目次 -INDEX-

  1. Medical DOCTOP
  2. 医科TOP
  3. 三大疾病
  4. がん
  5. 「肺がんの結節影」がレントゲンで見つかる確率はどれくらい?【医師解説】

「肺がんの結節影」がレントゲンで見つかる確率はどれくらい?【医師解説】

 公開日:2025/04/22
「肺がんの結節影」がレントゲンで見つかる確率はどれくらい?【医師解説】

肺がんの結節影がレントゲンで見つかる確率はどれくらい?Medical DOC監修医が結節影のステージ分類・結節影を発症する原因・症状・検査法や何科へ受診すべきかなどを解説します。気になる症状がある場合は迷わず病院を受診してください。

木村 香菜

監修医師
木村 香菜(医師)

プロフィールをもっと見る
名古屋大学医学部卒業。初期臨床研修修了後、大学病院や、がんセンターなどで放射線科一般・治療分野で勤務。その後、行政機関で、感染症対策等主査としても勤務。その際には、新型コロナウイルス感染症にも対応。現在は、主に健診クリニックで、人間ドックや健康診断の診察や説明、生活習慣指導を担当している。また放射線治療医として、がん治療にも携わっている。放射線治療専門医、日本医師会認定産業医。

「肺がん」とは?

肺がんは、肺の細胞から生じるがんのことです。日本において死亡率の高いがんの一つです。初期段階では自覚症状が少なく、進行してから発見されることも多いため、早期発見が重要とされています。画像検査による診断が主な手段となっており、その中で「結節影」という影が見つかることがあります。

肺がんの結節影とは?

「結節影」とは、レントゲンやCT検査で確認される肺の異常陰影の一つで、大きさが直径3cm以下の丸い影を指します。この影の正体が良性か悪性かを見極めるためには、追加の検査が必要になります。結節影が肺がんによるものなのか、それとも炎症や良性腫瘍など他の原因によるものなのか、慎重な診断が求められます。

肺がんの結節影がレントゲンで見つかる確率はどれくらい?

胸部X線検査(レントゲン検査)による検出感度は60〜80%程度といわれています。つまり、肺がんがある場合にレントゲン検査で見つかる確率は6〜8割ということです。
また、レントゲンを撮った際に何らかの肺結節が見つかる検出率は2.1〜6.2%となっています。これは、高齢者や男性、呼吸器疾患を合併している方、喫煙者に多い傾向があるとされています。
なお、令和3年度の肺がん検診受診者のうち、要精密検査となったのは1.5%でした。さらに、そのうちでも実際に肺がんであった方は1.77%でした。

肺がんの結節影のステージ分類はいくつ?

肺がんを疑う結節影がみつかった場合、さらなる検査を行い、肺がんそのものの大きさやリンパ節・他の臓器への転移の有無を調べます。

・ステージいくつかについて
肺がんの進行度は、以下のようにステージ分類されます。

l ステージ0:ごく初期の段階で、がん細胞が粘膜内にとどまる
l ステージⅠ:腫瘍が限局しており、転移がない
l ステージⅡ:腫瘍の大きさが増し、近くのリンパ節に転移が見られることもある
l ステージⅢ:より広範囲のリンパ節転移や、隣接する臓器への浸潤が認められる
l ステージⅣ:遠隔転移(脳、骨、肝臓など)が発生している

肺がんの結節影が発見された場合、その進行度を評価するためにCT検査やPET-CT検査が行われることが一般的です。
なお、定義として結節影は3㎝以下なので、この大きさであってリンパ節や遠隔臓器への転移がない場合には、ステージIとなります。

肺がんの結節影を発症する原因

ここでは、肺がんの発症リスクとして考えられている要因について解説します。

喫煙

喫煙は肺がんの最大の危険因子とされており、特に小細胞肺がんや扁平上皮がんの発症リスクを大幅に高めることが知られています。タバコの煙には発がん性物質が多数含まれており、これらが長期間にわたって肺の細胞にダメージを与えることで、がん化のリスクが高まります。喫煙者だけでなく、受動喫煙によっても肺がんのリスクは上昇するとされており、家庭や職場などでの環境も重要な要素となります。結節影が見つかった場合、喫煙歴がある人は特に注意が必要であり、呼吸器内科で精密検査を受けることが推奨されます。
結節影の大きさや形状によっては、CT検査やPET-CT検査が行われることが一般的です。また、禁煙を検討している場合には、禁煙外来の受診も選択肢の一つとなります。長引く咳や血痰、息切れなどの症状がすでに現れている場合は、早急に医療機関を受診しましょう。

アスベストなどの有害物質への暴露

アスベスト(石綿)や放射線、ディーゼル排気ガスなどの有害物質に長期間さらされることで、肺がんのリスクが高まることが知られています。特にアスベストは中皮腫や肺腺がんとの関連が強く、建築業や造船業、工場作業などで過去にアスベストを取り扱っていた人は注意が必要です。これらの有害物質は、肺の細胞に慢性的な刺激を与え、炎症や遺伝子変異を引き起こすことで、がんの発症につながる可能性があります。
有害物質に長期間さらされていた可能性がある場合は、呼吸器内科や職業病専門外来を受診し、定期的な肺のチェックを受けることがすすめられます。CT検査や肺機能検査を通じて、肺の状態を確認し、がんの早期発見につなげることが重要です。特に、胸の痛みや息苦しさといった症状がある場合は、すぐに受診しましょう。また、アスベスト曝露歴がある人は、中皮腫のリスクも考慮しながら、専門医の診察を受けましょう。

肺がん以外の呼吸器疾

肺がんの結節影は、肺結核や慢性閉塞性肺疾患(COPD)、間質性肺炎といった呼吸器疾患が原因となることもあります。これらの疾患は肺の組織に炎症や線維化を引き起こし、その結果、レントゲンやCT検査で結節影として現れることがあります。また、これらの病気を持っている人は、肺の細胞が慢性的なダメージを受けやすいため、肺がんのリスクも相対的に高くなります。急に息切れがひどくなったり、強い咳が続いたりする場合は、放置せずに医療機関を受診しましょう。

肺がんの結節影があるとどんな症状が現れる?

肺がんの結節影がある、つまり肺がんを発症しても、最初は無症状の場合が多いです。しかし、進行すると以下のような症状が現れてきます。

長引く咳と痰

肺がんの症状として最も多いのが長引く咳です。特に、2週間以上続く咳は要注意とされています。がんが気管や気管支に影響を及ぼすことで刺激を受け、慢性的な咳が出るようになります。乾いた咳(空咳)のこともあれば、痰が絡んだ咳になることもあります。
さらに、血痰が見られる場合は特に注意が必要です。腫瘍が気管支の粘膜や血管を侵食すると、血が混じった痰が出ることがあります。血痰が一度でも出た場合は、放置せずに早めに医療機関を受診することが重要です。少量の血が混じる程度でも、検査が必要になることがあります。

胸痛や息切れ

肺がんが進行すると、腫瘍が肺の外側にまで広がり、胸膜や肋骨、神経を刺激することで胸痛が生じることがあります。この痛みは深呼吸や咳をしたときに悪化することが特徴です。また、進行した肺がんでは肺に水(胸水)がたまることがあり、その影響で胸が圧迫されるような痛みを感じることもあります。
息切れは、肺がんによって気道が狭くなったり、腫瘍が肺の働きを妨げたりすることで生じます。初めのうちは階段を上るときや軽い運動時に息切れを感じることが多いですが、進行すると安静にしていても呼吸が苦しくなることがあります。特に、横になると呼吸がしづらくなる場合は、胸水の貯留が疑われるため、早急な受診をおすすめします。

体重減少や倦怠感

肺がんが進行すると、食欲不振や代謝の異常により急激な体重減少が起こることがあります。がん細胞は体内の栄養を消費するため、体重が減りやすくなります。
また、全身の倦怠感(だるさ)も肺がんの進行によって引き起こされることがあります。がんが体内で炎症を引き起こしたり、免疫系が過剰に反応したりすることで、慢性的な疲労感が続くことがあるのです。休息を取っても改善しない強い疲労感がある場合は、何らかの病気が隠れている可能性があるため、早めに医療機関を受診することが大切です。

肺に結節影が見つかった場合、どんな検査を行う?

健康診断や検診などで肺のレントゲンを撮った際に肺の結節影が見つかることがあります。肺がんが疑われる場合には、以下のような検査が行われます。

胸部CTやPET-CT検査

レントゲンでは詳細がわからない場合、胸部CT検査が行われます。CT検査では、肺を輪切り状に撮影し、結節の大きさや形状、石灰化の有無などをより詳しく調べることができます。さらに、がんの転移や活動性を評価するためにPET-CT検査が行われることもあります。これは、がん細胞がブドウ糖を多く取り込む性質を利用して、全身のがんの広がりを確認する検査です。
これらの検査は、基本的に呼吸器内科で受けることができ、外来で実施されるため入院の必要はありません。検査自体は数十分程度で終了し、その日のうちに帰宅できます。

気管支鏡検査

結節影が気管支に近い場合、気管支鏡検査を行うことがあります。これは、細いカメラ付きの管を鼻や口から挿入し、気管や気管支の内部を直接観察しながら、病変部の細胞を採取する検査です。肺がんの確定診断をするためには、細胞を顕微鏡で詳しく調べることが必要になるため、とても重要な検査の一つです。
この検査は、呼吸器内科または肺がん専門の診療科で行われます。外来で実施することも可能ですが、通常は1泊程度の入院が必要となることが多いです。検査後は喉の違和感が数日続くことがあります。

針生検

結節影が肺の奥深くにあり、気管支鏡では届かない場合には、CTガイド下針生検が行われます。この検査では、CTで病変の位置を確認しながら、細い針を皮膚から肺に直接刺して、病変部の組織を採取します。より正確に細胞を採取できるため、肺がんの確定診断に役立ちます。
この検査は、放射線科や呼吸器内科で実施され、1泊程度の入院が必要となることが一般的です。針を刺すため、まれに気胸(肺に穴が開く状態)や出血のリスクがありますが、多くの場合は安全に行われます。

「結節影・肺がんの確率」についてよくある質問

ここまで結節影・肺がんの確率などを紹介しました。ここでは「結節影・肺がんの確率」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

肺に結節影が見つかった場合、経過観察はどのくらい行うのでしょうか?

木村 香菜医師木村 香菜(医師)

結節影の大きさや形状によって異なりますが、通常は3ヶ月〜6ヶ月ごとにCT検査を行い、1〜2年のフォローアップが推奨されます。サイズが変化しなければ良性の可能性が高く、経過観察のみとなることもあります。

編集部まとめ

肺がんの結節影はレントゲンやCT検査で偶然発見されることが多く、そのうちがんである確率は数%程度とされています。しかし、喫煙歴や家族歴がある場合、がんのリスクは高くなります。
結節影が発見された場合は、放置せず呼吸器内科を受診し、精密検査を受けることが重要です。また、定期的な経過観察を行い、変化がないかを確認することが大切です。

「肺がん」と関連する病気

「肺がん」と関連する病気は4個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

呼吸器内科の病気

  • 肺結核
  • 間質性肺炎
  • 慢性閉塞性肺疾患(COPD)
  • 石綿肺

上記のような肺の病気は、肺がんの危険性を高めることが報告されています。また、喫煙は肺がんのリスクとなる他、COPDの原因ともなります。

「肺がん」と関連する症状

「肺がん」と関連している、似ている症状は15個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する症状

  • 血が混じる咳
  • 胸、背中、肩の痛み
  • 突然起こる息切れ
  • 声枯れまたは喘鳴
  • 飲み込みにくくなる、または飲み込むときに痛みがある
  • ばち状指(指先が丸く平たく変形すること)
  • 骨の痛み
  • 顔、腕、首の腫れ
  • 頭痛、めまい、手足の力が入らなくなったり、しびれたりする
  • 黄疸
  • 首や鎖骨付近のしこり
  • 原因不明の体重減少
  • 疲労感や脱力感
  • 食欲不振

肺がんそのものが大きくなったり周りの神経や臓器に浸潤したりすることで起こる症状と、肺がんが他の臓器に転移することで起こる症状があります。その他にも、がんの進行そのものにより全身の症状が現れる場合もあります。気になる症状がある場合は、早めに医療機関を受診しましょう。

この記事の監修医師