「胆嚢炎(たんのうえん)」とは?症状・原因についても解説!
「お腹が痛い」ことを主訴に病院を受診される方は多くいますが、胆嚢炎もお腹の痛みの原因のひとつです。
胆嚢炎は慢性胆嚢炎と急性胆嚢炎があります。突然の激しい腹痛で病院受診となるのは急性胆嚢炎、間欠的なおなかの痛みが続くのが慢性胆嚢炎です。
今回は急性胆嚢炎と慢性胆嚢炎それぞれの概要や、症状と原因、受診科目と検査、そして治療方法を紹介します。
監修医師:
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)
胆嚢炎とは
胆嚢炎とはどのような病気ですか?
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胆のうに炎症が起きることを胆のう炎といいます。
胆のう炎は大きく2つにわけられ、急激に胆のうの炎症が起きれば急性胆のう炎、慢性的に胆のうの炎症が続くことを慢性胆のう炎といいます。
「胆嚢炎は昔から『癪(シャク)の痛み』と言われるもので、右の脇腹からみぞおちが差し込むように痛みます。時代劇で、道ばたで旅姿の女の人がお腹を抱えて痛そうにうずくまっているなどという場面がそうです。
胆嚢炎の症状は
胆嚢炎の症状は具体的にどのような症状でしょうか?
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急性胆嚢炎と慢性胆嚢炎では症状が異なります。
急性胆のう炎では突然の強い腹痛症状があり、発熱など全身の症状も伴いますが、慢性胆のう炎では急性胆のう炎に比べ比較的軽い腹痛症状が繰り返しあらわれます。
急性胆嚢炎の症状
急性胆嚢炎とはどんな症状が起きますか?
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急性胆嚢炎の典型的な症状は右季肋部痛。
胆のうは肝臓の下に位置しており、体表でいうと右肋骨の下、季肋部のあたりに胆のうがあります。
胆嚢炎では72~93%の方で右季肋部痛と心窩部痛(みぞおちの痛み)がみられ、次に多い症状としては悪心や嘔吐が約70%。発熱も6割程度でみられますが、比較的微熱が多く、38度以上の高熱がみられるのは3割程度のようです。
急性胆のう炎に特徴的な症状としてはマーフィー徴候があり、診察の際に、右季肋部を圧迫した状態で深呼吸を促すと、痛みにより息が吸えない状態となります。
高齢者では症状がはっきりしないことがあるため注意が必要です。典型的な症状をみとめず、倦怠感や嘔吐、食欲不振など全身の症状のみのこともあります。
症状自体は2~3日以内に自然に改善していき、1週間で症状がよくなることが大半です。
ただし、基本的には入院で経過をみながら治療を検討していくことになります。
慢性胆嚢炎の症状
慢性胆嚢炎とはどんな症状が起きますか?
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慢性胆のう炎は、胆石により胆管の閉塞、開通を繰り返すことにより長期的に胆のうに炎症がある状態です。
胆管の閉塞、開通を繰り返すたびに胆のう仙痛とよばれる痛みをくりかえします。
上腹部を押したときの痛みがみられることもありますが、急性胆のう炎のように発熱はみられません。発熱がある場合には急性胆嚢炎の可能性を考えます。
胆嚢炎の原因は
胆嚢炎の原因はなにが考えられるのでしょうか?
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急性胆嚢炎と慢性胆嚢炎、いずれも主な原因としては胆石が考えられます。
胆のうは肝臓で作られた胆汁を貯めておくための臓器です。胆のうの機能が低下することで胆汁がうっ滞、濃縮されて胆泥、胆石へとかたまってしまいます。
胆石は無症状の場合には経過観察が原則となりますが、胆管を閉塞してしまう場合には胆のう炎の原因となります。
急性胆嚢炎の原因
急性胆のう炎の原因はなんですか?
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急性胆のう炎の9割以上は胆のう結石(胆石)で、胆石で胆嚢管が閉塞することにより胆のうに炎症がおきます。
ただし、胆石がなくても胆のう炎がおきる急性無石胆嚢炎も3.7~14%程度あり、熱傷や感染症、ICUの長期滞在、手術や外傷がリスク因子となるといわれていいます。
慢性胆嚢炎の原因
慢性胆のう炎の原因はなんですか?
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慢性胆嚢炎は胆石や急性胆のう炎を繰り返すことがリスクとなります。
程度は様々で軽度なものから繰り返す炎症により胆のうが萎縮してしまうケースもあります。
胆嚢炎の受診科目
胆のう炎のような症状が現れたら何科を受診すればいいでしょうか?
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胆のうは消化器に含まれる臓器です。
急性胆のう炎が疑われる場合には腹部超音波検査を行うことも推奨されており、検査設備の整った消化器内科や消化器外科などの専門外来を受診することをおすすめします。
また、急性胆のう炎では入院が必要となることも頭にいれておくとよいかもしれません。
胆嚢炎の検査項目
胆嚢炎ではどんな検査をおこないますか?
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おなかの痛みや腹部の触診から急性胆のう炎の可能性を考えます。さらに、発熱などの全身症状や血液検査などでCRPや白血球の増強を認める場合には疑いが強くなります。
さらに、腹部超音波検査やCT検査などをあわせておこなうことで胆のう炎の診断をすることにつながります。
急性胆のう炎における腹部超音波はまず行うべき検査とされ、感度88%、特異度80%と良好な診断能を持つのです。
腹部超音波検査で胆のうの所見がはっきりしない場合には胆道シンチグラフィーが胆嚢炎の診断の助けになります。
くりかえす胆道仙痛を疑う腹痛がある際に、腹部超音波検査で胆石を認めた場合は慢性胆のう炎と診断します。
鑑別診断として腸閉塞・消化管穿孔などが挙げられます。
胆嚢炎の重症度はどのように診断されるのでしょうか?
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急性胆のう炎に伴い、意識や呼吸状態、腎機能肝機能の悪化、ショック状態などがある場合を重症急性胆のう炎と判定されます。
採血で白血球が18,000/mm3以上、72時間以上症状が続いている場合やCT、腹部超音波など画像検査で強い炎症所見を認める場合は中等症となります。
また、右季肋部の有痛性腫瘤の有無も診断項目のひとつとされています。
中等症に至らない場合は軽症と判断されます。
胆嚢炎の性差・年齢差は?
胆嚢炎はどんな人におこりやすいですか?
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急性胆嚢炎と慢性胆嚢炎、いずれも主な原因としては胆石が考えられます。
胆石のリスクとしては女性や高齢者、肥満といった要因があげられており、先進国では成人の10%、65歳以上の高齢者では20%で胆石があるといわれています。
胆石がある方の8割は無症状ですが、いったん痛みが出ると2~4割で症状をくり返すことがあるのです。
胆嚢炎の治療法
急性胆嚢炎の治療法
急性胆のう炎の治療はどんなものが考えられますか?
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急性胆のう炎の場合、まずは絶食と補液が基本の治療となり、鎮痛剤や抗菌剤で治療を開始します。多くは胆石が原因となっているため、状態が安定していれば胆のう摘出術を行います。
胆のう摘出術を行う際は早朝が好ましいとされますが、診断が明確で手術リスクが低い場合や、高齢の患者や糖尿病など感染リスクが高い患者、無石胆のう炎の場合には発症から24~48時間以内に手術を行うことがすすめられます。
中等症にもかかわらず手術リスクが非常に高く手術がすぐに行えない場合には経皮経肝的胆のうドレナージ術の適応となります。
慢性胆のう炎の治療法
慢性胆のう炎の治療法はどんなものが考えられますか?
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症状を繰り返す胆石症は基本的には手術の適応です。
標準的に行われる腹腔鏡下胆のう摘出術はお腹に小さい穴を開けて行うため開腹手術に比べ体への負担が少ない手術です。痛みも少なく、手術時間も短いため入院期間も短くすみます。
編集部まとめ
胆石を指摘される方は年々増えているといわれています。
健康診断で胆石を指摘され、無症状で経過する方が多い中、胆のう炎を発症する可能性も伴います。
急性胆のう炎を発症した場合には全例が入院治療の対象となり、重症例では21.4%で死亡する確率があるといわれることから胆のう炎が疑われるばあいには早めに医療機関を受診するようにしてください。