「ショートスリーパー」はなりたくてなれるものなの?寿命についても医師が解説!

ショートスリーパーとは?メディカルドック監修医が特徴や診断方法・寿命などを解説します。

監修医師:
村上 友太(東京予防クリニック)
2011年福島県立医科大学医学部卒業。2013年福島県立医科大学脳神経外科学入局。星総合病院脳卒中センター長、福島県立医科大学脳神経外科学講座助教、青森新都市病院脳神経外科医長を歴任。2022年より東京予防クリニック院長として内科疾患や脳神経疾患、予防医療を中心に診療している。
脳神経外科専門医、脳卒中専門医、抗加齢医学専門医、健康経営エキスパートアドバイザー。
目次 -INDEX-
ショートスリーパーとは?

一般的に、成人では7時間以上の睡眠が健康維持のために勧められています。一方で、ごく少数ですが、6時間未満の睡眠でも日中の強い眠気や疲労感が目立たず、生活に支障なく過ごせる人がいます。こうした人たちは、いわゆるショートスリーパー(自然短眠の傾向がある人)として語られることがあります。
ただし、「睡眠時間が短い=ショートスリーパー」ではありません。 多くの場合、短時間睡眠は単なる睡眠不足、生活習慣、ストレス、仕事の都合、あるいは睡眠障害などによって起きています。ショートスリーパーと呼ばれる人は、体質的に必要な睡眠時間が短い可能性がある、非常にまれなタイプと考えた方が正確です。
ここで重要なのは、「短時間睡眠」と「ショートスリーパー」は別物だという点です。短時間睡眠の人は、本来もっと睡眠が必要なのに足りていない可能性があります。一方で、ショートスリーパーは、短い睡眠でも日中の機能が大きく落ちにくいと考えられています。ただし、自然短眠の人を大人数で長期間追跡した研究はまだ多くなく、分かっていない部分も残っています。
ショートスリーパーはなりたくてなれるものなの?

結論から言うと、多くの人は努力や気合いでショートスリーパーにはなれません。
自然短眠として報告されている家系では、DEC2(BHLHE41)をはじめ、ADRB1、NPSR1、GRM1 など、いくつかの遺伝子が関わる可能性が報告されています。ただし、これらは一部の家系で見つかった研究段階の知見であり、誰にでも当てはまるわけではありません。
一方、一般の人が睡眠時間を削ると、本人は「慣れた」と思っていても、脳の働きは落ちていることがあります。健康な成人を対象にした研究では、睡眠を14日間にわたり6時間または4時間に制限すると、注意力や作業成績の低下が日ごとに積み重なることが示されています。特に6時間睡眠でも、続けば影響が蓄積すると言われています。
実際には、睡眠不足が続くと「眠い」という自覚そのものが鈍くなりやすい一方で、ミスが増える、感情のコントロールが難しい、仕事が遅くなるといった形で表れやすいと考えられています。慢性的な睡眠不足は、肥満、高血圧、2型糖尿病、心血管疾患、抑うつ、事故の増加などとも関連が報告されています。
そのため、ショートスリーパーを目指すのではなく、まずは十分な睡眠を確保して、自分の体調や日中のパフォーマンスがどう変わるかを見る方が現実的です。
ショートスリーパーの特徴

ここでは「生まれつき短い睡眠でも問題が出にくい体質(自然短眠の傾向)」として特徴をまとめます。大切なのは、睡眠時間が短いことそのものより、短くても日中の眠気や生活の支障が目立たないことです。
日中に強い眠気が出にくい
ショートスリーパーの代表的な特徴は、6時間未満の睡眠でも、日中の強い眠気が目立ちにくいことです。会議中に眠くなる、昼寝がないとつらい、運転中に眠気が強いといった症状がある場合は、ショートスリーパーというより睡眠不足や睡眠障害の可能性を先に考えた方が安全です。
目覚めが比較的すっきりしている
ショートスリーパーでは、短い睡眠でも「寝た感じがある」、つまり睡眠休養感が保たれていることが多いとされています。起床後に頭がぼんやりする時間が長く続きにくく、目覚ましが鳴る前に自然に起きる人もいます。もちろん個人差はありますが、短くても回復感が保たれているかは大きなポイントです。
休日に寝だめが起こりにくい
睡眠不足の人は、平日に足りなかった睡眠を補うように休日に長く寝ることがあります。一方、ショートスリーパーでは、平日も休日も睡眠時間があまり変わらないことが多いとされています。休みの日に時間があっても自然に長く寝ないのであれば、体質的な短眠の可能性を考える材料になります。
思春期以前から、長年同じ睡眠パターンが続くことが多い
自然短眠の人では、短い睡眠パターンが最近始まったものではなく、若い頃から長く続いていることが多いと考えられています。
逆に、最近になって急に睡眠時間が短くなった、ストレスや生活環境の変化で短くなった、という場合は、体質よりも生活要因や病気の影響をまず考えます。
家族にも似た睡眠パターンの人がいることがある
ショートスリーパーの背景には遺伝的要因が関わる可能性があり、DEC2(BHLHE41)、ADRB1、NPSR1、GRM1 など、複数の遺伝子が一部の家系で報告されています。ただし、まだ研究段階の部分も多く、すべてのショートスリーパーを遺伝子で説明できるわけではありません。家族の中に似た睡眠パターンの人がいることは参考になりますが、それだけでは判断はできません。
日中のパフォーマンスが安定している
記憶力や集中力、判断力が大きく落ちず、短い睡眠でも日中の活動が比較的安定していることが、自然短眠を考える上で重要です。逆に、本人は平気だと思っていても、仕事や勉強のミスが増える、反応が遅くなる、イライラしやすいなどがある場合は、通常の睡眠不足の可能性があります。
どのような基準でショートスリーパーと診断される?

まず前提として、「ショートスリーパー」は高血圧や糖尿病のように、血液検査や画像検査で一発診断できる病名ではありません。臨床では、自然短眠の可能性があるか、それとも睡眠不足や睡眠障害で短時間睡眠になっているのかを見分けることが中心になります。
問診と睡眠日誌(睡眠ログ)
入眠時刻・起床時刻、夜中に起きた回数、昼寝、カフェインや飲酒、日中の眠気、休日の寝だめ、仕事や勉強への影響などを1〜2週間程度記録します。ポイントは、短い睡眠でも日中機能が保たれているか、そして睡眠時間を延ばしたときに調子が明らかに良くなるかを確認することです。
睡眠時間が短いことだけでは診断できず、生活への影響を合わせてみる必要があります。
客観的な睡眠時間の確認(アクチグラフィ等)
アクチグラフィは、腕時計型の機器で活動量を測り、睡眠・覚醒のリズムを推定する方法です。本人の申告だけでは分かりにくい睡眠パターンを客観的に確認するのに役立ちます。国際的な睡眠検査の推奨でも、必要に応じて2週間程度の睡眠日誌やアクチグラフィを組み合わせることが勧められています。
睡眠障害の除外
睡眠障害の除外はとても大切です。短時間睡眠の背景に、不眠症、睡眠時無呼吸症候群、概日リズム睡眠・覚醒障害などが隠れていることがあります。特に睡眠時無呼吸症候群は頻度が高く、放置すると高血圧や心血管疾患のリスクとも関係します。いびき、無呼吸、日中の強い眠気がある場合は、必要に応じてポリソムノグラフィ(PSG)で評価することがあります。
日中の眠気・覚醒度の評価
エプワース眠気尺度(ESS)は、日中の眠気を点数化する質問票です。さらに詳しく調べる必要がある場合には、睡眠検査室でMSLT(反復睡眠潜時検査)やMWT(覚醒維持検査)を行い、客観的に眠りやすさや覚醒の保ちやすさをみることがあります。
ショートスリーパーは早死にしやすいの?

一般集団では、短時間睡眠が死亡リスクの上昇や、心血管疾患、肥満、糖尿病、抑うつなどと関連することが報告されています。ただし、ここでいう「短時間睡眠者」には、自然短眠体質の人だけでなく、仕事、ストレス、病気、睡眠障害などで睡眠が短くなっている人が多く含まれています。つまり、「短眠そのもの」だけでなく、その背景がリスクに影響している可能性があります。
自然短眠の人だけを大量に集めた長期追跡データは、現時点では十分ではありません。そのため、自然短眠の人に一般の短時間睡眠と同じリスクがそのまま当てはまるかは、まだはっきりしていません。 いま言えるのは、「短時間睡眠=必ず早死に」ではなく、睡眠不足や睡眠障害を含む短時間睡眠が健康リスクと関連するという点です。
また、DEC2変異などの自然短眠に関する研究では、動物モデルで健康指標や寿命に良い変化が示唆された報告もありますが、これは動物実験の結果であり、ヒトにそのまま当てはめることはできません。したがって、「ショートスリーパーは長生きする」とまでは言えません。
実際の予防医療では、睡眠時間の長さだけを見るのではなく、日中の眠気、血圧、血糖、体重、気分、いびきや無呼吸、運転中の眠気などを一緒に確認することが大切です。これらに異常があれば、ショートスリーパーではなく「睡眠が足りていないサイン」の可能性があります。
ショートスリーパーの寿命はどれくらい?

寿命は、体質、病気、生活習慣、環境など、いろいろな要素で決まるため、「ショートスリーパーだから寿命が何年」と数字で示すことはできません。
分かっているのは、一般集団では短時間睡眠と死亡リスクが関連することがある一方で、その背景には睡眠不足や睡眠障害が含まれている可能性が高い、という点です。
自然短眠の人に同じ結論がそのまま当てはまるかは、まだ十分なデータがありません。自然短眠の遺伝子変異をもつ動物モデルで健康指標が改善した研究はありますが、これは特定の遺伝背景を前提にした話です。一般の短時間睡眠の人に単純に当てはめるべきではありません。
寿命が気になる場合は、睡眠時間を無理に削る・増やすことよりも、血圧、脂質、血糖、体重、いびき、無呼吸、日中の眠気といった、実際に追える指標を整える方が現実的です。
「ショートスリーパー」についてよくある質問

ここまでショートスリーパーについて紹介しました。ここでは「ショートスリーパー」についてよくある質問に、メディカルドック監修医がお答えします。
ショートスリーパーの方の性格に特徴はありますか?
村上 友太(むらかみ ゆうた)医師
性格とショートスリーパーを直結させる強い根拠はありません。自然短眠の報告では活動的に見える人が出てくることはありますが、対象人数が少ない研究も多く、性格だけで判断できるものではありません。
一方で注意したいのは、「睡眠が少なくても平気」に見える状態が、体質だけでなく躁状態や軽躁状態でも起こりうることです。睡眠が急に短くなった、気分が高揚して活動が止まらない、浪費や衝動性が強い、といった場合は、ショートスリーパー体質と決めつけず、医療機関で相談してください。
まとめ
ショートスリーパーとは、短い睡眠でも日中の眠気や機能低下が目立たず、長年そのパターンが安定している人を指すことが多い概念です。多くは6時間未満の睡眠で保たれますが、単に睡眠時間が短い人すべてを意味するわけではありません。背景にはDEC2(BHLHE41)など複数の遺伝子が関わる可能性が報告されていますが、まだ研究途上の部分もあります。
予防医療の観点では、短時間睡眠の多くは睡眠不足であり、注意力低下、事故リスク、生活習慣病、抑うつ、死亡リスクとの関連が示されています。だからこそ、ショートスリーパーを目指すのではなく、まずは「日中に眠くないか」「休日に寝だめしていないか」「いびきや無呼吸はないか」を確認し、必要なら睡眠医療の専門家に相談することが大切です。
「6時間未満でも元気だが、本当に体に悪くないのか不安」という方は、健診で血圧・血糖・脂質・体重の変化を確認し、日中の眠気や事故リスクが増えていないかを定期的に点検しましょう。睡眠は削るものではなく、健康への投資です。自分に合った適正な睡眠を確保することが、日中のパフォーマンスと将来の健康寿命を守るうえで重要です。
「ショートスリーパー」と関連する病気
「ショートスリーパー」と関連する病気は3個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。
睡眠時間が短いということそのものが同じでも、ショートスリーパーという稀な体質の少数の人と、ショートスリーパーではない多くの人とは、睡眠について全く同じに考えることはできません。ショートスリーパーではないのに睡眠時間が短い状況が続くと、体調不良や病気の発症リスクなどの原因となります。自分の体質に合った適切な睡眠時間を確保することが重要です。
「ショートスリーパー」と関連する症状
「ショートスリーパー」と関連している、似ている症状は3個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。
関連する症状
- 休日に寝だめしない
- 日中眠くならない
- 若い時から睡眠時間が短い
これらはショートスリーパーの特徴的な症状であると言われています。
参考文献
- Recommended Amount of Sleep for a Healthy Adult: A Joint Consensus Statement. American Academy of Sleep Medicine (AASM) & Sleep Research Society.
- The cumulative cost of additional wakefulness: neurobehavioral functions and sleep restriction. Van Dongen HP, et al. 2003
- Sleep duration and all-cause mortality: a systematic review and meta-analysis. Cappuccio FP, et al. 2010
- Short sleep duration and health outcomes: systematic review and meta-analysis. Itani O, et al. 2017
- The transcriptional repressor DEC2 regulates sleep length in mammals. He Y, et al. 2009
- Mutant neuropeptide S receptor reduces sleep duration. Xing L, et al. 2019
- Genome-wide association analyses of chronotype and sleep duration. Jones SE, et al. 2019




