「自律神経失調症」とは?症状・何科を受診するべきかについても解説!
更新日:2023/03/27

自律神経のバランスを崩してさまざまな症状を引き起こす「自律神経失調症」をご存じでしょうか。ストレス社会と言われるほど、家庭や仕事、人間関係などでストレスを感じやすい時代です。この日常的に感じるストレスも自律神経失調症の原因です。 今回は、自律神経失調症とはどのような病気か、症状や原因、受診科目などを紹介します。

監修医師:
伊藤 直(医師)
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所属:平成かぐらクリニック院長 メンタルアシストプログラム総責任者、一般社団法人 健康職場推進機構理事長、医療法人社団 平成医会 理事
著書:精神科医が教える3秒で部下に好かれる方法
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自律神経失調症とは
自律神経失調症とはどのような状態でしょうか?
自律神経失調症は、ストレスなどが原因となって自律神経のバランスを崩してしまうために起こる、さまざまな症状の総称です。広く知られる病名ですが、医学的な病名ではありません。
私たちは、緊張するとトイレが近くなったり、汗をかいたりします。また、悩みがあるとご飯が食べられなかったり、眠れなくなったりします。
これらは、日常生活で起こるごく当たり前の現象です。しかし、悩みごとが長引いたり、過度なストレスがかかった状態が続いたりすると、身体が耐えられる限界を超えて自律神経のバランスを崩してしまいます。この状態が自律神経失調症です。
自律神経とはどのような働きをしているのですか?
神経は主に脳と脊髄に張り巡らされている「中枢神経」と、体中に張り巡らされている「末梢神経」とに分けられます。
このうち、末梢神経は自分の意思によって身体の各部を動かす「体性神経」と、自分の意思に関係なく刺激に反応してさまざまな機能を調整する「自律神経」に分けられます。
暑いときに手で汗をぬぐうのは体性神経、汗をかくのは自律神経の働きです。
自律神経は、さらに交感神経と副交感神経の2つがあり、それぞれ逆の働きをして体の機能を保っています。交感神経は覚醒時の身体を活発に動かしているときに働き、副交感神経は睡眠中などの身体を休めているときに働くのが特徴です。
交感神経と副交感神経は反対の動きでお互いにバランスを取りながら、身体の状態を調節しています。
自律神経失調症の症状
自律神経失調症はどのような症状が現れますか?
自律神経失調症になると、身体や心にいろいろな不調が現れます。大きく分けると、全身的症状と身体的症状の2つです。
身体そのものには原因がないにも関わらず、身体のあちこちに起こる症状を「不定愁訴」と呼びます。不定愁訴は、検査では異常が認められにくい状態で、更年期に起こりやすいのが特徴です。
自律神経失調症は、症状が強く出たり弱まったりすることもあれば、いくつかの症状が複合的に起こったりします。症状の個人差も大きく、すべての人に同じ症状が現れるわけではありません。
全身的症状
全身的症状にはどのようなものがありますか?
自律神経失調症の全身症状には以下があります。
- だるい
- 眠れない
- 疲れがとれない
- 頭痛
- 動機や息切れ
- めまい、立ちくらみ
- のぼせ
- 下痢や便秘
- 冷え
- 肩こり、背痛、腰痛
- 食欲不振
精神的症状
精神的症状にはどのようなものがありますか?
精神的症状には主に以下があります。
- 情緒不安定
- イライラする
- 不安感
- うつ
自律神経失調症の原因
自律神経失調症の原因にはどのようなことが関係しているのでしょうか?
自律神経のバランスが崩れる直接的な原因は特定できていません。しかし、間接的な原因として生活習慣やストレス、更年期障害などが影響していると考えられています。
不規則な生活
不規則な生活とは、例えばどのような習慣が当てはまりますか?
例えば、寝る時間が決まっていない、夜ふかしをして睡眠時間が少ない、偏った食事ばかりで食生活が乱れているなどの習慣が当てはまります。
特に現代人は、食の欧米化で肉食が増えていること、娯楽の選択肢が増えたことで夜ふかしする機会が増えていることも、原因のひとつと考えられます。
不規則な生活を改善するために心がけることはありますか?
規則正しい生活を心がけましょう。まずは、睡眠時間の見直しや適度な運動が大切です。
寝る時間がバラバラの人は、毎日同じ時間に寝ることを心がけましょう。適度な運動は、身体の健康維持や、ストレス発散のためにも有効です。
過度なストレス
ストレスも自律神経のバランスを崩す原因になるのですか?
本来、適度なストレスは心身を健やかに過ごすために必要です。しかし、過度なストレスはやはりよくありません。
仕事や家庭、人間関係などストレスの原因はそれぞれ異なります。周囲から見れば些細な悩みでも、その人に取っては重大な悩みとなることもあるでしょう。他人のストレスと比較せず、ストレスを感じたら発散することが大切です。
現代人はストレスを溜めやすいと聞きます。何か工夫できることはありますか?
まずは自分に合う趣味の時間を作るなど、息抜きの方法を見つけましょう。ストレス解消法としては、散歩や軽めの運動、入浴などがあります。リラックスできて楽しいと思える時間を作ることが大切です。
更年期障害
更年期障害とはどのような状態ですか?
更年期障害とは40歳代以降の男女に起こる症状の総称で、ホルモンの分泌量が低下することが原因です。
女性では、閉経前後の約10年間に女性ホルモンのエストロゲン分泌が急に減少することで起こります。男性は30歳以降に男性ホルモンのテストステロンが徐々に減少することで起こります。
どちらも、自律神経失調症と同じような症状が現れるのが特徴です。
自律神経失調症の受診科目
自律神経失調症のような症状が現れたら何科を受診すればいいでしょうか?
まずは症状に合った診療科を受診しましょう。頭痛や吐き気が強い場合は、内科を受診し、腰痛や肩こりがひどい場合は整形外科を受診するとスムーズです。
症状に応じた検査や治療を行っても改善しない場合は、心療内科や精神科を受診しましょう。
自律神経失調症の検査
自律神経失調症ではどのような検査を行いますか?
まずは身体検査や問診で、どのような症状が現れているかを確認します。症状に応じて血液検査で血糖異常や鉄不足、甲状腺機能低下など自律神経を乱す原因はないか確認することもあります。
自律神経失調症の性差・年齢差
自律神経失調症は性別差や年齢差などはあるのでしょうか?
自律神経失調症は、基本的にはどの年代にも起こり得るものです。しかし、更年期にはホルモンバランスが乱れやすくなるため、症状が現れやすくなります。更年期障害は、主に女性に多く起こりますが、男性にも起こることが分かっています。
更年期やプレ更年期で、体調不良が続く場合は医療機関を受診しましょう。
編集部まとめ
自律神経失調症は、不規則な生活や過度なストレス、更年期障害などが間接的な原因となって起こります。疲労感や不眠、だるさなどの全身的症状や、情緒不安定などの精神的症状が長く続く場合は、症状に合った診療科を受診しましょう。 またストレスを溜め込まない工夫も大切です。趣味や運動などストレス発散する機会を作りましょう。参考文献




