「膵臓がん」を発症しやすい10の項目を「チェック」!初期症状も医師が解説!

膵臓がんは治療が難しく、予後が厳しいことで知られています。自覚症状が少なく、気付いたときには進行していることが多いため、早期発見の重要性が高いがんの一つです。日本では膵臓がんによる死亡数は年々増加しており、がんによる死因の上位に位置しています。本記事では、そんな膵臓がんの基本的な特徴や、早期発見を妨げる理由、危険因子や初期症状のチェックポイント、さらに検査方法や診断の流れまでを解説します。

監修医師:
林 良典(医師)
消化器内科
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目次 -INDEX-
膵臓がんとは

膵臓がんは、膵臓に発生する悪性腫瘍の一種で、その多くは膵液の通り道である膵管にできるがん(膵管がん)です。本章では膵臓がんの概要と早期発見が難しい理由を解説します。
膵臓がんの概要
日本における膵臓がんの罹患数と死亡数は年々増加傾向にあり、膵臓がんは現在、がん死亡原因の第4位となっています。膵臓がんは進行が早く治療が難しいため、ほかの主要ながんよりも予後が悪い傾向があります。そのため、早期の段階で発見し、治療を開始することが重要です。
膵臓がんの早期発見が難しい理由
膵臓がんは早期には自覚症状がほとんど現れません。膵臓はお腹の奥深く(胃や小腸の裏側)に位置しており、がんが小さいうちは痛みなどの症状を感じにくい臓器です。症状が出始める頃には腫瘍が膵臓の外に広がっていたり、周囲の臓器を圧迫あるいは浸潤していたりするため、症状を手がかりに早期発見するのが難しいのです。
膵臓がんの危険因子をチェックしてみよう

膵臓がんにはいくつかの危険因子が知られています。以下のような項目に当てはまるものがないかチェックしてみましょう。
- 糖尿病
- 肥満
- 大量飲酒の習慣(長年にわたる多量のアルコール摂取)
- 喫煙習慣
- 慢性膵炎
- 膵嚢胞(膵のう胞)
- 膵臓がんの家族歴
- 遺伝的素因:遺伝性膵炎や遺伝性のがん症候群など、膵臓がんのリスクを高める遺伝要因)
以上のような危険因子をお持ちの方は、膵臓がんを発症するリスクが高いと考えられます。一つでも該当するものがあれば、膵臓の状態を定期的に検査でチェックすることを検討しましょう。
膵臓がんを早期発見するためのポイント

初期の膵臓がんは目立った症状が出にくいのが特徴です。しかし、軽いお腹の不快感や体重減少など、注意すべきサインもあります。さらに、リスク因子がある方は画像検査などで定期的に膵臓の状態を確認することで、がんを早期に見つけられる可能性が高まります。
初期症状を見逃さない
膵臓がんに特有の初期症状はないのですが、それでもがんのサインとなりうる症状はいくつかあります。特に次のような症状が持続したり、徐々に悪化したりしている場合は、決して見逃さず医療機関を受診しましょう。
- 上腹部の痛みや違和感、背中の痛み
- 食欲不振や体重減少
- 腹部膨満感
- 黄疸
- 吐き気・嘔吐
- 急な糖尿病の発症・悪化
これらの症状は膵臓がん以外の病気でも起こりうるため、症状だけで膵臓がんと断定することはできません。しかし、膵臓がんの患者さんに見られる主な症状でもあります。これら症状が長引く場合は、早めに医療機関を受診して検査を受けることが大切です。
危険因子がある場合は画像検査を定期的に実施する
前述の危険因子に当てはまる方や、上記のような症状がないか日頃から注意することに加え、危険因子が多い方は定期的に膵臓の検査を受けることが早期発見につながります。しかし、膵臓がんには現状、公的に全国民を対象とした検診がありません。そのため、人間ドックなど任意の健康診断でオプション検査を追加する形で、膵臓のチェックを行うことが推奨されます。
具体的には、腹部超音波検査や腹部CT検査、MRI検査といった画像検査があります。膵臓がんのリスクが高いと考えられる方は、少なくとも年に1回程度はこれらの画像検査を受けることが望ましいです。これらの検査により膵臓に腫瘍がないかを確認し、仮に見つかった場合でも早期であれば治療によって根治を目指すことができます。
膵臓がんの検査方法

膵臓がんが疑われる場合、医師は症状の有無や危険因子の有無、血液検査の結果などを総合的に判断して、必要な検査を組み合わせて行います。膵臓がんの診断には画像検査や内視鏡検査による直接的な観察、そして病理検査による確定診断が不可欠です。それぞれの検査の目的や特徴を理解しておきましょう。
血液検査
血液検査では、膵酵素(アミラーゼ、リパーゼなど)の値が上昇していないかを確認します。膵酵素は膵臓から分泌される消化酵素で、膵臓がんがあると膵管が塞がれたり膵組織が破壊される影響で血中に漏れ出し、血液中の膵酵素値が高くなったりすることがあります。また、腫瘍マーカー検査も血液検査で行います。膵臓がんで測定される代表的な腫瘍マーカーにはCA19-9、CEA、DUPAN-2、SPan-1、CA50などがあります。
画像検査
膵臓がんの存在や広がりを調べるために画像検査が行われます。主に用いられるのは超音波検査、CT検査、MRI検査の3つです。症例に応じてこれらを組み合わせ、腫瘍の大きさ・位置、周囲臓器への浸潤や転移の有無を評価します。特に造影CTや造影MRIは膵臓がんの進行度を評価するうえで欠かせません。必要に応じてPET検査などが追加で行われ、手術可能かどうかの判断や治療方針の検討材料とします。
超音波内視鏡検査
超音波内視鏡検査は、先端に超音波プローブが付いた内視鏡を用いる検査です。口から内視鏡を挿入し、胃や十二指腸まで進めてそこから近距離で膵臓を観察します。体表からの超音波検査よりも膵臓に近い位置から高解像度の画像が得られるため、数㎜の小さな腫瘍も発見しやすくなります。加えて、超音波内視鏡下では細い針を腫瘍に刺して組織を採取すること(超音波内視鏡下穿刺吸引生検)が可能です。この生検によって得られた組織を病理検査することで、膵臓がんの確定診断が行えます。
内視鏡的逆行性胆管膵管造影
内視鏡的逆行性胆管膵管造影(ERCP)は、内視鏡で十二指腸まで到達し、十二指腸乳頭部から細いカテーテルを挿入して造影剤を注入し、膵管および胆管をX線撮影する検査です。ERCPの際には、膵液を採取して膵液細胞診を行うことも可能です。膵管が狭窄している部位を造影して直接確認し、そこで採取した膵液中にがん細胞が見つかれば膵臓がんの診断に有力な手がかりとなります。
細胞診
膵臓がんを確定診断するには、腫瘍細胞を採取して顕微鏡で調べる病理検査が不可欠です。膵臓がんの場合、手術で切除できる状態であれば手術検体で診断が確定されますが、手術前診断ではEUS下穿刺吸引生検(EUS-FNA)やERCP下膵液細胞診で得られた細胞や組織を使います。採取された検体にがん細胞が確認されれば膵臓がんの診断が確定します。
PET検査
PET検査は、がん細胞がぶどう糖を多く消費する性質を利用し、ぶどう糖に似た放射性薬剤(FDG)を体内に注射して行う検査です。膵臓がんを含む多くのがんはブドウ糖代謝が盛んなため、PETではがん組織がある部分に集中的に薬剤が集まって光るように写ります。これにより、CTやMRIでは見つけにくかった小さな転移の検出や、リンパ節転移の評価に役立つことがあります。
膵臓がんについてよくある質問
ここまで膵臓がんを紹介しました。ここでは膵臓がんについてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
膵臓がんを早期に発見した場合は完治が見込めますか?
はい、膵臓がんがごく早期に発見でき、適切な治療が行えれば完治できる可能性があります。膵臓がんの治療で最も効果が期待できるのは外科手術による腫瘍の切除です。がんが膵臓の中に留まっており、主要な血管侵襲や遠隔転移がない段階であれば、手術は根治的治療になりえます。
膵臓がんの治療法を教えてください。
膵臓がんの治療は、ステージや患者さんの体力、併存疾患などによって選択肢が異なりますが、大きく分けて手術、薬物療法(抗がん剤)、放射線治療、緩和ケアの4つがあります。基本的な方針として、がんが切除可能な場合は手術による治療を目指し、切除不能な進行例では抗がん剤を主体とした治療が行われます。
膵臓がんの疑いがある場合は何科を受診すればよいですか?
膵臓がんの疑いがある場合は消化器内科を受診してください。膵臓は消化器の一部ですので、膵臓がんの診療は通常消化器内科または消化器外科が担当します。特に1~2ヶ月以上続く腹痛や背部痛、黄疸、原因不明の体重減少や糖尿病の急激な悪化などがある場合には、一度消化器内科で詳しい検査を受けることをおすすめします。
まとめ

膵臓がんは早期に症状が出にくく、発見が難しいがんですが、危険因子を有する方は定期検査によるチェックでリスクを管理することが重要です。仮に膵臓がんと診断されても、治療法は年々進歩してきています。手術が可能な場合は外科的切除を中心に、難しい場合も抗がん剤や放射線治療、さらには症状を和らげる緩和ケアまで組み合わせて対応します。希少ながんではありませんが難治性ゆえ不安も大きい病気です。リスクの高い方や症状が気になる方は本記事の内容も参考に、早めに医師に相談して検査を受けるよう心がけてください。早期発見と早期治療こそが膵臓がん克服のためには重要です。
関連する病気
膵臓がんと似た症状を示す、または同時に発生する可能性のある病気には以下のようなものがあります。
- 慢性膵炎
- 胆石症
- 胆管炎
- 胆道がん(胆管がん・乳頭部がん)
- 胃潰瘍
- 胃がん
- 十二指腸潰瘍
関連する症状
膵臓がんに関連する症状は以下のような症状が挙げられます。これらの変化を正しく把握することが鑑別に役立ちます。
- 上腹部痛
- 体重減少
- 黄疸
- 食欲不振
- 倦怠感




