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「クッシング症候群」ってどんな病気?症状についても解説!

 更新日:2023/03/27
「クッシング症候群」ってどんな病気?症状についても解説!

クッシング症候群とは、副腎から分泌されるコルチゾールとよばれるホルモンが過剰に分泌されることにより、高血圧・耐糖能異常(糖尿病)・骨粗鬆症・月経異常・うつ傾向・体重増加などの臨床的な症状があらわれる病気です。

副腎から分泌されるホルモンの中で最も重要なのがコルチゾールといわれており、コルチゾールにはあらゆる生体機能をサポートする役割があります。コルチゾールは少なすぎても多すぎても人体に影響を及ぼすとても繊細なホルモンです。

今回はクッシング症候群について、症状や治療法を詳しくみていきましょう。

武井 智昭

監修医師
武井 智昭(高座渋谷つばさクリニック)

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【経歴】
平成14年慶應義塾大学医学部を卒業。同年4月より慶應義塾大学病院 にて小児科研修。平成16年に立川共済病院、平成17年平塚共済病院(小児科医長)で勤務のかたわら、平成22年北里大学北里研究所病原微生物分子疫学教室にて研究員を兼任。新生児医療・救急医療・障害者医療などの研鑽を積む。平成24年から横浜市内のクリニックの副院長として日々臨床にあたり、内科領域の診療・訪問診療を行う。平成29年2月より横浜市社会事業協会が開設する「なごみクリニック」の院長に就任。令和2年4月より「高座渋谷つばさクリニック」の院長に就任。

日本小児科学会専門医・指導医、日本小児感染症学会認定 インフェクションコントロールドクター(ICD)、臨床研修指導医(日本小児科学会)、抗菌化学療法認定医
医師+(いしぷらす)所属

クッシング症候群とはどんな病気?

クエスチョンマークを持つ女性

クッシング症候群にはどんな症状がありますか?

  • クッシング症候群であらわれる症状には特徴的なものが多く、下記のようなものがあげられます。
  • 顔に脂肪がつき丸くなる満月様顔貌
  • 野牛肩
  • 体に脂肪が集まり手足は痩せている中心性肥満
  • 皮膚が薄くなる菲薄化
  • 近位筋の筋力低下
  • みぞおちや顔・肩・背中などに脂肪がつきやすく、逆に手足の筋肉は衰えて細くなっていくというのが身体的症状の中で最も大きな特徴です。これら以外に、高血圧・耐糖能異常(糖尿病)・骨粗鬆症・月経異常などの臨床的な症状がみられることもあり、クッシング症候群の診断するための判断材料になります。臨床的な症状のみの場合はクッシング症候群の診断はつきにくく、身体的症状があるかどうかが重要です。

クッシング症候群は何が原因で発症するのでしょうか?

  • クッシング症候群はコルチゾールが過剰分泌されることで引き起こされますが、原因は副腎皮質の腫瘍である副腎皮質腺腫や脳の下垂体にできた腫瘍であることが多いです。ごく稀に副腎皮質がんが原因の場合もあります。クッシング症候群は病気の状態により、下記のように分類されます。
  • 副腎の異常によりコルチゾールが増加する副腎性クッシング症候群
  • 下垂体腫瘍などが原因で副腎皮質刺激ホルモン(ATCH)が過剰に分泌され、コルチゾールが増加するATCH依存性クッシング症候群
  • コルチゾールと同じ作用のある薬剤を使用することでコルチゾール過剰の症状があらわれる薬剤性クッシング症候群

クッシング症候群に陥るリスクは…?

  • クッシング症候群はステロイドホルモンであるコルチゾールが過剰に分泌されることで起こる病気です。コルチゾールには糖や脂肪、たんぱく質などの人間が必要な栄養素の代謝の促進作用があり、ほかにも炎症を抑えたり免疫機能の抑制作用もあります。コルチゾールは人間が生きていくうえで必要不可欠なホルモンなのです。
  • しかし、コルチゾールには骨吸収作用・胃酸の分泌を促進する効果・脂質代謝異常などの作用もあり、これによりさまざまな合併症を引き起こすリスクがあります。血糖値の上昇による糖尿病や骨粗しょう症になりやすく、病状が進むと病的骨折、高血圧や高脂血症の影響による脳卒中・狭心症などの虚血性心疾患となる可能性が上昇します。そしてさらに重症化すると免疫力が低下、感染症にかかりやすくなり、敗血症になってしまう危険があります。
  • クッシング症候群の方がこれらの合併症を引き起こした場合、死亡率は健常者の数倍になるといわれています。

なりやすい人の特徴などはありますか?

  • クッシング症候群は30代~50代の女性に多く、男女比は1:4といわれています。
  • 重度の喘息などでコルチコステロイドを大量に使用している方は、薬剤性のクッシング症候群になりやすいです。これは、コルチコステロイドによりホルモンが作られすぎているのと同じような状態になるためです。

遺伝すると聞いたのですが…

  • 一般的には遺伝しないといわれていますが、まれに家族性のクッシング症候群もみられ、ATCH非依存性のクッシング症候群の原因となる遺伝子変異を発見したという論文もあります。

クッシング症候群の検査方法は?

指を差す医師

クッシング症候群で行う検査方法は何ですか?

  • まず最初に血液検査で血液内のコルチゾールやATCHといわれる副腎皮質刺激ホルモンの濃度を検査したり、場合によっては尿検査でコルチゾールの量を調べたり腹部CTなどの画像検査を行うこともあります。そしてコルチゾールの血中量をより詳しく調べられる検査が「デキサメタゾン抑制試験」です。

主な検査内容の詳細を教えてください。

  • デキサメタゾン抑制試験とは、デキサメタゾン(デカドロン)という薬を内服し、コルチゾールとACTHの値の変化をみていく検査です。下垂体から分泌されるACTHから副腎へと指令が送られコルチゾールは作られるのですが、コルチゾールと同じ効果のあるデキサメタゾンを内服すると身体はコルチゾールの量が十分だと判断し、ACTHから副腎への指令が送られなくなります。通常であればデキサメタゾンを服用することでコルチゾールが生成されなくなり低下します。
  • クッシング症候群の場合は違います。クッシング症候群では、大量のデキサメタゾン投与によって、血中のコルチゾール値が低下するものが、脳腫瘍などの原因(クッシング病)、副腎の腫瘍がある方は、デキサメタゾン服用後も副腎腫瘍からコルチゾールが生成されるため、ACTHの値は変化ないあるいは高値になりますがコルチゾールの値は高いままです。
  • この検査をすることでクッシング症候群であるかどうかの確定診断ができます。

検査はどのくらい時間がかかりますか?

  • 血液検査や尿検査のみの場合、検査にはそれほど時間がかからず、検査結果もすぐに出る場合が多いです。
  • しかし、デキサメタゾン抑制試験を行う場合は前日の夜にデキサメタゾンを内服し、次の日に数回の血液検査をするため通常1~2日の時間が必要です。
  • また、デキサメタゾン抑制試験は結果が出るまでに1週間程度の時間を要します。

クッシング症候群に用いられる治療法

診察をする男性医師

クッシング症候群ではどんな治療を行うのでしょうか?

  • 副腎に腫瘍がある方は、原因である腫瘍を手術で摘出することで根本的な治療が可能です。
  • さまざまな理由で手術が困難な場合や腫瘍が摘出しきれなかった場合は、放射線治療や薬物療法を行うこともあり、薬物治療を行う場合は病状により薬を使い分けることが必要です。

治療による副反応はありますか?

  • 腫瘍の摘出後は一時的にコルチゾールの量が低下しますが、半年~1年もしくは2年程度で通常の量まで回復します。
  • 身体的な症状は徐々に消失しますが、コルチゾールの骨吸収作用によって低下した骨密度は正常まで戻らず、継続した骨粗しょう症の治療が必要な可能性もあります。

治療中もしくは治療後に注意するべきことがあれば教えてください。

  • 治療後は一時的にコルチゾールの分泌が少なくなるため、コルチゾールの量が安定するまでは内服薬で補うなどの処置が必要な場合があります。
  • 副腎腫瘍が片方のみの場合は、もう一方の副腎がそのまま残っているためコルチゾールの分泌量が安定すれば服薬をやめることもできますが、両方の副腎に腫瘍があった場合はずっと内服を続けなければなりません。
  • 病状により治療内容や治療後の注意も変わるため、医師の指示に従うことが大切です。

最後に、読者へのメッセージがあればお願いします

  • クッシング症候群は、身体的な症状には特徴的なものが多く、見た目の変化にあらわれやすい病気です。とくに、顔や肩・背中などに脂肪がつきやすくなることなどは、自分でも気づきやすい症状でもあります。
  • 少しでも異変を感じた場合は、なるべく早めに医師に相談しましょう。放置するとさまざまな合併症を引き起こす可能性があり、場合によっては命の危険もあります。

編集部まとめ

紅茶を飲む女性
クッシング症候群を早期発見するには、身体の状態に目を向け、満月様顔貌や野牛肩・中心性肥満などがないかを観察する必要があります。

クッシング症候群は、発症する主な原因が副腎腫瘍や下垂体腫瘍であるために予防が難しい病気で、予防に努めるよりも早期発見・早期治療をすることが大切です。

コルチゾールの過剰分泌を放置すると、免疫力の低下・感染症の併発・脳卒中や虚血性の心疾患にかかりやすくなり、命の危険もあります。

「最近顔が丸くなった」「血圧・血糖のコントロールがうまくいかない」「手足が細くなっているのに体幹には脂肪がついている」「年齢の割に骨密度が低い」「手や足に力が入らなくなってきた」などの身体的症状がみられる場合は、早めに医師に相談しましょう。

この記事の監修医師