「咽頭がんの初期症状」はご存知ですか?原因やなりやすい人の特徴も医師が解説!
公開日:2025/10/03


監修医師:
小柏 靖直(上福岡総合病院)
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2001年防衛医大卒。頭頸部がんの診療・手術に長年携わり、現在は上福岡総合病院耳鼻咽喉科・頭頸部外科部長として多数の手術を手がける。アスリートとしても活動し、2023年にはフランスで行われた自転車の超長距離大会「パリ・ブレスト・パリ」(1200km)を90時間以内で完走。医師の視点からスポーツ・健康・食事の重要性を伝える講演や、頭頸部がんに関する著書も多数。専門性と行動力を活かし、医療・健康分野での発信に力を注いでいる。
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「咽頭がん」とは?
「最近、のどの調子が悪いけど、ただの風邪かな?」 そんなふうに思っているうちに、じつは重大な病気が隠れていることもあります。 「咽頭がん(いんとうがん)」とは、のどの奥にある「咽頭」と呼ばれる部分にできるがんのことです。咽頭は、鼻や口と気管・食道をつなぐ大切な通り道で、呼吸や食事、声を出すなどの機能に関わっています。 咽頭がんは、上咽頭・中咽頭・下咽頭という3つの場所に分けられ、それぞれに特徴的な症状や原因があります。早い段階では、風邪やアレルギーと見分けがつきにくいこともあり、発見が遅れることもあります。 この記事では、咽頭がんの種類や症状、受診のタイミングについて、できるだけわかりやすく解説します。のどや首に気になる症状がある方、あるいは家族や知人が気にしている方も、ぜひ参考にしてください。咽頭がんの種類
上咽頭がん
上咽頭がんは、鼻の奥にあって鼻と喉の境目に位置する部位に発生するがんで、特にエプスタイン・バーウイルス(EBウイルス)との関連が強いことが知られています。遺伝的な要素や環境的な影響も発症に関係していると考えられています。上咽頭は非常に狭く奥まった場所にあるため、がんが初期の段階ではほとんど自覚症状が現れないことも多いですが、がんが進行するに従って片側だけの鼻づまりや鼻血、耳の詰まった感じや聞こえにくさといった症状が現れることがあります。これは、がんが中耳炎を引き起こす場合もあるためです。また、首のリンパ節が腫れてしこりとなり、これが症状として気づかれることも多く、風邪や花粉症の症状と間違えられやすいため、注意が必要です。中咽頭がん
中咽頭がんは、のどちんこの周囲や扁桃、舌の付け根にできるがんで、特に中年以降の男性に多く見られます。主なリスクとしては喫煙や過度の飲酒が知られていますが、近年ではHPV(ヒトパピローマウイルス)感染が原因となるケースも増加しており、比較的若い世代にも見られるようになってきています。中咽頭は比較的目に見えやすい部位であるため、のどの痛みや飲み込みにくさ、声のかすれといった症状に気づきやすいのが特徴です。特に片側だけのどが痛みが長く続く場合や、飲み込みに違和感がある場合は注意が必要です。また、首にリンパ節のしこりが現れることもあり、これらの症状は風邪の症状に似ているため放置されがちですが、いつまでも治らない場合は早めの受診をおすすめします。下咽頭がん
下咽頭がんは、のどぼとけのさらに奥に位置し、食道や気管の入り口にあたる部分に発生するがんです。咽頭がんの中でも比較的多く見られ、特に長期間の喫煙や過度の飲酒習慣がある中高年の男性に多い傾向があります。症状としては、飲み込みにくさやのどにひっかかるような違和感が続くことがあり、声のかすれが現れる場合もあります。また、がんが首のリンパ節に転移してしこりとなることもあり、これをきっかけに発見されるケースも少なくありません。これらの症状は初期には軽いため見過ごされがちですが、「なんとなく変だな」と感じたら、早めに耳鼻咽喉科を受診して専門的な診察を受けることが重要です。咽頭がんの初期症状
上咽頭がんの初期症状
上咽頭は、鼻の奥で喉との境目にあたる場所にあり、初期症状が非常に風邪や耳鼻科系の病気と似ているため、気づかれにくいのが特徴です。鼻づまりや鼻血が続いたり、片側の耳が詰まったような感覚、耳鳴り、あるいは聞こえにくさなどが代表的な症状として現れます。とくに、片方の耳だけに違和感がある場合や、風邪が長引いているような状態が数週間続く場合には注意が必要です。 市販の風邪薬や点鼻薬などで一時的に症状が和らぐこともありますが、根本的な原因ががんである場合、これらの対症療法では十分な改善は得られません。特に「片側だけの鼻づまり」や「耳の聞こえにくさ」が長引くときには、上咽頭に何らかの異常が起きている可能性を考えるべきでしょう。 このような症状がある場合には、耳鼻咽喉科を早めに受診することが重要です。上咽頭は内視鏡でなければ確認が難しい部位のため、自己判断せず、専門の医師に診てもらうことが早期発見につながります。また、病状が進行すると首のリンパ節が腫れることもあり、このようなサインが見られるときには、より早急な対応が求められます。中咽頭がんの初期症状
中咽頭は、口を開けたときに見える「のどちんこ(口蓋垂)」のまわりや扁桃(へんとう)、舌のつけ根などが含まれる場所で、会話や食事、呼吸にも関わる重要な部分です。初期には、のどに軽い違和感や痛みを感じることが多く、とくに片側だけの症状として現れることがあります。飲み込むときに引っかかるような感覚や、声がかすれる、さらに首のリンパ節が腫れてしこりとして触れることもあるため、「風邪かな」「扁桃炎かも」と見過ごされがちです。 うがいやのど飴で一時的に楽になることもありますが、もし「のどの片側だけが痛い」「飲み込みにくさが続く」「首のしこりが消えない」といった症状が2週間以上続く場合は、自己判断で様子を見るのではなく、早めに医療機関を受診することが大切です。 受診先としては、耳鼻咽喉科が最も適しています。のどの奥は自分では見えにくく、医師による内視鏡などの専門的な検査でなければ、正確な診断が難しい部位です。とくに中咽頭がんは、比較的早い段階で首のリンパ節に転移しやすいため、首にしこりがある場合は放置せず、できるだけ早く耳鼻咽喉科の専門医に相談するようにしましょう。下咽頭がんの初期症状
下咽頭は、のどのさらに奥、ちょうど食道や気管の入り口にあたる場所で、空気と食べ物が交差する重要な通り道です。この部位にがんができると、初期には「飲み込むときに何かが引っかかる感じ」や「のどの違和感」といった症状が見られることがあります。また、声がかすれたり、咳が出たり、ごく軽い呼吸のしづらさを感じる人もいます。進行すると、首のリンパ節に転移して「首のしこり」として現れることもあり、そこからがんが発見されるケースも少なくありません。 風邪のような症状だと思って放置してしまいがちですが、「飲み込みづらさ」や「声のかすれ」が1〜2週間以上続く場合は、自然に治るのを待たずに医療機関を受診しましょう。とくに、のどの奥の異常は自分では見えにくく、市販薬などでは根本的な改善が期待できません。 受診先は耳鼻咽喉科が適切で、必要に応じて内視鏡による詳細な検査が行われます。下咽頭は専門的な機器でなければ診断が難しい部位であるため、がんの可能性を早期に確認するには専門医による評価が欠かせません。首のしこりがある場合や、のどの違和感が長く続くようであれば、迷わず早めに耳鼻咽喉科を受診するようにしましょう。咽頭がんの原因
上咽頭がんの考えられる原因
上咽頭がんの主な原因のひとつに、EBウイルスの感染が関係していると考えられています。このウイルスは多くの人が子どものころに感染するごく一般的なウイルスですが、特定の条件や遺伝的要因が重なることで、長い年月を経てがんに進展することがあります。中咽頭がんの考えられる原因
中咽頭がんは、喫煙と飲酒の習慣が強く関係しています。特にタバコとお酒を両方習慣的にとっている方は、発症リスクが大きく高まります。 また近年注目されているのが、HPV(ヒトパピローマウイルス)というウイルスによる中咽頭がんです。これは性交渉を介して感染し、若い世代でも発症することがあります。下咽頭がんの考えられる原因
下咽頭がんは、喫煙と過度の飲酒が最も大きなリスク因子とされています。特に、長年にわたる習慣がある方は、要注意です。また、食道がんや胃がんと同じように、アルコール代謝に関係する遺伝的体質(お酒に弱い体質)も関係することがあります。咽頭がんになりやすい人の特徴
咽頭がんは誰にでも起こりうる病気ですが、日々の生活習慣や体質、ウイルス感染などによって「なりやすい人」と「なりにくい人」の傾向があることがわかっています。 ここでは、咽頭がんのリスクが高くなる特徴や生活習慣を具体的に紹介しながら、気をつけたい症状や受診のタイミングについても解説します。特徴・生活習慣①:喫煙と過度の飲酒習慣がある人
長年にわたりタバコやお酒を続けている方は、のどの粘膜が慢性的な刺激を受けることで炎症を繰り返し、咽頭がんが発生しやすい状態になっていきます。こうした方に多く見られる初期症状としては、のどの違和感や片側に偏った痛み、声のかすれ、飲み込みにくさ、さらには首にしこりができるなど、比較的見過ごされがちな不調が挙げられます。 のど飴やうがいで一時的に症状が軽くなることもありますが、「片側だけののどの痛みが2週間以上続く」「声がかすれて治らない」といった症状がある場合は、単なる風邪や喉の使いすぎだと決めつけず、医療機関の受診が必要です。タバコとお酒の両方の習慣がある方は、とくに注意が必要で、これらの生活習慣は中咽頭がんや下咽頭がんの主なリスク因子であり、重なればそのリスクはさらに高まります。 のどや声に違和感がある場合は、まず耳鼻咽喉科を受診しましょう。のどの奥の異変は自分では見つけにくく、内視鏡などの専門的な検査が必要になることもあります。とくに「なんとなく変だな」と思うような症状が続くときは、ためらわずに早めの診察を受けることが、がんの早期発見につながります。特徴・生活習慣②:HPV(ヒトパピローマウイルス)に感染している人
HPV(ヒトパピローマウイルス)に関連する咽頭がんは、特に中咽頭、すなわち舌の付け根や扁桃(へんとう)といった部位に発生しやすいことがわかっています。初期症状は比較的ゆっくりと進行するため、のどの軽い痛みや違和感、飲み込みにくさなどが見られても、風邪のような一時的な不調と考えて放置してしまうことが少なくありません。しかし、首のリンパ節が腫れてしこりが触れるようになる頃には、がんがある程度進行していることもあり、注意が必要です。 症状がごく軽いうちは自己判断で様子を見てしまいがちですが、のどの違和感が長引いたり、首の片側だけにしこりを感じたりする場合には、早めに耳鼻咽喉科での診察を受けることが大切です。とくに非喫煙者の若い世代でも、HPV感染を原因とする中咽頭がんの発症が増えており、喫煙歴の有無にかかわらずリスクがある点は見逃せません。 HPVは性的接触を通じて感染するウイルスで、女性の子宮頸がんとの関連が広く知られていますが、同じウイルスが中咽頭にもがんを引き起こすことが分かっています。現在では、HPVワクチンによる予防が可能であり、のどのがんに対しても一定の予防効果が期待されます。症状があいまいな場合でも、まずは耳鼻咽喉科で相談してみるとよいでしょう。必要に応じて検査を受け、予防の選択肢についても医師と話し合うことが望ましいです。特徴・生活習慣③:慢性的なのど・鼻の炎症がある人、家族にがん歴がある人
慢性的に鼻づまりやのどの違和感が続いている方、あるいは家族にがんの既往がある方は、上咽頭がんのリスクに注意が必要です。初期には、片側だけの鼻づまりや耳の詰まり、後鼻漏(鼻水が喉の奥に流れる感じ)といった症状が現れることがあります。また、のどの奥の痛みが長引いたり、首にしこりが触れるようになることもあり、いずれも風邪や副鼻腔炎と見分けがつきにくいため、がんの発見が遅れることがあります。 一時的に抗アレルギー薬や鼻洗浄で症状が和らぐこともありますが、「片側だけ」の症状が続く場合には特に注意が必要です。こうした背景には、EBウイルス(エプスタイン・バーウイルス)感染の既往や、慢性副鼻腔炎の持続、遺伝的要因などが関係しているとされており、明らかな原因が特定できない場合でも油断はできません。 耳や鼻の症状が中心であっても、適切な診断には耳鼻咽喉科での診察が不可欠です。とくにファイバースコープ(内視鏡)による上咽頭の詳細な観察が必要になることが多く、「鼻づまりと首のしこり」など、いくつかの症状が組み合わさっているときは、早めの受診が望まれます。原因がはっきりしないまま様子を見続けることは避け、がんの可能性も念頭に置いて、専門医の判断を仰ぐようにしましょう。咽頭がんの検査法
咽頭がんが疑われるときには、症状のある部位に応じた専門的な検査が必要になります。検査では、がんの有無だけでなく、どのくらい進行しているか(病期)や治療方針を決めるための情報も調べます。 ここでは、「どんな検査が行われるのか」「どの病院・診療科を受診すればよいのか」「入院が必要かどうか」などについて、部位別にやさしく解説します。上咽頭がんの検査法
上咽頭は鼻の奥、喉の上の方にあるため、外から直接見えにくい場所にあります。そのため、咽頭がんが疑われた場合には、まず耳鼻咽喉科での診察が必要です。診察では、内視鏡(ファイバースコープ)と呼ばれる細いカメラを鼻から挿入し、上咽頭の粘膜を直接観察する検査が行われます。この検査によって、腫れやしこり、出血の有無などを詳しく確認することができます。 異常があれば、粘膜の一部を採取して、顕微鏡でがん細胞の有無を調べる「生検(組織検査)」が行われます。また、がんがどこまで広がっているか、他の部位へ転移していないかを確認するために、CTやMRI、PETといった画像検査もあわせて実施されるのが一般的です。上咽頭がんは、EBウイルス(エプスタイン・バーウイルス)が関係することもあるため、血液検査でウイルスに対する抗体を調べることもあります。 これらの検査は多くが外来で受けることができ、日帰りで対応可能です。ただし、上咽頭は血管が豊富で出血しやすい場所のため、生検の際に出血のリスクがあると判断された場合には、安全のため1日程度の短期入院が必要となることもあります。画像検査については原則すべて外来で行われます。気になる症状がある場合は、早めに耳鼻咽喉科での精密検査を受けることが、早期発見・早期治療につながります。中咽頭がんの検査法
中咽頭がんは、のどちんこの周囲や扁桃、舌の奥など、比較的見えやすい場所に発生するため、耳鼻咽喉科での視診や触診だけでもある程度異常に気づくことができます。しかし、がんかどうかを確定するためには、専門的な検査が必要です。 まず行われるのは、口の中やのどの奥を詳しく観察する視診と触診です。加えて、ファイバースコピーという細いカメラを使ってのどの奥まで観察し、異常な粘膜や腫瘍の広がりを確認します。必要に応じて、病変の一部を採取して顕微鏡で調べる「生検(組織検査)」が行われ、これが確定診断につながります。また、がんの広がりや他の部位への転移の有無を調べるために、CTやMRI、PETといった画像検査も実施されます。 さらに、近年増加しているHPV(ヒトパピローマウイルス)関連の中咽頭がんが疑われる場合には、採取した組織を用いてHPVの有無を調べる検査も行われることがあります。 これらの検査は多くの場合、外来で対応可能です。とくに視診・内視鏡検査・画像検査などは日帰りで受けられますが、生検時に麻酔が必要な場合や、病変が深部にある場合には、安全のために1泊から数日の短期入院が必要になることもあります。気になる症状が続いている方は、早めに耳鼻咽喉科を受診し、必要な検査を受けることが早期発見のカギとなります。下咽頭がんの検査法
下咽頭は、のどの奥に位置し、食道や気管と隣接する場所にあるため、早期発見が難しく、診断には複数の専門的な検査が必要です。まずは耳鼻咽喉科を受診し、喉頭ファイバースコピーという内視鏡検査で、声帯や下咽頭の粘膜に異常がないかを確認します。この検査では、細いカメラを鼻から挿入し、直接粘膜の様子を見ることができます。異常があれば、組織の一部を採取して顕微鏡で調べる「生検」が行われ、がんかどうかの確定診断につながります。また、がんの進行具合や転移の有無を調べるためには、CTやMRI、PETといった画像検査が併用されます。下咽頭がんは首のリンパ節に転移していることも少なくないため、頸部の超音波検査も合わせて行われるのが一般的です。さらに、がんが飲み込みに影響を与えている場合には、嚥下造影検査を実施して、飲食時の安全性を評価することもあります。 これらの検査の多くは外来で受けることが可能ですが、生検での出血リスクが高い場合や、喉の奥深くまで確認するために全身麻酔が必要と判断された場合には、1〜3日程度の短期入院が必要になることもあります。下咽頭は呼吸や嚥下に関わる重要な部位であるため、異常が疑われるときには、耳鼻咽喉科を早めに受診し、必要な検査を受けることが重要です。咽頭がんの治療法
咽頭がんの治療は、がんの種類(できた場所)、進行度(ステージ)、患者さんの年齢や体調などによって大きく異なります。治療には「放射線治療」「化学療法(抗がん剤)」「手術」などがあり、これらを単独または組み合わせて行います。 ここでは、部位ごとに行われる主な治療と、その際の入院の必要性や治療期間について、わかりやすく解説します。上咽頭がんの治療法
上咽頭がんは、手術で完全に取り除くことが難しい部位にあるため、主に放射線治療と抗がん剤を組み合わせた同時化学放射線療法が治療の中心となります。この治療は、耳鼻咽喉科や頭頸部外科を専門とする病院で行われ、抗がん剤の投与については腫瘍内科や化学療法科と連携しながら進められます。放射線治療は通常、週に5回の通院で約6〜7週間続けられますが、抗がん剤の種類によっては1週間から10日程度の入院が必要になることもあります。また、患者さんの状態や治療計画によっては、治療期間全体を通して1か月から2か月程度の入院管理が行われる場合もあります。中咽頭がんの治療法
中咽頭がんの治療は、がんの進行度やHPV(ヒトパピローマウイルス)感染の有無によって異なります。早期のがん(ステージI〜II)であれば、放射線治療のみで完治する場合もありますが、進行したがん(ステージIII以降)では手術と放射線治療を組み合わせたり、放射線と抗がん剤を同時に行う化学放射線療法が行われることが多いです。特にHPV関連の中咽頭がんは放射線治療の効果が高く、治りやすい傾向があります。治療は主に耳鼻咽喉科や頭頸部外科を中心に進められ、がん拠点病院や大学病院で行われることが一般的です。 手術を行う場合は、口やのどの再建を伴うこともあり、10日から3週間ほどの入院が必要となります。一方、放射線治療のみの場合は通院で治療できることが多いですが、治療中に口内炎や嚥下障害などの副作用が出ると入院が必要になることもあります。抗がん剤を併用する場合は、1クールごとに5日から10日の入院を繰り返しながら治療を進めることがあります。下咽頭がんの治療法
下咽頭がんは発見された時点で比較的進行していることが多いため、治療は手術と放射線治療や抗がん剤を組み合わせた方法が一般的に選ばれます。手術では、下咽頭の一部または全体を切除する大がかりな処置が必要になることが多く、声帯を温存できるかどうかや、のどの機能を再建する手術も検討されます。こうした治療は、頭頸部がんを専門とする耳鼻咽喉科や頭頸部外科が中心となり、設備の整った大規模な病院やがん専門病院で行われるのが通常です。 入院期間は手術の内容にもよりますが、一般的には2〜4週間程度が必要とされます。特に声を失う可能性もあるため、術後には言語療法や嚥下訓練などのリハビリが不可欠となる場合があります。また、手術ではなく放射線と抗がん剤を併用する治療を選ぶ場合でも、副作用の管理のために入院と通院を繰り返すことがあります。いずれの治療においても、専門医のもとでしっかりとしたサポートを受けることが重要です。「咽頭がんの初期症状」についてよくある質問
ここまで咽頭がんの初期症状を紹介しました。ここでは「咽頭がんの初期症状」についてよくある質問に、メディカルドック監修医がお答えします。
咽頭がんの好発年齢について教えてください。
小柏 靖直 医師
咽頭がんは一般的に中高年の男性に多いがんです。特に50〜70代での発症が多く見られます。これは、喫煙や飲酒などの生活習慣が長期にわたって蓄積されることが関係しています。 ただし、近年ではヒトパピローマウイルス(HPV)感染が関係する中咽頭がんが、比較的若い年齢層にも増えてきており、40代以下でも発症するケースがあります。 そのため、「若いから安心」と思い込まず、のどの違和感が長く続く場合は早めに耳鼻咽喉科を受診することが大切です。
編集部まとめ
咽頭がんは、「のどの違和感」「声のかすれ」「首のしこり」など、風邪のような症状から始まることが多いがんです。そのため、初期のうちは見逃されがちで、気づいたときには進行しているケースもあります。 咽頭がんの種類(上咽頭・中咽頭・下咽頭)によって症状の出方や原因は異なりますが、共通して言えるのは、「2週間以上続く症状があれば、迷わず耳鼻咽喉科へ」ということです。 日常のちょっとした違和感こそが、早期発見のサインかもしれません。この記事が、読者の皆さん自身やご家族の健康を守るきっかけになれば幸いです。「咽頭がん」と関連する病気
「咽頭がん」と関連する病気は7個ほどあります。 各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。消化器科の病気
- 食道がん
- 胃がん
ウイルス感染症の病気
- HPV関連病変
- EBウイルス感染症
「咽頭がん」と関連する症状
「咽頭がん」と関連している、似ている症状は6個ほどあります。 各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。関連する症状
- のどの片側の痛みが続く
- 飲み込みにくさ(嚥下困難)
- 声がかすれる、しゃべりにくい
- 首のしこり
- 耳のつまった感じ、聞こえにくさ
- 鼻づまりや鼻血



