「肺がんを予防する可能性の高い食べ物」はご存知ですか?医師が徹底解説!

肺がんを予防する可能性の高い食べ物はあるの?Medical DOC監修医が肺がん発症後に食事面で気を付けるべきこと・発症のリスクを上げやすい食べ物・がん予防のために大切な生活習慣などを解説します。

監修医師:
木村 香菜(医師)
目次 -INDEX-
「肺がん」とは?
肺がんは、肺の細胞からできるがんのことです。
初期には症状がなく、進行してから発見されることも多いです。
日本人では特に男性では多く見られ、肺がんによる死亡数も他のがんと比較して高いです。
今回の記事では、肺がんの予防に役立つかもしれない食べ物について解説します。また、食生活や生活習慣についても説明しますので、ぜひ参考にしてみてください。
肺がんを予防する可能性の高い食べ物はあるの?
肺がん予防に効果が期待できる成分として、フラボノイドというポリフェノール化合物が注目されています。
このフラボノイドの作用として、特に受容体型チロシンキナーゼ(RTK)阻害が重要ではないかと考えられています。肺がんにおいては、このRTKの調節異常がよくみられ、がん関連死亡の主な原因となっています。
ここでは、フラボノイドが豊富に含まれる食品を中心に、それぞれ解説していきましょう。
緑茶
緑茶には、フラボノイドの一種であるカテキンが含まれています。カテキンは8種類の異なる化合物ですが、中でもエピガロカテキンガレート(EGCG)は緑茶のポリフェノールの50%以上を占めています。EGCGは、肺がんの進行に関わるEGFRシグナル伝達経路の抑制などの効果が知られています。これががんを抑えるメカニズムの一つになっているのではと考えられています。
リンゴやタマネギ
フラボノイドの一種、ケルセチンは果物や野菜に多く含まれます。りんごやブドウ、玉ねぎ、アスパラガス、レタス、ブロッコリー、モロヘイヤなどもケルセチンが豊富です。
ケルセチンは、脂質と一緒に摂取すると腸管からの吸収効率が高まることが報告されています。そのため、ケルセチンを多く含む野菜を摂る際には、油を使った調理方法を用いたり、ドレッシングなどの油脂食品といっしょに摂ったりすると良いでしょう。
にんじん
ルテオリンが豊富に含まれます。にんじん、セロリ、ピーマン、タイム、オレガノなどに含まれます。
ルテオリンは、抗がん作用の他にも、抗肥満・抗糖尿病・抗炎症作用を持つことも示されています。
セロリ
セロリ、パセリ、オレガノ、赤ワイン、ビール、カモミールティにはアピゲニンというフラボンが多く含まれています。アピゲニンは、冠動脈疾患や高血圧、そしてさまざまながんに対しても有益であるとされています。
グレープフルーツ
ナリンゲンというフラボノイドはグレープフルーツに豊富に含まれます。
ナリンゲンは抗酸化作用や抗ウイルス作用や神経保護作用があることも知られています。
肺がんを発症した後に食事面で気を付けるべきこと
肺がんを発症した後には、治療やがんによる体調の変化があり、食事面で以前と異なる注意が必要になることもあります。
バランスの良い食事をとる
体力維持や感染症を予防するために、炭水化物、タンパク質、脂質、ビタミン、ミネラルをバランスよくとることが大切です。
どのようにとればよいかについては、厚生労働省と農林水産省が共同で「食事バランスガイド」を提示しています。
高血圧や糖尿病等の持病がない場合には、以下のようなものになります。
・ 炭水化物:ご飯を中盛り4杯程度
・副菜:野菜やキノコの副菜は小鉢5‐6杯ほど
・ 肉や魚・卵の主菜:3皿程度
・ 牛乳・乳製品:2品で牛乳なら1本(200ml)程度
・果物は:ミカン2個くらい
これらの量を、目安にしてみましょう。
消化の良い食物を摂る
抗がん剤治療などによって、吐き気が現れやすくなる場合があります。ご飯や麺類など、炭水化物を豊富に含む食物は消化されやすい傾向があります。
適正なカロリーを摂る
患者さんごとに標準体重は異なります。健康的な体重を維持するため、適正なカロリーを摂ることが大切です。
もちろん抗がん剤などの副作用によって食事が難しい場合には無理ない範囲で食事しましょう。
食べられるものを食べる
食事が義務であると捉えると、食べることが苦痛になってしまうこともあります。
そのため、治療中などで体調がすぐれない場合には、食べられるものを食べたい時間にとることも大切です。徐々に体調が回復してきたら、またバランスやカロリーなどに配慮した食事をとるようにしましょう。
塩分の取りすぎには注意する
高血圧を合併している方は、塩分を摂取しすぎないようにしましょう。
高血圧の治療中の場合には、1日あたりの塩分量は6g未満が望ましいとされています。加工食品の中には塩分多く含まれているものもあります。佃煮や練り物などは、食べ過ぎないようにしましょう。
がん発症のリスクを上げやすい食べ物
肺がんの発症リスクを確実に上げる食べ物は現時点ではありません。しかし、以下のようなものががん発症リスクを上げる可能性があります。
高食塩食
肺がんではデータ不十分ですが、胃がんにおいては食塩や塩蔵食品の過剰摂取はほぼ確実に発症リスクを高めます。
塩分の取りすぎは高血圧、動脈硬化症、心血管系の病気のリスクも高めてしまいます。1日あたりの摂取量は、できれば6g 未満に抑えるようにしましょう。
赤身肉と加工肉
イギリスの研究で、赤身肉と加工肉の摂取量が多いと肺がんリスクが高まったという報告があります。ここでいう赤身肉は、豚肉・牛肉・羊肉を指しており、脂肪が少ないお肉という意味ではないことには注意が必要です。また、日本人の平均的な摂取量では、特に大腸がんのリスク増加にはつながらないかもしれないとする報告もあります。現状肺がんリスクを高める確実なエビデンスはありませんが、過剰な摂取は控えた方が良いでしょう。
乳製品
症例対象研究にはなりますが、乳製品とデザートを摂取することが、肺がんリスクの増加につながると報告されています。脂肪分が多いあるいはショ糖が多いことが関連しているのではと考えられています。ショ糖はブドウ糖と加藤が結合したもので、砂糖の主成分です。ただし、特にショ糖については現時点ではエビデンスが十分あるとはいえず、今後のさらなる検証が必要です。
揚げ物
揚げ物の摂取が多くなると、肺がんリスクが高まる可能性があることが報告されています。乳製品と同様、脂肪分の多い食品が肺がんリスクの上昇に関連している可能性があります。
アルコール
アルコールは、特に肝臓がんや食道がんなどのリスクとなることが明らかです。肺がんにおいて、アルコールがリスクを高めるかどうかはまだ研究段階ですが、アルコールをたくさんとる方では肺がんリスクが若干高まるという報告があります。禁酒あるいは飲みすぎないよう、節酒を心がけましょう。
がん予防のために大切な生活習慣
がんの予防のためには、生活習慣に気をつけることが大切です。
禁煙
喫煙は、肺がんの発症リスクを確実に高めます。
また、受動喫煙者の肺がんリスクも高まります。
喫煙している方は1日でも早く禁煙するようにしましょう。肺がんのみならず、すべてのがんの予防につながります。
節酒
肺がんの発症リスクにおいてはアルコールの関与はデータ不十分とされています。しかし、さまざまな種類のがんのリスクを下げるためにはアルコールの1日摂取量は適切に保つことが大切です。
果物や野菜を積極的にとる
前述したように、果物や野菜にはフラボノイドなどの化合物が含まれ、肺がんの予防に効果がある可能性が示唆されています。そして、肺がんにおいてはがんのリスクを低くする可能性があります。
厚生労働省からは、1日の野菜摂取目標は350gとされています。果物と合わせると、野菜を小鉢5皿分、果物を1皿分とることでおよそ400gがとれます。
運動をする
肺がんに限らず、運動習慣はがんの発症リスクを下げると報告されています。
18〜64歳の方は、歩行や歩行程度のきつさの運動を1日60分行いましょう。加えて、息が多少上がり汗をかくくらいの運動を、1週間に60分行いましょう。
65歳以上の方は、毎日40分程度は歩いたり運動したりすることがすすめられています。
適正体重を保つ
BMI(body mass index)を適切に保つことががん全体の死亡のリスクを下げることが明らかになっています。なお、BMIが男性では21.0-26.9、女性では21.0-24.9でがんによる死亡リスクが低いとされています。
「肺がんを予防する可能性の高い食べ物」についてよくある質問
ここまで肺がんを予防する可能性の高い食べ物などを紹介しました。ここでは「肺がんを予防する可能性の高い食べ物」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
肺に良い食べ物はありますか?
木村 香菜(医師)
肺がんを予防するために最も大切なことは、禁煙や受動喫煙を避けることです。しかし、野菜や果物を積極的にとることで、肺がんのみならずさまざまながんの予防につながることが期待できます。
大豆イソフラボンの摂取で肺がんを予防することはできるのでしょうか?
木村 香菜(医師)
大豆イソフラボンと肺がんのリスクについてはいまのところははっきりとした結論は出ていません。しかし、喫煙経験のない男性では、イソフラボン摂取が多いほど肺がんになりにくいことが示されたという日本での調査結果があります。女性でも同様の傾向がみられたとされています。 毎日の食生活で、大豆食品も取り入れるようにするとよいでしょう。
編集部まとめ
今回の記事では、肺がんの予防に効果があるかもしれない食べ物について解説しました。肺がんに限らず、がんの予防のためには野菜や果物を含めたバランスの良い食事、運動、適正体重の維持、禁煙、節酒が大切です。今回の記事をきっかけに、日々の生活習慣の見直しをしていきましょう。
「肺がん」と関連する病気
「肺がん」と関連する病気は3個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
呼吸器科の病気
- アスベスト関連肺疾患
- 肺結核
- 慢性閉塞性肺疾患(COPD)
肺がんと関連している疾患にはこれらのようなものがあります。
「肺がん」と関連する症状
「肺がん」と関連している、似ている症状は9個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
関連する症状
- 咳
- 血痰
- 胸痛
- 息切れ
- 背部痛
- 頭痛
- ふらつき
- 体重減少
- ばち指
肺がんは初期症状に乏しく、進行すると上記のような呼吸器症状が出現します。骨や脳に転移した場合には、その部位によって異なる症状が現れます。