「肝臓がん」が進行すると「かゆみの症状」が現れる?医師が徹底解説!

肝臓がんの患者さんのなかには、皮膚のかゆみに悩まされる方もいます。肝臓の働きが低下すると黄疸やむくみとともに皮膚のかゆみが現れることがあり、夜も眠れないほどつらいこともあります。本記事では、肝臓がんで皮膚にかゆみ症状が生じる原因やかゆみを感じやすい部位、そしてその対策を解説します。

監修医師:
和田 蔵人(わだ内科・胃と腸クリニック)
目次 -INDEX-
肝臓がんでかゆくなりやすい部位

肝臓がんに伴うかゆみは、特定の部位に限られず全身に生じることが多いのが特徴です。ときに手のひらや足の裏で特に強いかゆみを感じる場合もあります。これは皮膚そのものに異常がなくても体内部の変化で起こる内因性のかゆみであるため、身体の広い範囲に及ぶことが多いのです。つまり、肝臓がんの患者さんでは身体のどこがかゆくなるというより、体全体がかゆくなりうるといえます。
肝臓がんで皮膚にかゆみが生じる原因

肝臓がんで皮膚にかゆみが生じる主な原因は、肝機能の低下や胆汁うっ滞による体内環境の変化です。
肝臓の働きが悪くなると胆汁の流れが滞り、胆汁に含まれるビリルビンや胆汁酸などの成分が血液中に蓄積します。その結果、皮膚や全身の神経が刺激されてかゆみが引き起こされます。
このように肝臓がんのかゆみは皮膚自体の異常ではなく、体内の物質の蓄積によって起こるため、皮膚を見ても発疹など明らかな異常がみられない場合がほとんどです。
さらに、肝臓病によるかゆみは通常のかゆみとは異なるメカニズムで起こると考えられています。虫刺されや蕁麻疹など皮膚が原因のかゆみはヒスタミンという物質が神経を刺激しますが、肝臓病によるかゆみには脳内のオピオイド系物質が関与しており、脳が直接かゆみを感じる仕組みです。そのため、一般的な抗ヒスタミン薬が効きにくいという特徴があります。
肝臓がん以外で皮膚のかゆみが生じる要因

肝臓がん以外にも、皮膚のかゆみにはさまざまな原因があります。代表的な例を以下に挙げます。
- 乾燥肌やアトピー性皮膚炎などの皮膚疾患
- アレルギー症状
- 腎臓疾患、糖尿病など全身の病気
- 季節に伴う皮膚そう痒症
このように、かゆみには肝臓がん以外にもさまざまな原因があります。
肝臓がんのかゆみ症状を和らげる方法

肝臓がんによるかゆみは原因が体内にあるため根本的な解消は容易ではありませんが、工夫次第で症状を和らげることが可能です。ここでは外用薬、内服薬、保湿やスキンケアの3つの面から対策を解説します。
外用薬による治療
皮膚の表面に塗る外用薬は、肝臓がんのかゆみの原因そのものを取り除くことはできませんが、症状緩和の補助として用いられます。特に、かゆみに伴って皮膚をかき壊してしまっている場合は、その部分の炎症を抑える目的でステロイド軟膏が処方されます。ステロイド外用薬には皮膚の炎症や赤みを鎮める効果があり、掻き壊しによる湿疹や二次感染を防ぐのに有用です。
内服薬による治療
かゆみの程度に応じて内服薬による治療が行われます。まず一般的に用いられるのは抗ヒスタミン薬という飲み薬のかゆみ止めです。抗ヒスタミン薬はアレルギー性のかゆみに効果がありますが、肝臓がんによるかゆみでは効果が不十分な場合もあります。ただ、抗ヒスタミン薬には眠気の副作用があるため、夜間のかゆみで眠れないときなどに睡眠を助ける目的で処方されることがあります。
保湿やスキンケアの見直し
皮膚を乾燥させないことは、かゆみ対策の基本です。日常生活で以下のようなスキンケアを心がけると、かゆみの悪化を防ぐのに役立ちます。
保湿
入浴後はできるだけ早く保湿剤(ローションやクリーム)を全身に塗り、肌の乾燥を防ぎましょう。肌が潤っていると外部刺激からバリアされ、かゆみ神経が刺激されにくくなります。
入浴の工夫
熱いお湯や長時間の入浴は避け、ぬるめのお湯に短時間(目安として30分以内)浸かるようにします。石けんは刺激の少ない敏感肌用や保湿成分配合のものを使用し、身体を洗うときはナイロンタオルでゴシゴシ擦らないようにしましょう。入浴後はやわらかいタオルで擦らずに優しく押さえるように水分を拭き取ることも大切です。
衣類・生活環境
身につける衣類は肌触りのよい綿素材などやわらかい繊維のものを選び、締め付けの強い服装は避けます。寝具や衣服は洗濯の際によくすすぎ、香料や染料を含まない洗剤を使うと皮膚への刺激が少なくなります。また、室内は加湿器などで適度な湿度を保ち、空気が乾燥しすぎないようにしましょう。
かゆいときの対処
爪は短く切り揃え、皮膚を直接かきむしらないようにしましょう。どうしても我慢できないときは、冷たいタオルで患部を冷やすと一時的にかゆみが和らぎます。掻き壊しを防ぐことで、かゆみの悪循環を断つことができます。
以上のようなスキンケアを徹底することで、肝臓がんによるかゆみ症状の感じ方がかなり軽減される場合があります。毎日の積み重ねが症状緩和につながるため、できる範囲で取り組んでみましょう。
肝臓がんについてよくある質問
ここまで肝臓がんについて紹介しました。ここでは「肝臓がん」についてよくある質問に、メディカルドック監修医がお答えします。
肝臓がんによるかゆみはがんの進行度と関係がありますか?
かゆみの強さや出現には、肝臓がんそのものの大きさや進行度よりも、肝機能の低下の程度や胆汁うっ滞の程度が関係しています。がんが進行して肝臓の機能が悪化するほど黄疸やかゆみなどの症状が出やすくなります。
逆に、早期の肝臓がんでは自覚症状がほとんどなく、かゆみが現れることはまれです。したがって、かゆみが出てきた=肝臓がんが進行したと単純に結び付けることはできませんが、全身のかゆみは肝臓の状態の悪化を示す一兆候であるため、担当医に症状を伝えて適切な対応をしてもらいましょう。
肝臓がんによるかゆみの治療は何科を受診すればよいですか?
肝臓がんによるかゆみ症状の治療は、肝臓の病気を専門とする肝臓内科や消化器内科で受けるのが適切です。肝臓がんで通院中であれば、まずは主治医にかゆみの症状も伝えてください。かゆみは緩和ケアの一環として治療可能な症状ですので、決して我慢する必要はありません。担当医は、症状に応じて適切な内服薬の処方や皮膚科との連携を含めた対策を考えてくださるでしょう。
なお、皮膚に湿疹やじんましんを伴っている場合には皮膚科の診察も有用ですが、肝臓がんに起因するかゆみ自体の治療は肝臓内科・消化器内科で行うのが一般的です。
肝臓がんによるかゆみとそれ以外の病気によるかゆみはどのように区別するのですか?
まず、皮膚の見た目に注目します。肝臓がんなど肝臓の病気によるかゆみは、皮膚に発疹や湿疹など目に見える異常がないのに全身がかゆくなる点が特徴です。肝臓がんによるかゆみでは皮膚症状がないため、見た目は普通なのに痒いという場合は、肝臓など内部の原因が疑われます。
また、肝臓が原因でかゆみが生じている場合、しばしば黄疸や濃い尿・白っぽい便といったほかの肝機能低下の症状を伴います。総じて、皮膚の状態(発疹の有無)と肝臓の状態(黄疸の有無や血液検査結果)を総合することで、肝臓がんによるかゆみかどうかを判断します。
まとめ

肝臓がんで生じる皮膚のかゆみは、黄疸に伴う胆汁成分の蓄積など肝臓の機能低下による症状の一つです。全身に及ぶ強いかゆみは患者さんのQOLを著しく低下させるため、適切な治療やケアによって和らげることが大切です。
本記事で述べたように、肝臓がんのかゆみは皮膚トラブル由来のかゆみとは原因が異なるため一般的な市販薬だけでは十分に改善しないこともあります。しかし、内服薬による治療やスキンケアの工夫によって多くの場合症状の軽減が可能です。つらいかゆみがあるときは一人で悩まず、遠慮なく主治医に相談してみましょう。医師と協力しながら対策を講じることで、かゆみ症状をコントロールし、日常生活の負担を減らすことができます。
関連する病気
肝臓がんと似た症状を示す、または同時に発生する可能性のある病気には以下のようなものがあります。
- 肝硬変
- 肝硬変
- 慢性肝炎
- 非アルコール性脂肪性肝疾患
- 胆道系がん(胆管がん、胆嚢がん)
関連する症状
肝臓がんに関連する症状は以下のような症状が挙げられます。これらの変化を正しく把握することが鑑別に役立ちます。
- 黄疸
- 右上腹部の痛み・不快感
- 体重減少
- 食欲不振
- 倦怠感・疲労感
- 腹水
- 悪心・嘔吐




