女性の薄毛治療に使われる薬とは?症状・女性の市販の薄毛治療薬についても解説
技術の進歩とともにさまざまな治療法が確立されている薄毛治療では、治療薬も以前に比べより効果が期待できるものが増えています。
薄毛の治療薬といえば、頭皮に直接塗布する外用薬をイメージする方が多いかと思いますが、内用薬やサプリメントなどもありその種類はさまざまです。
最近では市販の治療薬もよく目にするようになり、薄毛でお悩みの方の中には治療薬に興味を持っている方も少なくないのではないでしょうか。
今回は、処方薬・市販品・男性用の治療薬に関してなど、女性の薄毛治療薬について詳しく解説します。
監修医師:
竹内 想(名古屋大学医学部附属病院)
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女性の薄毛治療に使われる薬とは
これまで、女性の薄毛治療では有効な内用薬が存在せず、外用薬での治療が主流でした。しかし、現在では内用薬も開発され、外用薬との組み合わせでより効果が期待できる薄毛治療が可能となりました。
女性の薄毛治療では、パントガールやスピロノラクトンなどの内用薬に加えて、ミノキシジル外用薬の使用が一般的です。それぞれの治療薬について、詳しく解説します。
パントガール(内用薬)
パントガール(Pantogar)は、ドイツの製薬会社が開発した女性用の薄毛治療薬です。世界で初めて女性の薄毛に対する内用薬として認可を受けた薬となります。
髪の成長に関与するさまざまな栄養素が含まれており、摂取することで頭皮に栄養を行き渡らせ発毛を促すのです。パントガールに含まれる主な栄養素は、以下のとおりです。
- パントテン酸カルシウム:神経や筋肉をほぐし髪の成長を促すビタミンBの一種
- ケラチン:18種類のアミノ酸が結合した髪の主成分となるタンパク質
- シスチン:ケラチンを構成する主要なアミノ酸
上記のように、パントガールは主成分が栄養素であることからサプリメントに近い薬だといえるでしょう。まれに腹痛・下痢・めまい・頭痛・動悸・胸やけなどの副作用が現れるとされていますが、重篤な副作用はほぼ現れず、安全性の高い女性の薄毛治療薬として広く使われています。パントガールは全身疾患による脱毛ではあまり効果が得られません。
スピロノラクトン(内用薬)
スピロノラクトンは抗男性ホルモン剤であり、主に男性ホルモンが原因で薄毛が現れた際に使われる医薬品です。通常、女性の薄毛では男性ホルモンの影響がみられないとされていますが、男性ホルモンが優位となる病気が原因で薄毛を発症するケースがあります。男性ホルモンが原因で薄毛を発症し得る主な病気として、以下のものが挙げられます。
- 多嚢胞性卵胞症候群
- セルトリ・ライディッヒ細胞腫
- 間質性莢膜細胞過形成(かんしつせいきょうまくさいぼうかけいせい)
上記のような病気から薄毛を発症している場合には、病気の治療と並行して抗男性ホルモン剤を服用し、男性ホルモンを抑えて発毛を促すのです。男性ホルモンに作用する薬のため、女性ホルモンの影響による薄毛の治療には使われません。
ミノキシジル(女性用・外用薬)
ミノキシジルは、男女ともに使用できる薄毛治療の外用薬として良く知られており、唯一発毛効果が認可された薬として薄毛治療の中で最も推奨されています。元は降圧剤として使用されていた成分ですが、血管拡張作用から発毛への有効性が認められたため、発毛剤としても使われるようになりました。
液状の薬剤を直接頭皮に塗布することで頭皮の血行を促進し、毛髪を強くしたり発毛を促したりする効果が期待できます。ミノキシジルは濃度別で種類が分かれており、女性用では1%濃度の治療薬を使うのが一般的ですが、男性用の5%濃度を使用するケースもあります。
まれにかゆみ・紅斑・フケ・毛包炎などの副作用がみられますが、重篤な副作用はほぼみられないため、安全性の高い治療薬だといえるでしょう。
使用し始めの時期に脱毛が増えることがありますが、休止期脱毛という一時的な症状のため、使用を中止する必要はありません。ミノキシジルは即効性のある治療薬ではないため、長期的な使用により効果が現れやすくなるでしょう。
女性の薄毛治療の症状
女性の薄毛は男性の薄毛とは異なり、原因や症状もさまざまです。女性の薄毛の症状として、びまん性脱毛症・休止期脱毛症・加齢変化の3つが挙げられます。
まず、びまん性脱毛症では、主に頭頂部の広範囲で脱毛や軟毛化が起こります。男性型脱毛症とは異なり、生え際の後退や後頭部に脱毛が起こらないことが特徴です。次に休止期脱毛症では、何らかの原因で髪が生え変わるサイクルが乱れ、脱毛後に髪が生えてこなくなります。休止期脱毛症では、以下の3つの種類が挙げられます。
- 急性休止期脱毛症:精神的ストレスや産後脱毛などが原因で一時的に髪全体の脱毛量が増加する脱毛
- 慢性びまん性休止期脱毛症:過度なダイエットや全身疾患などが原因で半年以上継続する軟毛化を伴わない髪全体の脱毛
- 慢性休止期脱毛症:高年発症で10年以上かけて起こる加齢による髪全体の脱毛
原因は多岐にわたりますが、急性休止期脱毛症と慢性びまん性休止期脱毛症では、原因を取り除くことで薄毛の改善が期待できるでしょう。続いて加齢変化は、髪全体の脱毛数が増えたり軟毛化など髪の質が大きく変化したりすることで薄毛になります。
閉経後の女性で急増することから、髪の成長に必要な女性ホルモンの分泌の激減により発症するといえるでしょう。
男性用の治療薬を使ってもいい?
薄毛治療薬は男性用と女性用で分かれているものが多くありますが、女性が男性用の治療薬を使うことはおすすめできません。男性型脱毛症は、主に男性ホルモンの影響から起こっているため、治療薬も男性ホルモンに作用するよう作られています。
そのため、男性ホルモンの影響をほぼ受けない女性の脱毛では、有用性が認められないのです。加えて男性用治療薬の中には、フィナステリドやデュタステリドといった催奇形性がある治療薬もあるため、女性の服用が禁止されているものもあります。
女性と男性で薄毛の原因が異なる以上、女性であれば女性用の治療薬を使うことが安全であり、薄毛改善への近道ともなるでしょう。
女性の市販の薄毛治療薬
薄毛治療では、一昔前と比較してさまざまな治療薬が開発されており、市販品においても現在では多くの製薬会社から薄毛治療薬が販売されています。処方薬よりも価格が安く、通院せず薬局やネット通販などで手軽に購入できることから、使用を考えている方も少なくないのではないでしょうか。
ただし市販の薄毛治療薬は自己責任で使用するもののため、万が一副作用が起こったり粗悪品を掴まされたりした場合でも、国の救済措置を受けられないデメリットもあります。あくまでも自己責任で使用する治療薬であると理解したうえで、慎重に選んで使用すると良いでしょう。女性の市販の薄毛治療薬にはどのようなものがあるか、詳しく解説します。
ミノキシジル配合の市販薬
処方薬において最も推奨されるミノキシジルは、市販品においても配合薬が販売されています。先述のとおり、ミノキシジルは唯一、発毛効果が正式に認められた成分であるため、ミノキシジル配合の市販薬は発毛剤として販売されます。そのため、脱毛による薄毛が気になる方はミノキシジル配合の市販薬を使用すると良いでしょう。
薄毛の原因に対して適切に処方される薬に比べると効果が劣ることもありますが、用法・用量を守り長期間使用することで、発毛や髪を強くするなどの効果が期待できます。購入にあたって医師の処方箋は必要ありませんが、第一類医薬品に分類されるため、薬剤師を介して購入する必要があります。
女性用育毛剤
女性の市販の薄毛治療薬には、女性用育毛剤もあります。先述したミノキシジル配合の市販薬は発毛剤として販売されますが、それ以外の発毛効果が認められていない成分を配合した治療薬は育毛剤として扱われるのです。
育毛剤には、カルプロニウム塩化物など頭皮の血行を良くする成分に加えて、ビタミンやアミノ酸など髪の成長に必要な成分が含まれています。長期間使用することで、現在生えている髪がハリやコシを取り戻し強くなる効果が期待できるため、髪が細くなり頭皮が目立つようになったと感じる方におすすめです。
女性の薄毛を予防する方法
薄毛治療においてさまざまな治療法が開発されたとはいえ、治療の効果が現れるまでに長い期間を要したり費用もかかったりするため、可能であれば未然に防ぎたいものです。女性の薄毛を予防するには、生活習慣に気を配ると良いでしょう。特に大切なポイントとして、以下の4つが挙げられます。
- バランスのとれた食事を心掛ける
- 過度の飲酒や喫煙を控える
- 睡眠時間を確保する
- 頭皮や髪に負担をかけないヘアスタイルにする
それぞれの薄毛を予防する方法ついて、詳しく解説します。
バランスのとれた食事を心掛ける
薄毛の予防として、バランスの取れた食事を心掛けることが大切です。髪が生え変わるサイクルにはビタミンやミネラルなどの各種栄養素が深く関係しています。頭皮や髪を育てる毛乳頭細胞などへ栄養が行き渡らなくなると、髪が細くなったり脱毛する原因となるのです。
先述のとおり、過度なダイエットが休止期脱毛症の原因となることからも、髪の成長には栄養が必須であると分かります。ビタミンやミネラルの摂取を意識して、バランスの取れた食事を心掛けましょう。
過度の飲酒や喫煙を控える
過度な飲酒や喫煙を控えることも、薄毛予防に十分な効果が期待できます。飲酒や喫煙は、全身の代謝の乱れを引き起こすうえに、血行が悪くなったり栄養の吸収を阻害したりします。その結果、髪に必要なアミノ酸が分解されたり頭皮に栄養が行き渡らなくなったりすることで、薄毛へとつながるのです。飲酒は適正な量を守り、喫煙を控えることが大切です。
睡眠時間を確保する
睡眠時間を確保することも、薄毛を予防するには重要なポイントです。先述した休止期脱毛症は、身体に過度な負担がかかることでも発症します。疲れをためすぎて身体に負担をかけないためにも、しっかりと睡眠時間を確保しましょう。
頭皮や髪に負担をかけないヘアスタイルにする
薄毛を予防するには、頭皮や髪の健康も大切です。女性の場合、ヘアアレンジやカラーリングなどで髪や頭皮に負担がかかることが多いでしょう。特に、ポニーテールなど髪や頭皮が常に引っ張られるようなヘアスタイルを頻繁に続けていると、髪や頭皮に負担がかかり薄毛を発症しやすくなります。
また、頻繁にカラーリングを行うのも、髪や頭皮への負担が大きいためおすすめできません。女性にとっておしゃれは大切ですが、髪や頭皮を労ることも大切なのです。
編集部まとめ
今回は、女性の薄毛治療の薬について詳しく解説しました。さまざまな種類がある薄毛の治療薬は、注意点やポイントを押さえたうえで使用することが大切です。
最近では市販薬も普及しつつありますが、副作用への対処や原因に合わせて適切な治療を行うためにも、一度専門のクリニックで相談することをおすすめします。
薄毛は、男性だけでなく女性にとっても深刻な問題です。大きなストレスとなってしまう前に、医療機関での受診や治療薬などで早めに対処しましょう。