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「前立腺がん」を発症すると検査でどんな「数値結果」が出るかご存知ですか?医師が解説!

 更新日:2025/11/05
「前立腺がん」を発症すると検査でどんな「数値結果」が出るかご存知ですか?医師が解説!

前立腺がんを発症するとPSA検査でどんな数値結果がでる?Medical DOC監修医が症状・原因・なりやすい人の特徴・治療法・予防法や何科へ受診すべきかなどを解説します。気になる症状がある場合は迷わず病院を受診してください。

石川 智啓

監修医師
石川 智啓(医師)

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2013年名古屋大学医学部卒。初期研修修了後、JCHO中京病院泌尿器科、小牧市民病院泌尿器科、名古屋大学医学部附属病院泌尿器科を経て、現在水野内科クリニックで勤務。日本泌尿器科学会専門医、da Vinci Surgical System コンソールサージャン・サーティフィケートの資格を有する。

「前立腺がん」とは?

前立腺がんは、男性特有の臓器である前立腺から発生するがんのことです。
日本での前立腺がんになる方の数は増加傾向です。そして、一生涯で9人に1人がこのがんになるといわれ、年間約12,000人が亡くなっています。
前立腺がんは高齢の男性に多く、罹患率は60歳頃から増加し、70歳代後半で最多となります。
前立腺がんは早期の段階では特に症状がないことが多いです。しかし、PSA(前立腺特異抗原)というタンパク質である腫瘍マーカーが早期発見のために有効です。
今回の記事では、前立腺がんのPSA検査について詳細に解説します。さらに、前立腺がんの症状や危険因子、治療法、予防法についても説明します。

「PSA検査」とは?

PSA(prostate specific antigen;前立腺特異抗原)は、前立腺がんで数値が上昇する腫瘍マーカーです。前立腺肥大でも高値を示すことがありますが、10.0ng/mlよりも高くなる際には前立腺がんが疑われます。
PSA検査は、症状などから前立腺がんが疑われる場合や、職域や自治体のがん検診、人間ドックのオプション検査などで行われます。
PSA値は、前立腺がんのリスク分類、経過観察の際の指標、治療後の再発チェックなどにも用いられます。

前立腺がんを発症するとPSA検査でどんな数値結果がでる?

PSAのカットオフ値、つまりがん検診で異常ありかなしかの判定基準値は、4.0ng/mLが推奨されています。一方、以下の様な年齢ごとのカットオフ値を用いても良いとされています。

・50〜64歳:3.0ng/mL
・65〜69歳:3.5ng/mL
・70歳以上:4.0ng/mL

PSA値が基準値を超えている場合には、直腸診や超音波検査、MRI検査、さらに生検などで前立腺がんかどうかを調べていきます。

一般的に、PSA値が10.0ng/mlを超えると前立腺がんが疑われます。
以前は、治療前のPSA値が100ng/mLを超えていると、遠隔転移がほぼあるとされていました。しかし、現在では必ずしもそうではないことがわかっています。

前立腺がんは、治療法を決定する際にリスク分類を行います。その際には、がんの進行度合い、グリソンスコアというがんの組織の性状、PSA値を基準としています。

前立腺がんの代表的な症状

前立腺がんでは、特に症状がない方も多いです。しかし、進行した前立腺がんでは以下のような症状が現れることもあります。

尿が出づらい

前立腺がんが大きくなることによって尿の通り道が狭くなり、尿の出づらさを感じる方もいます。尿の出づらさの原因としては、前立腺肥大が多いです。しかし、前立腺肥大は前立腺がんと同様に高齢になると生じやすいです。そのため、排尿困難がある場合には、泌尿器科を受診するようにし、前立腺がんのチェックを受けるようにしましょう。

尿の勢いが弱い

尿の出づらさのほかにも、尿の通過障害の症状として、尿の勢いが弱くなることもあります。

尿が全く出なくなる

前立腺がんが大きくなり、さらに尿の通り道がせまくなることで尿が全く出なくなることもあります。ただし、近年では早期の段階で見つかり、適切に治療が行われることも多いため、こうしたケースはほとんどみられなくなっています。

精子に血が混じる

前立腺やその後ろにある精嚢から出血すると、精子に血が混じることがあります。
はっきりとした原因がわからない出血が多いですが、前立腺の炎症などが原因となっていることもあります。
前立腺がんでも起こりえる症状ですが、むしろがんの診断の際、前立腺を針で刺す生検を行った後に高頻度でみられます。

背中や腰、骨盤の痛み

前立腺がんは、骨に転移しやすいです。特に背中や腰、骨盤の骨に起こりやすく、その場合には痛みが現れるケースがみられます。

前立腺がんの主な原因

前立腺がんには、遺伝や生活習慣などさまざまな要因が関わっているとされています。ここでは、発症リスクに関連する主なものをご紹介します。

人種的要因

前立腺がんの罹患率は、人種によって差があります。アメリカでの統計データでは、前立腺がんの罹患リスクは、黒人、白人、アジア人の順に高かったとされています。

家族歴

前立腺がんは、遺伝的な要因も発症に強く関わっているのではないかと考えられています。
具体的には、第一度近親者(親や子供、兄弟)が前立腺がん患者の場合、そうでない人と比べたがんの罹患リスクは約2.5倍となります。特に、3人以上の前立腺がん患者がいる場合、55歳以下の若い方のがん発症リスクは約9倍とされています。

高脂肪食

高脂肪食は、前立腺がんを発症しやすくするという研究が多くみられます。
動物性脂肪に含まれる飽和脂肪酸が、前立腺がんの増殖に関わるアンドロゲンの産生を増加させるのではないかと考えられています。

喫煙

喫煙と前立腺がんの関連性については、まだ明確になっていません。しかし、喫煙本数や喫煙年数が多い男性は、前立腺がんのリスクが高くなることが最近の研究では報告されています。また、ベビースモーカーの方では、前立腺がんの死亡リスクが高くなることも示されています。

肥満

肥満は、前立腺がんの中でも高リスクのタイプの発症リスクを高める可能性があります。

前立腺がんになりやすい人の特徴

研究によって、前立腺がんの発症に関わる行動について明らかになりつつあります。

高脂肪な食事を好む

前立腺がんの発症と高脂肪食との関連が示唆されています。
飽和脂肪酸が多く含まれる、肉の脂身やバターやラードなどの食品の食べ過ぎは避けるようにしましょう。

喫煙の習慣がある

喫煙習慣が、前立腺がんの発症に影響を与える可能性があります。
喫煙は、前立腺がんのみならず、肺がんなどの他のがんのリスクも高めます。喫煙している方は、できるだけ早く禁煙することをおすすめします。

メタボリック症候群である

メタボリック症候群は、内臓肥満に高血圧・高血糖・脂質代謝異常が組み合わさることにより、心臓病や脳卒中などになりやすい病態のことです。
こうした病気のある男性では、悪性度の高い前立腺がんになりやすい傾向があります。

高齢である

前立腺がんは、年齢が高まるほどにその罹患リスクも上昇します。
多くの前立腺がんは、50歳代以降に発症します。そして、特に70歳代後半にかけて罹患率が高くなることが知られています。

家族に前立腺がんの方がいる

親や兄弟、子といった家族に前立腺がんの方がいると、がんの罹患リスクが高まります。
血縁者に前立腺がんが多い場合には、定期的なPSA検査を受けた方がよいかもしれません。

前立腺がんの治療法

ここでは主に、前立腺にとどまり転移のない場合の治療法について説明します。なお、がんのリスク分類にて超低リスクから中間リスクまでの方に対しては、積極的に治療を行わない場合もあります。これは、直腸診やPSA検査、生検などをしながら注意深く経過を見る、監視療法というものです。

手術

手術(前立腺全摘除術)は、前立腺がんの根治的な治療の一つとして確立されたものです。
前立腺全摘除術は、無治療で経過観察するよりも前立腺がん患者の生存期間を延長することが報告されています。近年では、ロボット支援前立腺全摘除術が標準的な術式となりつつあります。
手術は泌尿器科医が行います。入院期間は、10〜14日程度を見ておくと良いでしょう。

放射線治療

放射線治療も、前立腺がんの根治治療の一つです。体の外から照射する「外照射」と、放射線源を前立腺内に留置する「組織内照射」があります。近年ではIMRTやIGRTといった技術が普及し、前立腺に集中的に照射できるようになりました。また、粒子線治療(陽子線・重粒子線)も保険適用となり、選択肢が増えています。
通常は1日1回20分程度の照射を約8週間行いますが、短期間で終える方法もあります。外来通院での治療が可能で、転移による痛みなどの緩和にも用いられます。

薬物療法

前立腺がんの薬物療法としては、特にホルモン療法が重要です。アンドロゲンの働きを抑制する薬を用います。近年、新規アンドロゲン受容体シグナル阻害薬(ARSI)という治療効果の高い薬が開発されました。また、ホルモン療法に対してドセタキセルという抗がん剤を組み合わせることで、生存期間が延長したという報告もあります。
前立腺がんの骨転移がある場合には、骨密度を高める薬を用いて骨折や痛みを予防します。
前立腺がんの薬物療法は、泌尿器科や薬物療法科で行われます。内服薬や皮下注射での治療が多いです。治療内容は進行度や体の状態によって異なるため、担当医とよく相談することが大切です。

前立腺がんの予防法

前立腺がんに特化した予防法は現時点ではまた明らかになっていません。
脂質のとり過ぎに気をつける、運動する、メタボリック症候群を予防するなどは前立腺がんリスクを低くする可能性があります。ここでは、前立腺がん予防効果が示唆される成分や食べ物をご紹介します。

大豆イソフラボンの摂取

大豆イソフラボンには、前立腺がんのリスク低減に関与する可能性があるとされています。イソフラボンは、納豆や味噌、豆乳、豆腐、きなこなどから取ることができます。

緑茶の摂取

緑茶に含まれるカテキンには、がんの発症を抑える効果があるとされています。日本人男性の研究で、1日5杯以上の緑茶を飲む人は、1杯以下の人より進行性前立腺がんのリスクが低いと報告されています。

リコピン摂取

トマトなどに含まれるリコピンには、強い抗酸化作用があります。一部の研究では、トマト缶や調理したトマトなどのリコピンが多い食材の摂取により、前立腺がんのリスクが低下すると報告されています。

「前立腺がんの数値」についてよくある質問

ここまで前立腺がんの数値などを紹介しました。ここでは「前立腺がんの数値」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

前立腺がんの罹患率は増えているのでしょうか?

石川 智啓石川 智啓 医師

はい。日本人の前立腺がん罹患率は、最近40年間で約30倍に増加しています。肺がんや胃がん、大腸がんと同様に、男性のがんとして主なものとなっています。
前立腺がんの死亡数も増えていますが、40年間で約9倍に留まっています。PSA検査などの普及によって、早期に前立腺がんが発見されるようになったことも理由と考えられています。

編集部まとめ

PSAの数値は、がんの治療の効果判定、再発チェックにも役立ちます。
がん検診としてPSA値を測定することは、がんの早期発見というメリットもあります。しかし、前立腺肥大などの良性の変化でも高い値が出る可能性があることも知っておきましょう。
前立腺がんは早期の段階では症状がないことも多いです。PSA検査に加え、今回の記事でご紹介したような予防方法も取り入れていくと良いでしょう。

「前立腺がん」と関連する病気

「前立腺がん」と関連する病気は4個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

泌尿器科の病気

前立腺や膀胱などに関する病気としては、これらが挙がります。

「前立腺がん」と関連する症状

「前立腺がん」と関連している、似ている症状は4個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する症状

  • 尿が出にくい
  • 尿の勢いが弱い
  • 精子に血が混じる
  • 腰や背中、骨盤が痛い

前立腺がんが進行すると、こうした症状が現れることがあります。気になる症状がある場合には、医療機関を受診しましょう。

この記事の監修医師