「線維筋痛症」とは?症状についても解説!
数か月にわたって手足や体など広い範囲に痛みを感じる・違和感があるという人は、もしかしたら線維筋痛症かもしれません。
今回は線維筋痛症の症状や原因など病気の特徴について、みなさまの疑問にお答えしていきます。
診断方法・早期発見のポイント・治療法・予防する方法なども一緒にみていきましょう。
監修医師:
工藤 孝文(医師)
日本内科学会・日本糖尿病学会・日本肥満学会・日本東洋医学会・日本抗加齢医学会・日本女性医学学会・日本高血圧学会、日本甲状腺学会・日本遠隔医療学会・小児慢性疾病指定医。
目次 -INDEX-
線維筋痛症はどんな病気?
線維筋痛症の症状を教えてください。
- 主な症状は疼痛を全身のいずれかや広範囲にわたって感じることです。疼痛というと難しくわかりづらいですが、下記項目に当てはまると線維筋痛症の可能性があります。
- 全身のいずれかに違和感を覚える
- 押さえると痛い部分がある
- 手や足を動かすと痛みや違和感がある
- 痛みが強く手足や体を動かせない
- 上記のような違和感や痛みがあることを疼痛といい、全身のいずれかに疼痛が長期的にみられた場合は線維筋痛症を疑いましょう。
- とくに関節・筋肉・腱・靭帯などに痛みがあらわれます。長期的な疼痛が主な症状ですが、痛みは日によって異なり天気・気圧・体調・環境によっても変化しやすいです。
- 痛みまではいかなくても手や足がこわばる・違和感があり手足を動かしづらいといった症状も線維筋痛症の可能性があります。
- また、その他にも伴う症状が複数あり、疼痛にあわせて下記のような症状がみられた場合は線維筋痛症かもしれません。
- 集中力の低下
- 倦怠感がある
- 口や目の乾燥
- 発熱
- 頭痛
- めまい
- 動悸
- 呼吸しづらい
- 指先の腫れ
- 手足の痺れ
- 痛みによる不眠
- 上記のような症状の他に、憂鬱な気分が続く抑うつ状態や強い不安感がある場合も線維筋痛症による影響の可能性があります。全身いずれかの疼痛と上記のような症状が3か月以上続いている方は、早めに病院を受診しましょう。
線維筋痛症の原因は何でしょうか?
- さまざまな症状が全身にわたってみられる線維筋痛症ですが、はっきりとした原因はいまだ不明です。
- しびれや痛みを感じる部分を調べても異常がないため、症状がみられる部分的な箇所に原因があるのではなく、脳への神経伝達部分に異常がみられることが原因といわれています。遺伝の可能性はないとされており、幼少期や長年の環境的な要因が病気の発症につながっている可能性が高いです。神経に異常をきたす原因としてはストレスが影響していると考えられており、長期的・過度なストレスは線維筋痛症の原因にもなり得ます。
- しかしはっきりとストレスが原因とは断定できないため、線維筋痛症だと気づかずに生活を送っている人も少なくありません。
線維筋痛症は子どもも発症するのでしょうか?
- 子どもに全身の痛みや倦怠感などが長期的にみられた場合は若年性線維筋痛症の疑いがあります。成人に限らず子どもでも発症する病気で、幼い頃から長年のストレスを感じている子どもや性格的に繊細な子どもに発症することが多いです。
- お腹が痛くて学校に行けない
- 全身に痛みを感じ朝起きられない
- 体の痛みによって夜眠れず日中に眠くなる
- これらのような症状をお子さんが訴え、不登校になったというケースは珍しくありません。しかし、病院を受診し検査を行っても「異常なし」といわれることが多く、こういった場合は若年性線維筋痛症の可能性があります。
- 不登校のお子さんの多くは、何らかのストレスが原因で「学校へ行きたくても行けない」のです。ストレスが要因となり線維筋痛症を発症していても、原因が分かっていないためきちんとした病名にたどりつくことは難しく、まわりからは甘えていると思われてしまいます。
- お子さんが若年性の線維筋痛症である可能性がある場合、まずは病院を受診し異常なしや原因がわからないと診断された場合はセカンドオピニオンも考えてみましょう。
維筋痛症の診断方法は?
線維筋痛症の診断方法を教えてください。
- はっきりとした原因がわかっていない病気のため、線維筋痛症と診断するのは難しいとされています。しかし診断する方法としては下記の3つが挙げられます。
- 全身のいずれかや広い範囲に疼痛が感じられる
- 疼痛が3か月以上続いている
- 指定された基準箇所を触ると痛みがある
- このような診断材料で医師が問診や触診を行い診断をします。この場合の指定された基準箇所というのは全身に18か所あり、首・肩・手足などがチェック箇所です。
- 主に疼痛に焦点を置いた診断になりますが、倦怠感や睡眠障害など他の症状がみられる場合は問診の際に医師に伝えましょう。
具体的にはどのような検査を行うのでしょうか?
- 線維筋痛症の症状がみられる場合は問診や触診を行い、まずは他の病気を疑う検査をしていきます。
- 血液検査
- 尿検査
- レントゲン写真・CT・MRI撮影
- エコー診断
- 心電図
- 脳波検査
- これらの検査を行っても異常がみられない場合、線維筋痛症の可能性があるという診断になるのです。どこにも異常がみられず原因不明という点が線維筋痛症の特徴であり、さまざまな検査を行うことになります。いわば消去法のような形で、検査結果に異常がないため線維筋痛症と診断されるケースも多いです。
線維筋痛症を早期発見するポイントを教えてください。
- 疼痛が3か月以上続くと線維筋痛症の疑いがあるため、早期発見のポイントとしては慢性的な疼痛が続くようなら早めに病院を受診するほかありません。
- 激痛が長期的に続いて治まらないという場合は病院を受診する人が多いですが、違和感がある・倦怠感が続く程度であれば放置してしまう人も少なくないです。そのうち治っていくだろうと放置せず、少しでも異常を感じた場合は早めに病院を受診しましょう。
- 全身が痛く何科を受診すればよいのか悩んでしまう人もみえますが、基本的にまずは内科を受診するとよいでしょう。線維筋痛症はうつ病などの精神的な疾患と併発することも多いため、心療内科や神経内科の受診も検討してください。
線維筋痛症の治療法と予防
線維筋痛症の治療はどのように行われますか?
- 原因がわからない病気のため、線維筋痛症を完治するための治療法は確立されていません。そのため、治療目的は痛みの緩和や軽減になります。しかし、早期発見し症状が軽いうちに治療を開始すると症状が改善されるケースも多いため、早めの受診が大切です。
- 主な治療方法としては薬物療法が挙げられます。神経性疼痛に効き目のある薬や抗うつ薬を投与することで痛みが和らぐという患者さんが多いです。鎮痛薬も痛みの緩和に効果がありますが、アセトアミノフェンが主成分のカロナールは効果的でロキソプロフェンが主成分のロキソニンはあまり効果がみられません。そのため、やみくもに痛み止めを服用するのではなく、病院を受診しきちんと医師に処方された薬を服用しましょう。
- 痛みが少ない場合は、運動療法や心理療法などの治療を行います。薬物療法とあわせて治療を進めることも多く、医師の診断によって治療方法はさまざまです。
治療法はどのように決まるのでしょうか?
- 患者さんの症状にあわせて治療法が決まります。薬物療法によって痛みが緩和された・元々あまり痛みがない線維筋痛症の方には運動療法を優先、または薬物と運動をあわせた療法治療を行います。日常生活に支障をきたすほど痛みや違和感が強い人には薬物療法を優先して行い、改善がみられたら運動療法を取り入れていくのです。
- 運動療法にはストレッチ・マッサージ・ヨガ・理学療法などが挙げられます。適度な運動は痛みの感覚を調整する役割を担うともいわれており、主に全身の筋緊張をほぐしリラックスさせることが目的です。治療により線維筋痛症による痛みや違和感が軽減してきても、運動療法は続けておくと再発予防へも繋がるため適度な運動を習慣化することがおすすめです。
- 心理療法とはカウンセリングのことで、線維筋痛症の原因とも考えられているストレスの緩和に焦点をあてた治療法となります。線維筋痛症はストレスが原因と断定されてはいませんが、カウンセリングを行いストレスの根源を断つことで痛みを感じなくなる人もみえます。そのため、治療法として取り入れることも多いです。
線維筋痛症の予防方法はありますか?
- 線維筋痛症は原因がわかっていないため予防することは難しいです。しかし下記のようなことに気をつけていると、病気の予防へつながります。
- ストレスを溜めない
- 適度な運動をする
- バランスの良い食生活を送る
- 睡眠や休息をきちんと取る
- 上記のことに気をつけ規則正しい生活を送ることが大切で、疲れを溜めずリラックスできる時間を日々の中に取り入れることが予防方法となります。
- 誰しも生活の中でストレスを感じることはあるでしょう。しかしストレスを溜め込まないように、発散できる方法を見つけておくのも予防法の1つです。適度な運動やバランスのよい食事がストレスになってしまっては本末転倒のため、ストレスを溜めすぎないよう自分に合った予防法を取り入れましょう。
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
- 手足のしびれや全身にわたる痛みが長期的にあるとお悩みの方は、線維筋痛症かもしれません。原因不明のため異常なしと診断されることも多く、多少の痛みだからと放置している人もみえます。
- しかし線維筋痛症は治療を行えば改善できる病気です。医師に異常なしと診断されても、体に痛みや違和感がある場合は違う病院や異なる診療科目を受診してみましょう。
編集部まとめ
線維筋痛症はストレスを感じやすい人に発症すると考えられていますが、原因がわからないことからまわりの理解が低く認知している人も多くはありません。
患者さん自身に対して「弱い・甘えている」と思う人もみえ、さらにストレスを与えてしまう場合もあるのです。
薬物療法や運動療法など線維筋痛症にはさまざまな治療方法があり、医師の指導のもと早めに治療を行うと改善がみられる可能性が高いです。
痛みの強さに限らず痛みや違和感が3か月以上あるという方は、まず内科や心療内科を受診してください。
線維筋痛症との診断であれば自分に合った治療法を行い、病気の改善や痛みのない生活を目指しましょう。
参考文献
痛みの情報サイト – 疼痛(とうつう).jp|ヴィアトリス/エーザイ
特集2/線維筋痛症/原因不明の痛みと多様な症状をともなう|全日本民医連
早期診断・治療が可能になってきた「線維筋痛症」|健康・医療トピックス|オムロン ヘルスケア