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「中皮腫」の初期症状はご存知ですか?原因や検査・治療法も医師が徹底解説!

 公開日:2026/01/24
「中皮腫」の初期症状はご存知ですか?原因や検査・治療法も医師が徹底解説!

中皮腫 (ちゅうひしゅ)とは?Medical DOC監修医が中皮腫の症状・初期症状・原因・検査法・治療法などを解説します。気になる症状がある場合は迷わず病院を受診してください。

羽田 裕司

監修医師
羽田 裕司(医師)

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(名古屋市立大学医学部附属西部医療センター 呼吸器外科 部長/教授(診療担当))

名古屋市立大学医学部卒業。聖隷三方原病院呼吸器センター外科医長、名古屋市立大学呼吸器外科講師などを歴任し、2019年より現職。肺がんを始めとした呼吸器疾患に対する外科治療だけでなく、肺がんの術前術後の抗がん剤治療など全身化学療法も行う。医学博士。外科学会指導医/専門医、呼吸器外科学会専門医、呼吸器内視鏡学会指導医/専門医、呼吸器学会専門医。

「中皮腫 (ちゅうひしゅ)」とは?

中皮腫は、漿膜(しょうまく)の表面にある「中皮細胞」ががん化したものです。漿膜は、臓器の表面を覆い、胸壁・腹壁といった体壁を裏打ちしています。
中皮腫は、胸膜にできるものが8割強で、腹膜には1割程度、残りは、心膜などにできるまれなものとなります。
中皮腫の大きな原因として、アスベスト(石綿)にさらされたこと(曝露(ばくろ))との関連が指摘されています 。しかし、アスベストの暴露歴がなく、原因不明のこともあります。
今回の記事では、胸膜中皮腫 の症状や原因について詳しく解説します。

胸膜中皮腫の症状

中皮腫(胸膜中皮腫)の場合、早期の段階では無症状のことも多いです。そして、健診などの胸部レントゲン検査を行った際、胸水が溜まっていることが指摘されて病気が判明するケースもあります。
胸水が大量に溜まってくると、徐々に症状がみられるようになります。

胸部圧迫感

胸膜中皮腫では、胸水がたまってきます。この胸水が大量に貯留すると、肺を圧迫して胸の圧迫感や苦しさを感じるようになります。
胸の圧迫感は中皮腫以外にも心疾患などの鑑別も必要になる場合があります。症状が続くようであれば、一般内科や呼吸器内科、循環器内科を受診するようにしましょう。

動いた時の息苦しさ

胸水の増加によって、動いた時の息苦しさが現れることもあります。これは医学的には労作時(ろうさじ)呼吸困難と呼ばれます。胸部圧迫感と同様に、症状が長引くあるいは悪化する場合には、呼吸器内科や循環器内科を受診しましょう。

胸水が増えることで、胸膜が刺激され、咳が出るようになることがあります。
咳は風邪などの感染症でも起こることがありますが、長引くようであれば一度内科受診をおすすめします。

胸膜中皮腫の初期症状

さらに病気が進行するとさまざまな症状が現れてきます。ここでは、中皮腫が進行した際に起こる症状についてご紹介します。

胸痛

胸膜中皮腫が大きくなり、胸壁に浸潤するようになると、その部位に痛みを感じるようになります。胸痛や背部痛として自覚するようになり、この痛みは病気の進行につれて強くなります。
胸痛や背部痛がある場合には、一般内科や呼吸器内科・外科を受診するようにしましょう。

体重減少

胸膜中皮腫が進行すると、体重減少が起こることがあります。しかし、胸膜中皮腫に特徴的とは言えない症状です。
ダイエットしているわけではないのに、体重が減少する場合、何らかの病気が隠れている場合もあります。例えば、糖尿病や甲状腺機能亢進症 などの代謝内分泌疾患、結核や慢性関節リウマチなどの炎症性疾患、がんなどの悪性疾患などがあります。
思い当たる原因が特にないのにも関わらず体重減少がみられるような場合には、一度内科受診を検討するようにしましょう。

発熱

胸膜中皮腫が進行すると、発熱や寝汗がみられることもあります。しかし、これも胸膜中皮腫にのみ見られるというわけではありません。がんが原因となる発熱は腫瘍熱といいますが、発熱の原因は肺炎などの感染症のこともあります。発熱が長引く場合には、いずれにしても原因を明らかにする必要があります。内科を受診するようにしましょう。

中皮腫の原因

中皮腫の原因として、大きなものにアスベスト曝露があります。ここでは、アスベストに関連した原因を中心に3つご紹介しましょう。

アスベストに関係する職場に勤めていた

アスベストは胸膜中皮腫の主な原因と考えられています。アスベストは、天然の繊維状の鉱物です。
アスベストは、鼻や口から吸い込まれて、肺の一番小さく末端の構造である肺胞まで到達します。そしてその一部が肺胞を貫通して胸膜まで達し、数十年と長い年月をかけてがん化するのではないかと考えられています。
アスベスト鉱山や製造工場、造船業、車両の製造、建築業などで働いていた方は、アスベスト曝露歴がある可能性があります。

無症状であっても「アスベストにさらされる作業に従事していたかもしれない」と心配な場合には、相談窓口や、石綿関連疾患に詳しい医療機関に相談するようにしましょう 。

家族を介した曝露や近隣居住による曝露

アスベスト関連の作業をしていた家族の衣類や持ち物を通じて、家庭内でもアスベストに曝露されることがあります。また、石綿工場の近隣に住んでいた場合にも、微量ながらアスベストにさらされる可能性があります。

曝露から長期間経過

アスベストにさらされてから、中皮腫が発症するまでの潜伏期間は25〜50年ほどと考えられています。
日本では、1980年代半ばまでアスベストが輸入され、使用されてきました。そのため、今後2030年ごろに中皮腫の発生ピークが起こるだろうと予想されています。

アスベスト以外で考えられる中皮腫の原因

さて、ここからはアスベスト曝露以外で考えられている中皮腫の原因を説明しましょう。

遺伝的な要因

最近、中皮腫の発生には生殖細胞に関連するがん抑制遺伝子の変異の関与が明らかになってきています。
例えば、BAP1 tumor predisposition syndrome(BAP1-TPDS;BAP1腫瘍素因症候群)が知られています。こうした遺伝子の変異がある方は、中皮腫以外にも目や皮膚のメラノーマや腎臓がんなどができやすいことが知られています。

アスベスト以外の鉱物への曝露

エリオナイト・フルオロエデナイトといった天然鉱物は、アスベストに似た特性を持っています。こうした鉱物繊維を大量に吸い込んだことが、中皮腫の原因となった可能性があるとする報告があります。(Attanoosら、2018)

過去の放射線治療歴

小児期・青年期に悪性腫瘍に対して放射線治療を受けた患者さんが、数年〜数十年後に胸膜、腹膜、心膜中皮腫を発症したという報告があります。悪性腫瘍としては、ホジキン・非ホジキンリンパ腫、生殖細胞腫瘍・乳がんなどとされています。しかし、放射線治療を受けた方全てで中皮腫などのがんが起こる訳ではないことには注意が必要です。

中皮腫の検査法

胸膜中皮腫は、検診の胸部レントゲン検査で見つかるケースも多くみられます。胸膜中皮腫が疑われる場合、その検査方法は以下のようになります。

胸部CT検査

胸水がどれくらい溜まっているのか、胸膜病変がどの程度かなどを調べます。胸膜が部分的・全体的に厚くなっていないか(胸膜の肥厚)や、一部分が塊を形成していないかなどを調べます。
呼吸器内科や外科のオーダーで検査を行います。通常は外来で検査可能です。

胸水細胞診

胸に溜まっている水(胸水)を実際に針で刺して抜いて、胸水の中に中皮腫細胞があるかどうかを調べます。胸水が溜まる病気には、胸膜中皮腫の他の悪性腫瘍(肺がんなど)や、結核性胸膜炎といったものもあります。そのため、胸水細胞診はそれらの鑑別のためにも役立ちます。
実際には、超音波検査で胸水がある部位を調べながら、肋骨と肋骨の間から針を刺して胸水を抜きます。
呼吸器内科・外科医が行います。通常は外来でも可能ですが、患者さんの全身状態が悪いなどのケースでは入院で行う場合もあると考えられます。

胸膜生検

胸腔鏡で胸膜の病変部位を観察・同定し、組織を切り取り、顕微鏡で観察して中皮腫かどうかを確定診断することができます。胸膜生検の方法としては、経皮的針生検もあります。
侵襲的な検査にはなりますが、中皮腫では細胞診のみでは診断が困難な場合が多いので、胸膜生検で得られる情報は重要です。
呼吸器内科、外科が行い、一般的には2〜3日ほどの入院で行われることが多いと考えられます。

中皮腫の治療法

胸膜中皮腫の治療は、手術が可能かどうかや、患者さんの年齢や体力に合わせて決定されます。手術や薬物療法、放射線治療などを単独あるいは組み合わせた集学的治療が行われます。

外科治療

胸膜中皮腫で、切除が可能と判断される症例に対しては、外科的切除が選択される場合があります。がんを完全に治療する目的(根治目的)としては、胸膜切除/肺剥皮術(P/D)と胸膜肺全摘術(EPP)があります。P/Dは、胸膜のみを切除し、肺は残す手術です。一方、EPPは肺と胸膜を全て切除する手術です。眼に見える、あるいは触れてわかるような腫瘍を全て取り除き、肉眼的に完全切除を目指すことを目標とします。
呼吸器外科や胸部外科医が手術を行います。入院期間は10〜20日程度と考えられます。

薬物治療

胸膜中皮腫の薬物治療は、手術などと組み合わせた集学的治療として行われる場合と、手術が不可能な場合に行われる場合があります。中心となる薬は、シスプラチンとペメトレキセドです。手術が不可能な場合には、シスプラチン+ペメトレキセド併用療法の他に、ニボルマブ+イビリムマブ併用療法も一次治療として選択されます。
薬物療法は呼吸器内科や外科、 腫瘍内科などで行われます。薬物投与自体は外来通院でも可能な場合が多いと考えられます。

放射線治療

EPPを受けた患者さんに対する胸部への放射線治療が、ガイドラインでは弱く推奨されています。
また、中皮腫が身体の他の部位に転移し、痛みや麻痺などの症状がある場合には緩和的な放射線治療が行われることもあります。

「中皮腫」についてよくある質問

ここまで中皮腫を紹介しました。ここでは「中皮腫」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

中皮腫の生存率はどれくらいなのでしょうか?

羽田 裕司羽田 裕司 医師

全国がんセンター協議会による2021年の調査があります。その結果、中皮腫の5年後の生存率は、がんの進行度によって異なり、初期のステージⅠで約25%、ステージⅡで約22%でした。進行したステージⅢやⅣでは、それぞれ約6%前後と、いずれの段階でも生存率が低く、予後が厳しい病気であることがわかっています。

まとめ

今回の記事では、中皮腫の中でも頻度の高い胸膜中皮腫について解説しました。

胸膜中皮腫は早期段階では症状が乏しいことも多いです。そのため、定期的な健康診断を受けることも大切と考えられます。また、過去にアスベストに曝露した可能性があるかもしれない方は、専門の相談期間や医療機関に一度相談してみましょう。

「中皮腫」と関連する病気

「中皮腫」と関連する病気は4個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

呼吸器内科・外科系

  • 石綿肺(じん肺)
  • びまん性胸膜肥厚
  • 良性石綿胸水

中皮腫はアスベスト曝露と関連があるアスベスト関連疾患の一つと考えられています。その他のアスベスト関連疾患には上記のようなものがあります。

「中皮腫」と関連する症状

「中皮腫」と関連している、似ている症状は11個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する症状

  • 背部痛
  • 呼吸困難感
  • 胸部圧迫感
  • 腹部膨満感
  • 胸のしこり
  • お腹のしこり
  • 体重減少

胸膜中皮腫や腹膜中皮腫では上記のような症状が現れることがあります。しかし、これらの症状は中皮腫に特異的というものではありません。気になる症状がある場合には、医療機関を受診しましょう。

この記事の監修医師