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「急性白血病」とは?初期症状や原因についても解説!

 更新日:2023/03/27
「急性白血病」とは?初期症状や原因についても解説!

急性白血病は恐ろしい病気として広く存在を知られています。血液のがんとも呼ばれ、発症してから治療せず放置するとわずか2〜3ヶ月程度で命を落としてしまうほど危険な病気です。

早期の発見・治療が命取りとなるものの、注意すべき症状は病名ほど知られていないのが現状です。

この記事では、急性白血病について原因・兆候・治療方法などを詳しく解説いたします。自分や大切な存在を守るためにも、ぜひご参考にしてください。

甲斐沼 孟

監修医師
甲斐沼 孟(上場企業産業医)

プロフィールをもっと見る
大阪市立大学(現・大阪公立大学)医学部医学科卒業。大阪急性期・総合医療センター外科後期臨床研修医、大阪労災病院心臓血管外科後期臨床研修医、国立病院機構大阪医療センター心臓血管外科医員、大阪大学医学部附属病院心臓血管外科非常勤医師、大手前病院救急科医長。上場企業産業医。日本外科学会専門医、日本病院総合診療医学会認定医など。著書は「都市部二次救急1病院における高齢者救急医療の現状と今後の展望」「高齢化社会における大阪市中心部の二次救急1病院での救急医療の現状」「播種性血管内凝固症候群を合併した急性壊死性胆嚢炎に対してrTM投与および腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行し良好な経過を得た一例」など。

急性白血病とはどんな病気?

体調不良や悩みのイメージの中年男性

急性白血病とはどんな病気ですか?

  • 急性白血病とは、血液のがんとも呼ばれ恐れられている病気です。骨髄や血液の中で細胞ががん化して増殖します。
  • その細胞の種類によって骨髄性とリンパ性に分類され、さらに病気の進行速度や悪性となった細胞の段階に応じて急性と慢性に分けられます。
  • 急性白血病は急激に症状が進行するのが特徴で、あとから慢性白血病に変化することはありません。
  • 発症後、治療をせずに放置していると、わずか2〜3ヶ月で命を落とす恐ろしい病気です。

急性白血病になる原因・兆候はありますか?

  • 急性骨髄性白血病は、骨髄や血液の中に腫瘍細胞(白血病細胞)が現れる病気です。
  • 骨髄は骨の中心部にあり、血液を作る役割を担う場所です。血液細胞のもととなる造血幹細胞が分化して増殖し、血液が作られる過程で骨髄芽球という未熟な血液細胞が生まれます。
  • この骨髄芽球の遺伝子になんらかの異変が起こり、がん化した白血病細胞が増殖することで発症します。
  • 急性リンパ性白血病は、白血球の中のリンパ球が未熟なうちに悪性化してしまい、増殖することで発症に至る病気です。しかし、このような異変が起こる原因は未だわかっておらず、急性白血病の多くが原因不明です。
  • ただし、放射線被曝や抗がん剤治療の後には発症する確率が上がることがわかっています。
  • また遺伝性の病気ではないため、親から子へ遺伝する心配はありません。初期の頃には症状が出ないため、症状が進行する前の段階での兆候はないことがほとんどです。

急性白血病を疑う症状を教えてください。

  • 初期の頃は特に症状が出ないことが多く、進行してから異変が現れます。主な症状は下記の通りです。
  • 倦怠感
  • 動悸
  • 息切れ
  • 肺炎
  • 敗血症
  • 出血傾向
  • 倦怠感・動悸・息切れは、正常に血液が作れなくなるための貧血に伴う症状です。肺炎・敗血症などの白血球の減少による感染症に伴う症状も起こりやすくなります。
  • 血小板の減少による出血傾向も強まるため、血が止まりにくいことで症状に気づく場合もあります。
  • また、下記の症状にも注意が必要です。
  • 肝臓などの臓器の腫れ
  • 腰痛や関節痛
  • 頭痛
  • 吐き気・嘔吐
  • これらの症状がみられた場合、白血病細胞が臓器にまで浸潤しているケースもあります。不調を感じたら速やかに医師による診断を受けることが大切です。

急性白血病の発症と年齢は関係ありますか?

  • 急性骨髄性白血病の発症頻度は、10万人に2〜3人です。発症率は年齢が上がるにつれて増加するといわれています。
  • 40代から徐々に発症率が上がり、60〜70代での発症がもっとも多いです。一方、急性リンパ性白血病は主に小児に発症することが多いです。
  • 特に2〜5歳の幼児に多く、15歳未満の小児で発症するすべての白血病のうち急性リンパ性白血病が75%を占めています。
  • 成人の場合は45歳を超えるとやや増加する傾向にあり、1年間で10万人あたりに1人の発症率とされています。

急性白血病の検査方法や治療方法とは

医療イメージ―聴診器とカルテ

急性白血病はどのような検査を行って診断するのですか?

  • 急性骨髄性白血病では、治療方針を決定するためにも病型分類が非常に重要です。病型分類は、国際的にFAB分類・WHO分類の2種類が用いられます。
  • 診断と治療方針を定め、病型分類の決定・臓器の異常・合併症などの有無を調べるために下記のような検査を行います。
  • 血液検査
  • 骨髄検査(骨髄穿刺・骨髄生検など)
  • 腹部超音波検査
  • 腹部CT検査
  • 急性リンパ性白血病では、B細胞性・T細胞性などの白血病細胞の種類や特徴的な染色体異常の有無を調べます。
  • 病状の見通しをたて、適切な治療方法などを判定するため重要です。
  • そのために下記のような検査を行います。
  • 理学的所見・問診
  • 血液検査
  • 骨髄検査(骨髄穿刺・骨髄生検)
  • リンパ節・肝臓・脾臓の腫脹がないかや感染の徴候や出血症状がないかなど、全身の診察で健康状態を調べる必要があります。また、血液の状態・臓器の異常の有無などを血液検査で判定することが可能です。
  • 骨髄検査は診断のために必須の検査で、骨髄液を採取して行います。採取した骨髄液はさまざまな検査に用いることで正確な診断につながるため、とても重要です。

検査にかかる時間や治療開始までの期間を教えてください。

  • 急性白血病は進行が早く早急な対処が必要とされるため、診断されればすぐに治療が開始されます。
  • 本格的な治療方針は、血液検査など以外に骨髄検査も受けて結果が出てから決まります。
  • 急性白血病の診断に欠かせない骨髄検査は、健康体の場合にはあまり経験することのない検査です。胸骨または腰の骨である腸骨に細い針を刺すことで、骨髄液を数ミリリットル吸引します。
  • 検査自体に入院の必要はなく通常10〜15分程度で完了し、検査後は20〜30分程度は安静にする時間が必要です。止血を確認すれば徒歩での帰宅が可能です。
  • 骨髄穿刺は2〜3日、骨髄生検は1〜2週間程度で結果が出ます。

急性白血病はどんな治療をするのですか?

  • 急性骨髄性白血病の治療では白血病細胞の根絶が最終的な目標です。強力な化学療法の繰り返しが基本ですが、全身状態・年齢・合併症の有無・患者様の希望を考慮します。
  • 主に下記のような治療法があります。
  • 化学療法
  • 造血幹細胞移植
  • 支持療法
  • 急性リンパ性白血病の場合、化学療法と造血幹細胞移植が主な治療法です。
  • 化学療法
  • イマチニブ療法
  • 同種造血幹細胞移植
  • 支持療法
  • さらに、寛解導入療法・寛解後療法に分類されます。寛解導入療法には通常1ヶ月程度の治療期間が必要です。
  • 寛解状態になることで、寛解後療法に移行します。寛解後療法は通常1〜2年程度行って終了となります。
  • 化学療法は主に抗がん剤を用いた治療法で、もっともポピュラーです。しかしそれぞれの病状や希望を考慮し、検査結果をもとに医師と相談しながら最適な治療法の選択を行うことが大切です。

治療にはどのくらい期間がかかりますか?完治するのかも知りたいです。

  • 治療の期間によって多少異なるものの、入院を必要とする治療が8〜12ヶ月程度です。状況によって外泊や一時的に退院して自宅で過ごすことも可能です。
  • 入院治療後も1年〜1年半程度は飲み薬による治療を続け、定期的な通院が必要になります。
  • なお、寛解導入療法は1週間〜10日程度の抗がん剤治療で完全寛解を目指します。
  • 3週間程度で完全寛解となることが多いものの、完全寛解に至らない場合には繰り返しの治療が必要です。その後は寛解後療法に移行し、抗がん剤を用います。
  • 地固め療法・維持療法・強化療法などもこれに該当する治療法です。
  • 治療法・スケジュールには個人差があり、抗がん剤の投与期間も1〜5年と大きな個人差があります。

急性白血病の治療中の過ごし方や予防方法

飲み薬

急性白血病の治療中に注意することはありますか?

  • 治療によって一気に壊れた白血病細胞の残骸が体内に溢れると、処理しようとする腎臓の機能が追いつかない場合があります。
  • そのため最初の1〜2週間程度は残骸を薄めるために点滴を増やしたり、腎臓に悪影響を及ぼす尿酸を分解するための投薬を行うなどの対策が必要です。
  • また、治療の初期の段階では血液細胞に影響を及ぼす薬を使用するため、ただでさえ白血病細胞の影響で血液が作りにくい状態になっている体は合併症が起こりやすくなります。
  • 治療が進んで寛解した後も、白血球が少なくなっているため感染症などにかかると重症化の恐れがあります。
  • ご本人はもちろん、ご家族も含めて感染症には注意を払うことが大切です。

再発する可能性があると聞いたのですが…

  • 急性白血病は、寛解の状態に持っていけたとしても再発する可能性のある病気です。
  • 治療が終了した段階でも白血病細胞がどこかに残っていると、増殖して症状が出現する・検査で検出されるなど、再発に至る場合があります。
  • 急性骨髄性白血病の再発は、治療後3〜5年以内に起こりやすいです。65歳未満のおよそ85%が完全寛解し、65歳以上では約60%が完全寛解します。寛解した患者様のうち40%前後は治癒すると期待されています。
  • 急性リンパ性白血病の再発が多くみられるのは寛解から2年以内です。
  • 寛解から4年経過すると、再発の可能性は1%以下まで下がります。

急性白血病を予防することは可能ですか?

  • 残念ながら急性白血病のはっきりとした原因はいまだに解明されていません。そのため効果的な予防法も存在していないのが現状です。
  • ただし、十分に解明されてはいないものの、ウイルス・有機溶剤・喫煙などとの関連性が考えられています。
  • これらを避けることが予防になるとはいい切れませんが、頭の片隅にとどめておいてもよいかもしれません。

最後に、読者へのメッセージをお願いします。

  • 白血病には、色々な種類があり、大きく分けると急性と慢性に分類されます。
  • 特に、急性骨髄性白血病では、骨髄中で骨髄芽球に異常が起こり、がん化した白血病細胞が骨髄で異常に増殖する病気であり、白血病細胞が増加することによって正常血液細胞が合成されず、赤血球、血小板、白血球などが正常よりも減少します。
  • その結果として、貧血症状が出現し、息切れや動悸を自覚しますし、血小板が低下することで鼻出血や歯茎出血、それ以外にも発熱、頭痛、関節痛などの症状が自覚されることもあります。
  • また、急性リンパ性白血病とは、白血球の一種であるリンパ球になる前駆細胞に異常が起こり、がん化した白血病細胞が骨髄で無制限に増殖する病気であり、脳や脊髄などの中枢神経に浸潤しやすい特徴があります。
  • 白血病細胞が様々な臓器に浸潤すると、関節痛がひどくなる、あるいはリンパ節が腫脹する所見などが出現しますし、脳や脊髄など重要な中枢神経に浸潤すると頭痛や吐き気が自覚されます。
  • 急性骨髄性白血病や急性リンパ性白血病は病状の進行が速いので、早期的な診断と治療に結び付けることが重要な視点となります。

編集部まとめ

白衣を着た男性(パソコン・笑顔)
この記事では急性白血病についてご紹介しました。

急性白血病は、医学が進んだ現代でもいまだに原因が解明されていないため、いつ突然に降りかかってきてもおかしくない病気です。

治療せずに放置してしまうと短期間で症状が進行し、命を落としてしまいます。しかし早期に発見・治療できれば寛解できる可能性も決して低くはありません。

日常的に健康的な生活を心がけることは、異変が起こった場合に早く気づくことにもつながります。

体調の変化を見逃さず、どこかおかしいと感じたらまずは医療機関を受診するようにしましょう。

この記事の監修医師