「カロテノイドを多く含む食品」はご存知ですか?過剰摂取による症状も解説!

カロテノイドの多い食べ物とは?Medical DOC監修医がカロテノイドの多い食べ物・一日の摂取量・効果・不足すると現れる症状・過剰摂取すると現れる症状・効率的な摂取方法・予防できる病気・疾患などを解説します。

監修管理栄養士:
若尾 愛加(管理栄養士)
目次 -INDEX-
「カロテノイド」とは?

カロテノイドとは、緑黄色野菜や柿などの果物、サケなどの魚介類、わかめなどの海藻類に豊富な赤、橙、黄色の色素成分です。自然界に500種類以上あるといわれ、そのうちの数十種が食用の動植物に含まれています。
カロテノイドの一日の摂取量

日本人の食事摂取基準(2025年版)では、カロテノイドの摂取量に関する具体的な基準は設定されていません。 カロテノイドの一部は体内でビタミンA(レチノール活性当量: RAE)に変換されます。必要な分だけがビタミンAに変換され、余剰分は抗酸化物質として働いたり、体外に排出されたりします。 なお、ビタミンAの1日の耐容上限量は性別や年齢によって異なり、以下のように定められています。
- 成人男性(18~64歳):850~900 ㎍RAE/日
- 成人女性(18~64歳):650~700 ㎍RAE/日
プロビタミンAとして知られるβ-カロテンは、必要な分だけビタミンAに変換されるため、ビタミンA過剰症のリスクが低いとされています。過剰摂取に注意が必要なのは、サプリメントなどでビタミンA自体を摂取する場合です。
カロテノイドの種類

カロテノイドはβーカロテン類に代表される「カロテン類」とルテインなどが属する「キサントフィル類」に大きく分けられます。
カロテン類
「βーカロテン」
体内で最も効率よくビタミンAに変わり、目や皮膚、粘膜の健康を守る役目をします。ビタミンA自体を摂りすぎると過剰症を引き起こす可能性がありますが、βーカロテンは徐々にビタミンAに変換されるため、過剰症の心配はありません。また変換されなかっ た分は抗酸化物質として働きます。
「リコピン」
トマトに多く含まれているリコピンですが、βーカロテンのようにビタミンAには変換されません。ただ、抗酸化作用はβーカロテンより2倍近く強く、注目される栄養素です。がん細胞の成長抑制や紫外線の害から目を守る働きがあります。
「αーカロテン」
βーカロテンと比較して、抗酸化作用が強いとされ、がん予防効果や免疫力強化、目や皮膚の健康維持効果などが知られています。
キサントフィル類
「ルテイン」
植物に含まれる黄色の色素で、リコピンと同じく体内でビタミンAに変換されませんが、強い抗酸化作用があるということが分かっています。目の全般的な健康維持やがんの予防にも役立ちます。
「カプサンチン」
唐辛子の赤色のもとになっているカロテノイドです。抗酸化作用があり、細胞の酸化ダメージを防ぐ働きが期待されています。唐辛子を日常的に摂取することで健康的な食生活をサポートできますが、過剰摂取には注意が必要です。
「アスタキサンチン」
魚介類に豊富な赤色の色素成分です。アスタキサンチンは試験管内の実験で非常に強い抗酸化作用が認められており、がん予防効果や動脈硬化の抑制、免疫力強化が期待されています。
カロテノイドの多い食品

緑黄色野菜
カロテノイドの中でもβーカロテンを多く含むのが、緑黄色野菜です。
脂溶性のβーカロテンは、油脂と一緒に摂ると吸収率が高まります。油炒めやオイルドレッシングを使用したり、脂質を含む魚や肉などと一緒に摂ることもお勧めです。
トマト
リコピンはトマトに多く含まれているカロテノイドです。赤い色素成分のリコピンは同じトマトでも青いものには少ないので、よく熟れているものを選びましょう。トマトソースなどのトマト製品は完熟トマトが使用されているのでリコピンが効率よく摂れます。
とうがらし
カプサンチンを多く含み、薬味や香辛料として普段の料理に気軽に追加できるので摂りやすいカロテノイドです。ただ、胃腸の弱い人には空腹時に摂ると粘膜への刺激が強過ぎる場合もあるので、適量を習慣的に摂りましょう。
サケやエビなどの赤い魚介類
アスタキサンチンを多く含みます。サケやエビだけでなく、カニ、イクラ、タイなども供給源となります。普段の食事のタンパク質源として、ほとんどの調理方法にも適している食材なので、積極的に摂っていきましょう。
ほうれん草などの濃い緑の緑黄色野菜
ルテインを多く含み、強い抗酸化作用があります。抗酸化作用を通じて、目の「加齢黄斑変性」に予防効果を発揮すると言われています。
カロテノイドの効果

目、皮膚や粘膜の健康を保つ
カロテノイドの中には体内で効率よくビタミンAに変換されるものがあります。ビタミンAは、目や皮膚、粘膜の健康を保つ働きがあります。
がんの予防
カロテノイドの抗酸化作用により、がん予防に役立ちます。
1種類のカロテノイドだけでなく、さまざまな種類を組み合わせて摂る方が効果的と言われています。
免疫力の強化
がん予防と同じく、抗酸化力によって免疫力の強化にも繋がります。
カロテノイドが不足すると現れる症状

カロテノイドは、体内で必要量だけがビタミンAに変換され、残りは脂肪細胞に蓄えられたり排出されたりします。カロテノイドが不足した場合は、ビタミンAの合成量が不足する可能性があります。
夜盲症
暗順応がうまく機能しない、暗いところで目が見えにくくなっていく病気です。ビタミンA欠乏性の夜盲症に関しては、ビタミンAの補給が必要になります。
皮膚のかさつき
皮膚や粘膜が乾燥して、傷つきやすくなります。
感染症にかかりやすくなる
免疫力が低下し抵抗力が衰え、風邪などの感染症にかかりやすくなります。
カロテノイドを過剰摂取すると現れる症状

柑皮症
カロテノイドは皮膚の角質層、表皮、皮下脂肪層に蓄積しやすい性質を持っているため、過剰に摂取すると手のひらや足の裏が黄色くなる症状です。
柑皮症は通常、健康への害はないとされていますが、極端に多量の摂取を長期間続けると、他の栄養バランスが崩れる可能性があります。摂取量には適度な注意が必要です。
カロテノイドの効率的な摂取方法

油を使って加熱調理をして食べる
カロテノイドは油に溶けやすい性質があるため、炒めたり揚げたりすることで体内で吸収されやすくなります。
カロテノイドを多く含む野菜を加熱調理することでかさが減り、サラダなど生野菜よりも量が摂りやすくなります。
摂取エネルギー量が気になるときは、油の代わりに脂質の多い卵や肉類などと一緒に食べても同様の効果を得ることができます。
カロテノイドと一緒に摂取すると効果を下げる栄養素・食品
カロテノイドと組み合わせの悪い栄養素や食品は特にありませんが、脂質が不足している場合、吸収が低下する可能性があります。そのため、適切な脂質とともに摂取することをお勧めします。
カロテノイドの効果を高める摂取タイミング
トマトに多く含まれているリコピンは、研究により朝に食べると吸収率が高まる可能性があるとされています。ただし、吸収率の違いには個人差があるため、食事全体のバランスを考慮することが大切です。
カロテノイドの摂取で予防できる病気・疾患
血管系疾患の予防
カロテノイドの摂取量や血清濃度が多い状態が、心臓血管系疾患リスク低減との関連性が強いことが報告されています。カロテノイドの持つ抗酸化作用は、免疫機能を維持し、動脈硬化や老化を予防するために重要です。また活性酸素の発生を防いだり取り除いたりする効果があることも分かっています。
疲れ目の予防、目の健康維持
体内で変換されたビタミンAの作用により、全般的な目の健康維持に役立ちます。
ルテインは目の網膜の中央にある黄斑に最も多く存在し、加齢とともに増える目の黄斑変性を防ぐ働きが注目されています。
がんの発生を抑える
強い抗酸化作用、免疫力の強化により、がん抑制作用があることが分かってきました。
これまでの研究では特に皮膚がん、大腸がん、乳がんなどの予防効果が認められています。
「カロテノイドの食品」についてよくある質問

ここまでカロテノイドの食品などを紹介しました。ここでは「カロテノイドの食品」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
体内にカロテノイドを増やすにはどんな食べ物を摂取すればいいのでしょうか?
若尾 愛加
緑黄色野菜、赤い魚介類、海藻類、柑橘類
カロテノイドを多く含む野菜について教えてください。
若尾 愛加
βーカロテン:にんじん(9100μg)、ほうれん草(4200μg)、西洋かぼちゃ(4000μg)
リコピン:トマト(約4.2~8.5mg)
αーカロテン:にんじん(3300μg)
ルテイン:ほうれん草(4.51mg)
カプサンチン:とうがらし(約1mg)
アスタキサンチン:サケ(紅サケ2.7mg、銀サケ0.97mg)、エビ(5.4mg)
まとめ
あまり聞き慣れないカロテノイドは、私たちの身体の健康を守る働きが沢山あります。これまで紹介したカロテノイドを多く含む食品や食材は、普段から取り入れやすい物ばかりです。今後の食生活で少し意識して摂ることで健康な毎日を過ごしていきましょう。
「カロテノイド」と関連する病気
「カロテノイド」と関連する病気は3個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
内科の病気
- さまざまな感染症
眼科の病気
- 目の乾燥・違和感
皮膚科の病気
- 皮膚の乾燥
「カロテノイド」と関連する症状
「カロテノイド」と関連している、似ている症状は3個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
関連する症状
- 暗闇で目が見えづらくなる
- 感染症にかかりやすくなる
- 皮膚の乾燥
