような場合に判明するのかというと、仕事や周囲との会話の中で突然判明することがあります。代表的な一例としては、仕事上の評価などです。
知的障害はあるものの、自分である程度課題やトラブルを解決できるため、できないときに怠けていると判断されてしまうケースがあります。
その評価の結果、ストレス疾患・不登校・うつ病などを患ってしまい、受診したところ知的障害と判明するケースが多いのです。

最後に、読者にメッセージをお願いします。

知的障害は、軽度なものから重度のものまであり、軽度のものであれば自分でも気づかない可能性があります。
具体的な症状や原因を理解して、もしかすると自分も該当しているかもしれないと感じた場合には、医師に相談してみましょう。また、周囲に知的障害の人がいた場合には、どのような伝え方がわかりやすいのかなどを押さえた上で、サポートをしてあげましょう。
本人の思いを尊重し、少しずつ経験を積めばできるようになることも多いです。工夫をしながら適切なサポートで支えましょう。

編集部まとめ

ハートを持つ医師
知的障害は、軽度~最重度まで段階があり、併発しやすい病気などもあるため非常に注意が必要な病気です。

遺伝よりも突発的な染色体異常などで起こることが圧倒的に多く、大人になって急に知的障害と判明するケースもあります。

自分が知的障害なのか気になる方は、一度医師に相談してみましょう。また、自分の周りで知的障害の人がいる場合には、サポートができるように接し方を押さえておきましょう。

この記事の監修医師