「薄毛に効果的なマッサージ」はご存知ですか?ツボ・効果・注意点についても解説!
「最近、髪が薄くなってきた気がする」そのような悩みを抱える人は少なくありません。薄毛を実感している男性は全年齢では約30%、50代以降では40%以上にのぼります。
薄毛は男性特有の悩みのように思われがちですが、女性にも現れることがあり、女性型脱毛症として近年認知されるようになっています。
AGA(男性型脱毛症)の知識が一般的になるにつれ、インターネットなどの各種メディアで薄毛に効果的なマッサージや民間療法が数多く紹介されるようになりました。一方で科学的・医学的根拠の乏しい情報も多く、注意が必要です。
毛髪の変化は患者のQOL(quality of life)に深く関わります。正しい知識を身に着けることはQOLの向上のためにも非常に重要です。
本記事では薄毛に効果的なマッサージ方法について詳しくご紹介します。クリニックで処方される代表的な治療薬についても併せてご紹介しますので、薄毛について詳しく知りたい方・薄毛にお悩みの方はぜひ参考になさってください。
監修医師:
竹内 想(名古屋大学医学部附属病院)
目次 -INDEX-
薄毛対策に効果的なマッサージのポイント
頭皮マッサージによって血行改善や地肌の柔軟性の向上が期待でき、一般的に薄毛対策に効果的といわれています。一方で、力を入れすぎたり闇雲に刺激したりするだけでは充分な効果が望めない上に、頭皮を痛めてしまうため注意が必要です。
ここではマッサージのポイントをご紹介します。ご紹介するポイントを意識することで、より高い効果が期待できます。
頭部のツボを押す
人体には361か所のツボが存在し、鍼灸治療ではツボに刺激を与えることで多くの疾患や症状が改善されます。ツボを刺激することで期待できる効果には以下のようなものがあります。
- 血流の改善
- 自律神経を整える
- 筋肉の緊張の緩和
頭皮には多くのツボがあり、マッサージの際に刺激すると効果を高められます。特に「百会」というツボは頭に関連した症状だけではなく、全身の様々な不調に効果的だといわれています。
「百会」は左右の耳の穴を結んだ横の線と頭を二分する縦の線の交点にあり、マッサージの際には3秒ほど少し強めに圧迫しましょう。頭皮マッサージにはこする・揉みほぐす・圧迫するなどの方法がありますが、血流改善の効果が最も高いのは圧迫による方法です。
ツボを刺激する際には強すぎず、気持ちいい力加減で圧迫するようにしてください。
頭部の筋肉を意識する
頭部には前頭筋・側頭筋・後頭筋の3つの筋肉があります。
- 前頭筋(おでこにある筋肉):眉を動かす・目を見開く
- 側頭筋(こめかみの筋肉):口を閉じる
- 後頭筋(首の後ろにある筋肉):頭を支える
長時間同じ姿勢をとる・歯を食いしばる癖があるなどの場合はこれらの筋肉が凝り固まってしまい、頭皮の血行不良に陥ります。頭部の筋肉は体の他の筋肉と異なり運動やストレッチでほぐすことができません。
定期的にマッサージで凝りを解消しましょう。頭部の筋肉をほぐすことで全身の血行改善も期待でき、リラックスにも効果的です。
マッサージは定期的に行う
頭皮マッサージによる血流改善効果は一過性で、持続時間はマッサージ後約20分間です。一方で頭皮の凝りや血流の悪化は日々の生活の中で蓄積されていきます。
頭皮マッサージによって毛髪の直径が増大する結果を示した実験では、1日4分以上のマッサージを24週間にわたって継続しています。頭皮マッサージを定期的かつ継続的に行い、健康的な頭皮を維持しましょう。
マッサージグッズを適切に使う
マッサージグッズを適切に使うことで頭皮表面が水平に振動し、皮下組織にまで波及して刺激が伝わります。これにより、毛髪サイクルをコントロールする毛乳頭細胞を刺激でき、発毛に不可欠な成分の分泌増加が期待できます。
また、マッサージグッズの使用は日々のセルフケアを簡便にし、楽にマッサージを継続できるためおすすめです。
薄毛対策のマッサージで期待できる効果
薄毛対策のマッサージは血行促進や頭部の凝りを和らげる効果があり、頭皮環境の改善につながります。頭皮環境の改善は発毛にかかわる細胞の活性化など、薄毛や毛髪の状態に良い影響を与えます。
頭皮マッサージは具体的にどのような効果をもたらすのでしょうか。
毛乳頭細胞が活性化する
毛乳頭細胞とは毛髪サイクルをコントロールする細胞で、毛根の中心に位置し、周りを取り囲む毛母細胞に細胞分裂を促す物質を分泌します。毛母細胞が毛乳頭細胞の指令を受けて分裂を繰り返すことで毛髪が伸びていくのです。
毛乳頭細胞にマッサージに似た刺激を与えて培養した実験では、毛周期に関わる遺伝子の増加が確認されています。マッサージによる毛乳頭細胞の活性化と発毛に効果的な薬の併用で、発毛効果が高まると考えられます。
髪が育ちやすい頭皮になる
毛髪が育ちやすい頭皮の条件には以下のようなものがあります。
- 頭皮が柔軟である
- 血流が良好である
- 毛根に汚れや皮脂が詰まっていない
マッサージは頭皮や頭部の筋肉をほぐして血行を改善します。これにより毛髪の成長に必要な栄養や血液が毛根に行き渡り、毛髪が育ちやすくなるのです。
加えて、マッサージでツボが刺激され全身の体調が整うため、皮脂の過剰分泌といった頭皮環境の改善も期待できます。頭皮マッサージを継続することで毛髪が育ちやすい頭皮環境を整え、健康な髪を目指しましょう。
白髪も改善できる
白髪ができる原因は色素を作り出す色素細胞(メラノサイト)の機能が加齢などによって低下することです。メラノサイトはストレスによってもダメージを受ける場合があり、ストレスで交感神経が活性化することでメラノサイト幹細胞が枯渇するとの研究結果もあります。
マッサージはリラックス効果が高く自律神経を整えるため、白髪の改善が期待できます。
薄毛対策でマッサージをするときの注意点
マッサージは血行改善やリラックス効果といった間接的な要因に加え、物理的な振動により発毛を促進する効果が期待できます。一方でマッサージの方法を誤ると充分な効果が得られないだけではなく、薄毛を悪化させてしまう危険もあります。
マッサージを行う際には以下でご紹介する点に注意しましょう。
頭皮に刺激を与えすぎると逆効果
発毛にはストレスの無い環境が大切です。「気持ちいい」と感じると副交感神経が活性化し、血行も良くなります。一方で強すぎるマッサージは断続的な痛みがストレスとなって交感神経が活性化し、血管が収縮してしまいます。血管の収縮は血流の悪化に直結するので注意しましょう。
マッサージをする際は爪を整え、マッサージ器具を正しく使用するなど、頭皮を傷つけない工夫も大切です。頭皮や毛髪への強すぎる摩擦を減らすため、髪が濡れた状態でのマッサージは避け、マッサージオイルなどを使用すると良いでしょう。
マッサージオイルはしっかりと洗い流す
マッサージオイルを使用することで以下のような効果が期待できます。
- 毛髪への摩擦を軽減し、ダメージを減らせる
- 香りによるリラックス効果が期待できる
- 頭皮のクレンジング効果があるオイルを用いれば、シャンプーでは落としきれない汚れや皮脂が落とせる
快適な頭皮マッサージに不可欠なマッサージオイルですが、洗い残しは毛髪や頭皮にストレスを与えてしまいます。毛根が詰まって頭皮環境が悪化する原因にもなりますので、マッサージ後はオイルをしっかりと洗い流すようにしましょう。
まずお湯でオイルを馴染ませてよく洗い流し、その後でシャンプーやコンディショナーを使用してください。1度で洗い流せない場合はもう1度シャンプーし、洗い残しが無いように注意しましょう。洗髪の際は頭皮や毛髪を傷つけないよう、優しい力加減で行いましょう。
薄毛の進行が不安な場合はAGA専門クリニックに相談を
ご紹介したマッサージを長期間継続しても満足な効果が見られない場合や、薄毛の進行に医学的なアプローチを希望する方は専門クリニックへのご相談をおすすめします。毛髪は以下のような周期を生涯繰り返します。
- 成長期(2〜6年間):毛髪が太く長く成長する
- 退行期(数週間):毛球(毛根の根本)が小さくなる
- 休止期(2〜4ヶ月間)
- 脱毛
AGAは上記の毛髪の成長期が短縮され、髪が細く短くなることで生じます。遺伝的要素や男性ホルモンの影響で、毛髪を成長期から退行期・休止期へ移行させる物質(ジヒドロテストステロン)が通常よりも早く分泌されてしまうためです。
AGA専門クリニックでは、このようなAGA特有の症状に対して投薬を中心とした治療が行われます。希望によって植毛術やメソセラピーと呼ばれる注射療法の選択もでき、治療法は様々です。
薄毛治療は長期に渡ることが多く、どのような治療方針となるかは患者ひとりひとりの希望や特徴に合わせて柔軟に決定する必要があります。多くのAGA専門クリニックではプライバシーに配慮したリラックスできる環境が整備されており、安心して治療に取り組めます。
AGAは症状が進行した状態が長く続くと回復を見込めなくなる可能性があるため、薄毛に悩んでいる方はなるべく早く治療を開始しましょう。
クリニックで処方される代表的な薄毛の治療薬
AGAの代表的な治療薬は脱毛を防ぐもの・発毛を促進するものの2種類に分けられます。治療薬によって用法や副作用、男性型・女性型脱毛症への効果が異なるので注意しましょう。
ミノキシジル
ミノキシジルは外用(患部に塗布する)により高い発毛効果を発揮します。男性型脱毛症・女性型脱毛症どちらにも効果が期待でき、AGA治療でも頻繁に使用されている薬です。薬局などでも購入できる身近な薬でもあります。休止期に入った毛を成長期へ移行させ、毛髪を太く成長させる発毛作用があります。
副作用として、まれに痒み・赤み・接触性皮膚炎・顔面の多毛などがみられることがあります。
ミノキシジルは外用薬です。内服は日本では認められておらず、世界的にもAGA治療薬として内服が認可されたケースはありません。AGAへの効果や内服に伴う危険性が判明していない上、全身の多毛症などの副作用があります。一部のクリニックではミノキシジルの内服薬を処方することがありますが、注意が必要です。
プロペシア
プロペシアは米国食品医薬品局に認可されている内服薬で、主要成分はフィナステリドという成分です。毛髪を退行期へと移行させるジヒドロテストステロンという物質を減少させ、ヘアサイクルを正常化することで毛髪を太く成長させる効果があります。
プロペシアのジェネリック医薬品にフィナステリド錠があります。プロペシア(フィナステリド錠)の内服は男性型脱毛症に効果的で、5年間の継続服用により99%の症例で効果が出たという研究結果があるほどです。
副作用として、まれに肝機能障害が発生することがあるので注意しましょう。女性型脱毛症には効果が薄く、妊娠・授乳中の女性が服用すると胎児や子どもに影響があるので服用は禁忌とされています。内服を中止すると効果は消失するため、継続して服用する必要があります。
ザガーロ
ザガーロはデュタステリドを主成分とする薬で、プロペシアよりも効果的にジヒドロテストステロンの生成を阻害できる治療薬として注目されています。両者はジヒドロテストステロン生成を促す5-α還元酵素に対する働きに差異があります。
具体的には、プロペシアがⅠ型5‐α還元酵素のみに作用する医薬品であるのに対し、ザガーロはⅠ型に加えてⅡ型の5-α還元酵素に作用するのです。ザガーロとプロペシアを比較した国際臨床試験では、毛髪数・毛直径においてザガーロが優位な結果です。
一方で副作用には注意が必要で、 国際臨床試験では約5%、国内の臨床試験では約20%に性機能障害が報告されています。服用に際しては副作用について理解した上で、体調の変化に注意しましょう。こちらの薬もプロペシアと同様、女性への処方は推奨されていません。
編集部まとめ
薄毛に効果的なマッサージやクリニックで処方される代表的な治療薬について紹介しました。マッサージをする際は力を入れすぎず「気持ちいい」と思える強さで行いましょう。
AGAへの専門的なアプローチを望む場合は専門クリニックを受診しましょう。毛髪や発毛メカニズムの研究が進んだことで、AGAの治療効果は向上しています。薬の違いや副作用について理解した上で自分に合った治療を選ぶことが大切です。
頭皮マッサージ・専門クリニックでの治療共に、継続して行うことで効果が発揮されます。即効性が無くても焦らず、長期的なスパンでケアに臨みましょう。
健康な髪にはストレスを溜めないことも大切です。マッサージによるセルフケアや専門クリニックでの治療が負担にならないよう、自分に合った対策でストレスの無い健康的な髪を目指しましょう。