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「肺気腫」とは?症状についても詳しく解説!

 更新日:2023/03/27
咳をする男性

医学系のテレビ番組やCMなどで、「COPD」という言葉を耳にすることがあります。

COPDとは慢性閉塞性肺疾患のことで、タバコの煙などの有害物質を長期間吸い続けることで起こる、炎症性の肺疾患を指します。

慢性閉塞性肺疾患には、慢性気管支炎などの病気も含まれており、その1つが「肺気腫」です。

今回は、肺気腫がどのような病気なのか、治療法や予防方法についてご紹介します。

工藤 孝文 医師

監修医師
工藤 孝文(医師)

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みやま市工藤内科 院長・糖尿病内科医・漢方医・統合医療医。福岡大学医学部を卒業後、アイルランド、オーストラリアへ留学。現在は、福岡県みやま市の工藤内科にて、糖尿病内科・ダイエット外来・漢方治療を専門に、地域診療を行っている。NHK「ガッテン!」「あさイチ」、日本テレビ「世界一受けたい授業」などテレビ出演多数。著書は50冊以上におよび、Amazonベストセラー多数。YouTube「工藤孝文のかかりつけ医チャンネル」が現在人気を集めている。 
日本内科学会・日本糖尿病学会・日本肥満学会・日本東洋医学会・日本抗加齢医学会・日本女性医学学会・日本高血圧学会、日本甲状腺学会・日本遠隔医療学会・小児慢性疾病指定医。

肺気腫とは

考える男性

肺気腫とはどんな病気ですか?

  • 肺気腫とは、慢性閉塞性肺疾患の1つで、長年の喫煙や有害物質を吸い込んだことにより肺の組織が壊れてしまっている状態のことをいいます。男性の罹患率が高く、60歳以上の方が発症するケースが多いです。
  • この病気は少しずつ、ゆっくりと進行していき、壊れた肺の組織を元に戻すことはできません。人間が吸い込んだ空気は気管や気管支を通って肺へと送られ、肺胞に溜まります。肺胞とは小さな袋がブドウの房のように集まっている組織で、袋の1つ1つに空気が含まれており、溜まった空気の酸素を血液中に取り込み二酸化炭素を排出する働きがあります
  • 肺気腫は、この肺胞と呼ばれる組織が壊れて癒着し、1つの袋のようになってしまうことで起こる病気です。肺気腫になると正常な肺胞が少なくなり、それに伴って呼吸面積が減少、呼吸機能が低下してしまいます。

肺気腫の原因は何ですか?

  • 肺気腫になる主な原因はタバコで、その割合は肺気腫患者の90%を占めています。
  • しかし、喫煙歴のある方全員が肺気腫になるわけではありません。これには喫煙年数・遺伝的な要因なども関係しており、喫煙習慣だけでなく生活環境大気汚染が原因の場合もあります。個人差はありますが喫煙年数が長ければ長いほど肺気腫のリスクが高くなり、喫煙者の多い男性の罹患率が高いといった結果になっています。
  • また、本人に喫煙の習慣がなくても肺気腫になることがあり、その原因として以下のことがあげられます。
  • 受動喫煙
  • PM2.5などの大気汚染物質
  • アスベストなどの粉塵
  • 化学物質
  • 肺炎などの呼吸器感染症
  • 遺伝性の病気である「α1-アンチトリプシン欠乏症」

遺伝することはありますか?

  • 肺気腫という病気が遺伝することはありません。しかし、遺伝性の病気である「α1-アンチトリプシン欠乏症」によって肺気腫になる方もいます。
  • 人間の身体にはプロテアーゼというタンパク質分解酵素がありますが、これには肺を傷つけてしまう作用があります。α1-アンチトリプシンは肝臓で作られており、プロテアーゼが肺を傷つけることを阻害し、肺を守る役割がある酵素です。
  • α1-アンチトリプシン欠乏症では、α1-アンチトリプシンが足りないことによりプロテアーゼの阻害ができなくなるため、肺が損傷し肺気腫になってしまう可能性が高くなります。遺伝的に肺の組織が壊れやすい方がおり、そういった方が喫煙をすることによりさらに肺気腫になるリスクが高くなるということです。

肺気腫はどのような症状が現れるのでしょうか?

  • 肺気腫の主な症状としてあげられるのは以下の3つです。
  • 咳嗽
  • 痰がからむ
  • 歩行などの運動時の息切れ
  • 咳嗽とは咳のことで、肺気腫では慢性気管支炎を併発していることが多く、咳・痰・喘鳴などが主な症状です。
  • また、運動時に息苦しさを感じ、坂道や階段を上るだけで息が切れるようになります。初期段階では少し休むと息切れは治まりますが、症状が進行すると安静時でも息苦しさを感じるようになり、日常生活にも支障がでるようになります。
  • また、息切れするようになると自然と体を動かすことが減ってしまい、体力の低下・息切れがひどくなるといった悪循環になりやすいです。

肺気腫にはどのようなリスクがありますか?

  • 肺気腫には次のようなリスクがあります。
  • 息切れによる活動量の低下
  • 活動量低下に伴う体力・筋力の低下
  • 栄養不足による体重の減少
  • 肺炎やインフルエンザにかかった際の呼吸不全
  • 肺気腫になると息切れがしやすく、活動量が減ってしまう方がほとんどです。活動量が減ると体力や筋力が低下しやすくなり、症状が進むと呼吸をすることに多くのエネルギーを使うようになります。さらに重症化していくと食事をするだけで息が切れるようになり、それにより食欲が低下・栄養失調状態になり体重が減少していきます。そしてまた体力が低下するといった悪循環が生じてしまうのです。体力が落ちると病気が進行するリスクがあります。無理な運動は避けるべきですが、短時間の散歩などの軽度な運動やしっかりとした食事をとることで体力を維持し、症状の悪化を防ぎましょう。
  • また、肺気腫の方が肺炎やインフルエンザにかかると一気に症状が悪化し呼吸不全に陥ることがあります。体力が低下すると免疫力も低下してしまい、これらの病気にかかるリスクが上がるため、体力を維持することはとても大切です。インフルエンザなどはワクチンを接種することで症状が緩和されるため、特別な理由がない限りはワクチンの接種をおすすめします。
  • さらに肺がんを併発してしまうリスクもあります。これは、肺気腫から肺がんになるのではなく、肺がんも肺気腫と同じで喫煙が原因であることが多いためです。喫煙習慣がある方で、咳・痰・息切れなどの症状がある方は一度検査することをおすすめします。

肺気腫の治療法

男性医師

肺気腫は完治するのですか?

  • 肺気腫は肺胞という組織が壊れてしまっている状態です。一度壊れてしまった肺胞は元に戻すことはできず、肺気腫が完治することはありません
  • しかし、禁煙内服薬などで症状を緩和させたり進行を遅らせたりすることはできます。

どのような検査をするのでしょうか?

  • 肺気腫の診断には、胸部レントゲン・CT撮影・呼吸機能検査・血液検査などが用いられます。
  • このうち、胸部レントゲンは健康診断などで撮影することも多いので、撮られたことがある方も多いのではないでしょうか。まずは胸部レントゲンで肺の状態を確認し、精密検査が必要であればCT撮影を行う、というのが一般的です。
  • また、呼吸機能検査では肺活量を調べることにより、慢性閉塞性肺疾患があるかを調べられます。胸部レントゲンだけでは初期の肺気腫は見つけることが難しく、より正確な診断をするためにはCT撮影や呼吸機能検査が必要です。

治療はどのように行うのでしょうか?

  • 肺気腫の治療は、喫煙習慣のある方に禁煙指導をすることから始まります。喫煙習慣が改善されなければほかの治療の意味がなくなり、症状の緩和や病気の進行を止めることもできません。
  • 状態によりますが、息苦しさや咳の改善に気管支拡張薬やステロイドなどの薬を処方することもあります。
  • また、呼吸機能を改善させるため、呼吸リハビリテーションを行うことも有効です。

悪化した場合はどうなるのでしょう?

  • 肺気腫が重症化した場合、在宅酸素療法が開始されます。これは、自分の力で十分な酸素を取り込むことが難しくなるためです。
  • 在宅酸素療法では、酸素供給機器からチューブを通じて酸素を取り込みます。さらに症状が悪化し、自力で呼吸することが難しくなると、在宅での人工呼吸器が導入されることもあります。

肺気腫の予防

禁煙マークを持つ男性

やはり禁煙が一番ですか?

  • 肺気腫にかかる原因は、そのほとんどがタバコにあります。タバコに含まれる有害物質が肺の組織を壊すことで肺気腫になってしまうため、現在喫煙習慣がある方は、早めに禁煙することをおすすめします。
  • また、自力で禁煙することが難しい方は、禁煙外来もあるため、お近くの病院で相談してみてはいかがでしょうか。喫煙年数や喫煙本数によって保険診療で受けられる場合があります。

喫煙していない人はどのように予防すれば良いのでしょうか?

  • 家族に喫煙者がいる場合、禁煙してもらうのが一番良いです。
  • 職業柄、化学物質やアスベストなどの粉塵を吸い込むことが避けられない場合は、専用のマスクなどをつけるようにしましょう。
  • PM2.5などの大気汚染物質は、空気清浄機などである程度除去できます。

最後に、読者へメッセージをお願いします。

  • 喫煙は肺気腫や慢性閉塞性肺疾患(COPD)になるリスクが高いです。
  • 現在、喫煙習慣のある方は、ご自身の身体や家族のためにも禁煙することをおすすめします。

編集部まとめ

指を指す男性医師
肺気腫は一度かかってしまうと完治させる方法はなく、進行を遅らせることしかできません。第一の予防として、まずは禁煙しましょう。また、喫煙習慣のある方で咳・痰・息切れの症状がある方は、早めに病院を受診するのが良いです。肺気腫は早期発見が難しく、見つかった時には症状がかなり進行している場合もあるため、注意が必要です。

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