「声帯ポリープの治療法」は何があるかご存じですか?再発予防も医師が解説!

歌を歌ったり、大きな声を出すと、声が出にくいと感じる方がいます。もしかしたらそれは声帯ポリープという病気かもしれません。声帯ポリープは、声の酷使などにより声帯に生じる良性の腫瘤です。主な症状は嗄声で、痛みはほとんどありませんが、放置すれば次第に大きくなってさらに声が出しにくくなることがあります。本記事では、声帯ポリープ治療法や再発を防ぐ方法などを解説します。

監修医師:
武田 美貴(医師)
目次 -INDEX-
声帯ポリープとは

本章では、声帯ポリープについてその概要と、ほかの病気との違いを解説します。
声帯ポリープの概要と原因
声帯ポリープとは、声帯の粘膜表面にできる隆起性の病変です。これは大声を出すなど声の酷使によって声帯粘膜に炎症や出血が起こり、その部分が腫れて突起状に盛り上がったものです。片側の声帯に生じることが多く、男女問わず成人に発症します。声帯ポリープの大きな原因は声の酷使です。例えば、教師や保育士、アナウンサーなど、日常的に声を張り上げる職業の方は発症リスクが高いとされています。また、喫煙や飲酒などの生活習慣も喉の慢性的な炎症や刺激につながり、声帯ポリープの発生に関わるとされています。
ポリープ様声帯・結節との違い
声帯ポリープは、ポリープ様声帯や結節と異なります。それぞれとの違いについて解説します。ポリープ様声帯は、声帯全体がむくんで厚く腫れている状態です。声帯の振動が著しく阻害され、かすれた低い声になります。喫煙習慣などが原因になるとされています。
一方、声帯結節は声帯ポリープと同じく声の酷使で起こる良性病変ですが、声帯結節では声帯の表皮細胞が厚く硬くなっています。声帯結節は通常、声帯の左右両側のほぼ対称の位置に小さく生じる一方、声帯ポリープは多くの場合片側のみに発生しサイズも結節より大きく隆起しています。
声帯ポリープの主な治療法

声帯ポリープの治療法は大きく分けて保存療法と手術療法の二つがあります。本章ではそれぞれの治療法について詳しく説明します。
保存療法
保存療法とは、手術をせずに声帯ポリープを改善させる方法です。具体的には声の安静(沈黙療法)と薬物療法、発声指導などを組み合わせて行います。小さいポリープや発症して間もないポリープであれば、数週間から数ヶ月かけて沈黙療法など保存的治療を続けることでポリープが縮小・消失する可能性があります。数ヶ月間保存療法を続けても効果が乏しい場合や、声のかれが強く日常生活に支障をきたす場合には、主治医と相談のうえで手術を検討します。
手術療法
手術療法は、声帯ポリープを外科的に切除して治療する方法です。保存的アプローチで改善が見られない場合や、ポリープが大きく声の障害が重い場合、早期に声を改善する必要がある職業の方の場合などに選択されます。
治療法の選択基準

声帯ポリープの治療方針は患者さんのポリープの状態や置かれた状況によって決定されます。主にポリープの大きさ・位置と症状の程度や患者さんの職業が重要な判断材料になります。本章では治療法の選択基準について説明します。
ポリープの大きさ・位置による判断
ポリープのサイズが小さい場合や、発症して間もないポリープであれば、まずは保存療法で経過を見るのが一般的です。小さなポリープは声の安静や薬で炎症を抑えることで縮小し、自然消失する可能性があります。一方、ポリープが大きい場合は早めに手術で取り除くことが選択されることが多くなります。また、 位置によっても症状や治療方針が左右されます。声帯の振動する縁にあるポリープは声に与える影響が大きく、早期の手術適応となる傾向があります。逆に、声帯の上面など振動に影響しにくい場所に小さいポリープができた場合は、声への影響が少ないためしばらく様子を見ることもあります。
症状の程度と職業
声のかすれ具合や日常生活への支障の度合いも治療法選択の重要なポイントです。例えば、ポリープがあっても軽度の嗄声で日常会話にそれほど不便がない場合、患者さんが希望すればまず保存療法を試みることもあります。一方、声がれが強く会話も聞き取りづらい状態であれば、生活の質の面から早めに手術を選択します。また、患者さんの職業やライフスタイルも治療法の選択に影響します。例えば歌手や営業職など声を出すことが職業上不可欠な方にとって、嗄声が長引くことは仕事への支障が大きいため、保存療法で様子を見るよりも早期に手術で声を改善することがすすめられます。
手術を受ける場合の流れと注意点

声帯ポリープの手術を受けることになった場合、その具体的な流れと術後の注意点について事前に知っておくと安心です。ここでは、手術当日から術後経過、注意事項まで順を追って説明します。
手術方法
声帯ポリープの手術は主に全身麻酔下の顕微鏡手術で行われます。そして、喉頭鏡で声帯を露出させ、手術用の顕微鏡で声帯を拡大視しながらポリープを切除します。麻酔から覚めるまで含めても1時間程度の手術です。麻酔が効いているので手術中の痛みはありません。
入院期間・声の使用制限の期間
声帯ポリープ手術の入院期間は施設によって異なります。日帰り手術や1泊2日で退院できるケースもありますが、多くの病院では術後の経過観察と発声制限の管理のため数日〜1週間程度の入院となることが多いです。そして、手術後、声帯の傷が治るまで絶対安静の期間が設けられます。術後約1週間は一切声を出さないよう指示されます。
術後の経過と再発リスク
声帯ポリープ切除後、声帯粘膜が再生し傷が治ると、ポリープによる声のかすれはほぼ解消します。術後しばらくは傷の影響で声が出しにくかったり、以前と声質が少し変わったように感じることもあります。しかし、これは一時的なもので、適切な沈黙療法とリハビリを行えば、多くの患者さんで術前より明瞭で安定した声を取り戻せます。しかし、ポリープや結節ができた方は、たとえ手術で切除しても同じような生活習慣を続ければ再発しやすいことが知られています。
再発を防ぐためにできること

声帯ポリープは手術で取り除いても、原因となる生活習慣を改善しなければ再び発症する可能性があります。再発を防止し、喉の健康を維持するために、以下のような対策に取り組みましょう。
声の使い方の見直し
日頃から声帯に優しい発声習慣を心がけることが重要です。喉に負担をかけない話し方・声の出し方を身につけることで、ポリープのみならず声帯結節などほかの声の不調も予防できます。具体的には次のようなポイントに注意してください。
- 大声を張り上げない
- 無理な発声をしない
- 騒がしい環境での会話はできるだけ避ける
- 咳払いを減らす
- 喉を休める
喫煙・飲酒習慣の見直し
タバコの煙に含まれる有害物質は声帯粘膜を直接刺激し、慢性的な炎症とむくみを引き起こします。また、過度の飲酒は喉の乾燥を招き、声帯の防御機能を低下させます。さらに、お酒の席ではつい大声で話したり長時間しゃべり続けたりしがちなため、声の酷使にもつながります。声帯ポリープになりにくい声帯のためには、喫煙・飲酒の習慣を見直すことが必要です。
音声治療の継続と定期的な通院
声帯ポリープの治療後には、正しい発声方法を身につけ維持するための音声治療(ボイストレーニング)を継続することが望ましいです。これは再発予防だけでなく、術後に声帯をスムーズに機能させるためにも役立ちます。また、定期的な通院も大切です。手術後しばらくは定期検査がありますが、それが終了した後も半年~1年に1回は耳鼻咽喉科で声帯の状態を診てもらうと安心です。
声帯ポリープの治療についてよくある質問
ここまで声帯ポリープの治療について紹介しました。ここでは「声帯ポリープの治療」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
声帯ポリープは自然に治りますか?
小さな声帯ポリープであれば、声の安静や薬で炎症を抑えることで自然に消えることもあります。数週間~数ヶ月、喉を酷使しないように努めるうちにポリープが縮小し、手術せず治癒することもあります。
手術後はいつから声を出せますか?
手術後はおよそ5~7日間は声を出せない期間が設けられ、その間は話すことは禁止されます。術後1週間ほど経過し傷口が落ち着いたら、医師の指示のもとで小さい声から発声を再開します。ただし、大声を出したり歌ったりといった発声はより長い期間制限されることが一般的です。
まとめ

声帯ポリープは、声の酷使や喫煙などを背景に声帯に生じる良性のしこりですが、保存療法と手術によって治療することが可能です。そのため、声がかれたまま治らないという症状が続く場合は早めに耳鼻咽喉科を受診することが大切です。適切な診断と治療によって声帯ポリープは十分対処可能であり、喉の健康管理次第で再発も防ぐことができます。自分の声と喉を大切にして、声のコンディションを保ちましょう。
関連する病気
- 喉頭がん
- 胃食道逆流症
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- 声帯結節
関連する症状
- 嗄声
- 長引く咳
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