「ナトリウムを取りすぎる」と胃がんになりやすい?他の症状も管理栄養士が解説!

ナトリウムを取りすぎるとどうなる?メディカルドック監修医がナトリウムを過剰取りすぎると現れる男女別・一日の摂取量・効果・多く含む食品・効率的な摂取方法などを解説します。

監修管理栄養士:
鈴木 友美(管理栄養士)
健診センターでの特定保健指導・栄養相談の経験を生かして、より多くの方々の健康をサポートできるように知識を深めています。
目次 -INDEX-
「ナトリウム」とは?

ナトリウムは、カルシウム、リン、カリウムに次いで多く存在しており、人の身体を維持するうえで大切なミネラルのひとつです。細胞外液(血漿、リンパ液、組織間液)の浸透圧を調節し細胞外液の量を保つ働きや、血圧の変動にも関与しています。
ナトリウムは胆汁や膵液、腸液などの消化液の分泌や機能調整に関与しており、消化・吸収を支える重要な役割を担っています。
ナトリウムの一日の摂取量

ナトリウムは、主に食塩(塩化ナトリウム)のかたちで摂取しているため、食塩相当量で表示されていることが多いです。
・目標量について
成人(男性):7.5g未満
成人(女性):6.5g未満
・高血圧、慢性腎臓病(CKD)の重症化予防:男女共に6.0 g未満
ナトリウムの効果

浸透圧を維持する
細胞の内と外には、濃度の異なる細胞内液と細胞外液があります。
ナトリウムは細胞外液に多く含まれていて、細胞内液に多く含まれているカリウムとの濃度バランスを正常に保つことで、水分量の調節や浸透圧の維持、体液の㏗の調節などをおこなっています。
常に適切な濃度を保てるように、細胞にはナトリウムとカリウムをやり取りするポンプ機能がついており、細胞内のナトリウム濃度が高くなった場合は、イオンポンプの働きにより、細胞外からカリウムを取り入れると同時に、余分なナトリウムを細胞外へ出すことで、濃度を一定に保っています。
血圧の維持
体内でナトリウムが過剰になると、体液量が増加し、それによって血圧が上昇しやすくなります。ナトリウムは体内の水分を引き寄せて、血管内の血液量を増加させることで血圧を上昇させます。
神経機能を正常に保つ
ナトリウムは、神経が電気信号を伝達する際に欠かせないミネラルで、神経細胞内と外のナトリウム濃度が適切に調節されることで神経伝達がスムーズに行われます。
ナトリウムを過剰摂取すると現れる症状

高血圧
ナトリウムは、体内の水分を保持する働きがあり、塩分の多い料理などを過剰に摂取すると血液中のナトリウム量が増加してしまい、濃度を薄めようと体内にある水分が血管に移動します。
血液量が増加することで、心臓が血液を送り出す時の圧力が高まり、血圧が上昇します。
むくみ(浮腫)
塩分のとり過ぎによって血液中のナトリウムが増えることで水分が血管外(細胞間質)に移動し、間質に水がたまることでむくみが起こります。
むくみ対策としては、ナトリウムの摂取を控え、カリウムを含む食品を摂取し、適度な運動を心がけることが効果的です。
高ナトリウム血症
高ナトリウム血症とは、血液中のナトリウム濃度が145mEq/Lを超える状態のことをいいます。
ナトリウム濃度が160mEq/L以上になると重症と診断されます。
主な症状は、のどの渇き、意識障害、けいれんなどで重度の場合には意識障害にも陥ることがあります。
適切な水分補給と塩分管理が予防に大切で、重症化すると命に関わるため、早期発見と治療が重要です。
胃がん
塩分濃度の高い食品(味噌汁、漬物、たらこやいくらなどの塩蔵魚卵、塩鮭、塩辛など)の摂取回数が多い人ほど胃がんになるリスクが高いという報告があります。
動物実験では、胃の中で食塩の濃度が高まると粘膜がダメージを受けて、胃炎が発生し発がん物質の影響を受けやすくなることが示されています。
また、胃がんのリスクを高めるヘリコバクター・ピロリ菌の感染も起こりやすくなることが知られています。
心血管疾患、脳血管疾患
塩分の多い食品をとり続けて高血圧状態になっていると、血液を送り出すポンプの役割をしている心臓にも負担がかかってしまいます。
この状態が長期的に続くと、心筋が肥大し心不全をおこすリスクが高くなります。
また、脳の血管が詰まる脳梗塞や、血管が破れる脳出血を起こすリスクも高くなり、言語障害や麻痺などの後遺症が残る場合があります。
骨粗しょう症
塩分をとり過ぎると余分なナトリウムは尿中へ排出されるのですが、その際に一緒にカルシウムも尿中に排出されやすくなります。
骨の新陳代謝に必要なカルシウム不足につながり、骨密度の低下を招きます。
その結果、骨がもろくなり骨折のリスクが高くなります。
ナトリウムを多く含む食品

調味料
味噌や醤油、食塩などの調味料に多く含まれています。
使う量を少なめにすることを意識したり、急に薄味にすると物足りなさを感じる場合があるので、減塩タイプのものを選んでいただくのもおすすめです。
最近では、ナトリウムの一部をカリウムなど血圧を下げる働きがあるミネラルに置き換えた商品もあるので、こういったものも使ってみるとよいでしょう。
漬物
梅干しやたくあん漬けなどには、保存性を高めるために食塩が多く含まれています。
少量でも、とり過ぎになることがあるので食べる量や頻度の見直しを行いましょう。
加工肉
ハムやベーコンなどの肉加工品は、作る過程で多くの食塩が使われています。
加工肉自体に味がついているので、調味料は控えめに使うように心がけたり、下茹でをして余分な塩分を減らしてみましょう。
練り製品
かまぼこやちくわなどの練り製品には保存性を高めたり、弾力のある食感を生み出すために食塩が多く含まれています。
練り製品の味を生かして調理をしたり、出汁を使うと香りやうまみがプラスされるので使う調味料の量が抑えられ、塩分も控えることができます。
加工食品
惣菜やレトルト食品は、 手軽に食べられて便利なものではあるのですが、食塩のとり過ぎにつながりやすいので食べ過ぎには注意が必要です。
購入時に栄養成分表示を確認し、食塩の少ない食品を選ぶようにしましょう。
ナトリウムを効率よく摂取する方法

海藻類や貝類から摂取する
海藻や貝類には、ナトリウム以外にもカリウムやマグネシウムなどのミネラルが含まれており、塩分バランスを整えるのに役立ちます。
カリウムを多く含むバナナやアボカドと一緒に摂取する
カリウムは、体内の余分なナトリウムを排出し血圧を調節する働きがあるため効果を高めてくれます。
バナナや、アボカド、ジャガイモなどに多く含まれているので塩分が多い食事を食べた時には、意識して一緒にとるのがおすすめです。
特に、外食や加工食品をよく食べる方はカリウムが不足しやすいため、野菜や果物を積極的に取りいれてみましょう。
汗をかいたときに適度に摂取する
汗をかいたときに、体内のナトリウムが一緒に出て行ってしまうので運動中や運動後に適度に摂取するとよいでしょう。
また、睡眠時や飲酒時にもナトリウムは失われやすいのでお味噌汁などを取り入れてみるのがおすすめです。
「ナトリウムの取りすぎ」についてよくある質問

ここまでナトリウムの取りすぎを紹介しました。ここでは「ナトリウムの取りすぎ」についてよくある質問に、メディカルドック監修医がお答えします。
ナトリウムを取りすぎるとどうなりますか?
鈴木 友美
ナトリウムをとり過ぎると、高血圧になるリスクをあげたり、腎機能や心臓、脳血管へ大きな負担をかけてしまいます。そのほかにも、ナトリウムには水分を体内に維持する働きがあるためむくみ(浮腫)の原因となったり、尿中にカルシウムが排出されやすくなってしまうので骨粗しょう症になるリスクをあげる要因となります。
まとめ
ナトリウムは体にとって必要なミネラルですが、摂りすぎると高血圧やむくみ、腎臓への負担増加、骨密度の低下、胃がんのリスク上昇など、さまざまな健康リスクを引き起こす可能性があります。健康を維持するためには、適度な塩分摂取を心がけ、野菜や果物などのカリウムを含む食品を積極的に取り入れてみましょう。
「ナトリウム」と関連する病気
「ナトリウム」と関連する病気は8個ほどあります。各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。
内科の病気
- 高血圧症
- 糖尿病
- 腎臓病(腎不全)
循環器科の病気
- 心臓病(心筋梗塞、脳卒中、動脈硬化)
整形外科の病気
- 骨粗しょう症
消化器内科の病気
- 胃がん
泌尿器科の病気
脳神経内科の病気
「ナトリウム」と関連する症状
「ナトリウム」と関連している、似ている症状は6個ほどあります。各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。
関連する症状
- 症状の特徴
- むくみ(浮腫)
- のどの渇き
- 頭痛
- 倦怠感
- 脱水症状
- めまいやふらつき



