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「女性の薄毛治療薬」の選び方はご存知ですか?医師が監修!

 更新日:2023/03/27
「女性の薄毛治療薬」の選び方はご存知ですか?医師が監修!

薄毛といえば男性、と思っている方は多いです。実際薄毛に悩んでいる男性は多いですが、一方で女性も薄毛に悩んでいる方が多いのはご存知でしょうか。

実は、女性の10人に1人が薄毛に悩んでいます。男性と比べれば少ないですが、それでも薄毛に悩む女性の割合は多くなってきました。

今や女性にとってよくある悩みの薄毛は、なぜ起きるのでしょうか?有効な治療薬はあるのでしょうか?

そこで今回は、女性用の薄毛治療薬についてご紹介します。薬の種類や選び方、副作用についても解説するので、薄毛にお悩みの方は参考にしてください。

松澤 宗範

監修医師
松澤 宗範(青山メディカルクリニック)

プロフィールをもっと見る
2014年3月 近畿大学医学部医学科卒業
2014年4月 慶應義塾大学病院初期臨床研修医
2016年4月 慶應義塾大学病院形成外科入局
2016年10月 佐野厚生総合病院形成外科
2017年4月 横浜市立市民病院形成外科
2018年4月 埼玉医科総合医療センター形成外科・美容外科
2018年10月 慶應義塾大学病院形成外科助教休職
2019年2月 銀座美容外科クリニック 分院長
2020年5月 青山メディカルクリニック 開業
所属学会:日本形成外科学会・日本抗加齢医学会・日本アンチエイジング外科学会・日本医学脱毛学会

女性も薄毛で悩んでいる

髪に悩む女性
薄毛治療といえば男性のイメージが多いかもしれません。しかし、女性でも薄毛で悩む方はいらっしゃいます。実は、10人に1人の女性が薄毛で悩んでいるのです
これほど多ければ、女性の薄毛もポピュラーな悩みといえるでしょう。ほとんどが加齢に伴う症状なのも男性と似ているところです。ただし、女性の薄毛の原因は男性の薄毛とは違います。それには、女性ならではの身体の仕組みが大きく関わっているのです。

女性の薄毛症の例

落ち込む女性
女性の薄毛症は大きく分けて3つあります。出産直後に起こりやすい「分娩後脱毛症」・全体的に髪が薄く細くなってしまう「びまん性脱毛症」・そして男性ホルモンの影響を受けて起こる「FAGA」です。

分娩後脱毛症

分娩後脱毛症は、その名の通り出産後に発症しやすい脱毛症です。「産後脱毛」とも呼ばれています。主に女性ホルモンの分泌量の低下が原因の症状です。
卵胞ホルモンの「エストロゲン」と黄体ホルモンの「プロゲステロン」は、月経周期に合わせて分泌されるホルモンです。これらのホルモンは肌の潤いや血液・骨に作用し身体を保つ働きがあります。
女性の髪の毛にも作用し、分泌量が多いとそれだけ髪の艶も出るようになります。この2つのホルモンは、妊娠初期になると分泌量が増えるのですが、出産を終えると著しく分泌量が減ってしまうのです。それによって身体の中でホルモンバランスが崩れ、髪の毛の強度が落ち脱毛しやすくなってしまいます。
この2つのホルモンは、分泌量がずっと下がるわけではありません。出産から半年~1年ほどの授乳を終えた頃にはホルモンの分泌量が戻るため、自然と抜け毛もおさまっていきます。そのため、ホルモン分泌量低下による脱毛症とは違い、産後特有の薄毛・脱毛症です。
ただし、産後脱毛は出産直後の子育てによるストレスや自律神経への悪影響も脱毛の原因とされています。家庭内の状況によっては産後脱毛から円形脱毛症に移行する可能性があるため注意が必要です。

びまん性脱毛症

「びまん(瀰漫)性脱毛症」は、髪が細くなってしまう薄毛症のひとつです。毛髪の一本一本が細くなり、頭皮が透けて見えるようになってしまいます。早いと30代後半から発症し始めます。
全体的に髪のボリュームが落ちてきたり、地肌が見えるようになってきた場合はびまん性脱毛症です。こちらも女性ホルモンの乱れ・減少が原因として考えられています。分娩後脱毛症の原因にもなっているエストロゲンやプロゲステロンは、加齢によっても分泌量が減っていきます。
分泌量の減少に伴い、毛髪の成長が鈍化し一本一本が細くなってしまうのです。その結果、頭髪が薄く見えてしまいます。もっとも多いのが閉経前後の年代です。この頃になると女性ホルモンの分泌量が低下しているため、薄毛症が特に発症しやすくなります。
まれにストレスによってホルモンバランスが崩れ、徐々に毛髪が細くなる場合もあり、その場合は20代からでも発症することがあります。若い年代での発症の場合は、ピルなどで女性ホルモンの分泌を助けることで症状が改善される場合があるため、治療に使用されるのが薄毛治療薬とは限らないのが特徴です。

FAGA(女性男性型脱毛症)

FAGAは女性の脱毛症です。Fを取ってAGAにすると男性型脱毛症になります。男性の場合は頭頂部や生え際など局所的な脱毛になりますが、女性の場合は頭頂部から全体にかけて均一に抜けていくのが特徴です。
また、女性の脱毛症全般(産後脱毛症やびまん性脱毛症)をFAGAと呼ぶ場合もあります。原因は女性ホルモンの分泌量のほか、栄養不足や睡眠不足などの生活習慣の乱れでも起こります。
女性ホルモンの減少により、女性の中にもある男性ホルモンの量が相対的に多くなり、薄毛や脱毛を引き起こすのです。膠原病・甲状腺機能低下症などの女性に起こりやすい疾患が原因で大量に脱毛する場合もFAGAと呼ばれます。

女性の薄毛の特徴

鏡を見て悩む女性
女性の薄毛症の特徴として、頭髪全体が薄くなる傾向にあります。AGAの場合は頭頂部など局所的な脱毛が多いですが、反対に女性は全体として薄くなります。また、多くの場合は脱毛ではなく、髪の毛一本一本が細くなってしまうことによる薄毛です。
もちろん髪の毛が細くなってしまったことによって髪が抜けたり切れやすくなったという印象を持つこともあります。初期症状は分け目が広がったり、少し抜け毛が増えたりといった症状です。
一見わかりにくいため、気が付いたら症状が進行していたということがあります。ただし、女性のホルモンバランスによる薄毛は大量脱毛がほぼありません。そのため、一度に大量に脱毛した場合は別の疾患を疑い、医療機関への受診をおすすめします

男性の薄毛の症状との違い

悩む男性
男性の薄毛は、男性ホルモンであるジヒドロテストステロン(DHT)が原因です。DHTが増えると、毛根の細胞を弱らせ、髪が抜けた後の頭皮から髪の毛が生えなくなってしまいます。たとえ髪が抜けたとしても毛周期が15~20回程度繰り返されるため、毛周期のサイクルが完全に終了するまでは生えてきます。
しかし、ジヒドロテストステロンが頭髪の毛母細胞に作用し、本来2~6年である毛周期の成長期を6ヶ月~1年に縮めてしまうのです。そのため、毛周期の回転が早く繰り返されてしまい、最終的には髪が生えてこなくなってしまいます
一方女性の薄毛は激しい抜け毛を伴いません。女性ホルモンの減少によるもので、髪の毛一本一本が細くなることにより薄く見えるようになるという特徴があります。このように、男性と女性では薄毛の原因や経過が異なります。
そのため、男性用の薄毛治療薬は女性の薄毛にあまり効きません。逆に、女性の薄毛治療薬は男性の薄毛にはアプローチできません。むしろ男性用の薄毛治療薬には女性が服用すると重篤な副作用が出る恐れのある薬があります。
「プロペシア」と呼ばれる治療薬がそのひとつです。元々男性の頭頂部や生え際の薄毛症に使用される治療薬ですが、女性が服用してはいけないと注意喚起がされている治療薬です。妊娠中の女性がプロペシアを服用すると、その胎児が男児だった場合に生殖器の成長が阻害される可能性があります。
これは服用した場合だけでなく、砕けたプロペシアを触っただけでも作用します。(※通常時プロペシアはコーティングされているため触っても問題ありません)このように、一口に薄毛治療といっても男性と女性それぞれで治療薬が異なります。それぞれの身体や髪の毛に合った治療薬を選ぶ必要があります。

女性薄毛治療薬の選び方

ヘアブラシ
女性の薄毛にアプローチできる治療薬は、外服薬と内服薬があります。また、医療機関での受診によってしか処方されない薬もあります
どれも体質に合わせて処方されるため、市販薬で症状が緩和しない場合は医療機関での受診がおすすめです。では、女性薄毛治療薬にはどんなものがあるのでしょうか?市販薬と病院の薬をご紹介します。

女性薄毛治療薬の種類

女性の薄毛治療で医療機関を受診すると、主に「スピロノラクトン」「ミノキシジル」の2種類の薬が処方されます。
スピロノラクトンは抗男性ホルモン作用があるため、ホルモンのバランスが整うようになります。実は、女性の身体には女性ホルモンだけでなく男性ホルモンがある程度分泌されているのです。
閉経などによって女性ホルモンの分泌量が低下すると、体内の男性ホルモン濃度が女性ホルモンと比べて相対的に高くなります。男性ホルモンが増えると女性特有のヘアサイクルが乱れ、薄毛症となってしまうのです。
そこでスピロノラクトンを服用すると男性ホルモン濃度が抑えられ、相対的に女性ホルモンが活発になりヘアサイクルも平常に戻っていきます。ミノキシジルは男性の脱毛症でもあるAGAにも用いられる薬です。発毛を促す効果があり、6ヶ月ほどで効果が出ます。ただし、効果が高いとされる内服薬は、多毛・初期脱毛・血管拡張作用があるため頭痛・めまいなどの副作用があります。
そのため、心臓など血管に病気のある方や、心血管にかかわる薬をすでに服用している方は使用できません。また、外用薬の場合は市販のものとくらべて濃度が高いです。まれに頭皮のかぶれ・かゆみ・痛みなどの副作用が起こる可能性があります。皮膚に不安のある方は服用ができません。
また、これらの症状が出た場合は使用を中止しましょう。副作用も多いことから、女性の薄毛治療目的ではあまり使用されていません。一般的にスピロノラクトンやミノキシジルは医療機関の処方でしか入手できないようになっています。
市販薬の場合は「パントガール」「リアップ」シリーズが一般的です。

市販薬と病院の薬の違い

市販薬と病院の薬には大きな違いがあります。それは直接の発毛効果と成分の濃度です。パントガールは通販で気軽に手に入る内服薬ですが、髪の成長を促進するもので発毛・育毛効果はありません。
しかし、副作用が少なく誰でも効果を試すことができます。市販の外用薬であるリアップには、実はミノキシジルが含まれています。しかし、医療機関で入手できるものと比べるとかなり濃度が薄いです。
また、ミノキシジルの内服薬は市販されていません。このように市販されている薬は誰でも服用できるような濃度で作られています。そのため副作用が出る確率は低いですが、効果は医療機関の薬より低くなります。
医療機関で処方される薬は個人に合わせて処方しなければいけないため、副作用が出る場合もあるのです。もし副作用が心配であれば、まずは市販薬から試し、特に症状の改善が見られなかったら医療機関への受診というルートもおすすめです。

女性薄毛治療薬に関するよくあるQ&A

考え込む女性
ここでは、女性薄毛治療薬に関するよくある質問にお答えします。女性薄毛治療薬の使用を検討している場合は参考にしてください。

自分に合った薬はどのようにして選べば良いでしょうか?

まず、薄毛治療は時間がかかるということを前もって理解しておく必要があります。時間がかかるということは、それだけ薬にお金がかかるということです。
そのため、自分が通い続けられる範囲の金額の治療薬を選ぶ必要があります。次に、どんな目的で治療薬を選ぶかが重要です。抜け毛を防ぐのか、発毛力を高めるのか、改善の方向を定める必要があります。
また、自分の体質に合った薬ということも重要です。これらを総合すると、クリニックでの受診をし、医師と相談しながら薬を選ぶのがベストです。
何故かというと、クリニックでは自分の頭皮の状態を診断してもらえます。頭皮の状態を知ることこそが、治療への第一歩となるのです。

薬の効果はどれぐらいで感じられるでしょうか?

治療薬の種類によります。発毛効果が強いミノキシジルの内服薬は、早いと3ヶ月ほどで効果が出ます。ただし、副作用が多いため、女性の薄毛治療に対してはあまり用いられることがありません。
外用薬の効果は半年ほどかかるものが多く、1日に2回ほど使う場合もあるので、少し手間がかかってしまうのが難点です。しかし副作用が内服薬に比べてゆるやかなため、女性の薄毛治療では外用薬がよく使われています。

薬の副作用が心配なのですが…

副作用が疑われる薬は、医師の診断がなければ手に入れることはできません。逆にいえば、市販の薬は副作用が少ないです。どんな人でも使えるように調整されているからです。
そのため、副作用が怖いのであれば市販の薬から始めてみるのも良いでしょう。ただし、個人輸入が必要な海外の薬は承認されていない場合が多いです。副作用についてもわからないことが多いため、承認を受けていない輸入薬品は使用しないでください。

編集部まとめ

シャンプーする女性
女性の薄毛は、ほとんどが女性ホルモンの分泌量低下によるものです。しかし、分泌量低下による症状は個人差があります。薄毛の症状が出る方もいれば出ない方もいます。

薄毛に関する問題は男性だけではありません。今や女性の10人に1人が薄毛に悩んでいるのです。ポピュラーな悩みなので、1人で悩まず医療機関への受診も検討してください

女性の薄毛に対する治療薬もあります。個人の体質や症状に合わせた治療薬を処方できるので、もし薄毛に悩んでいるのでしたらクリニックを受診しましょう。

この記事の監修医師