トランサミン(トラネキサム酸)と相性の悪い薬と食品、専門家が語る注意点
トランサミンは、止血作用・抗アレルギー作用・抗炎症作用を示す薬でさまざまな症状に対して処方されることがあります。
内科・小児科では風邪症状でのどが痛いときに使われることが多いですが、皮膚科では自由診療で肝斑やシミの治療にも使われることがあり、用途の多い薬です。
この記事では、トランサミンの飲み合わせについて、基本情報や副作用も含めて解説します。
トランサミンを飲みたいけれど、飲んでいる薬との飲み合わせが気になる方・副作用が気になる方は参考にしてください。
監修薬剤師:
佐孝 尚(薬剤師)
北海道医療大学薬学部 卒業 現在はセンター薬局グループに薬剤師として勤務しながら株式会社イヤクルを創業。不動在庫医薬品取引プラットフォームアプリ【イヤクル】を運営。
保有免許・資格
薬剤師免許
トランサミン(トラネキサム酸)の飲み合わせについて
トランサミンを飲みたいものの、今飲んでいる薬と一緒に飲んでもいいのか気になっている方もいるのではないでしょうか。トランサミンは、トラネキサム酸を主成分とする薬で、喉の痛みがあるときにも使われるため子どもから大人まで処方されることがある薬です。
トラネキサム酸は、抗プラスミン作用を持つため止血作用があります。プラスミンは血管に作られた血栓を溶かす作用がありますが、これに拮抗することで止血作用を示すのです。
トランサミンは、同じく止血剤であるトロンビンとの併用ができません。これは一緒に使うと相乗効果で、血栓ができやすくなってしまうためです。
トランサミンの基本情報
トランサミンは、止血作用・抗アレルギー作用・抗炎症作用がある薬で、さまざまな疾患の治療に使用されています。このため、違う病気・症状で医院にかかったが同じ薬が出たという経験のある方もいるかもしれません。
そのような経験があると、どのような薬でどのように体内で効くのかということが気になるかと思います。ここでは、トランサミンの基本情報について、効果や服用量・成分などについて解説します。
製薬会社
トランサミンを販売している会社は、第一三共株式会社です。錠剤・カプセル・散剤・注射剤は第一三共株式会社が製造し販売しているのですが、シロップ剤のみはニプロファーマ株式会社が作り、第一三共株式会社が販売しています。
剤型
トランサミンには、錠剤・カプセル・散剤・シロップ剤・注射剤とさまざまな剤型があります。症状や病気・その方ごとの体の状態によって使用するものが違ってくるので、それぞれの方が使いやすいように作られています。
子どもも服用することがある薬なので、散剤やシロップ剤も用意されているのです。
- トランサミン錠250mg:直径10cmの円形の白い錠剤で、コーティングはされていない素錠です。錠剤の表面にはD606という識別コードが入っていて、厚さは3.2mm程度です。
- トランサミン錠500mg:長径17.8mmの楕円形の白い錠剤で、フィルムコーティングがされています。錠剤の表面にはD608という識別コードが入っていて、厚さは5mm程度です。
- トランサミンカプセル250mg:17.8mmでオレンジ色と白色の2号カプセルで、中に入っている粉は白色です。カプセルの表面にはD605という識別コードが入っています。
- トランサミン散50%:白色の散剤で苦味があります。
- トランサミンシロップ5%:茶色の遮光ビンに入った淡赤色の溶液です。オレンジのような芳香がします。
- トランサミン注5%:無色澄明の液体で1本5mLの製剤です。
- トランサミン注10%:無色澄明の液体で1本2.5mLと10mLの製剤があります。
成分
トランサミンという薬には、有効成分であるトラネキサム酸のほかに、薬を錠剤や粉・液体にするための添加物が含まれています。この添加物や有効成分であるトラネキサム酸の配合量はそれぞれの剤型で異なるので1つずつ解説します。
- トランサミン錠250mg:有効成分(1錠中にトラネキサム酸250mg)、添加物(トウモロコシデンプン・ポリビニルアルコール(部分けん化物)・低置換度ヒドロキシプロピルセルロース・ステアリン酸マグネシウム・硬化油)
- トランサミン錠500mg:有効成分(1錠中にトラネキサム酸500mg)、添加物(カルメロースカルシウム・ポリビニルアルコール(部分けん化物)・ステアリン酸マグネシウム・ヒプロメロース・マクロゴール6000・タルク・酸化チタン・ジメチルポリシロキサン・二酸化ケイ素・カルナウバロウ)
- トランサミンカプセル250mg:有効成分(1カプセル中にトラネキサム酸250mg)、添加物(トウモロコシデンプン・ステアリン酸マグネシウム・ゼラチン・ラウリル硫酸ナトリウム・黄色5号)
- トランサミン散50%:有効成分(1g中にトラネキサム酸500mg)、添加物(D-マンニトール・ポリビニルアルコール(部分けん化物))
- トランサミンシロップ5%:有効成分(1mL中にトラネキサム酸50mg)、添加物(白糖・クエン酸水和物・クエン酸ナトリウム水和物・パラオキシ安息香酸メチル・パラオキシ安息香酸プロピル・ソルビン酸カリウム・ピロ亜硫酸カリウム・赤色3号・香料)
- トランサミン注5%:1アンプル中トラネキサム酸250mg/5mL(5W/V%)
- トランサミン注10%:2.5mL製剤(1アンプル中トラネキサム酸250mg/2.5mL(する10W/V%))・10mL製剤(1アンプル中トラネキサム酸1g/10mL(10W/V%))
効果
トランサミンは、プラスミンの作用を阻害することで、出血・炎症・アレルギー反応を抑える薬です。プラスミンが異常に亢進すると、血が止まらなくなったり、アレルギーが起こってしまったりすることがあります。
トランサミンはこのプラスミンの働きを抑制することで、出血を止めたり湿疹や蕁麻疹を抑えたりします。また、同様の作用で炎症を抑えるので、咽頭炎や扁桃腺炎・口内炎にも使用される薬です。
用法・用量
トランサミンは子どもから大人までさまざまな用途で使われる薬ですが、止血作用があるため脳血栓・心筋梗塞・血栓性静脈炎がある患者さんやその危険性がある場合は注意が必要です。また、腎臓で代謝される薬なので、透析を受けている方は代謝が遅れてしまいます。
透析を受けている方では痙攣が起こることも報告されているので使用は慎重に行う必要があります。内服のトランサミンは、トラネキサム酸として成人で1日750〜2,000mgを3〜4回に分けて服用することが一般的です。小児などに用いられるシロップは、年齢ごとにおおよその服用量が決まっていて、症状などによって適宜増減して投与されます。
注射剤は、成人の場合トラネキサム酸として1日250〜500mgを1〜2回に分けて静脈内または筋肉内に注射する薬で、手術の際には、必要に応じて1回量を増やして使用することができます。
妊娠中・授乳中は、有益性投与といってベネフィットがリスクを上回る場合のみ投与可能です。子どもにも使うことができる薬ではあるので、授乳中も使用しやすい薬といえるでしょう。
トランサミンの副作用
薬を飲むときに気になることの1つには副作用への懸念があります。トランサミンを服用する際、どのような副作用が起こりうるのかについて気になる方も多いでしょう。
自分の気になる症状を改善させるために服用した薬で、思いもよらない副作用が起こってしまうと困ってしまうので、どのようなことが起こりうるのかは知っていた方が安心です。
ここでは、トランサミンを飲んだときに起こる可能性がある副作用について解説します。
副作用は少ない
トランサミンを日本で保険適用で使用するために行った臨床試験での結果を見ると、副作用はほかの薬剤と比べても少ない薬だということがわかります。
市販後の使用経験から、透析を受けている方で使用後に痙攣の副作用があったということで、重大な副作用に記載がありますが、その他の重大な副作用はありません。このため、使用しやすい薬であるといえます。
そう痒
臨床試験では、ごくわずか0.1%未満の患者さんで、体の痒みなどといったそう痒の症状が出ています。このため、トランサミン服用後にそう痒の症状が出た場合、トランサミンの副作用の可能性は否定できません。
浮腫
トランサミンの副作用による浮腫は、薬を国内で使用できるようにするために行われた臨床試験や市販後の調査では、確認されていません。トランサミンは抗炎症作用があり、アレルギー反応による炎症性浮腫については改善させる傾向にあります。
発疹
発疹の副作用は、臨床試験ではそう痒と同じく0.1%の患者さんで出現しています。発疹はアレルギー反応で起こることがあるので、どの薬剤でも起こる可能性のある副作用です。このため薬を飲んですぐに発疹が出た場合には、トランサミンの副作用の可能性があります。
胸やけ
胸やけは、臨床試験では1%未満の患者さんで出現していて、発疹やそう痒よりは高い確率で出ている副作用です。薬を飲むことによって胃に負担がかかり、胸やけや悪心・嘔吐などの消化器症状が出てしまうことがあります。
このため、トランサミン服用後に胸やけが起こった場合にはトランサミンの副作用の可能性があるでしょう。
編集部まとめ
この記事では、トランサミンの基本的な情報や飲み合わせ・副作用などについての情報を解説しました。トランサミンは喉の痛みなどでよく使われている薬なので、病院にかかった際にもらったことがあるという方も多いかと思います。
子どもにも使うことがあり、安全性が高く見える薬ですが副作用やほかの薬との飲み合わせへの注意もあるということがご確認頂けたでしょうか。
薬は必要なときに服用して、症状を和らげるために有用なものですが漫然と服用することで体に悪影響が出てしまうことがあるものです。また自己判断で必要な量より多い量を飲んでしまうことも同様に危険があります。
自分や周囲の人の健康を守るためにも薬は用法・用量を守り、正しく使っていきましょう。
参考文献