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「テタニー」の前兆となる症状はご存知ですか?医師が監修!

 更新日:2023/03/27
「テタニー」の前兆となる症状はご存知ですか?医師が監修!

テタニーという筋肉の硬直が持続的に起こる症状は、激しい痛みを伴うためつらさを感じる方が多いです。

あまりにも頻繁に起こると「病気なのではないか」「また症状が出るのがこわい」という方もいます。

テタニーの症状で悩んでいる方に向けて、テタニーが起こる原因や症状などを詳しく解説します。

どのような状態の時に受診するべきか・治療方法についても紹介するため参考にしてみてください。

甲斐沼 孟

監修医師
甲斐沼 孟(上場企業産業医)

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大阪市立大学(現・大阪公立大学)医学部医学科卒業。大阪急性期・総合医療センター外科後期臨床研修医、大阪労災病院心臓血管外科後期臨床研修医、国立病院機構大阪医療センター心臓血管外科医員、大阪大学医学部附属病院心臓血管外科非常勤医師、大手前病院救急科医長。上場企業産業医。日本外科学会専門医、日本病院総合診療医学会認定医など。著書は「都市部二次救急1病院における高齢者救急医療の現状と今後の展望」「高齢化社会における大阪市中心部の二次救急1病院での救急医療の現状」「播種性血管内凝固症候群を合併した急性壊死性胆嚢炎に対してrTM投与および腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行し良好な経過を得た一例」など。

テタニーとはどんな病気?

テタニーとはどんな病気?

テタニーとはどんな病気ですか?

  • テタニーとは病気の名前ではなく、手足などの筋肉が痙攣を起こして持続的に硬直している状態のことを指します。
  • 発作的に発症し、主な症状は両手指や両足のしびれ・口周りのしびれ・痛みを伴う筋肉の痙攣などです。症状としてはふくらはぎに硬直を起こす「こむら返り」のような状態として認識されることもあります。強いテタニー発作を起こすと筋肉の痙攣によって激しい痛みを伴い、ショックで意識を失ってしまう場合もあります。
  • また精神面も非常に不安定になり、興奮状態を引き起こすこともあるのです。

テタニーは何が原因で発症するのですか?

  • テタニーは主に電解質のバランス異常が原因で起こります。電解質とは身体の筋肉細胞や神経細胞の働きに関わる重要な物質です。電解質の異常にはさまざまな種類があり、テタニーが症状として現れる異常は低カルシウム血症・低ナトリウム血症・低マグネシウム血症などがあります。電解質のバランスが崩れてしまう要因の裏には病気が潜んでいる可能性もあります。
  • テタニーの症状が現れる病気として代表的なのは「副甲状腺機能低下症」です。副甲状腺とはカルシウムバランスを保つホルモンを分泌する働きをしていて、副甲状腺からのホルモン分泌が低下するとカルシウム障害が起こりテタニーを発症します。甲状腺切除の手術を受けた際に、副甲状腺も一緒に取り除いてしまったことによりテタニーが起こるケースもあります。過換気症候群もテタニーを起こす要因の1つです。過換気症候群の発作である過呼吸によって、血液がアルカリ性に傾き症状を引き起こすのです。また腎臓の働きが悪くなると摂取した食べ物からカルシウムが吸収されにくくなるため、低カルシウム血症を引き起こす可能性があります。
  • 他にテタニーを引き起こす原因としては、くる病・尿細管性アシドーシス・尿毒症・利尿薬の長期使用・抗菌薬・カルシウム摂取不足・ビタミンBの欠乏があげられます。このようにテタニーが起こる原因はさまざまで症状だけでは病気の特定ができないため、原因を解明するためには医療機関での精密検査が必要です。

テタニーが発症する兆候はありますか?

  • 筋肉の硬直の前に、口の周りや手足の先端のしびれを感じたら症状が出る可能性があります。
  • また筋肉の硬直の前に足がつる時のような感覚が襲ってくることもあります。
  • 基本的には数分すればおさまりますが、症状がひどくなると痙攣などを伴うテタニー発作に進展してしまうので注意が必要です。

テタニーにみられる症状を教えてください。

  • 筋肉が強く収縮して痛みを伴う痙攣を起こします。テタニーは主に手足や顔面に出やすいといわれていますが、まれに喉の筋肉や呼吸筋に出ることもあります。呼吸器の筋肉にテタニー発作が起こると窒息を起こす可能性があるため注意が必要です。
  • 重度のテタニー発作が起こると両手足の強張り・顔のひきつれ・痺れが全身に及ぶなどの症状が出ます。重度の場合は突然意識を失って反応がなくなることもあるため、てんかん発作と間違われることも珍しくありません。
  • 電解質異常が原因の場合は食欲不振・疲れやすい・吐き気・嘔吐・不眠などの症状が伴って起こる可能性もあります。低カルシウム血症の場合は症状が出ないことがあり、自覚症状などで認識しづらいのが難点です。ただしカルシウム濃度が低い状態が続くと皮膚が乾燥する・爪が脆くなる・毛髪が粗くなるなどの症状が出ることがあります。

テタニーの診断・検査方法とは

テタニーの診断・検査方法とは

テタニーを疑う場合は何科を受診したら良いのでしょうか?

  • テタニーが頻繁に起こる場合は神経内科で精密検査を受けましょう。
  • 神経内科とは脳・脊髄・神経・筋肉の病気を検査・治療する内科のことです。
  • テタニーは神経系の病気が潜んでいる可能性が高いため、まずは神経内科を受診することをおすすめします。

この症状が出たら受診すべき、という症状はありますか?受診目安を教えてください。

  • テタニーの症状が頻繁に起こり、程度が強くなっている場合には受診を検討しましょう。
  • 放置していると発作のような症状が出る可能性があるため注意が必要です。
  • 症状が強いテタニー発作が起こった場合には、すぐに受診してください。

テタニーの検査とはどのようなものを行いますか?

  • まずは血液検査をしてカルシウムとマグネシウムのバランスに異常がないかを確認します。カルシウム濃度は血液中のPhによって左右され、血液がアルカリ性に傾いている状態だと低カルシウム血症だといえます。
  • テタニーの背景に病気が潜んでいる可能性があると判断された場合には、病気の特定をするための検査も必要です。
  • 副甲状腺ホルモンやビタミンDの測定によって腎機能や骨の状態を確認し、必要に応じて尿検査・レントゲンの検査を行います。副甲状腺機能低下症の簡易検査としては、上腕を3分間圧迫している間に手指に強張りを感じたら副甲状腺機能低下症の疑いがあります。

テタニーの治療方法や予防方法

テタニーの治療方法や予防方法

テタニーは主にどのような治療を行いますか?

  • 治療方法は検査の結果によって異なりますが、電解質異常の場合はカルシウムやマグネシウムの補充療法を行います。症状が軽度の場合にはカルシウムやビタミンDのサプリメントを服用しますが、重度の場合はグルコン酸カルシウム製剤を静脈注射・点滴するケースもあります。
  • 検査によって原因となる疾患が発見された場合には、その病気を治すための治療が必要です。その際の治療方法は医師と相談しながら、適した治療法を提案してもらいましょう。また継続的に服用している薬剤が原因でテタニーが起こっていると分かれば、薬剤の使用を中止します。
  • テタニーを起こす代表的な薬剤は利尿薬です。利尿薬を長期で飲み続けているとテタニーの症状が起こることもあるため、症状が出た際は薬の使用を停止して経過を観察します。

テタニーの治療中、自宅でできるケアなどあれば知りたいです。

  • テタニーの治療中は処方された薬を飲み忘れないように注意しましょう。
  • ビタミンなどの錠剤を服用している間は尿のカルシウムが増えやすくなる傾向がありますが、薬による作用のため過度に気にする必要はありません。
  • 万が一自宅でテタニー発作による痙攣が起こった際には、口周りの痙攣によって舌を噛んでしまうことがあります。タオルを加えるなどして舌を噛んでしまわないように注意しましょう。

テタニーは予防できますか?

  • テタニーが起こる原因が病気であった場合は、まず特定の病気を治すことで症状が和らぎます。
  • 自宅でできる予防策としては、電解質のバランスを整えるためにミネラルを補給しマグネシウム・カルシウム・カリウムの多い食べ物を食べることです。
  • また定期的にストレッチなどをして身体を温めたり動かしたりすることも効果があります。

最後に、読者へメッセージをお願いします。

  • テタニー自体は病気ではありませんが、テタニーが頻繁に発生する背景にはすぐに処置が必要な病気が潜んでいる可能性があります。症状が強くなると痙攣などの発作となり意識を失ってしまうこともあるため注意が必要です。もし発作のような症状が出た場合には神経内科で精密検査を受けてみましょう。血液検査などで電解質に異常がないかどうかを確認することもできるため、早期に症状を改善できる可能性があります。
  • テタニー症状は、自分の意志とは無関係に手足や手指などの領域で筋肉が痙攣を起こした状態を指しています。この症状は、電解質のバランス異常によって主に引き起こされると認識されています。また、電解質の異常を認める背景に根本的な原因となる基礎疾患が潜在している可能性があります。テタニー症状は、低カルシウム血症や低マグネシウム血症などの電解質のバランスが崩れた状態が直接的に原因となって発症します。こうした電解質のバランス異常の誘因としては、例えば副甲状腺機能低下症を代表例として挙げることができます。
  • 副甲状腺とは甲状腺の周囲に存在している臓器であり、副甲状腺ホルモンと呼ばれる生体にとって重要なホルモンを日々分泌しています。このホルモンはカルシウムバランスを保つ働きがあり、副甲状腺機能低下症でホルモンの分泌が低下するとカルシウムの障害が生じるのでテタニー症状の出現につながります。電解質の明らかな異常所見があれば、それらを効率的に補正するためにカルシウムやマグネシウムの補充療法が医療機関で実践されます。補充そのものは点滴によって投与することもあれば、内服薬を用いることも経験されます。また、原因疾患に応じた治療も考慮する必要があります。仮に、長期的な薬剤服用がテタニーの原因と想定されるケースでは、原因薬剤の中止も考慮されます。

編集部まとめ

編集部まとめ
テタニーとは手足などの筋肉が痙攣して、持続的に硬直している状態のことをいいます。

テタニーは病気の名前ではありませんが、テタニーが症状として現れる病気が存在します。

テタニーを発生させる病気の1つは副甲状腺機能低下症というカルシウム障害を起こす病気です。

その他にも電解質の異常や薬の影響、過換気症候群などさまざまな原因が考えられます。

テタニーの症状で悩んでいる場合は、まず神経内科を受診して血液検査や必要に応じた検査をしてもらいましょう。

早めに受診することで、症状の原因を早期に見つけて悩みを解消できる可能性があります。

この記事の監修医師