「膀胱腫瘍」とは?症状・原因・治療法についても解説!【医師監修】
更新日:2023/07/13
膀胱腫瘍とは膀胱にできる腫瘍のことで、良性腫瘍と悪性腫瘍に分かれ、悪性腫瘍のことを膀胱がんと呼びます。
喫煙者が患う確率が高く、血尿や頻尿、排尿痛などの症状があります。進行すると命に関わる病気なので、早めに泌尿器科を受診しましょう。
今回は膀胱腫瘍の症状や原因、検査や治療方法、さらに治療後の療養や性差について解説します。
監修医師:
竹内 尚史(新松戸中央総合病院)
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東京医科大学卒業。その後、複数の病院を経て、2021年より新松戸中央総合病院にて泌尿器科医として勤務。ダヴィンチ手術を多く手がけている。著書は「前立腺がんは「ロボット手術」で完治を目指す!青月社(共著、改訂版)」。日本泌尿器科学会泌尿器科専門医・指導医、日本性機能学会性機能専門医、日本内分泌学会内分泌代謝科(泌尿器科)専門医、日本泌尿器内視鏡学会 泌尿器ロボット支援手術プロクター認定医(手術指導医)、日本ロボット外科学会Robo Doc認定医・ロボット(da Vinci)手術認定医、日本がん治療認定医機構がん治療認定医 、日本メンズヘルス医学 テストステロン治療認定医、日本医師会認定産業医。
膀胱腫瘍とは
膀胱腫瘍とは、どのような病気ですか?
膀胱にできる腫瘍の総称が膀胱腫瘍です。良性腫瘍と悪性腫瘍があります。膀胱にできる腫瘍のほとんどは悪性腫瘍(膀胱がん)ですが、まれに、乳頭状(イボ状)のポリープが増える尿路上皮乳頭腫(内反性乳頭腫)という良性腫瘍であることもあります。
悪性の膀胱癌であった場合90%以上は、尿路の内側をおおう粘膜である尿路上皮に発生する「尿路上皮がん」です。尿路上皮がんは、深達度によって分類されます。
深達度とは、がんがどのくらい膀胱壁に深く入り込んだかの度合いです。筋層まで入り込んでいなければ筋層非浸潤性がん、入り込んでいれば筋層浸潤性がんと分類されます。
ほかにも、腺がんや扁平上皮がん、小細胞がんなどの種類があります。また、膀胱腫瘍は、骨、肝臓、リンパ節などに転移する可能性があるため、早期治療が必要です。
悪性の膀胱癌であった場合90%以上は、尿路の内側をおおう粘膜である尿路上皮に発生する「尿路上皮がん」です。尿路上皮がんは、深達度によって分類されます。
深達度とは、がんがどのくらい膀胱壁に深く入り込んだかの度合いです。筋層まで入り込んでいなければ筋層非浸潤性がん、入り込んでいれば筋層浸潤性がんと分類されます。
ほかにも、腺がんや扁平上皮がん、小細胞がんなどの種類があります。また、膀胱腫瘍は、骨、肝臓、リンパ節などに転移する可能性があるため、早期治療が必要です。
膀胱がどのような臓器なのか教えてください。
膀胱は骨盤の中にある臓器です。男性は膀胱の前に恥骨、下に前立腺、後ろに直腸があります。女性は前に恥骨、上に子宮、後ろに膣があります。形は袋状です。
尿は腎臓でつくられて、腎杯、腎盂、尿管を通って膀胱にたまり、ある程度尿がたまると尿意を覚え、尿道を通って排せつされます。尿が通る道を尿路といい、おおっているのが粘膜である尿路上皮です。
尿道のまわりには尿道括約筋があります。尿道括約筋は通常、尿をもらさないように尿道を締めていますが、尿意を感じて膀胱の筋肉が収縮し、尿道括約筋が緩むと尿が排せつされます。
尿は腎臓でつくられて、腎杯、腎盂、尿管を通って膀胱にたまり、ある程度尿がたまると尿意を覚え、尿道を通って排せつされます。尿が通る道を尿路といい、おおっているのが粘膜である尿路上皮です。
尿道のまわりには尿道括約筋があります。尿道括約筋は通常、尿をもらさないように尿道を締めていますが、尿意を感じて膀胱の筋肉が収縮し、尿道括約筋が緩むと尿が排せつされます。
膀胱腫瘍の症状
膀胱腫瘍の症状を教えてください。
膀胱腫瘍の症状は血尿や頻尿、残尿感、排尿痛、尿意切迫感、尿が出にくくなるなどです。血尿は尿の色が赤や茶色など、目で見てわかる場合もありますが、顕微鏡でないと確認できない場合もあります。
特に膀胱腫瘍の場合は、痛みがない状態で血尿が出ることもあります。この症状が現れた場合は早急に泌尿器科を受診しましょう。
ほかにも、腫瘍が進行すると腰や背中、脇腹が痛んだり、足がむくんだりなどの症状が現れる場合もあります。
特に膀胱腫瘍の場合は、痛みがない状態で血尿が出ることもあります。この症状が現れた場合は早急に泌尿器科を受診しましょう。
ほかにも、腫瘍が進行すると腰や背中、脇腹が痛んだり、足がむくんだりなどの症状が現れる場合もあります。
膀胱腫瘍の原因
膀胱腫瘍の原因を教えてください。
膀胱腫瘍のもっとも高いリスク因子は喫煙です。喫煙者は非喫煙者より2〜3倍も膀胱癌の発生率が高いといわれています。さらに発生率が高いだけでなく、喫煙者は腫瘍が大きくて多発する傾向があると報告されているのです。
ほかにも染料を扱う職業や化学物質を扱う職業など、発がん性物質を暴露することが多い人は発生率が高くなります。
ほかにも染料を扱う職業や化学物質を扱う職業など、発がん性物質を暴露することが多い人は発生率が高くなります。
膀胱腫瘍の受診科目
膀胱腫瘍が疑われる場合、何科を受診するといいでしょうか?
泌尿器科を受診しましょう。リンパ節や骨、肺などに転移する可能性もあるため、できるだけ早期に治療を開始しなければなりません。先ほど解説した症状が現れた場合は、できるだけ早急に泌尿器科を受診しましょう。
膀胱腫瘍の検査
膀胱腫瘍が疑われる場合、どのような検査を行いますか?
膀胱腫瘍が疑われる場合、まず尿検査を行います。先ほど解説したように、尿中に血液が含まれている場合があります。また尿にがん細胞が含まれているかが重要です。さらに超音波検査や膀胱鏡検査で腫瘍の有無を検査します。
腫瘍が見つかった場合はCT検査やMRI検査などの画像検査によって、腫瘍の深達度や広がりを確認する場合もあります。確定診断をするためにはTURBTと呼ばれる経尿道的膀胱腫瘍切除術が必要です。TURBTは、治療も兼ねています。
腫瘍が見つかった場合はCT検査やMRI検査などの画像検査によって、腫瘍の深達度や広がりを確認する場合もあります。確定診断をするためにはTURBTと呼ばれる経尿道的膀胱腫瘍切除術が必要です。TURBTは、治療も兼ねています。
膀胱腫瘍の性差・年齢差
膀胱腫瘍に性差はありますか?
膀胱腫瘍は、女性より男性の方が3〜4倍多いようです。また、50代以降は年齢を重ねるにつれて100歳まで罹患率が高まります。
膀胱腫瘍の治療方法
膀胱腫瘍の治療方法を教えてください。
膀胱腫瘍の治療は、まず確定診断と治療を兼ねてTURBTを行います。TURBTは腰椎麻酔か全身麻酔を行って、尿道から内視鏡を挿入し、電気メスで腫瘍を切除します。切除した組織を顕微鏡で検査することで、腫瘍の深達度や性質などを診断するのです。
ほかにも、薬物療法、薬物を注入する膀胱内注入療法、膀胱全摘出術などの治療法もあります。
そして治療法は、腫瘍の深達度や進行の程度、健康状態を考慮して決定します。
ほかにも、薬物療法、薬物を注入する膀胱内注入療法、膀胱全摘出術などの治療法もあります。
そして治療法は、腫瘍の深達度や進行の程度、健康状態を考慮して決定します。
膀胱腫瘍の進行は、どのように分類されますか?
病期は一般的にローマ数字を使って表記され、膀胱腫瘍の場合は進行の程度によって0期〜Ⅳ期に分類されます。病期は3種のカテゴリーを評価したTNM分類で決められます。
TNM分類のTカテゴリーは腫瘍の深達度、Nカテゴリーは骨盤内のリンパ節への転移の有無や程度、Mカテゴリーは膀胱から離れたリンパ節や臓器への転移の有無です。
深達度はTa〜T4bに分類されて、数字が大きいほど深くまで腫瘍が進行しています。Ta、Tis、T1が筋層まで腫瘍が入り込んでいない筋層非浸潤性がん、T2~T4が筋層まで入り込んでいる筋層浸潤性がんと分類されます。
TNM分類のTカテゴリーは腫瘍の深達度、Nカテゴリーは骨盤内のリンパ節への転移の有無や程度、Mカテゴリーは膀胱から離れたリンパ節や臓器への転移の有無です。
深達度はTa〜T4bに分類されて、数字が大きいほど深くまで腫瘍が進行しています。Ta、Tis、T1が筋層まで腫瘍が入り込んでいない筋層非浸潤性がん、T2~T4が筋層まで入り込んでいる筋層浸潤性がんと分類されます。
筋層非浸潤性膀胱腫瘍(0・Ⅰ期)
進行の程度が低い膀胱腫瘍の治療方法について教えてください。
TURBTで筋層非浸潤性膀胱がんと診断された場合には、膀胱内注入療法を行います。注入する薬は細胞障害性抗がん薬やウシ型弱毒結核菌です。
膀胱腫瘍の90%以上である尿路上皮がん以外の、リスクが高い筋層非浸潤性膀胱がんの場合はTURBTを2回行う場合もあります。
また、膀胱内注入療法の効果が見られないときは、膀胱全摘除術を行う場合があります。
膀胱腫瘍の90%以上である尿路上皮がん以外の、リスクが高い筋層非浸潤性膀胱がんの場合はTURBTを2回行う場合もあります。
また、膀胱内注入療法の効果が見られないときは、膀胱全摘除術を行う場合があります。
筋層浸潤性膀胱がん(Ⅱ・Ⅲ・Ⅳ期)
進行が進んでいる膀胱腫瘍の治療方法について教えてください。
筋層浸潤性膀胱がんで転移がない場合は、一般的に膀胱全摘除術を行います。膀胱全摘除術を行った場合は、尿を排出するために尿路変更術も必要です。
合併症を持っている方や高齢の方は、薬物療法や放射線治療、TURBTなどを行って膀胱温存療法を行う場合もあります。
腫瘍が進行して転移がある、といった場合は薬物療法などが行われます。
合併症を持っている方や高齢の方は、薬物療法や放射線治療、TURBTなどを行って膀胱温存療法を行う場合もあります。
腫瘍が進行して転移がある、といった場合は薬物療法などが行われます。
膀胱腫瘍治療の療養
膀胱腫瘍の治療後に気をつけることはありますか?
膀胱腫瘍の進行状況や治療状況、症状などによって注意点は違います。医師と相談の上で、無理なく生活しましょう。
TURBT後の生活
TURBT後の生活はどうなりますか?
TURBTの場合、治療後1週間ほどで治療前のような生活を送れます。膀胱の機能は、あまり損なわれません。
膀胱全摘徐術後の生活
膀胱全摘徐術後の生活はどうなりますか?
膀胱全摘徐術後は、ストレッチやウォーキングのように軽めの運動から始めましょう。治療前のような生活が送れるように、数か月かけて体力をつけます。腹筋を強く使う運動は避けつつ、自分のペースで頑張りましょう。
編集部まとめ
膀胱にできる腫瘍の総称が膀胱腫瘍であり、膀胱腫瘍の90%以上は、尿路上皮がんと言われています。
症状は血尿や頻尿、排尿時の痛みなどです。膀胱腫瘍のもっとも高いリスク因子は喫煙で、非喫煙者より2〜3倍も膀胱癌の発生率が高く、男性の方が女性より3〜4倍も罹患者が多いのが特徴です。
尿検査や超音波検査、膀胱鏡検査などを行って腫瘍の有無を検査します。腫瘍が見つかった場合はCT検査やMRI検査で深達度や広がりを確認し、確定診断にはTURBTが必要です。
進行の程度によってステージは0期〜Ⅳ期に分けられ、ステージやその他の状態によってTURBT、膀胱内注入療法、膀胱全摘除術などの治療を行います。
膀胱腫瘍が疑われる場合、リンパ節や骨、肺などに転移する可能性もあるため、できるだけ早急に泌尿器科を受診しましょう。
参考文献