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「膵臓がん」を発症すると「お腹にどんな痛み」を感じる?初期症状も医師が徹底解説!

 公開日:2025/08/04
「膵臓がん」を発症すると「お腹にどんな痛み」を感じる?初期症状も医師が徹底解説!
膵臓がんを発症するとお腹にどんな痛みを感じる?Medical DOC監修医が膵臓がんを発症するとお腹のどこに痛みを感じるか・ステージ分類・初期症状・原因などを解説します。気になる痛みがある場合は迷わず病院を受診してください。
和田 蔵人

監修医師
和田 蔵人(わだ内科・胃と腸クリニック)

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佐賀大学医学部卒業。南海医療センター消化器内科部長、大分市医師会立アルメイダ病院内視鏡センター長兼消化器内科部長などを歴任後の2023年、大分県大分市に「わだ内科・胃と腸クリニック」開業。地域医療に従事しながら、医療関連の記事の執筆や監修などを行なっている。医学博士。日本消化器病学会専門医、日本消化器内視鏡学会専門医、日本肝臓学会肝臓専門医、日本医師会認定産業医の資格を有する。

「膵臓がん」とは?

膵臓は、胃の後ろの背中側にある細長い形をした臓器です。膵臓は、食べ物を消化する膵液の分泌や、血糖値を下げるインスリンの分泌をする役割を果たしています。 この膵臓にがんが発生したものが、膵臓がんです。膵臓がんの多くは膵管に発生し、ほとんどが腺がんと報告されています。膵臓がんは小さいうちから周囲のリンパ節や肝臓などに転移しやすく、おなかの中にがんが散らばる腹膜播種も起こしやすいです。初期では症状があまり見られず、膵臓がんが発見されたときには、すでに転移や腹膜播種など病状が進行していることも多いです。

膵臓がんを発症すると、お腹にどんな痛みを感じる?

膵臓がんは、初期では症状が出にくく、わかりづらいです。しかし、症状が進行すると痛みが起こることもあります。膵臓がんではどんな痛みを感じるでしょうか?ここでは、膵臓がんでみられやすい痛みの特徴について解説いたします。

みぞおちの痛み

膵臓がんが発生した場所により、痛みの場所や種類など症状が異なります。胃や胆のうの裏側の膵頭部に膵臓がんが発生した場合、周囲の胃や十二指腸にがんが浸潤すると心窩部(みぞおち)の痛みが出現します。また、消化管が細くなることで、吐き気や嘔吐が出現したり、胆管が詰まることで黄疸の症状がみられることもあります。

背部・腰の痛み

膵臓の真ん中〜左側の体部~尾部に膵臓がんが発生した場合、膵臓がんが大きくなるまで症状が出ないことも少なくありません。しかし、腫瘍が大きくなると、体の背側の後腹膜へ浸潤が起こることがあり、難治性の背部痛や腰痛が発生します。なかなか治らない腰痛や背部痛がある場合には整形外科や内科で相談をしてみましょう。

お腹が張る感じの痛み

膵臓がんが消化管に浸潤したり、腹膜播種を起こすと、消化管の動きが悪くなってお腹が張って痛みが出てくることがあります。腹部の張りが持続したり、痛みが続く場合には消化器内科で相談をしてみましょう。

膵臓がんを発症すると、お腹のどこに痛みを感じる?

ここでは膵臓がんを発生した場合、どこに痛みを感じるかについて詳しく解説をします。

心窩部痛

膵頭部にがんが発生すると、みぞおちの周囲の痛みが起こることがあります。胃や十二指腸などへ直接がんが浸潤することで痛みが起こります。

背部痛や腰痛

膵臓は背側に存在するため、膵臓がんが大きくなり、後腹膜に浸潤することで、背部痛や腰痛が起こります。腰痛や背部痛などは、日常生活でもよく見られる痛みですがなかなか治らない時には詳しく検査をした方が良いでしょう。

お腹全体の張る痛み

膵臓がんは、気がついたときには腹膜播種をきたしていることも少なくありません。腹膜播種をきたした場合、腹痛やおなかの膨満感や張る感じが持続することもあります。お腹の張る感じや痛みが持続する場合、膵臓がん以外にもさまざまな病気の可能性が考えられます。消化器内科で相談をしてみましょう。

膵臓がんを発症し、腹痛を感じる場合のステージ分類

膵臓がんで腹痛を感じる可能性があるステージは、Ⅱ期以降と考えられます。膵臓より外にがんが伸展している時、ステージはⅡ期以降となります。

ステージⅡ期以降

ステージⅡ期以降の場合、膵臓より外へがんが伸展していることを示しています。しかし、Ⅱ期で必ず腹痛が出るとは限りません。がんの発生した部位やどこへ進展しているかにより異なります。膵がんの場合、痛みが出てがんが発見されたときにはすでにⅢ期やⅣ期になっていることもあります。

膵臓がんの前兆となる初期症状

膵臓がんの発生部位により、初発症状は異なります。膵臓がんの78%が膵頭部に、22%が膵体尾部に発生します。膵頭部に膵臓がんが発生したほうが、吐き気などの消化器症状や黄疸症状をきたし早めに発見されることが多いです。

黄疸

膵頭部にがんが発生すると、がんが大きくなり、胆管に浸潤して胆管を閉塞します。胆管が閉塞すると、胆汁が排泄されなくなり、ビリルビンが上昇します。ビリルビンの上昇に伴い、皮膚や眼球が黄色となってしまいます。また、体のかゆみを伴うことも多いです。このように黄疸の症状がある場合には、膵臓がんも含め、肝臓や胆のうなどの消化器疾患の病気の可能性があります。早めに消化器内科を受診しましょう。

嘔気・嘔吐

胃や十二指腸の裏側に位置する膵頭部にがんができた場合、進行すると嘔気や嘔吐などの消化器症状がみられることもあります。これは、がんが大きくなり胃や十二指腸などの消化管に浸潤すると、食物の通り道が狭くなったり、閉塞してしまうためです。食べ物が通過できなくなり吐き気や嘔吐の症状がみられるようになります。

お腹のしこり

膵体部や尾部にがんができた場合、症状が出にくく、がんが大きくなって初めて気が付くことも少なくありません。そのため、がんができた部位のしこりとして気が付くこともあります。横になった時などに自分のおなかのしこりに気がついたら、膵臓がんの可能性もあります。消化器内科で相談をしましょう。

腹痛

膵がんが周囲の臓器に浸潤すると、腹痛が出現することもあります。腹痛だけでは、他の病気と区別はつきませんが、同じ場所の痛みが持続する場合には消化器内科で相談をしてみましょう。

背部痛

膵体部や尾部にがんが発生した場合、後方へがんが浸潤し、後腹膜へ到達すると痛みが出現することもあります。難治性の背部痛や腰痛が起こった場合、膵臓がんの可能性もあります。背部痛の原因について、整形外科や内科で相談をしてみましょう。

膵臓がんの主な原因

なぜ膵臓がんになるのか、その原因はまだはっきりしていません。しかし、膵臓がんに関係する危険因子についていくつかわかってきました。この危険因子について解説します。

遺伝

膵臓がんの患者さんの中には、家族にも膵がんがいる方が多く、家族に膵がんの方がいる場合、膵がんになる危険性は1.6倍〜3.4倍と言われています。 また、膵がんになりやすい遺伝性の病気もあります。遺伝性膵がん症候群といい、遺伝性膵炎、家族性大腸腺腫症、リンチ症候群、ポイツ・ジェガース症候群などが含まれます。このような遺伝性の病気がある家系であったり、家族の中で膵がんの方がいる場合には気を付けなければなりません。

慢性膵炎

慢性膵炎も膵がん発生のリスクの一つです。日本人の慢性膵炎の患者さんの約4%程度に膵がんの発生がみられると報告されています。また、慢性膵炎の診断から2年以内に膵がんの発見される頻度が増え、発生リスクは一般の方の13倍高いと言われています。 慢性膵炎で最も多い原因はアルコールです。純エタノール換算で1日60g以上のお酒を飲む方では、慢性膵炎の発症リスクが高くなることが分かっています。アルコールを多く飲む方では、慢性膵炎の発症リスクに気をつけましょう。また、膵炎と診断された場合には、なるべくアルコールを控え、膵がんとならないように気を付けることが大切です。

膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)

膵臓には嚢胞と呼ばれる中に液体が貯留した袋状の腫瘤が発生することがあります。この嚢胞の袋の内面が腫瘍性細胞でおおわれているものが嚢胞性腫瘍です。膵臓の嚢胞性腫瘍の中で最も頻度が多いものが、膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)です。IPMNは、膵がんが発生もしくは併存する可能性があり、注意が必要です。IPMNと診断された場合、定期的な経過観察が必要です。

「膵臓がんの腹痛」についてよくある質問

ここまで膵臓がんの腹痛などを紹介しました。ここでは「膵臓がんの腹痛」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

手遅れとなる膵臓がんの症状について教えてください。

和田 蔵人和田 蔵人 医師

膵臓がんの症状のうち、特定の症状が手遅れというものはありません。しかし、お腹が張ったり、体重が減少する症状は病状が進行している可能性があります。腹膜播種などが起こった結果、おなかの張りや体重減少などが起こっているのであれば、膵臓がんの進行が進んでいる可能性が高いと考えられます。早めに消化器内科を受診しましょう。

膵臓が弱っているサインとなる症状はありますか?

和田 蔵人和田 蔵人 医師

膵臓が弱っている、というのは膵炎などで膵臓の機能が低下していると考えられます。慢性膵炎などで膵臓の消化酵素の分泌が低下すると、脂っぽいものが上手く消化できず下痢をしたり、脂肪便(白から黄色い未消化の脂肪が多く含まれている便)が出ることがあります。また、膵臓からのインスリンの分泌が低下すると、血糖値が高くなりやすくなり糖尿病が発症することもあります。のどが渇いたり、尿量が多くなったり、体重が減ることが糖尿病の症状の1つです。これらの症状がある場合、膵臓の機能が低下している可能性があります。消化器内科で相談してみましょう。

まとめ 膵臓がんの危険因子がある場合は、消化器内科で相談しよう

膵臓がんは初期では症状が分かりにくいがんです。そのため、早期で発見することが難しく、発見された時には、病状が進行していることも少なくありません。膵臓がんの危険因子がいくつか報告されています。膵臓がんの家族歴や、慢性膵炎、IPMNなどが危険因子であるとわかっています。これらの家族歴や病気を持つ方は、定期的に消化器内科で相談し、検査をすることも大切です。また、腹痛や吐き気、おなかの張り、背部痛などの症状が持続する場合には膵臓がんをはじめとする消化器系の病気の可能性があります。早めに消化器内科を受診して相談することが膵臓がんの早期発見につながります。これらの症状に悩んでいる方は、早めに受診しましょう。

「膵臓がん」と関連する病気

「膵臓がん」と関連する病気は7個ほどあります。 各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

消化器科の病気

  • 胃がん
  • 胃・十二指腸潰瘍
  • 胆のう炎
  • 胆のうがん
  • 膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)
  • 胆石
膵臓がんでみられる症状は他の病気でもみられることもあります。また、慢性膵炎やIPMNは膵臓がんの危険因子でもあり気をつけなければなりません。

「膵臓がん」と関連する症状

「膵臓がん」と関連している、似ている症状は6個ほどあります。 各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する症状

  • 黄疸
  • 嘔気、嘔吐
  • 背部痛
  • おなかの張り
  • 体重減少
これらの症状は膵臓がんだけではなく他の病気でもみられることがあり、症状のみでは区別がつきません。これらの症状が、続く場合には病気が隠れている可能性があるため、消化器内科を受診しましょう。

この記事の監修医師