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「骨肉腫を疑った場合レントゲン」でわかるのか?症状と検査法について医師が解説!

 公開日:2025/10/08
「骨肉腫を疑った場合レントゲン」でわかるのか?症状と検査法について医師が解説!
骨肉腫は主に骨に発生する悪性腫瘍の一種です。骨肉腫は進行すると骨を破壊し、痛みや腫れを引き起こします。早期発見・治療が重要ですが、「レントゲンで骨肉腫がわかるのか?」と疑問に思う方も多いでしょう。本記事では骨肉腫とはどのような病気か、検査方法や診断の基準、そして治療法を解説します。
木村 香菜

監修医師
木村 香菜(医師)

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名古屋大学医学部卒業。初期臨床研修修了後、大学病院や、がんセンターなどで放射線科一般・治療分野で勤務。その後、行政機関で、感染症対策等主査としても勤務。その際には、新型コロナウイルス感染症にも対応。現在は、主に健診クリニックで、人間ドックや健康診断の診察や説明、生活習慣指導を担当している。また放射線治療医として、がん治療にも携わっている。放射線治療専門医、日本医師会認定産業医。

骨肉腫とは

レントゲンでわかるかどうか解説する前に、本章では骨肉腫とはどのような病気かについて解説します。

骨肉腫の概要

骨肉腫は骨を形作る細胞から発生する原発性骨悪性腫瘍です。腫瘍細胞が類骨や骨そのものを作り出すのが特徴で、これが顕微鏡下の病理検査で確認されると骨肉腫と診断されます。骨肉腫は骨にできるがんのなかで最も頻度が高い代表的ながんであり、患者さんの約60%は10~20歳代の成長期に発症します。好発部位は脚の骨の膝関節に近い部分が多く、次いで腕の骨の肩に近い部分(上腕骨近位部)などが多く報告されています。まれに骨盤や脊椎など体幹の骨にも発生することがあります。男女比ではやや男性に多く、約1.5:1とされています。

骨肉腫の原因

骨肉腫の明確な原因は現在のところわかっていません。多くの場合、発症の背景に特定の遺伝子異常や遺伝的素因は見られず偶発的に発生すると考えられています。しかし、がん抑制遺伝子の異常が原因となるリ・フラウメニ症候群(LFS)という遺伝性腫瘍症候群の方では骨肉腫を発症しやすいことが知られています。ほかにも、網膜芽細胞腫や骨の良性疾患などが関与することがあります。

骨肉腫の症状

骨肉腫の初期症状としてもっとも多いのは、患部の痛みと腫れです。例えば、膝や肩といった骨肉腫ができやすい関節周辺に、運動時や歩行時に痛みを感じるようになります。痛みは数週間から数ヶ月かけて徐々に強くなり、次第に安静にしていても痛むようになることがあります。患部に腫瘤や腫れが生じてくるのも特徴で、触れると熱感を伴う場合もあります。また、腫瘍が大きくなると周囲の関節の動きが制限され、脚にできた場合は足を引きずるようになることもあります。

骨肉腫の検査方法

骨肉腫が疑われる症状がある場合、画像検査や血液検査を組み合わせて総合的に評価します。以下に各検査方法の概要について解説します。

レントゲン

レントゲン写真は骨肉腫を含む骨の腫瘍の初期検査としてよく行われます。X線画像で骨の内部に異常が認められれば、骨腫瘍が疑われます。骨肉腫の場合、レントゲン写真上では骨が虫食い状に破壊されていたり、逆に腫瘍によって不規則な新しい骨が形成されている様子が写ります。例えば、骨の一部が黒く抜け落ちたように写る部分と、周囲に白くモヤモヤとした影が混在するのが典型的な所見です。こうしたレントゲン所見は骨肉腫を強く示唆します。

CT、MRI

CT検査やMRI検査は、レントゲンで判明した骨腫瘍の状態をより詳しく評価するための画像検査です。MRIは特に腫瘍が骨の外に広がっている範囲や、周囲の筋肉・神経・血管などへの浸潤を調べるのに適しています。骨肉腫は骨の中だけでなく骨の外側にも腫瘤を作る傾向がありますが、この骨外への腫瘍部分はレントゲンでは見えにくいため、MRIで詳細に確認します。一方、CTは骨の細部構造の描出に優れ、骨の微細な破壊状況を把握したり、肺への転移の有無を調べる際に用いられます。

骨シンチグラフィー

骨シンチグラフィー(骨シンチ)は、放射性同位元素を使った骨の検査です。少量の放射性物質を注射し、骨の代謝が活発な部分に集まる性質を利用して全身の骨の状態を調べます。その結果、腫瘍がほかの骨に転移していないかを画像で確認することができます。骨肉腫は肺以外では骨への転移がしばしば見られるため、骨シンチグラフィーで全身の骨をスクリーニングすることが重要です。

血液検査

骨肉腫に特異的な血液検査の腫瘍マーカーはありません。多くの場合、血液検査をしても特別な異常所見はみられませんが、一部の骨肉腫患者さんではアルカリフォスファターゼ(ALP)という酵素の値が高くなることがあります。ALPは骨を作る細胞が活発に働くと上昇する酵素で、小児では成長に伴いもともと高めですが、骨肉腫で骨形成が盛んに行われているとさらに高値になることがあります。そのため、治療前に高ALP血症を認めた場合は、術前化学療法に対する反応や治療後の再発などの目安としてモニタリングに使われることがあります。

生検

最終的に骨肉腫と確定診断するには、生検による病理組織検査が必須です。生検とは腫瘍の一部を採取して顕微鏡で調べる検査のことで、骨肉腫の場合は針生検か切開生検で検体を採取します。採取した組織を病理医が顕微鏡で観察し、腫瘍細胞が骨や類骨を作っていることを確認して骨肉腫と診断します。

骨肉腫の診断基準

骨肉腫の診断は、画像検査の所見と病理検査の結果を組み合わせて行います。X線やMRIで骨に悪性腫瘍を強く疑う所見があっても、生検で得た組織を顕微鏡検査し、腫瘍性の骨が確認されて初めて骨肉腫と確定診断されます。加えて、診断時には腫瘍の大きさ・広がりと転移の有無によって、病期の判定も行われます。

骨肉腫の治療方法

骨肉腫の治療は手術と抗がん剤による化学療法を組み合わせるのが標準的です。現在では、診断時に外科的切除が可能な症例に対しては、術前化学療法と手術による腫瘍の切除、さらに術後化学療法を組み合わせた集学的治療が行われます。以下に各治療法について解説します。

術前化学療法

術前化学療法とは、手術で腫瘍を摘出する前に行う抗がん剤治療です。骨肉腫の治療成績向上のため1970年代以降に導入され、現在の標準治療の一部となっています。手術前に化学療法を行う目的は主に2つあります。

  • 腫瘍を小さく縮小させること
  • 目に見えない転移巣を治療すること
用いられる抗がん剤(化学療法薬)は複数の薬剤を併用するのが一般的です。骨肉腫に対して特に有効な主力薬剤として、メトトレキサートドキソルビシンシスプラチンの3つが挙げられ、これらを組み合わせたMAP療法と呼ばれるレジメン(治療法)が標準的に使われています。

外科的切除

外科的切除は、骨肉腫が発生した骨とその周囲の腫瘍を取り残しなく摘出する治療です。骨肉腫の手術では、腫瘍細胞が存在する範囲よりも一回り大きく正常組織ごと切除する広範切除術が基本となります。これによって腫瘍の取り残しを防ぎ、局所での再発を起こしにくくします。

術後化学療法

手術で目に見える腫瘍をすべて切除した後も、再発予防のための術後化学療法を行います。手術後に抗がん剤治療を追加することで、手術時に取り切れなかった可能性のあるわずかな残存がん細胞や、すでに転移しているかもしれない微小ながんを叩き、再発率を下げて治癒率を上げることができます。

骨肉腫についてよくある質問

ここまで骨肉腫について紹介しました。ここでは「骨肉腫」についてよくある質問に、メディカルドック監修医がお答えします。

骨肉腫が疑われるときは何科を受診すればよいですか?

まずは整形外科を受診してください。骨肉腫は骨の病変ですので、骨の専門医である整形外科の医師が診察・検査を行います。小児の場合は小児がん専門の診療科(小児科や小児腫瘍科)と整形外科が協力して診療にあたることもあります。

骨肉腫は完治が目指せますか?

はい、骨肉腫は適切な治療を受けることで完治を目指せる病気です。術前・術後の化学療法を組み合わせる現在の治療法の登場によって約70~80%まで生存率が向上しました。転移のない症例であれば多くの患者さんが長期生存を得られるようになっています。

骨肉腫の治療期間の目安を教えてください。

骨肉腫の治療は長期間にわたることが一般的です。標準的なケースでは、術前の化学療法に約2~3ヶ月、続いて手術、さらに術後の化学療法に数ヶ月という流れで、トータルの治療期間は約9ヶ月になります。個人差はありますが、半年から1年弱と考えておけばよいでしょう。

まとめ

骨肉腫は若年層に多い骨のがんで、痛みや腫れといった症状が見られます。レントゲン検査で骨の異常所見が写ることが多いですが、診断と治療にはほかにもさまざまな検査が必要です。本記事がきっかけとなり、骨肉腫について理解が深まれば幸いです。

関連する病気

  • 骨髄炎
  • Ewing肉腫
  • 良性骨腫瘍
  • 骨巨細胞腫
  • 転移性骨腫瘍

関連する症状

  • 持続する骨の痛み
  • 骨の腫脹としこり
  • 関節の可動域制限
  • 発熱
  • 全身倦怠感
  • 体重減少

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