「マンガンの多い食べ物」はご存じですか?過剰摂取すると現れる症状も解説!

マンガンの多い食べ物とは?メディカルドック監修医が一日の摂取量・効果・不足すると現れる症状・不足しやすい人の特徴・過剰摂取すると現れる症状・効率的な摂取方法などを解説します。

監修管理栄養士:
會田 千恵美(管理栄養士)
目次 -INDEX-
「マンガン」とは?

マンガンは、体の働きを支える必須ミネラルのひとつで、成人の体内にはおよそ10〜20mg存在しています。そのうち約25%は骨に、残りは肝臓・腎臓・膵臓などの臓器や組織に広く分布しています。
マンガンは主に小腸で二価のマンガン(Mn²⁺)として吸収され、吸収率はおよそ1〜5%と低めです。鉄と吸収経路が一部重なるため、鉄を多く含む食品と一緒に摂取すると、マンガンの吸収率は下がることがあります。
吸収されたマンガンは、アルブミンやα₂-マクログロブリンなどのたんぱく質と結合して血液中を運ばれ、主に肝臓に蓄えられます。その後、胆汁を通じて腸に分泌され、余分なマンガンは便として排泄されます。
通常の食生活を送っている限り、マンガンが不足することはほとんどありません。しかし、完全静脈栄養(TPN)を行っている人など、経口摂取ができない場合には、マンガン欠乏が起こることがあるため、補給が必要とされる栄養素のひとつです。
マンガンの一日の摂取量

目安量 18歳以上の男性3.5㎎/日 女性3.0㎎/日
耐容上限量 18歳以上の男性女性共に 11㎎/日
マンガンの摂取不足に伴う健康障害の報告が見当たらないことから、現在の日本人のマンガン摂取に問題はないと判断できるため、マンガンの一日の摂取量は、目安量として算定されています。
目安量とは、ある性・年齢階級に属する人々が、良好な栄養状態を維持するのに十分な量であると言われています。
マンガンの効果

骨や皮膚の形成
骨の土台となるたんぱく質を作る酵素を助け、骨の石灰化を促進します。
またコラーゲンの生成をサポートするので、皮膚の健康にも関わっています。
抗酸化作用
マンガンは、マンガンスーパーオキシドジスムターゼという酵素の構成成分であるため、活性酸素の生成を防止する働きがあります。
活性酸素は過剰に増えると血管や細胞などを酸化させてしまいます。
エネルギー代謝の促進
マンガンは、エネルギーの産生に関わるピルビン酸脱炭素酵素や、アミノ酸の一種アルギニンを分解する酵素であるアルギナーゼの構成成分です。エネルギー代謝をスムーズにし促進してくれます。
心血管系疾患の予防
マンガンは体内の抗酸化酵素であるマンガンスーパーオキシドジスムターゼの構成成分として細胞の酸化を抑える作用があります。血液細胞を含む全身の細胞の健康維持に関与し、血管が傷つくことから守られることから、血管系疾患の予防につながります。
生殖機能の向上
下垂体の成長ホルモンや、性ホルモンとの関わりがあり、不足すると生殖機能の低下が現れることがあります。
マンガンの多い食品

【1位】緑茶類 玉露
玉露抽出液100gでマンガンは4.6㎎含まれています。
玉露は、収穫される前20日ほど日光をさえぎる期間を経て収穫されるお茶で、高級なお茶として知られています。60度程度の低温で淹れるとカテキンやカフェインはあまり抽出されず、旨味成分を十分抽出することができます。
【2位】ずいき 乾燥
ずいき乾燥10gでマンガンは2.5㎎含まれています。
水で戻してから煮物や酢の物、味噌汁の具などにして食べられます。
干しずいきはあくが強いので、水で洗った干しずいきをたっぷりの水に半日ほど浸し、水の色が茶色くなることがあるので、1~2回水をとりかえると良いでしょう。
【3位】新生姜
新生姜20gでマンガンは1.53㎎含まれています。
新生姜はハウス栽培のものは初夏から夏にかけて、路地栽培のものは秋が旬です。
通常の生姜に比べて、皮が薄くみずみずしいのが特徴です。生食や、甘酢漬けなどにして、旬のものを味わってみてください。
【4位】しじみ 水煮
しじみの水煮10gで、0.73㎎のマンガンが含まれています。
しじみは殻の廃棄が多いので、殻付きで準備するときは、8割が廃棄分になります。
殻付きのしじみ10個で約50g、水煮にして10gの摂取ができます。
【5位】そば ゆで
そば ゆで 200gで、0.76㎎のマンガンが含まれています。うどん ゆで200gでは、0.24㎎のマンガンが含まれています。
マンガンが不足すると現れる症状

骨格異常
マンガンは骨の成分であるリン酸カルシウムの形成を促進させる働きがあります。また軟骨の細胞を促進させる効果においてコラーゲンとともにその主成分を担っているプロテオグリカンの合成に重要な酵素であるため、不足すると、骨がもろくなったり、骨格の変形などの症状が出る可能性があります。
疲れやすい
エネルギーの産生に関わるピルビン酸脱炭酸酵素の構成成分であるため、不足すると、糖質の代謝が障害される可能性があります。エネルギーが不足し、活動的になれない状態になり、体は疲労を感じやすくなります。
生殖機能の低下
下垂体の成長ホルモンや、性ホルモンとの関わりがあり、不足すると妊娠しにくい、性機能低下、発育不全など、生殖機能の低下が現れることがあります。
マンガンが不足しやすい人の特徴

完全静脈栄養
マンガンは、完全静脈栄養では補給を必要とする栄養素の1つとされています。
しかし、摂取量が過剰になると、血中マンガン濃度が上昇しパーキンソン病様の症状が現れることがあるので、注意が必要です。
鉄の摂取が多い
マンガンの吸収量は食事中の鉄含有量と反比例の関係があり、鉄を多く含む食品と一緒に摂取すると、マンガンの吸収率は下がります。
食事に偏りがある
マンガンは、穀類、いも類、豆類、種実類、野菜、魚介類、藻類に比較的たくさん含まれていますが、これらの食品を全く摂取しないなどの、極端に食事に偏りがある場合は、不足する場合があります。
マンガンを過剰摂取すると現れる症状

パーキンソン病に似た中枢神経障害
マンガンは厳密な菜食である食事や、サプリメントにより、過剰摂取になる可能性があります。また、完全静脈栄養では補給の必要があると言われていますが、血中濃度が上昇し、パーキンソン病に似た症状が確認されています。
精神障害
マンガンは体内の抗酸化酵素であるマンガンスーパーオキシドジスムターゼ(MnSOD)の構成成分として、細胞を酸化ストレスから守る働きをしています。 しかし、マンガンを過剰に摂取すると脳内に蓄積し、中枢神経系の機能に影響を及ぼすことがあります。その結果、情緒不安定、集中力の低下、無気力、幻覚、被害妄想などの精神症状があらわれることがあります。
マンガン中毒(マンガニズム)
健康な人が通常の食生活でマンガンを過剰に摂取することはほとんどありません。 しかし、長期間にわたり職業的にマンガン粉じんや蒸気を吸入するような環境にある場合、体内にマンガンが蓄積し、中枢神経に障害を引き起こす「マンガン中毒(マンガニズム)」がみられることがあります。
マンガンの効率的な摂取方法

マンガンと一緒に摂取すると効果を高める栄養素・食品
ビタミンB群や亜鉛、銅などはマンガンの吸収や利用に関与しています。これらの栄養素をバランスよく摂取することで、マンガンの効果的な吸収が促進されます。
マンガンと一緒に摂取すると効果を下げる栄養素・食品
マンガンは吸収時に、鉄と競合するため、鉄を多く含む食品と一緒に摂取すると鉄が先に吸収されるため、マンガンの吸収率が下がります。
マンガンの効果を高める摂取タイミング
普段の食事でバランスよく摂取していると、不足することのない栄養素です。一日の食事量が不足することの無いよう、一日三食で摂取できることが良いと思います。
「マンガンの食べ物」についてよくある質問

ここまでマンガンの食べ物などを紹介しました。ここでは「マンガンの食べ物」についてよくある質問に、メディカルドック監修医がお答えします。
マンガンを手軽に摂取できる食べ物について教えてください。
曽田 久美子
マンガンは穀類、種実類などの植物性食品に多く含まれる他、貝類をはじめとした動物性食品にも含まれます。未精製の物に多く含まれる傾向があるので、白米を炊く時に、玄米や雑穀米を混ぜて炊いてみたり、全粒粉の含まれたパンを選ぶこともお勧めです。また、お茶の中でも玉露には多くのマンガンが含まれています。
まとめ
マンガンは、普段の生活でバランスの良い食事を摂っていると不足することも過剰になることもありませんので、まずは一日三食しっかり食事をすることがお勧めです。
白米や小麦粉にもマンガンは含まれますが、玄米や全粒粉など、精製度の低い食べ物には、比較的たくさんのマンガン、またビタミンやミネラルも豊富に含まれますので、普段の食事に取り入れることをお勧めします。
「マンガン」と関連する病気
「マンガン」と関連する病気は2個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。
循環器系の病気
- 糖尿病
- 心血管疾患
「マンガン」と関連する症状
「マンガン」と関連している、似ている症状は6個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。
関連する症状
- 骨格異常
- 糖質代謝異常
- 脂質代謝異常
- 生殖機能の低下
- パーキンソン病様の症状
- 精神障害
