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「髄膜炎」とは?症状・原因・検査についても解説!【医師監修】

 更新日:2023/07/13
「髄膜炎」とは?症状・原因・検査についても解説!【医師監修】

髄膜炎は、脳を覆う髄膜と髄膜に流れる髄液に炎症が起きる病気です。

決して高い確率ではありませんが命に関わるケースもあるため、髄膜炎について理解し適切な治療を迅速に行うことが大切です。

そこでこの記事では、症状・治療方法・予防など髄膜炎について詳しく解説いたします。

万が一に備え、髄膜炎がどのような病気なのか理解を深めていきましょう。

中路 幸之助

監修医師
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)

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1991年兵庫医科大学卒業。医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター所属。米国内科学会上席会員 日本内科学会総合内科専門医。日本消化器内視鏡学会学術評議員・指導医・専門医。日本消化器病学会本部評議員・指導医・専門医。

髄膜炎の原因と種類

髄膜炎の原因と種類

髄膜炎はどのような病気ですか?

  • 髄膜炎は、髄膜に細菌やウイルスが感染し炎症が起こる病気です。
  • 髄膜は、頭蓋骨と脳の間にある膜のことです。この髄膜は脳や脊髄の表面を包み込み保護しています。髄膜は脳に近い方から軟膜・くも膜・硬膜の3層になっており、軟膜とくも膜の間には髄液という液体が流れています。
  • 本来、髄膜は非常に清潔な状態です。しかし、細菌やウイルスが感染し炎症を起こすことで、髄膜炎が発症します。

髄膜炎の原因を教えてください

  • 髄膜炎の主な原因は、感染症です。大きく分けてウイルスの感染によって起こるウイルス性髄膜炎と細菌感染によって起こる細菌性髄膜炎が挙げられます。
  • ウイルス性髄膜炎は、細菌感染とは関係なく発症するため、無菌性髄膜炎と呼ぶこともあります。ウイルス性は、単純ヘルペスウイルス・水痘帯状疱疹ウイルス・真菌などによって引き起こされ、体内のほかの部位で感染したウイルスが血液から髄液中に入り込むことが原因の大半です。細菌感染が原因の場合も、多くの場合は体のほかの部位で感染症を引き起こした細菌が血液から髄液内に入り込んでしまうことが原因です。
  • このほかに、副鼻腔や耳など脳に近い場所で重度な炎症が生じることで髄膜に感染が波及するケース、重度な頭部外傷・頭部の手術などが髄膜炎の原因になる場合もあります。
  • また、ウイルス・細菌の感染に関係なく、がん細胞自己免疫の異常が原因となって発症するケースもあります。極めて稀な例ですが、解熱鎮痛薬・抗生物質・ワクチンなどの薬剤投与によって無菌性髄膜炎が生じる可能性があることも知られるようになりました。薬を飲んだりワクチンを打ったりした後に、発熱・頭痛・首を曲げにくいなどの症状がある場合は速やかに医師に相談しましょう。

原因によって種類があるのですね。

  • 髄膜炎は、原因によって様々な種類がある病気です。感染が原因で発症するウイルス性髄膜炎・細菌性髄膜炎では、結核性髄膜炎真菌性髄膜炎とさらに細かく分類できます。
  • 感染に関与せず、がん細胞が髄液中に入り込むことで炎症を起こす場合はがん性髄膜炎と呼び、本来体を守ってくれるはずの免疫系が脳や髄膜の細胞を攻撃する自己抗体を産生して引き起こされる髄膜炎を自己免疫性髄膜炎と呼びます。
  • このように髄膜炎は、原因に伴い様々な種類に分類できる病気です。原因によって症状・治療方法も異なる特徴があります。

細菌性髄膜炎はリスクが高いと聞きます…。

  • 細菌性髄膜炎は、ウイルス性髄膜炎と比べると重症化しやすい病気です。ウイルス性髄膜炎は通常1週間程度で治り、後遺症が残ることもほとんどありません。
  • 一方、細菌性髄膜炎は、症状が急激に悪化することも少なくなく、患者さん全体の20~30%に後遺症が残ります。炎症が起こった部位によって症状が異なりますが、言葉が出にくくなる失語・空間認識に支障が生じるなどの後遺症が見られます。
  • また、細菌性髄膜炎の死亡率約13~27%と高く、命に関わる病気です。そのため、髄膜炎の中でも細菌性髄膜炎はリスクが高い病気といえます。

髄膜炎の症状と検査

髄膜炎の症状と検査

髄膜炎ではどのような症状がみられますか?

  • 髄膜炎の症状は、一般的に頭痛発熱意識障害首の硬直が挙げられます。原因や患者さんの年齢によって症状に違いがあるのも特徴です。
  • 細菌性髄膜炎:頭痛・発熱・意識障害・首の硬直・痙攣・失語
  • ウイルス性髄膜炎:高熱・頭痛・嘔吐・首の硬直
  • 結核性髄膜炎:頭痛・発熱・嘔吐・意識障害・物が二重に見えるなどの視覚障害
  • 真菌性髄膜炎:頭痛・発熱・嘔吐・首の硬直
  • 頭痛・発熱・首の硬直などが一般的な症状ですが、上記のように種類によって症状・重症度は異なります。また、風邪症状のような症状から3~5日ほどかけて徐々に進行していくウイルス性髄膜炎に比べ、細菌性髄膜炎は症状の進行スピードが早い特徴があります。

すぐに受診すべき症状を教えてください。

  • 髄膜炎の主な症状は、発熱頭痛嘔吐です。これらの症状がある場合は、なるべく早く受診した方が良いでしょう。
  • 初期症状は、軽い頭痛や倦怠感など風邪のような症状の場合も多く、単なる体調不良・風邪と自己判断してしまうケースも少なくありません。しかし、進行すると意識障害・激しい高熱・激しい頭痛・痙攣など重度の症状が表れます。少しでも疑いがある場合は、早めに受診しましょう。
  • また、髄膜炎の症状には、首の硬直というほかの病気では見られない特徴があります。発熱・頭痛・嘔吐だけでなく、首が曲がらない・首が曲げづらい・首が固いといった症状がみられる場合は、髄膜炎の可能性が非常に高いです。首の硬直が認められる場合もすぐに受診しましょう。

どのような検査が行われますか?

  • 髄膜炎が疑われる場合は、血液検査髄液検査画像検査が一般的です。
  • 血液検査は、体内の炎症の状況・脱水の程度を確認するための検査で、血液検査だけで髄膜炎の診断を確定するのは難しいです。しかし、血液培養・血清プロカルシトニンは細菌髄膜炎の診断に有用です。その上で、髄膜炎なのかどうかをはっきりと確定する検査が髄液検査です。腰から針を刺して髄液を採取し、髄液の様子を確認します。髄液の色や糖・タンパク質・白血球の数などを調べ、詳しく診断していきます。細菌培養検査・遺伝子検査とさらに詳しく髄液を調べることで、原因の確定が可能です。
  • ただし、通常腰椎穿刺は安全なものですが、血小板数が低い・抗血小板薬内服中の場合は出血が起こりやすく相対的禁忌であるため注意が必要です。また、脳圧が高い場合は脳ヘルニア(脳が押しつぶされる)の可能性があるため、腰椎穿刺よりも先に頭部CTを撮影した方が安全性が高いといえます。
  • 併せて脳に異常が生じている疑いがある場合は、頭部CT検査・頭部MRI検査などの画像検査も行います。髄膜炎の原因にもよりますが、頭部MRI検査を行うことで特徴的な病変を早期に発見できます。

髄膜炎の治療と予防

髄膜炎の治療と予防

髄膜炎の治療方法を教えてください。

  • 治療は、原因となる病原体に応じた抗菌薬抗ウイルス薬抗真菌薬を投与していきます。
  • また、症状を緩和するための鎮痛剤・解熱剤・抗てんかん薬などを投与する場合も多いです。
  • ウイルス性か細菌性かによっても治療は異なり、重症化しやすい細菌性髄膜炎が疑われる場合は細菌培養の検査結果を待たずに治療を開始するケースもあります。

原因によって治療が異なるのですね。

  • 髄膜炎は、様々な原因によって引き起こされる病気です。そのため、原因によって治療内容は異なります。まず、適切に治療を行うためにもウイルス性なのか細菌性なのか原因の特定が重要です。
  • そのために培養検査を行いますが、細菌性髄膜炎は急速に症状が進行するケースも少なくありません。細菌性による重症化のリスクが疑われる場合は、培養検査を待たずに抗生剤を使用するケースも多いです。
  • 治療を早くしなければならない細菌性髄膜炎の診断のポイントとしては、見た目が膿性・髄液中の糖が低い・乳酸値が高値が挙げられます。これらに当てはまる場合は、細菌性髄膜炎の可能性が高いです。
  • 細菌性髄膜炎だと判明した場合は、抗生剤の点滴を中心に集中的な治療を行います。原因がはっきりわからない場合や抗ウイルス薬がないウイルスが原因の場合は症状を和らげる対症療法のみ行う場合もありますが、細菌性髄膜炎を含め髄膜炎の治療として、抗菌薬投与開始時または開始前よりデキサメタゾンなどのステロイドの点滴を併用するケースが増えています。

髄膜炎の予防方法はありますか?予防接種についても教えてください。

  • 発症の原因は、細菌・ウイルスの感染がほとんどです。そのため、なんらかの感染症を発症した場合は、早めに適切な治療を行いしっかり治すことが予防につながります。
  • 副鼻腔炎・中耳炎などの脳・髄膜に近い部位での病気も、しっかり治すように心がけましょう。また、リスクが高い細菌性髄膜炎の原因の約80%ヒブ肺炎球菌です。
  • これら2つの細菌は、予防接種によって予防できます。ヒブワクチン小児用肺炎球菌ワクチンの接種が、細菌性髄膜炎の予防として効果的です。

最後に、読者へメッセージがあればお願いします。

  • 髄膜炎は、決して致死率が高い病気ではありません。しかし、症状が進行すると重度の症状に苦しむことになりますし、原因によっては死に至ることもあります。場合によっては後遺症が残り、日常生活に支障をきたす場合もあります。
  • 一方で、髄膜炎は原因にもよりますが、早期発見早期治療重症化を回避できる病気です。
  • 頭痛・高熱・嘔吐、そして首の硬直という特徴をしっかり理解し、疑わしい場合は迅速に診察を受けましょう。また、リスクの高い細菌性髄膜炎を予防するためにも、ワクチンの定期接種はしっかり受けましょう。

編集部まとめ

編集部まとめ
髄膜炎は、誰でもなる可能性がある病気です。

病気の原因によっては重度の症状・後遺症・命に関わるケースもあるため、決して軽くみてはいけない病気といえるでしょう。

しかし、適切な処置を迅速に行うことで、早期の治癒が可能なケースも多いです。

髄膜炎から体を守るためには、予防のためのワクチン接種、そして早期発見早期治療が重要な鍵となります。

そのためにも髄膜炎に対する理解を深め、怪しい症状がみられる場合は早めに診察を受けるように心がけましょう。

この記事の監修医師