「尿路感染症」とは?症状・原因・治療についても解説!【医師監修】
排尿痛や残尿感、頻尿など膀胱炎の症状でつらい思いをした経験はありませんか?また、高熱や背中の痛みで受診すると腎盂腎炎だった経験がある方もいるでしょう。これらの病気の総称を尿路感染症といいます。放置すると、敗血症と呼ばれる命に関わる病気に進行することもあります。
今回は尿路感染症の症状や原因、検査方法、治療方法などを解説します。
監修医師:
平澤 陽介(東京医科大学病院)
2010年3月 横浜労災病院 初期研修修了
2011年4月 慶應大学病院 泌尿器科 助教
2014年4月 東京医科大学病院 泌尿器科 助教
2018年4月 東京医科大学病院 泌尿器科 助教・医長 医学博士取得
2019年5月 Cedars Sinai (アメリカ合衆国カリフォルニア州ロサンゼルス)にResearch fellowとして留学
2021年4月 東京医科大学病院 泌尿器科 講師
尿路感染症とは?
尿路感染症とはどのような病気ですか?
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尿路感染症とは、細菌が膀胱や腎臓などの尿路に入ることで起こる病気です。尿道や膀胱の中で感染がとどまると尿道炎や膀胱炎が起こり、細菌が腎臓まで到達して増殖すると腎盂腎炎を引き起こします。男性の場合は、前立腺や精巣に細菌が増殖してそれぞれ急性前立腺炎、急性精巣上体炎を起こすことが多いです。
尿路感染症は急性と慢性があり、急に発症して症状が強いものを「急性尿路感染症」といい、徐々に発症して症状はさほど強くないものを「慢性尿路感染症」と呼びます。
さらに尿路感染症は、「単純性尿路感染症」と「複雑性尿路感染症」とに分けられます。単純性尿路感染症は尿路に結石やがんなどの病気との関連はない尿路感染症です。複雑性尿路感染症は、尿路に結石やがんが認められるときや、糖尿病のような易感染性の基礎疾患がある場合に起こる尿路感染症です。この場合、結石やがん、糖尿病の治療を行わないと尿路感染症の治療が難しくなり、また繰り返す原因にもなります。
尿路とは?
尿路とはどの部分を指すのですか?
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尿路は文字通り、おしっこが通る道のことです。尿は腎臓で作られており左右1対の臓器です。腎臓で尿が作られるとそれぞれ左右の腎盂から尿管と呼ばれる細い管を通って、膀胱に溜まります。
膀胱にある程度の尿が溜まると、尿意ののちに膀胱が収縮して体の外に排出されます。この一連の器官のことを尿路と呼びます。尿路はさらに上部と下部に分けることができ、腎臓、腎盂、尿管までを上部尿路、膀胱と尿道を下部尿路と呼ぶことがあります。
尿路感染症を引き起こす細菌
尿路感染症はどのような細菌で起こるのですか?
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尿路感染症を引き起こす主な細菌は大腸菌です。急性単純性尿路感染症の場合、80%は大腸菌が原因で起こり、残りの20%は出口付近に住みついている細菌が原因です。
慢性複雑性尿路感染症は30%が大腸菌で、残りの70%は弱い細菌が原因で起こります。この弱い細菌は、抗菌薬が効きにくい傾向にあり、治りにくいのが特徴です。弱い菌だからといって簡単に治療し易いというわけではなく、むしろ抗生剤に耐性のある菌であることも多いので、注意が必要です。
尿路感染症の症状
尿路感染症ではどのような症状が現れますか?
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尿路感染症は尿路に起こる細菌感染症の総称です。そのため、発症する部位により症状は異なります。
- 排尿痛
- 残尿感
- 頻尿
- 尿が濁る
- 血尿
- 腎臓の痛み
- 38度を超える発熱
- 血尿
例えば、膀胱炎では以下のような症状が現れます。
特に、膀胱炎は排尿痛や残尿感、頻尿が特徴で、仕事や家事、学業に集中できないこともあるほどです。
腎盂腎炎では主に以下のような症状が現れます。
腎盂腎炎では、腎臓がある背中付近の痛みとともに高熱が続くのが特徴です。
大事なポイントは、膀胱炎では発熱しないが、腎盂腎炎・急性前立腺炎・急性精巣上体炎では38℃を超える発熱を伴うということです。発熱を有する場合は、比較的長期の抗生剤投与や、場合によって入院加療が必要になることあるので、すぐにお近くの泌尿器科へ受診しましょう。
尿路感染症の原因
尿路感染症の原因を教えてください。
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尿路感染症の原因は小児と大人で異なります。
小児の尿路感染症の原因は、尿路の奇形や閉塞、臓器の未成熟、便秘、糖尿病、ケガや事故などの外傷です。
大人の場合は、ストレスや過労による抵抗力の低下、性交渉や排便、月経などが原因です。最近では、ウォシュレットを使用する際に、ノズルに付着した菌が尿道に飛び散ることでも感染することがわかっています。女性の場合はこのウォシュレットが膀胱炎を誘発しやすいので、使用には特に注意しましょう。どうしても使用したい場合は短めにあまり勢いを強くしないでサッとだけ使用してください。また膀胱炎にすでになっている場合はウォシュレットの使用は控えましょう。
また、女性の場合は男性に比べて尿道が短いため、男性に比べると尿路感染症を起こしやすいでしょう。
尿路感染症の代表的な病気
尿路感染症の代表的な病気を教えてください。
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尿路感染症の代表的な病気には尿道炎、膀胱炎、腎盂腎炎などがあります。それぞれの特徴を解説します。
尿道炎
尿道炎とはどのような病気ですか?
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尿道炎とは、尿道に細菌が侵入して感染を引き起こす病気です。女性の場合、尿道が短いため尿道のみが炎症を起こすのは稀です。そのため、尿道炎と言えば男性の病気を指すことがほとんどです。
尿道炎の主な原因は細菌によるものですが、中には真菌やウイルスが原因になることもあります。性病としては扱われていませんが、性行為によって感染することも多く、クラミジア性尿道炎、淋病性尿道炎などのように性感染症の原因菌により尿道炎になることもあります。
尿道炎の症状は、排尿時の痛みや違和感と尿道からの膿です。ときに尿道の違和感や痛みが起こることもあります。淋菌の場合は症状が強く膿がでることも多いですが、クラミジアの場合は尿道の違和感程度でとどまることも多いです。
膀胱炎
膀胱炎はどのような病気ですか?
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膀胱炎は尿路の中で尿を溜めておく役割をする膀胱に炎症が起こる病気です。膀胱炎の多くは細菌感染が原因で、尿道口から大腸菌などが侵入して、膀胱内で増殖することによって起こりますが、稀に細菌の感染がなくても膀胱炎を発症する場合もあります。
前述のように、膀胱炎になると排尿痛や残尿感、頻尿などの症状があり、放置すると痛みが増して重症化することもある病気です。そのため、できるだけ早く治療を開始しましょう。
腎盂腎炎
腎盂腎炎とはどのような病気ですか?
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腎盂腎炎は、腎臓で作られた尿が流れてきて集まる腎盂とその周囲組織が細菌に感染して炎症が起きる病気です。
原因菌は大腸菌が最も多く、膀胱炎を起こしたあとに細菌が腎盂に達し増殖することで起こります。また腎盂腎炎に結石や腫瘍、前立腺肥大、妊娠、糖尿病、ステロイド治療、抗がん剤治療などが誘因となって起こります。
腎盂腎炎は適切なタイミングで治療を行わなければ、細菌が血液中に侵入して菌血症や敗血症になります。これらは命の危険を伴うため、早期発見・早期治療が大切です。命に関わる敗血症の一番多い原因はこの腎盂腎炎のため、早めに病院に入院してしっかりと抗生剤治療などを行う必要があります。
尿路感染症の受診科目
尿路感染症は何科を受診すれば良いですか?
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膀胱炎や腎盂腎炎、尿道炎の症状があれば泌尿器科を受診しましょう。内科では対応できない場合もあるため、「内科・泌尿器科」もしくは「腎臓内科・泌尿器科」と掲載・表示されているクリニックを受診してください。
尿路感染症の検査
尿路感染症の疑いがあるときはどのような検査を行いますか?
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尿路感染症の疑いがあるときは尿検査、尿培養、血液検査、画像検査などの詳しい検査を行います。尿路感染症は、症状などから問診だけでも診断することがありますが、確定診断のためには詳しい検査が必要です。
尿路感染症の性差、年齢差
尿路感染症には性差・年齢差はありますか?
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尿路感染症は6歳までに女児の3〜7%、男児の1〜2%に起こることがわかっています。そのうち、よく発症する年齢は乳児期と2〜4歳にかけてです。
高齢者でも免疫力や体力の低下とともに起こりやすく、肺炎に次いで頻度が高くなっています。
尿路感染症の治療方法
尿路感染症ではどのような治療を行いますか?
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尿路感染症の治療は抗菌薬を使用します。通常は飲み薬による治療です。腎盂腎炎で症状が強い場合には、入院して点滴で抗菌薬を投与します。
治療期間は膀胱炎で3日、腎盂腎炎は7〜14日間程度です。処方された日数の抗菌薬を服用しても症状が改善しない場合は、再度受診しましょう。
編集部まとめ
膀胱炎や腎盂腎炎の症状は集中力が低下するほどの排尿痛や残尿感、高熱、背中の痛みなどが特徴です。これらの病気の総称を尿路感染症といい、放置すると、敗血症と呼ばれる命に関わる病気に進行することもあります。
治療は抗菌薬の服用で、病状によっては入院することもあります。抵抗力が落ちているときにも尿路感染症は起こりやすいため、生活習慣の乱れに注意が必要です。尿路感染症で気になる症状があれば医療機関を受診しましょう。
参考文献