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「小腸がん」が進むと「腸閉塞」になるのか?腸閉塞の症状について医師が解説!

 公開日:2025/10/05
「小腸がん」が進むと「腸閉塞」になるのか?腸閉塞の症状について医師が解説!
小腸がんは消化管にできるがんのなかでもまれな疾患ですが、進行すると腸閉塞などの重篤な合併症を引き起こすことがあります。腸閉塞は命に関わることもあるため、早期の対応が重要です。本記事では、小腸がんによって生じる腸閉塞の仕組みや症状、治療法、経過などをわかりやすく解説します。
和田 蔵人

監修医師
和田 蔵人(わだ内科・胃と腸クリニック)

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佐賀大学医学部卒業。南海医療センター消化器内科部長、大分市医師会立アルメイダ病院内視鏡センター長兼消化器内科部長などを歴任後の2023年、大分県大分市に「わだ内科・胃と腸クリニック」開業。地域医療に従事しながら、医療関連の記事の執筆や監修などを行なっている。医学博士。日本消化器病学会専門医、日本消化器内視鏡学会専門医、日本肝臓学会肝臓専門医、日本医師会認定産業医の資格を有する。

小腸がんにおける腸閉塞の概要と症状

小腸がんにおける腸閉塞の概要と症状 小腸がんにより腸閉塞が起こると、急激な腹痛や嘔吐といった症状を引き起こすことがあります。まずは腸閉塞とは何かについて、その基本を押さえたうえで、具体的な症状や注意すべきサインについて解説します。

腸閉塞とは

腸閉塞とは、何らかの原因で腸管の通り道がふさがり、内容物が先に進まなくなる状態を指します。腸閉塞を起こす原因にはさまざまありますが、腸の炎症に伴う癒着やがんによる腸管の詰まりなどが代表的です。腸の動きが低下して生じる機能的な腸閉塞もあり、これを特にイレウスと呼ぶこともあります。腸管の通過が悪くなると内容物が詰まって滞留し、お腹が張った状態が続いた結果、激しい腹痛や嘔気・嘔吐などの症状を引き起こします。

腸閉塞の症状

腸閉塞では、下記のような症状が現れます。

  • 腹痛(おなかの痛み)
  • 腹部膨満(お腹の張り)
  • 嘔気(吐き気)・嘔吐
  • 排便・排ガス困難

そのほかにも、発熱や脈の速さ(頻脈)、冷や汗、顔面蒼白などショック症状を認めることもあります。特に腹痛・腹部膨満・嘔吐・排便困難が揃った場合は緊急性が高い状態です。軽いお腹の張りや痛みであっても、小腸がんの既往がある方は早めに医療機関を受診することが大切です。

小腸がんで腸閉塞が起きるメカニズム

小腸がんで腸閉塞が起きるメカニズム 小腸がんは、その腫瘍が腸管内腔を狭くすることで機械的に通過障害を引き起こし、腸閉塞の原因となります。小腸は長さ6~7mと長い消化管で、通常は内容物がスムーズに流れるよう余裕があります。しかし、小腸内壁に発生したがんが大きく成長すると、腸の内側から管腔を狭窄させたり、腸壁自体を硬く肥厚させたりして通り道をふさいでしまいます。その結果、口側から送られてきた食べ物や消化液が詰まり、お腹の中にせき止められてしまいます。

小腸がんで腸閉塞になった場合の治療法

小腸がんで腸閉塞になった場合の治療法 小腸がんが原因で腸閉塞が起きた場合、緊急に消化管の通過障害を取り除く治療が行われます。治療法は大きく保存的治療手術療法にわかれ、患者さんの状態やがんの進行度に応じて選択されます。基本的にはまず保存的治療で全身状態の安定と一時的な閉塞解除を図り、根本原因である腫瘍に対して手術など根治的治療を検討する流れになります。

保存的治療

腸閉塞の初期対応として行われるのが保存的治療です。腸が完全に壊死するような重篤な状態でない限り、まずは以下のような処置で症状の改善を目指します。

  • 絶食・輸液 飲食を一切中止し、点滴で水分や栄養、電解質を補給します。
  • 減圧 鼻からイレウス管と呼ばれるチューブを胃〜小腸に挿入し、腸内に溜まった液体やガスを体外に吸引します。
  • 薬物療法 腸の動きを整える薬剤や、嘔吐・腹痛に対する対症療法のための薬剤を投与します。

保存的治療によって多くの場合、一時的に腸閉塞症状が改善します。腸管が部分的な癒着で詰まっていたり、一過性の麻痺性イレウスであったりする場合は、絶食と減圧のみで腸の通過が再開することもあります。しかし、小腸がんが原因の場合、腫瘍そのものが残っている限り再び閉塞を起こすリスクがあります。保存的治療で症状が落ち着いたら、引き続き根本治療(手術など)を検討する必要があります。

手術療法

小腸がんによる腸閉塞の根本的治療は、外科手術によって腫瘍を取り除き、腸管の通り道を確保することです。腸閉塞が保存的治療で改善しなかった場合や、腫瘍による閉塞が再発しそうな場合には、早期に手術が検討されます。

小腸がんで腸閉塞になったときの進行度

小腸がんで腸閉塞になったときの進行度 小腸がんが原因で腸閉塞を起こす場合、病気のステージがある程度進んでいるケースがほとんどです。小腸がんは早期には症状が乏しく、内視鏡検査でも発見が難しい部位に発生することが多いため、自覚症状を契機に見つかるときには進行した状態であることが少なくありません。 特に、腸管が狭窄して腸閉塞症状を起こすためには、腫瘍が粘膜下層より深く腸壁内に浸潤し、腸の内腔をある程度ふさいでいる必要があります。

小腸がんで腸閉塞になった後の経過

小腸がんで腸閉塞になった後の経過 小腸がんによる腸閉塞を乗り越えた後の経過は、がんの病期や治療内容によって異なります。小腸がんは症例数が少なく標準的な術後補助療法(再発予防の抗がん剤治療)が確立していないため、根治手術後は定期的な経過観察を行います。腸閉塞の原因となった腫瘍が完全に取り除かれていれば、その時点で閉塞症状は改善しますが、再発により再び腸閉塞が起こる可能性もあります。そのため、引き続き食事の工夫(食物繊維の摂取に注意するなど)や定期検査による管理が大切です。

小腸がんについてよくある質問

ここまで小腸がんを紹介しました。ここでは「小腸がん」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

小腸がんで腸閉塞になった場合は入院が必要ですか。

基本的に入院が必要です。 小腸がんによる腸閉塞は症状が急激に悪化する可能性が高く、点滴やチューブによる減圧処置、緊急手術の準備など迅速な対応が求められます。入院中は医師や看護師の管理下で適切な処置と経過観察が行われるため、安心して治療に専念できます。不安な点は医療スタッフに相談し、安静に過ごすようにしましょう。

小腸がん腸閉塞の治療費を教えてください。

日本の公的医療保険を利用する場合、自己負担は治療費総額の一部(一般的に3割)で、高額療養費制度により月ごとの上限額が定められているため、超高額になる心配は通常ありません。1ヶ月の自己負担額が一定額(所得に応じ約5万~8万円)を超えた場合、その超過分が後から払い戻されます。ただし、高額療養費制度を利用するには事前に限度額適用認定証を取得しておくとスムーズです。また、75歳以上の高齢者や所得によっては自己負担割合が1割または2割となり、上限額もさらに低く設定されています。具体的な金額は所得区分によって異なるため、詳しくは担当の医療ソーシャルワーカーや保険者に確認するとよいでしょう。

小腸がんでは腸閉塞以外にどのような症状が現れますか?

小腸がんは腸閉塞以外にもさまざまな症状を引き起こすことがあります。 初期には自覚症状が乏しいものの、がんが進行すると以下のような症状が現れることがあります。

  • 腹部膨満感や腹痛
  • 悪心や食欲不振
  • 消化管出血
  • 黄疸
  • 体重減少
こうした症状はほかの病気でも起こりうるため見逃されやすく、結果として小腸がんの発見が遅れる一因となっています。

まとめ

まとめ 小腸がんによる腸閉塞は、放置すると命に関わる可能性もある重大な状態です。早期の発見と適切な対応により、症状を和らげ、根本治療へとつなげることができます。腹部の張りや痛み、吐き気などの症状を感じたとき、特に小腸がんの既往がある方は、自己判断せず早めに医療機関を受診しましょう。治療後も再発予防や食生活の見直しを行うため、医師と適切なコミュニケーションを取ることが重要です。本記事が腸閉塞の早期発見と再発予防に役立てば幸いです。

関連する病気

小腸がんと似た症状を示す、または同時に発生する可能性のある病気には以下のようなものがあります。

  • クローン病
  • 小腸ポリープ
  • メッケル憩室炎
  • 小腸悪性リンパ腫
  • 潰瘍性大腸炎

関連する症状

小腸がんに関連する症状は以下のような症状が挙げられます。これらの変化を正しく把握することが鑑別に役立ちます。

  • 持続的な腹痛・不快感
  • 悪心・嘔吐
  • 体重減少・食欲不振
  • 腹部膨満感
  • 便通異常

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