「乳がんはしこりの大きさ」でステージがわかる?セルフチェック法も解説!【医師監修】

乳房のしこりに関して、「大きさから乳がんのステージがわかるのか?」という疑問をもつ方もいるかもしれません。乳がんのステージは主にしこりの大きさと広がりによって決まりますが、しこりの大きさだけでステージを断定することはできません。本記事では、乳がんの基本知識からセルフチェックの方法、しこりの大きさとステージの関係、早期発見のポイントまでを解説します。セルフチェックや定期検診で早期に乳がんを発見し、適切に対処できるよう一緒に確認していきましょう。

監修医師:
林 良典(医師)
消化器内科
呼吸器内科
皮膚科
整形外科
眼科
循環器内科
脳神経内科
眼科(角膜外来)
目次 -INDEX-
乳がんとは

乳がんとは、乳腺の組織から発生する悪性腫瘍の総称です。多くは母乳の通り道である乳管から発生し、一部は小葉から発生します。がん細胞が乳管内にとどまっている非浸潤の状態(ステージ0)から、乳管を破って周囲に広がる浸潤がんへ進行すると転移のリスクが高まります。乳がんが進行すると、近くの腋の下のリンパ節への転移(リンパ節転移)や、骨や肺、肝臓など離れた臓器への転移(遠隔転移)を起こすことがあります。乳がんは日本人女性で最も罹患数の多いがんです。しかし、早期に発見された乳がんは治癒率が高く、治療の選択肢も広がるため、日頃から乳房の状態に関心を持つことが大切です。
乳がんのセルフチェック法

乳がんは自分で見つけることのできるがんの一つです。セルフチェックは月に1回行う習慣をつけ、自分の乳房の状態を把握しておくことが重要です。特に生理周期によって乳房の張りやしこりの感じ方が変わるため、生理のある方は生理終了後の1週間以内に、閉経後の方は毎月日付を決めて定期的にチェックしましょう。以下は基本的なセルフチェックの手順とポイントです。
鏡の前で乳房の見た目をチェック
半身裸になり、鏡の前にまっすぐ立ちます。腕を下ろした状態と、バンザイするように腕を上げた状態で左右の乳房を観察し、形や大きさの左右差、皮膚のひきつれやくぼみがないか、乳頭の陥没や分泌物が出ていないかを確認します。
入浴時に乳房全体を触ってチェック
石けんやボディソープを手につけて滑りをよくし、反対側の手の指先をそろえて乳房をくまなく触診します。乳頭を中心に円を描くように指を滑らせながら、しこりや皮膚の異常がないかを調べます。
仰向けで乳房を触ってチェック
浴室でのチェックに加え、ベッドや布団の上で仰向けになり、調べる側の腕を上げて頭の下に入れます。反対側の手の指をそろえ、乳房を押し付けるようにしながら全体を触ります。右乳房は左手で、左乳房は右手でそれぞれ内側・外側・上部・下部と順に触れ、わきの下までしっかり確認しましょう。
乳頭を絞ってチェック
最後に乳頭を人差し指と親指ではさみ、軽く絞るようにしてみます。乳頭から血液混じりの分泌物や透明な液体が出ないか確認します。
セルフチェックで普段と違うしこりや変化に気付いた場合は、慌てずに専門の医療機関を受診してください。月に一度のセルフチェックを習慣にして、変化があれば早めに専門医へ相談することが大切です。
乳がんステージ別|しこりの大きさ

乳がんのステージは0期~IV期まであり、主にしこりの大きさとリンパ節転移や遠隔転移の有無の組み合わせで決定されます。しこりの大きさは進行度を知る重要な目安ですが、前述のとおりリンパ節への広がりや他臓器への転移も含めて総合的に判定する必要があります。
ステージ0
非浸潤がんの段階です。乳管や小葉の中にがん細胞が留まっており、周囲に広がっていません。しこりとして触知できないことも多く、マンモグラフィ検診で発見される微細な石灰化病変などが相当します。
ステージⅠ
しこりの大きさが2cm以下で、リンパ節転移がない状態です。早期の乳がんで、しこりが小さいため乳房温存手術が可能なケースが多くなります。
ステージⅡa
しこりの大きさが2cm以下でリンパ節転移あり、または2〜5cmでリンパ節転移なしの状態です。
ステージⅡb
しこりの大きさが2〜5cmでリンパ節転移ありの状態です。IIA期とIIB期を合わせてステージIIとも総称され、中間期の進行がんにあたります。
ステージⅢa
しこりの大きさが5cm超でリンパ節転移ありの状態です。しこりがかなり大きくなっており、腋窩リンパ節への転移も認められる進行乳がんです。
ステージⅢb
しこりの大きさに関係なく、がんが皮膚や胸壁に浸潤している状態です。乳房の皮膚にむくみや潰瘍を形成したり、胸筋にがんが広がって固着していたりするケースなどが該当します。
ステージⅢc
鎖骨の周囲や胸骨のリンパ節に転移がある状態です。乳房・腋窩を越えてリンパ節転移が広がっていますが、遠隔臓器への転移はまだ確認されていません。
ステージⅣ
肺や肝臓、骨など乳房から遠く離れた臓器への転移(遠隔転移)がある状態です。しこりの大きさは問いません。
上述のように、しこりの大きさはステージ判定の重要な要素ですが、リンパ節転移の有無によってステージIIかIIIかに分かれたり、皮膚や他臓器への浸潤・転移があれば大きさに関係なく進行期と判定される点に注意が必要です。自分でしこりを発見した場合も、大きさだけで判断せず必ず医療機関で検査を受け、正確な病期診断を仰ぐようにしましょう。
乳がんを早期発見するポイント

乳がん治療では早期発見・早期治療が極めて重要です。幸い乳がんは自分で見つけやすいがんであり、早期に見つかった場合は90%以上が治るとされています。ここでは、乳がんを早期に発見するために押さえておきたいポイントを解説します。
毎月定期的にセルフチェックを行う
乳がん早期発見の第一歩は、前述のセルフチェックを定期的に行うことです。理想的には月に1回、生理後の乳房がやわらかい時期に決まった手順でセルフチェックをしましょう。セルフチェックを続けていると、自分の乳房の状態がわかってきます。そうすることで、普段との違いにいち早く気付くことができます。
乳がん検診を受ける
乳がん検診は40歳以上の女性に2年に1回受診することが推奨されています。自覚症状がなくても40歳を過ぎたら定期的に検診を受けましょう。乳がん検診では問診の後、マンモグラフィ検査が基本となります。マンモグラフィは乳房を専用の装置で挟んで撮影する検査で、しこりとして触れない微小石灰化や構造の乱れなど、超早期の乳がん徴候を発見するのに役立ちます。
乳がんのしこりについてよくある質問
本章では、乳がん術後の患者さんやご家族から寄せられるよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
乳房に違和感がある場合は何科を受診すればよいですか?
乳房の痛みやしこりに気付いたら、できるだけ早く乳腺専門の医療機関を受診しましょう。具体的には乳腺外科または乳腺科と名前が付いた診療科が望ましいです。乳腺外科では乳房の病気全般について検査や診断、治療を行っています。近くに乳腺外科がない場合は、まず一般外科を受診して紹介状を書いてもらう方法もよいでしょう。自己判断で様子を見るのではなく、「おかしいな」と思う乳房の違和感は専門医にきちんと評価してもらうことが大切です。
乳がんと間違えやすい病気を教えてください。
- 乳腺炎
- 乳腺線維腺腫
- 乳腺嚢胞
- 乳管内乳頭腫
- 葉状腫瘍
これらは乳がんと区別がつきにくいものの、適切な検査で診断可能です。自分では判断するのは難しいため、気になる症状があれば必ず乳腺外科で検査を受けましょう。
乳がんには初期症状はありますか?
乳がんの初期(ステージ0~I)は、症状がわかりにくい場合があります。痛みなどの自覚症状がまったくないこともあり、しこりも小さいため自己触診では触れないケースがあります。特に、ステージ0の非浸潤がんはしこりを形成しないことが多く、マンモグラフィで発見される微細な石灰化が唯一の手がかりということもあります。
まとめ

乳がんは女性に最も多いがんですが、セルフチェックと定期的な乳がん検診によって早期発見・早期治療が可能ながんです。乳房に違和感を覚えたら迷わず乳腺外科を受診し、必要な検査を受けましょう。普段からご自身の乳房に関心を持ち、セルフチェックで状態を把握しつつ、適切な時期に検診を受けてください。そうすることで万が一乳がんが発生しても早期に発見して対処することが可能です。不安なことがあれば一人で悩まず、乳腺の専門医に相談しながら自分の身体と向き合っていきましょう。
関連する病気
乳がんと似た症状を示す、または同時に発生する可能性のある病気には以下のようなものがあります。
- 乳腺線維腺腫
- 乳腺症
- 乳腺炎
- 乳腺嚢胞
- 脂肪腫
関連する症状
乳がんに関連する症状は以下のような症状が挙げられます。これらの変化を正しく把握することが鑑別に役立ちます。
- 乳房のしこり
- 乳頭からの異常な分泌物
- 乳房の形状や大きさの変化
- 乳房の痛みや違和感
- 腋窩や鎖骨上のリンパ節の腫脹




