「フィナステリドの飲み忘れ」で効果は減少する?対処法や注意点も解説!
男性型脱毛症(AGA)の治療薬であるフィナステリドは、毎日決まった量を服用することが必要だと添付文書に記載されています。
しかし、人間はミスをする生き物です。仕事に追われていたなどの理由で、うっかりフィナステリドを飲み忘れてしまうこともあるかもしれません。
フィナステリドを飲み忘れたら効果は減るのか・飲み忘れた場合にはどのように対処すればよいのかなど、この薬剤のさまざまな注意点を説明します。
監修医師:
高藤 円香(医師)
目次 -INDEX-
フィナステリドの飲み忘れで効果は減少する?
フィナステリドを飲み忘れると、効果は低下するのでしょうか。フィナステリドを飲み忘れると、血中濃度がゼロになる時間帯ができるため、効果が低下する可能性があります。
飲み忘れると効果が減少するため注意
フィナステリドに限らず、内服薬の血中濃度は常に一定の数値を保っているわけではありません。服用直後は血中濃度が高く、徐々に低下していきます。最終的に血中濃度はほぼゼロになり、効果が失われます。
フィナステリドは効果が持続していなければ、AGAの原因であるジヒドロテストステロン(DHT)の生成を抑えることができません。飲み忘れてフィナステリドの血中濃度がゼロになる時間を作ってしまうと、AGAの進行を抑えることができない時間ができてしまうのです。
フィナステリドの飲み忘れは効果の減少につながるので、可能な限り避けるようにしなければなりません。
効果を持続させるためには継続的に服用する必要がある
フィナステリドの血中濃度がほぼゼロになるのは服用から24時間後です。フィナステリドは1日1回定量を服用することが指示されていますが、これは血中濃度をゼロにしないためという理由があります。現時点ではAGAを完治させる薬はなく、常にDHTを抑えられるようにしていなければ病状が進行するのです。
頭髪の状態を保つためには、可能な限りフィナステリドの血中濃度がゼロになる時間を作らないことが重要だといえます。つまり、フィナステリドの効果を持続させるためには継続的に服用し続ける以外の方法はないのです。
フィナステリドを飲み忘れた場合の対処法
フィナステリドの飲み忘れは効果の低下につながります。飲み忘れに気がついた場合、以下の対処が必要です。
- 気付いた時点ですぐに服用する
- 次の日に多めに飲むことは避ける
特に、飲み忘れた次の日に服用量を増やしてはいけません。効果が期待できないどころか、副作用のリスクがあるからです。
気付いた時点ですぐに服用する
フィナステリドの服用にあたって重要なことは、血中濃度がゼロになる時間を作らないことです。服用後24時間が経過した後は、血液中にフィナステリドの成分がない時間だといえます。飲み忘れに気がついた後すぐに服用しないと、血中濃度がゼロの時間を長引かせてしまうことになりかねません。
フィナステリドが効いていない時間帯はDHTの生成が抑えられておらず、ヘアサイクルの修正が遅れてしまいます。フィナステリドの飲み忘れに気がついたら、可能な限り早く服用すべきです。服用することでフィナステリドの血中成分が再び高まり、血中にフィナステリドの成分がない時間を短縮できるためです。
次の日に多めに飲むことは避ける
フィナステリドを飲み忘れたとき、決してやってはいけないのは次の日に多めに服用することです。薬を多く飲めば効果が高くなるとは限りません。
特にフィナステリドの場合は、多く服用しても効果が高くなるわけではないことが確認されているのです。医療機関で処方されている5倍の量を服用しても効果に差がなかったと、報告されています。むしろ、薬を多く服用することで副作用のリスクを高めているとすらいえるのです。
また、医療機関で処方される量の25倍を投与し続けた患者さんで乳がんを発症したケースがあるとの報告もあります。飲み忘れたからといって服用量を増やしても、実際のところはデメリットしかないのです。飲み忘れて時間がたっていても決して量を増やさず、決められた量を服用する方がよいといえます。
フィナステリドを服用するうえでの注意点
添付文書に記載されているように、フィナステリドは取り扱いに注意が必要です。注意すべき点としては、以下のようなものが挙げられます。
- 女性に対する適応はない
- 過敏症の既往歴がある人は服用を避ける
- 20歳未満の人は服用を避ける
- 通常は効果が確認できるまで6ヵ月の連日投与が必要
- 6ヵ月以上投与しても進行遅延がみられなければ中止する
- 副作用に注意する
特に性欲減退などの副作用には気を付けなければなりません。医療機関に処方してもらうべき薬で、個人輸入などは行わないでください。
女性に対する適応はない
フィナステリドの処方が認められているのは男性のみで、女性には処方できません。それどころか、薬剤の成分に触れることすらできないのです。
妊娠中・授乳中の女性は赤ちゃんが男児の場合、フィナステリドによって子どものDHTの生成が妨げられることが問題となってきました。DHTには男性器の発育を促す働きもあるため、DHTが生成されないと男性器の発育に悪影響が出ると報告されています。
また、女性がAGAを発症した場合にフィナステリドを投与しても効果が認められなかったことも報告されています。
フィナステリドに過敏症の既往歴がある人は服用を避ける
薬剤過敏症の既往歴がある人は、フィナステリドの服用を避けなければなりません。薬剤過敏症は薬疹ともいわれ、副作用の約1割を占めます。症状としては発疹などが挙げられ、アナフィラキシー・ぜんそくのように治療を急がなければならないケースもあるのです。また、薬剤過敏症は同じ薬を飲み続けると症状がどんどん重くなっていきます。
薬剤過敏症の既往歴がある人はほかの薬でも同様の症状が出るリスクがあるため、処方自体が禁忌とされているのです。
20歳未満の人は服用を避け
20歳未満の人については、安全性・有効性が確立されていません。前述のように、AGAの原因となるDHTには男性器の発育を促す働きなどもあります。
男性器の発育途上である未成年の場合、DHTの生成抑制は男性器の発育不全を招きかねません。なお、海外では18歳以上の安全性が確認されています。しかし、日本で臨床試験が行われているのは20歳以上に対してのみです。海外と日本でフィナステリドの基準が違うのは、これを踏まえたものです。
通常は効果が確認できるまで6ヵ月の連日投与が必要
効果が確認できるまで通常6ヵ月の連続投与が必要だと記載されています。フィナステリドはDHTの生成を抑える薬で、頭髪の成長そのものを促すものではありません。DHTによって乱れたヘアサイクルがもとに戻るためには、ある程度の時間が必要です。
即効性がないことに留意し、短期間で効果が出なくても勝手に服用を中止するようなことは慎むべきだといえます。再びDHTが生成され始め、ヘアサイクルが乱れてしまいかねないからです。
6ヵ月以上投与しても進行遅延がみられなければ中止する
フィナステリドを6ヵ月にわたって服用しても効果が確認できなければ、服用を中止し、医師に相談しましょう。繰り返しますが、フィナステリドはヘアサイクルを整えるもので毛髪の成長を促す薬ではありません。ヘアサイクルが整っても、髪が元どおりになるためには毛根が生きている必要があります。
AGAが進行して毛根が死滅している場合、フィナステリドの効果は期待できません。フィナステリドは、毛根を再生できないからです。
副作用に注意する
フィナステリドの主な副作用としては以下のものがあります。
- 肝機能障害
- 性欲減退
- 勃起障害(ED)
- 精子減少
- 乳房肥大
- 抑うつ症状
副作用の発生頻度としては性欲減退が5%未満、それ以外は1%未満もしくは頻度不明です。性欲減退やEDについては、服用中止後も症状が持続した臨床例があると報告されています。薬剤との因果関係は不明ですが、服用者に自殺衝動が生じたケースがあることも報告されています。
このようなフィナステリドの副作用が確認された場合、服用中止など医療機関の指示に従ってください。
編集部まとめ
フィナステリドを飲み忘れた場合でも、次の日に多く服用すべきではありません。飲み忘れに気がついた時点で、すぐに服用するのがベストです。
ただ、頻繁に飲み忘れが起きると効果が低下してしまいかねません。フィナステリドの血中濃度がゼロの時間帯ができてしまうからです。
医療機関に指示されているように、1日1回の服用が必要であることは添付文書にも記載されています。決して飲み忘れることがないよう、気をつけてください。