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「脱肛」とは?治療・症状・原因についても解説!【医師監修】

 更新日:2023/07/13
「脱肛」とは?治療・症状・原因についても解説!【医師監修】

肛門にある内痔核(いぼ痔)が、腹圧によって肛門の外へ出てくる状態を「脱肛」といいます。最初は自然に肛門内に戻りますが、症状が進むと戻らなくなり、いつも出っぱなしという状態になります。日常生活に支障がなければそのまま様子を見てもいいですが、手術となる場合もある病気です。

今回は脱肛の症状や原因、検査や治療方法などを紹介します。

郷 正憲

監修医師
郷 正憲(徳島赤十字病院)

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徳島赤十字病院勤務。著書は「看護師と研修医のための全身管理の本」。日本麻酔科学会専門医、日本救急医学会ICLSコースディレクター、JB-POT。

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脱肛とは

脱肛とはどのような病気でしょうか?

肛門の内側にできた内痔核が大きくなり、排便のときなどに肛門の外に出ることを「脱肛」といいます。

日本人の3人に1人は「痔核(イボ痔)」を持っているといわれ、痔核(イボ痔)が悪化すると脱肛へとつながることが多いです。肛門や直腸下の粘膜が肛門外に脱出する病気で、肛門粘膜脱(こうもんねんまくだつ)とも呼ばれます。

脱肛の症状は

脱肛はどのような症状が現れますか?

脱肛の症状としてまず挙げられるのは出血です。排便後少量の血液が紙に付着する程度から、シャーと走り出る程度まで、出血量はさまざまです。

痔核については、初期には肛門の内部にとどまっていますが、症状が進行すると肛門外に脱出するようになります。一部だけが脱出するものから、肛門の全周に渡って脱出するものまで程度はさまざまです。

そのほか、疼痛や肛門湿疹、分泌物や肛門ポリープ、皮垂(皮膚のたるみ)を起こすこともあります。

心配がない症状

心配しなくてもいい症状とはどんなものですか?

排便時に、肛門の中で内痔核(いぼ痔)がふくれることがあります。肛門の外には脱出しない状態や、排便時いきむと痔核が肛門外に脱出しますが、排便終了とともに自然に戻るものもあります。いずれも緊急性はありませんが、今後様子を見ていくことが必要です。

注意した方がいい症状

注意しなくてはいけない症状はありますか?

排便時はもちろん、力仕事をしたり長時間立っていたりすると容易に脱出し、手で戻す必要のあるものや、お腹に力を入れただけで脱肛する場合です。常に痔核が脱出して、完全に還納するのが不可能な状態は、かなり症状が進んでいます。いずれにしても受診や治療が必要です。

なお、痔核を持っている人は出血に対し慣れているため、大腸の癌などからの出血も痔からの出血と考えやすく、手遅れになる場合があるので注意が必要です。

脱肛の原因

脱肛の原因

脱肛の原因はどのようなことが考えられるでしょうか?

特に原因と考えられるのは以下のとおりです。
  • 内痔核
  • いきむこと
  • 加齢による筋力の低下
  • 食生活

内痔核が原因

内痔核が原因とは、どのようなことがあげられますか?

内痔核が大きくなり肛門外に出てくるのが脱肛の症状です。内痔核ができるのは、血液の流れが悪いこと、肝臓機能の低下があげられます。

いきむことが原因

いきむことが原因とは、どのようなことがあげられますか?

出産経験がある場合は、出産時にいきむ事で脱肛が発生しやすくなります。便秘気味で排便の際にいきむことが多く、スポーツをしているときに、力を入れるために勢いよくいきむ事もあるでしょう。

加齢による筋力の低下が原因

加齢による筋力の低下が原因の場合は、どのようなことがあげられますか?

肛門括約筋が弱まる事で肛門の粘膜が下垂し、上に位置することが保てなくなることで脱肛が起こります。

食生活が原因

食生活が原因の場合は、どのようなことがあげられますか?

アルコールや辛い刺激物などが多い食生活では、便の状態が変わります。アルコールを飲み過ぎると下痢になりやすく、香辛料の刺激物は、消化されずに便となって出てきます。直接原因にはなりませんが、肛門の病気を悪化させる恐れがあります。

脱肛の受診科目

脱肛が疑われる場合には、何科を受診すればいいのでしょうか。

肛門科・肛門外科・消化器外科の受診となります。

脱肛で行う検査

脱肛で行う検査

脱肛では、どのような検査を行いますか?

検査としてあげられる項目は以下のとおりです。
  • 問診やヒアリング
  • 視診と触診
  • 内視鏡検査

問診やヒアリング

問診やヒアリングとはどんな検査ですか?

本人に症状を聞き、その内容で診断します。肛門の病気は問診で診断がつく場合も多く、もっとも重要な検査です。状況を詳しく話しましょう。

視診と触診

視診と触診とはどんな検査ですか?

問診を行った上で、患部を確認します。恥ずかしいと思われる場合もありますが、病院では配慮した診察をするので安心して検査を受けましょう。

内視鏡検査

内視鏡検査とはどんな検査ですか?

問診や視診と触診などで大腸の検査が必要となった場合は、内視鏡検査を行います。内視鏡検査は、体内に小型のカメラのついたスコープを入れて、臓器内に異常がないか調べる検査です。大腸内視鏡は辛くて怖いというイメージを持ちますが、鎮静剤や鎮痛剤を使用するなど、従来に比べ痛みの少ない大腸内視鏡検査を行っている病院があります。

脱肛の性差・年齢差など

脱肛では、性差や年性差はありますか?

脱肛は、程度の差はありますが、痔核は男性に多く、女性の約2倍であるといわれています。その数は、年齢とともに増加します。

脱肛の治療方法

脱肛の治療方法

脱肛にはどのような治療方法がありますか?

痔核は良性疾患なので基本的に手術の必要はないといわれています。座薬軟膏などの局所用剤、経口薬の投与とともに日常生活の改善が必要です。主な治療方法は以下のとおりです。
  • 排便の改善
  • 局所の清潔
  • 食生活や日常生活
  • 手術

排便の改善

排便の改善には、どのような方法がありますか?

便秘や下痢を起こさないようにして、なるべく日頃から肛門の負担を減らしていくことを心がけるのも大切です。

局所の清潔

局所の清潔には、どのような方法がありますか?

毎日の入浴やシャワートイレの使用を行い、常に清潔を保ちましょう。

食生活や日常生活の改善

食生活や日常生活の改善とは、どのような治療ですか?

アルコールや辛いものを避けましょう。なるべく唐辛子や胡椒などの刺激のある調味料を控えることが必要です。また、重いものを持つことや長時間座りっぱなしでいるなど、いきんだり同じ姿勢を続けたりしないことも負担の軽減につながります。

手術

手術とは、どのような治療ですか?

症状が重く保存的治療ですまない場合、外科的療法が必要となり改善しない場合は、手術適応となります。日常生活に支障をきたすものや、急性炎症での疼痛・裂肛を伴い、排便時の疼痛がひどいものが対象です。

手術は、痔核をすべて切除し縫い合わせていく方法が一般的です。切らないジオン注射(ALTA療法)を行う方法もあります。その場合、脱出を伴ういぼ痔に作用するのが一般的です。ジオン注射とは、痔の部分に特殊な薬液を注射していきます。流れ込む血液の量を減らし、痔を小さく固めて退縮させる治療法です。

編集部まとめ

肛門の病気は、生活の質(QOL)の低下を招きます。脱肛は、痔や脱腸と間違いやすく、肛門内に戻る場合は放置されることが多い病気です。治療後も再発の可能性はあります。治療時に受けた生活上の注意点などを守ることが何よりも大切です。

肛門の症状が恥ずかしくて、なかなか相談しにくいですが、気になる症状があれば、肛門科のある病院を受診してみてください。早めの受診が大切です。かかりつけ医を見つけておけば、今後も何かと相談することができます。

この記事の監修医師