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「アンジェルマン症候群」とは?症状・特徴・原因についても詳しく解説!

 更新日:2023/03/27
「アンジェルマン症候群」とは?症状・特徴・原因についても詳しく解説!

アンジェルマン症候群は先天性疾患の1つです。

身近にアンジェルマン症候群の方がいない場合は、馴染みがなく名前も初めて聞くという方も少なくありません。

お子さんがアンジェルマン症候群だと診断された場合は、どんな疾患かもわからず不安を抱えてしまう保護者の方もいます。

今回は、アンジェルマン症候群についてのお話です。症状や原因、診断方法や治療についての解説をしているため、ぜひ参考にしてください。

武井 智昭 医師

監修医師
武井 智昭(医師)

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平成14年慶應義塾大学医学部を卒業。同年4月より慶應義塾大学病院 にて小児科研修。平成16年に立川共済病院、平成17年平塚共済病院(小児科医長)で勤務のかたわら、平成22年北里大学北里研究所病原微生物分子疫学教室にて研究員を兼任。新生児医療・救急医療・障害者医療などの研鑽を積む。平成24年から横浜市内のクリニックの副院長として日々臨床にあたり、内科領域の診療・訪問診療を行う。平成29年2月より横浜市社会事業協会が開設する「なごみクリニック」の院長に就任。令和2年4月より「高座渋谷つばさクリニック」の院長に就任。
日本小児科学会専門医・指導医、日本小児感染症学会認定 インフェクションコントロールドクター(ICD)、臨床研修指導医(日本小児科学会)、抗菌化学療法認定医
医師+(いしぷらす)所属

アンジェルマン症候群とは

考える母と娘

アンジェルマン症候群とはどんな病気ですか?

  • アンジェルマン症候群は染色体の異常によって起こる先天性の疾患のことで、命に直接かかわる病気ではありません。
  • 重度の精神発達の遅れを中心に疾患や運動機能の発達の遅れ、容易に引き起こされる笑いといった、行動面での特徴があります。遺伝による発症例はありますが、ほとんどの場合は発症の原因が不明である特発性であります。このため、両親ともに健康でもアンジェルマン症候群の疾患を持つお子さんが生まれる可能性はあります。
  • 生活面では知的障害・身体障害を有することがほとんどであり、福祉や医療の支援を必要となることが多いです。

あまり聞き慣れない病名です。

  • アンジェルマン症候群は指定難病の1つです。
  • 身近にいない場合は聞きなれない病名のため、お子さんが診断されて初めてその名を知る方も少なくありません。
  • だからこそ、お子さんにアンジェルマン症候群の疑いがあるといわれると、どんな病気なのか想像もつかないため不安でいっぱいになってしまうのです。

主な症状は?

  • アンジェルマン症候群の主な症状は精神発達の遅れと言語障害です。生後6か月から1歳までに発達の遅れが目立ち始めることで気づくことが多く、言語面では理解をすることはできますが発語は難しいケースが多いです。単語は話せても文章を話すことはできないため、言葉でのコミュニケーションは難しいとされています。
  • 場所や雰囲気に関係なく、ちょっとしたことでもすぐに笑うことも特徴です。好奇心が旺盛で興奮しやすく、落ち着きがない方も多くいます。
  • 乳児期や幼児期に睡眠障害を起こすことも多く、夜にお子さんが寝ないと悩まされる保護者の方も少なくありません。また、80%の確率で癲癇(てんかん)を合併します。

身体的な特徴はありますか?

  • アンジェルマン症候群の方は顔に特徴があることが多いです。
  • 顎が突き出ている
  • 口の幅が広く大きい
  • 舌が突き出ている
  • 後頭部が扁平
  • 頭が小さめ
  • 上記が主な特徴になります。もちろん、個人差があるため特徴が目立つ方・ほとんどわからない方とさまざまです。
  • 乳幼児期は頭を支えられず、立ち上げれないなど運動面での遅れがみられます。多くの方は5歳くらいまでに1人で歩けるようになりますが、膝の曲げ伸ばしができない・外反足など不安定なことも多いです。

アンジェルマン症候群の原因や診断方法

診察を受ける患者

アンジェルマン症候群の原因は何ですか?

  • アンジェルマン症候群は染色体に異常が起こることが原因の先天性疾患です。
  • ヒトの細胞は46本の染色体があり、そのうち44本がペアになっている22本の「常染色体」があります。両親から1本ずつもらった染色体がペアになっています。
  • 常染色体には長いものから番号が振り分けられているのですが、このなかで母親由来の15番目の染色体にあるUBE3Aという遺伝子の機能喪失が原因です。

アンジェルマン症候群の子どもが生まれる確率はどのくらいですか?

  • アンジェルマン症候群は生まれてくる赤ちゃんのうち1万5千~2万人に1人の割合で発症するといわれています。世界中でみると毎日18人のアンジェルマン症候群の赤ちゃんが生まれているともいわれているのです。
  • 日本では500~1,000人程度のアンジェルマン症候群の方が生活されています。

遺伝しますか?

  • アンジェルマン症候群の原因が染色体の異常ということから、遺伝で起こると思われる方も多いです。たしかに、遺伝が原因で起こるケースもあります。
  • ただ、その割合は低く染色体が突然変異することで、発症する割合が多いです。そのため誰にでもアンジェルマン症候群の子どもが生まれる可能性があります。
  • また、妊娠前や妊娠中の生活習慣や行動が原因になることはありません。この疾患を持った子どもが生まれたとしても、お母さんが原因ではないのです。

どのような検査をするのですか?

  • アンジェルマン症候群は生まれてすぐに見た目でわかる症状が現れるわけではありません。1歳頃になると、特徴となる症状が現れ病気を疑われることが多いです。
  • 精神面などの特徴があり疑いがもたれた場合に、染色体の検査を行います。
  • ただ、症状がでていても、遺伝子の検査で原因がわからないケースが10%ほどあるため、この場合はすぐに診断がされません。診断まで数年かかることもあります。

出生前の診断はできますか?

  • 遺伝でアンジェルマン症候群を発症する例はまれですが、まったくないわけではありません。遺伝の可能性があらかじめわかっている場合は、出生前診断での検査が可能です。
  • ダウン症、13トリソミー、18トリソミーなど他の染色体の異常を調べる目的で実施される出生前母体血検査(NIPT)などで判明するケースがあります。出生前に赤ちゃんがアンジェルマン症候群と診断された場合は、不安を抱く方も多いです。
  • 状況をしっかり整理をして正しい情報を得たうえで、ご夫婦でしっかり話し合って今後のことを考えていきましょう。

アンジェルマン症候群の治療法や予後の生活

女の子

アンジェルマン症候群の治療法は?

  • アンジェルマン症候群の原因は染色体の異常です。染色体の異常を治すための治療はありません。
  • そのため、治療は症状に対する対症療法が中心です。合併して起こりやすい癲癇には、薬を使い発作が起きないようにコントロールを行い、睡眠障害には睡眠薬を使います。
  • 癲癇の症状などへの対症療法に加えて、早い段階で療育を受けることも大切です。

運動機能や脳機能の発達の遅れは?

  • 運動機能や脳機能の発達の遅れは、上記でお話したように療育を行いサポートをしていきます。理学療法や作業療法、言語療法でサポートをすることが多いです。
  • アンジェルマン症候群の方は、発語は難しいため身振りや道具を使って言語以外でコミュニケーションができる方法を身に着けていくことになります。

療育など周囲のサポートが必要不可欠ですね。

  • アンジェルマン症候群の方は生活の中で介護が必要な疾患です。それでも、早い段階で適切な療育を行うことで改善できる部分もあり、できることの幅が広がります。早いうちに療育に臨めるように、発達センターなどへのパイプをつないでおきましょう。
  • アンジェルマン症候群の方が生活をしていくうえで、家族のサポートは不可欠です。家族だけではカバーしきれない部分も多いため、学校や自治体のサポートも必要不可欠になります。療育やリハビリ、福祉的な支援を早期から実施することにより身体・言語的な発育が促されることによって、機能障害の悪化を予防し、育っていく場合があります。学校は特別支援学級や特別支援学校に通学となることが多いです。

最後に、読者へのメッセージをお願いします。

  • お子さんがアンジェルマン症候群だと診断されると、あまり馴染みのない病名ということもあるため心配も不安も大きくなります。この疾患については、まだ解明されていないことも多く、根本的な部分を治療する方法もありません。
  • また、ご家族の方が今後、介護を続けていくことになる疾患になります。しかし、療育をすることでできることも増え、コミュニケーションが取れて歩くことができれば学校に通うことも可能です。
  • 必要なときに必要なサポートが受けられるようにすることが、アンジェルマン症候群の子どもを育てる上で重要になります。困ったときは家族だけで抱え込まず、家族会や専門の機関に相談をしましょう。

編集部まとめ

母と娘

今回の記事はアンジェルマン症候群についてのお話でした。この疾患は染色体に異常が起こることで発症する疾患で指定難病となっています。

癲癇の発作を起こしたときや誤飲などの事故の危険はありますが、内臓の病気はなく命に係わる疾患ではありません。しかし生活面で介護が必要な疾患です。

ご家族の方は不安になるものですが、療育を受けることで将来的に自分でできることも増えます。

必要であれば、さまざまなサポートを受けることができるため、利用できるサポートは最大限に活用しましょう。

この記事の監修医師