「過換気症候群」とは?症状についても詳しく解説!
精神的な不安や強いストレスそして極度の緊張により、自分の意思とは無関係に過呼吸の状態に陥りパニックを起こす病気が過換気症候群です。
過呼吸の状態になると体内の二酸化炭素量が減ることで息苦しさや激しい動悸、また身体にしびれやけいれんを起こして重篤な場合は気を失ってしまいます。
発症の比率は男女比でいうと1:2で、とくに20~30代の若い女性はおよそ100人に7・8人の割合で起こるといわれています。
なぜこのような発作が生じるのか?その原因とメカニズムや治療法、また治療する際は何科を受診すべきか詳しく解説していきます。ぜひ参考にしてください。
監修医師:
工藤 孝文(工藤内科)
日本内科学会・日本糖尿病学会・日本肥満学会・日本東洋医学会・日本抗加齢医学会・日本女性医学学会・日本高血圧学会、日本甲状腺学会・日本遠隔医療学会・小児慢性疾病指定医。
目次 -INDEX-
過換気症候群の特徴
過換気症候群はどんな症状ですか?
- 何らかの強い不安やストレス・極度の緊張を感じた際に、突然息を吐くことも吸うことも困難になる疾患です。
- 呼吸は浅く荒くなり、激しい動悸やめまいに加え手足のしびれや吐き気も伴い意識を失ったりけいれんを起こしたりする場合もあります。そして過去経験したトラブルと同様な場面に遭遇したときに起こりやすくなります。
- 原因は発作を自覚すると呼吸ができないことに対して「死んでしまうかもしれない」といった強い恐怖がよみがえるためです。そのためかえって呼吸が乱れるパニック状態に陥ります。
生命に関わりますか?
- 過換気症候群の発作自体で生命が脅かされることはありません。
- しかし発作が長引き、めまいやけいれんを起こしたり意識を失ったりした場合は例外です。それはおかれた状況により転落や転倒・電車・車の事故などに巻き込まれるケースがあるからです。
- 頭部の打撲や外傷など重いケガを負えば生命の危機にさらされる場合があるため、可能性はゼロとはいえません。
過換気症候群の原因は何ですか?
- きっかけとなるのは、強い不安や恐怖・極度の緊張など精神的なストレスです。
- 発作を起こしやすいタイプとしては、神経質で過度に不安を抱えやすい方や緊張しやすい方があてはまります
- これら心理的な要因のほかにも激しいスポーツの直後や睡眠不足など肉体的疲労も脳の中にある呼吸中枢が過剰に刺激され呼吸が浅く・短くなります。これは必要以上に二酸化炭素を吐き出してしまうため血中の炭酸ガスの濃度が低くなって余計に呼吸が困難になるためです。
検査の方法について知りたいです。
- まず問診を行い、自覚症状・発作を起こしたきっかけについて確認します。
- また血液検査で血液中の酸素や二酸化炭素の濃度やpHを調べますが、これは過呼吸になると血液中の二酸化炭素が低下してアルカリ性に傾きさまざまな不調を起こすため、判断に必要な検査です。
- 症状によっては胸部レントゲンや心電図などの検査を行い、ぜんそくや心不全など呼吸器や心臓の疾患がないか調べることもあります。
過換気症候群の治療方法
どのような治療方法がありますか?
- 日頃から深くゆっくりした呼吸ができるよう腹式呼吸など呼吸法の指導を行います。
- また不安や恐怖感が極度に強い場合は症状によって抗不安薬や漢方薬を用いた薬物療法が選択されます。しかし薬のみで完治するケースはそもそもの原因を取りのぞくことはできないためまずありません。
- 有効といえるのは認知行動療法です。これは「過呼吸の発作を起こすと死ぬかもしれない」「一生治らないかもしれない」といった誤った思い込みを修正することで発作を防ぐ効果があります。
どのくらいの期間で治りますか?
- 発作の症状自体は30分~1時間ほどで改善します。救急搬送された場合も病院につくころには発作は治まっているケースが多いのも特徴です。
- ただし過呼吸を引きおこしている強い不安の原因が改善されていないと発作を繰り返すため心療内科での治療が必要です。
- また心理的要因の他にぜんそくなどの呼吸器疾患や心臓の疾患が原因となっていることもあります。この場合そもそもの疾患の治療が必要なため、症状の改善に至るまでは時間を要します。
発作がない場合の治療について教えてください。
- うつ病などの精神疾患が原因となっている場合は抗うつ剤や抗不安剤で薬物治療を継続します。発作の頻度が少ないなら、不安や恐怖のもととなるきっかけを生み出さないためにできるだけストレスの無い生活を送ることが重要です。
- 食事や睡眠をきちんととり常に体調管理に気を配るのはもちろんのこと日常生活の中にリラクゼーションを積極的に取り入れましょう。
- また患者の多くを占める若い女性はとくにホルモンバランスを崩すとストレスにつながることも判明しています。決して無理はせず、不調を感じる前に心療内科などでカウンセリング受けることも過換気症候群の発症を防ぐ効果があります。
ペーパーバッグ法とは何ですか?
- 過換気発作の原因は呼気からの二酸化炭素が過剰に排出されることで起こるため、ペーパーバッグ法とよばれる呼気を一旦紙袋に入れ、それをもう一度吸い込むことにより呼吸を整える方法が行われていました。
- しかしこの方法はかえって酸素が行きわたらなくなったり体内の二酸化炭素が過剰になったりする場合も多く、また紙袋がかえって本人の恐怖心をよび起こすなどリスクが高くなることが判明したため、現在では推奨されていません。
過換気発作についてよくある疑問
周りや家族が過換気症候群になったらどうすれば良いですか?
- もし目の前で過呼吸の状態に陥ったときは一緒にパニックにならないよう過度に反応せず、まずは乱れた呼吸を整えるためにゆっくり息を吐くことに集中するよう話しかけて安心させます。
- そしておかれている状況が駅や人込みの中であれば静かな場所に誘導することが肝心です。
- もし飴などを所持していたらなめさせて発作の状態から気をそらさせるのも有効です。そのうえでけいれんや失神など重篤な症状があらわれ改善がみられないようなら救急車を呼びます。とにかく周囲が焦らず本人の状態が落ち着くのを待ちましょう。
完治した後も気をつける事はありますか?
- 過去に過換気症候群の発作を起こすと「またあの苦しみを味わうのではないか?」「今度は死んでしまうのではないか?」といった不安を抱えることになり、その不安がさらに発作をよぶ悪循環に陥ります。
- まずは腹式呼吸法を取り入れゆっくり深く呼吸する習慣をつけ、強い不安や緊張を感じる状況はできるだけ排除してストレスをうまくコントロールできる方法をみつけましょう。
- またうつ病などの精神的な疾患がある場合は、心療内科や精神科を受診し治療を行うことで発作の再発防止につながります。
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
- 過換気症候群は直接生命に関わる疾患ではありません。原因の多くは不安やストレスまた過去の辛い思い出のフラッシュバックによるものです。発作による七転八倒の苦しみで植え付けられるのは「もうあんな苦しい思いをするのはいやだ!」といった感情です。この強い恐怖がかえって呼び水となり発作を繰り返すことにもなります。
- まずできる予防策として、日頃からストレスをためないように自分に合ったリラクゼーションなどを積極的に取り入れましょう。
- また学校や職場での人間関係におけるトラブルも原因になりやすいといわれています。自衛策として心に負担がかかるような、しなくて良いつきあいはできる限り避けることも必要です。
編集部まとめ
過換気症候群は精神的なストレスによるものがほとんどです。過度に不安を抱えやすく緊張しやすい、また神経質な方はとりわけ発作を起こしやすい傾向にあります。
あくまで発作や症状は一時的なものであり、生命を脅かすものではないとご自分の中で認知できれば必要以上に怖がる病気ではありません。
もし過呼吸の状態になってもパニックにならず、まずは気持ちを落ち着かせてゆっくり呼吸を整えれば、自然と症状は治まります。
しかし原因は心理的要因だけとは断言できません。何らかの持病がある場合は血液や胸部レントゲンなどの検査も受けたうえで総合的な治療も必要になります。
不要なストレスや不安を抱えることで過呼吸を繰り返し苦しみを重ねることのないよう、まずは1度心療内科などの専門機関を受診しましょう。
参考文献
過換気(過呼吸)について|近畿大学メディカルサポートセンター
過換気症候群・過呼吸の症状・原因について|自律神経失調症の情報サイト
【医師監修】過呼吸で薬を服用するのはどんなとき?処方される薬の種類は? | 医師が作る医療情報メディア
【精神科医が解説】過呼吸・過換気症候群の正しい対処法とは?紙袋は使うべき? | こころみ医学元住吉こころみクリニック【内科・呼吸器内科・心療内科】